昨今、マーケティングはデータを活用して実施することが当たり前になってきました。
デジタルマーケティングではデータを見ながら改善することが非常に容易になったためです。
特にデジタル広告など集客や最初のコンバージョンを獲得する部分まではかなりデータをもととした判断が一般化したといえるでしょう。
CPC(Cost Per Click)やCPA(Cost per Acquisition)をKPIとして把握しながら、広告出稿媒体やクリエイティブの改善を図っている方は多いはずです。
一方で、社内に蓄積されたユーザーの行動データや会員データ、購買データをうまく活用できている企業はまだ少ないのではないでしょうか。
こうしたデータは複数のシステムに分散して格納されており、活用するにはデータの整備が必要になりますが、初回購入から2回目の購入につなぎ、さらにファンとして何度も購入していただくためには、社内にあるデータの活用が必須になってきます。
この記事では、こうした社内に存在するデータを活用した、データドリブンマーケティングに必要なツールをご紹介します。
データドリブンマーケティングの4STEP
社内に存在するデータを活用した、データドリブンマーケティングは、以下の4STEPで進めていくことになります。
以降、この4STEPに沿ってデータドリブンマーケティングの進め方やその際に利用するツールをご紹介します。
ためる
最初はデータをためることから始まります。
社内にある顧客データとしては、以下が挙げられます。
1.購買データ
POSデータやECサイトの購入データなど
2.顧客行動データ
Webサイトやアプリのアクセスログ、店舗への来店履歴、お問い合わせやイベント参加履歴
3.顧客属性データ
CRMに格納された顧客名、住所、年齢などの属性データ
この3種類の関係性をマーケティング的にとらえると、1.の購買データは結果です。
マーケティング活動はこの数値の最大化を目指して実施していると思います。
一方で、2.と3.は結果を生み出すために利用するインプット側のデータです。
以前は3.の属性データを使ったマーケティングが主流でしたが、最近ではニーズの多様化により、属性だけで顧客を正しく知ることが難しくなってきています。
同じ20代女性でも、コスメが好きな人とアウトドアが好きな人の消費動向は異なります。
こうした属性だけで判断できない顧客のインサイトを把握するために重視されているのが顧客行動データです。
ただし、属性データは顧客1人に対して1レコード(1行)ですむのに対して、行動データは顧客1人に対して膨大なデータ量になります。
こうしたことからも顧客データの蓄積を行うためのデータベースとして、データウェアハウス(DWH)の重要性が増しているのです。
データウェアハウスとは、「データの倉庫」と直訳される、収集したデータを管理するシステムのことです。従来はツールがまだそれほど整っておらず、収集したデータを管理したり、必要なデータを探す際に膨大な時間がかかっていました。
データの価値が年々増加している現代では、データを基に意思決定が行われます。しかし、情報化社会では顧客ニーズの変化が早く、データ分析に多くの時間を割くことができません。そこで膨大なデータの中から、必要なデータを抽出したり、データの重複を避けるなど、データ管理において従来手間がかかってしまっていた作業を容易に行えるデータウェアハウスの重要性が大きくなってきているのです。
整える(CDP)
次にデータを整える段階です。
データは多く蓄積されているが、うまく活用できていないという場合はここに課題があるケースが散見されます。
先ほど提示した主な顧客データ3種、
1.購買データ
POSデータやECサイトの購入データなど
2.顧客行動データ
Webサイトやアプリのアクセスログ、店舗への来店履歴、お問い合わせやイベント参加履歴
3.顧客属性データ
CRMに格納された顧客名、住所、年齢などの属性データ
を一意のキー値をもとに紐づけて、いつでも分析できるようになっている企業は少ないのではないでしょうか。
おそらく、それぞれのデータベース単体では、データをエクスポートしてExcelやBIツールで集計・分析することができると思います。
しかし、大切なのはそれぞれのデータの関係性です。
データを活用する際によくあるケースは、結果である購買データだけを分析して、「〇月は〇〇商品がよく売れたので売上が高かった」「×月は顧客数が減ったけれど単価は上がったので結果的に売上は変わらなかった」という分析です。
これはこれで一定の意味はありますが、重要なのは結果を引き起こした要因です。
どういった要因でこの結果がもたらされたかがわかれば、良い結果を再現できる可能性が非常に高くなります。
そして、この要因は結果データだけを分析しても発見できないことが多いのです。
先ほどの例でいうと、
【例1】
〇月は〇〇商品がよく売れたので売上が高かった
→なぜ、〇〇商品がよく売れたのか?
【例2】
×月は顧客数が減ったけれど単価は上がったので結果的に売上は変わらなかった
→なぜ単価が上がったのか?
ここまで深堀してみていかないと、ただ単に上司や経営層に場当たり的に報告するだけの内容が薄い分析になってしまい、本質的な改善を行うことができません。
そのためにも、各データベースをつなぎ、結果データだけでなく、その先行指標となるユーザーの属性や行動のデータを合わせて見ていく必要があるのです。
各種データベースを接続するために利用されるのが、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)です。
CDPとは、「顧客データ基盤」と訳され、文字通り顧客一人一人のデータを管理し活用するプラットフォームのことです。管理するデータの種類は多岐にわたります。顧客の性別や年齢、国籍などの属性データだけでなく、サイトやアプリなどネット上でどのような行動をしているのかをデータ化した「行動データ」も管理しています。
これらを、ユーザー単位で紐づけて活用できる状態にすることが可能です。
CDPは顧客一人一人に最適なマーケティング施策を打つ「One to Oneマーケティング」を実行するために必要なツールであると言えるでしょう。
分析する(アナリティクス)
複数のデータベースがキー値で繋がれ、活用できる状態になったらいよいよデータの分析です。
1.目的の明確化
分析で重要なことは、目的を明確化することです。
「とにかく分析しろ」という上司からの指示を受けて、現場がデータをこねくり回してなんとなくそれらしいレポートを作成する、ということが日本のビジネスシーンではよくあるのですが、これでは「分析」が目的化していて本末転倒です。
分析はあくまで手段ですので、
・会員登録はしたが未購入のユーザーに購入させるにはどうすればよいか
・購入単価が高いユーザーと低いユーザーにはどういった違いがあるか
・一度購入したままのユーザーに再購入させるためにどうすればよいか
といった明確な目的をもって分析を行いましょう。
そして、分析目的に対して、どういった施策を実施するか、仮説を立案するところまでが分析業務です。
過去の傾向を見るだけでなく、どうしたら未来を変えられるかまでを見据えて分析しましょう。
2.顧客分析フレームワーク
顧客分析の際に利用できるフレームワークはこちらの記事を参照ください。
3.分析ツール
さて、いざ分析をしようとした際、比較的多くのマーケターが利用できるのが、Google Analyticsをはじめとしたアクセス解析ツールや、Excelといった表計算ソフト、TableauなどのBIツールでしょう。
こうしたアナリティクスの分野にも変化が起こっています。
それは、ユーザーの属性ベースでの分析から行動ベースでの分析にシフトしている、ということです。
先にお話しした通り、属性データに対して行動データは膨大なデータ量になります。
そのデータを様々な観点から一定の条件で抽出し、相関性を分析する作業は、非常にマシンパワーと時間を要するものでした。
しかし、最近では行動分析に対応したアナリティクスツールが出てきています。
マーケターになじみの深いGoogle Analyticsも、最新バージョンのGoogleアナリティクス4 プロパティではセッションベースではなくイベント(行動)ベースでの分析になっていますし、米国で非常に高い評価を受けている行動分析のアナリティクスツール「Amplitude」も2021年に上場を果たし、日本国内での導入企業が増えてきています。
無償版ではすでに利用サービス数が1,000を超えているとのこと。
こうしたツールは膨大な行動データをGUI操作で分析できるようになっていますので、これらを使いこなして分析を進めたいものです。
4.分析のアウトプット
分析結果は、次のマーケティング施策に生かせるアウトプットにしましょう。
例えば、分析結果を踏まえて高い効果が期待できる施策を企画するのがおススメです。
・キャンペーンに関するプッシュ通知を休眠ユーザーのみに送って活性化できないか
・ECのカートでまとめ買いおすすめバナーを表示してまとめ買いを促進できないか
・購入からしばらく経過したユーザーにダイレクトメールを送信して継続購入を促進できないか
分析自体で終わるのではなく、次の活動に繋がる仮説を生み出すことを意識しましょう。
つかう(エンゲージメント)
分析フェーズで、「こうしたらもっと良くなるのでは」という仮説が立案できたら、それを実行するのが「つかう」のフェーズです。
Webサイト、アプリ、メルマガなど様々な販促手段で実行できるマーケティングの施策を試しましょう。
つかうのフェーズで注意すべき点は2つあります。
1.顧客体験の向上
2.実行→検証サイクルの高速化
ひとつずつご説明しましょう。
1.顧客体験の向上
顧客体験とは、ユーザーが企業からのマーケティングコミュニケーションや提供するサービスに触れた際に感じる体験価値のことです。
当然、良い顧客体験を提供する商品・サービスにはユーザーが良い印象を持ちやすく、購入・継続といった行動をとりやすくなります。
頭ではわかっていながらも、多くのマーケティング施策において、キャンペーンやおすすめ商品などの一斉配信のメッセージを複数回送り、直近の売上獲得を狙ってしまいます。
自分に関係のない、興味のないメッセージが一日に何回も送られてきては、ユーザーも嫌な気持ちになってしまうでしょう。
短期の売上も当然重要ですが、ユーザーとの継続的な関係を構築し、ライフタイムバリューを上げるためには、そこをぐっと我慢してユーザーに心地よいメッセージを送ることが重要です。
ユーザーに心地よいメッセージを送るためには、以下が重要です。
・誰に
・いつ
・何を
ユーザーの気持ちになって考えて設計しましょう。
2.実行→検証サイクルの高速化
ユーザーの嗜好が多様化したことで、マーケティング施策は、「やってみないと効果がわからない」というものが多くなってきました。
そういった環境下では、施策の実行までに時間をかけるより、まずは小さく早く試して、どんどん改善していく方法が適しています。
上記でお話しした、
1.顧客体験の向上
2.実行→検証サイクルの高速化
を手動で実現するのは非常に大変です。
ユーザーごとにメッセージを細分化するほど作業量は増え、サイクルを高速化するどころか施策の実行スピードが落ちてしまいます。
そんな時に利用できるのがマーケティングオートメーションツールです。
マーケティングオートメーションツールとは、顧客情報を一元的に管理し、メール送信やバナー通知などの顧客へのアプローチを自動化するツールのことです。
従来のようなマス全体へ同一のアプローチを行うマスマーケティングでは効果が出にくくなっており、今後はOne to Oneマーケティングの実施が必要です。一方で、顧客体験向上のために、一人一人に最適化された施策を打つためには、メールの文面を何パターンも作成したり、送付先のリストを細かく分けるなど、手作業で行うとかなりの手間がかかってしまいます。
マーケティングオートメーションツールはこれらの作業を自動化することが可能です。
代表的なツールとしては、Karte、Braze、Salesforce Marketing Cloudなどがあります。
マーケティングオートメーションツールでは課題を解決し、よりコンバージョンへ繋がりやすい施策を打つことが可能です。さらに、施策の結果は再びデータとして即座に蓄積され、フィードバックとしてまた次の施策で活用されます。こうした施策の実行と、その結果を分析し次の施策に役立てるサイクルを高速に回すことで、大きな結果に繋がりやすくなるでしょう。
まとめ
以上、データドリブンマーケティングに必要なツールをご紹介しました。
膨大なデータを扱うデータドリブンマーケティングは、手動では限界があるため、自社にあったツールを選定して効率的なマーケティング活動を行いましょう。