企業におけるDX推進やデータドリブンが一般化してきて、皆さん常に色々なデータをチェックされているのではないでしょうか。例えば、Google Analyticsを使ってアクセスデータを見たり、Tableauでダッシュボードを作って売上データを見たり、重要なKPIやKGIを見たり。
この記事では、B to C アプリのグロースという観点で、お買い物機能が搭載されているECアプリを例にアプリのデータ分析事例をご紹介します。
DX推進により実現できるようになった事
アプリもWebと同様にアクティブユーザー数の推移や商品購入ユーザー数の推移、商品購入金額など、みなさんパフォーマンスを主に見ていると思います。
アプリのアクティブユーザー率と商品購入ユーザー率を、この様に棒グラフにしてみると、次のことが分かります。
左側のアクティブユーザー100%の内、右側の商品購入ユーザーは29%です。残りの71%のユーザーは『アクティブなのに購入していないユーザー』となります。この『アクティブなのに購入していないユーザー』に商品を購入してもらう余地がある、つまり伸びしろが71%もあるということになります。
アプリをグロースさせるには、ここをどうやって伸ばしたら良いのかをデータドリブンで議論することが重要です。
DX推進によりアプリ使用ユーザーのパフォーマンスによる分析や、データを基にしたユーザー行動分析による顧客行動を理解し、そこからビジネス課題を発見しました。
改善に向けた具体策
よくあるケースとして、ここまではしっかりとデータを見てきてデータドリブンで分析していたのに、このタイミングで急に「こういうキャンペーンがいいんじゃないでしょうか」とか、「こういうクーポンがいいんじゃないでしょうか」とか、「こういうアプリにアップデートした方がいいんじゃないでしょうか」とか、急にアイデアベースになってしまって、勘と経験からの施策を羅列してやってみるというアナログな手法に戻ってしまうパターンです。
これではデータドリブンではなくなってしまいます。
ここの残りの71%のユーザー『アクティブなのに購入していないユーザー』に対して、何を、どうデータドリブンで推進するべきなのか、解説します。
ユーザー行動分析により、統計的な改善示唆を求める
購入してもらうためには、まずリテンションを上げることが重要です。リテンションとは「既存顧客の維持」つまり一度アプリを使ってもらった人にまた使ってもらい、さらにその人に使い続けてもらうことで購買を促すという考え方です。
詳しくは「リテンション率とは?リテンションの意味と必要性、計算式を徹底解説」の記事で解説していますので、ご覧ください。
ここで重要なのは、勘や経験でその答えを導き出すのではなく、あくまでもユーザーが行動したデータから導き出すことです。
それではユーザー行動データによるリテンション分析を行い、統計的な改善示唆を導いていきます。
リテンション(継続)分析|現状把握
リテンション(継続)率というのは、言い換えればアプリの定着率とも言えます。
上図ではDAU(Daily Active User)のグラフを青い線で示していますが、左側のDay0(初日)はユーザーがアプリを入れてくれた日になりますので、当然アクティブ率100%です。
Day1, Day2, …… 日を追うごとに、アクティブ率は右肩下がりになりまして、大体アプリの場合Day30(30日後)にはアクティブ率20%前後ぐらいになります。
これだけを見ても、なかなか導き出せる示唆は少ないので更に色々な角度からユーザー行動を分解して、深掘り分析を行います。
リテンション(継続)分析|ユーザー行動軸(イベント)
つぎに、ユーザーがアプリ起動後に「何をしたのか」というユーザー行動軸(イベント)をみていきます。
今回は次の3種類のイベントが搭載されているアプリと仮定してください。
イベント1・商品履歴を閲覧
イベント2・ルーレット機能
イベント3・お気に入り登録
イベント1・商品履歴を閲覧
全ユーザーの中から、商品履歴を閲覧したユーザーのリテンション(継続)率を見てみます。
黄緑の線で示していますが、Day1, Day2 のアクティブ率が青い線よりも高いことが分かります。Day30でも、24%くらいをキープしています。
これにより、全ユーザーの中で『商品履歴を閲覧したユーザー』のリテンション(継続)率が高くなる事がデータで証明されました。
イベント2・ルーレット機能
ユーザーの行動分析を続けます。
今度は全ユーザーの中から、ルーレット機能を利用したユーザーのリテンション(継続)率を見てみます。
ルーレット機能とは、ルーレットをやってポイントが貰えるというゲーム機能です。
オレンジの線で示していますが、Day1, Day2 のアクティブ率が青い線・黄緑の線よりも高いことが分かります。更にDay30でも、26%くらいをキープしています。
イベント3・お気に入り登録
さらに、全ユーザーの中から、お気に入り登録を利用したユーザーのリテンション(継続)率を見てみます。
緑の線で示していますが、Day1が75%, Day2が74%とずば抜けて高いことが分かります。更にDay30でも、70%くらいをキープしています。
ここまでイベント毎のデータを見てきて、お気に入り登録がユーザーのリテンション(継続)率向上に繋がりそうだという事が分かりました。
ここまで順調にユーザー行動データを基にした分析を進めてきましたが、さらに分析を深めるために今度は購買データも使ってクロス分析を行います。
リテンション(継続)分析|購買データとのクロス分析
こちらが商品購買のデータを基に、「お気に入り登録」を何回した人が商品を購入したのかまとめたグラフです。
商品購入ユーザーの中で、お気に入り登録を2回した人は51.2%、1回だと26.5%、3回以上だと69.5%となっており、『まだお気に入り登録をしていない人には3回してもらえれば商品を購入してもらえる可能性が高くなりそう』だという裏付けが取れました。
この分析結果から得られた示唆として、まずやるべきはお気に入り登録をしっかり訴求するという事です。
また、このアプリでは、「お気に入り登録を3回以上してもらうこと」がマジックナンバーと言えます。
マジックナンバー分析|お気に入り登録を3回以上してもらう
リテンション分析によりデータドリブンにマジックナンバーを導き出すことができました。
マジックナンバーとは、「ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字」のことで、有名な例をあげると、Facebookでは「10日間で7人と友達になる」、Slackでは「チーム内で2,000通メッセージを送信する」などの数字です。
マジックナンバーについて詳しくは、こちらの「グロースのカギとなる魔法の数字 マジックナンバー分析とは」の記事をご覧ください。
あとはこのマジックナンバーを、1人でも多くのユーザーに実行してもらうための施策を考え実行します。
例えば『商品未購入でまだお気に入り登録をしていないユーザー』をセグメント(ユーザーグループ)で分け、アプリプッシュでお気に入り登録を促したり、お気に入り登録ボタンを分かりやすくUI改善をしたり、チュートリアル画面で丁寧に説明したりと様々な施策が考えられるでしょう。
この様にして、データドリブンで導き出した示唆による、データドリブンな施策実行が今求められています。
マジックナンバー分析による施策実行でROI152%達成した事例
NTTドコモ dゲームでは、ユーザーの行動分析を行いマジックナンバーを導き出しました。データドリブンな施策実行でROIを152%達成。マジックナンバーを達成したユーザーの課金額は2か月目に6倍近くの大幅増加となったといいます。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
マジックナンバーを導き出すには
一般的に、アプリをはじめプロダクトやサービスのマジックナンバーを導き出すには、データの専門家が必要とされています。
プロダクトマネージャーやマーケティングマネージャーが次の施策を打つためマジックナンバーが必要な時、多くの企業ではデータ管理部門のデータサイエンティストやプログラマーへ依頼を出し、抽出条件指定の打ち合わせを数回行い、要件がまとまるとその膨大なデータから様々な抽出条件を組み合わせてSQLを書き実装、数週間、場合によっては数ヶ月かけてこのマジックナンバーを導き出します。
このVUCA(ブーカ)の時代に、数週間、数ヶ月かけてマジックナンバーを抽出していては、施策タイミングが遅すぎるという事態になりかねません。
そこで登場したのが、AIによるユーザー行動を分析をするためのツールAmplitude(アンプリチュード)です。
データをためて・整えて、あとはこのAmplitudeを導入することで、これまでは専門家が数週間、数ヶ月かかっていた分析を、誰でも簡単な操作で行え瞬時に結果を導き出します。プロダクトマネージャーやマーケティングマネージャーはもちろん、UIUXデザイナーでも思い立ったその時に即座に分析し、施策アイデアへ反映することが可能になります。
Amplitude社について
Amplitude社は昨年(2021年)Nasdaqに上場した米国企業であり、ユーザー行動分析をスタンダード化する世界No1のプロダクトアナリティクスツールを提供しています。
グローバルでは45,000サービス以上、国内でも1,000サービス以上の導入実績があります。
詳しくは、こちらのページでまとめていますのでご覧ください。
今回はアプリをデータドリブンで分析する方法や、データドリブンでマジックナンバーを導き出す方法をご紹介しました。
アプリを開発したもののダウンロード数に伸び悩み、どう改善したら良いか分からない方はぜひ上記のグロースマーケティングの手法を参考にしてみてください。
せっかくためたデータがあるのについアイデアベースで施策実行を試してしまっている方、データを有効に効率良く活用するために、最新鋭のマーテックツールを導入することを検討してみてはいかがでしょうか。
また他にも、ライフスタイルストア PLAZA様の「OMO アプリユーザーの来店促進事例」もございますのでぜひご覧ください。