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グロースマーケティングのプロも唸る!アサヒの社内DX推進【DXニュース】vol.7

2021.11.15

今回取り上げるニュースは、アサヒ“ビアリー”ヒットの裏にDX組織。それでは、はじめましょう!

グループ全体のDX専門部署「VC室」を創設したアサヒの戦略

三石所長(当時。以下、三石) さぁ、はじまりました、「DXニュース」第7回です!ニュースプレゼンターは、前回に引き続き、リテールテックを10年以上見続けてきたCEOの河野さんです!

河野恭久さん(以下、河野) よろしくお願いします!

三石 それでは早速、今月の注目ニュースをお願いします!

河野 はい! 今月も、DearOneがクライアントなどに定期的に送っているメルマガ内のニュースで、2021年10月に最もクリックされたトップ5のニュースの中から、僕が厳選した「3本のニュース」をご紹介します。

HeedLine

アサヒ「ビアリー」ヒットの裏にDX組織

②アメリカ・シアトル 無人コンビニ「Amazon Go」の今。レジ決済不要の利便性と課題

③ローソンが今、進めている「DXの全貌」

河野 まずは1本目の”アサヒ「ビアリー」ヒットの裏にDX組織”からいきましょう。僕はお酒を飲めないから知らなかったのですが、三石さんは、ビアリー をご存じでしたか?

三石 よく飲んでいますよ! クラフトビール好きの僕からしてもビアリーの「薫るクラフト」はおいしいですね。これはアルコール度数0.5%だから、河野さんも飲めると思いますよ。

河野 えー、今度飲んでみますね! さて、今回も僕の視点から注目ポイントをまとめてみたので、まずはそちらをご覧ください。

アサヒ・ビアリーニュース要点まとめ

河野 「FaaS(フード・アズ・ア・サービス)」という言葉が出てきました。アサヒグループホールディングスさん(以下、アサヒ)は、情報基盤の連携と人材育成を進め、飲食を核に新たな価値を創造する企業を目指すFaaS企業を目指していますと。

三石 来ましたねー、みんな「●aaS」というワードをつけてきていますよね。

河野 本当ですね。酒税法ではアルコール1%以上は「酒類」、それ以外は「清涼飲料水」になるのですが、アサヒは0%を上回り1%を下回るカテゴリーを「微アルコール(微アル)」と名付けました。さらに、体質や状況に応じて顧客が飲み方の選択肢を多様にできることを「スマートドリンキング(スマドリ)」と呼んでいます。

三石 「微アル」と「スマドリ」……、キャッチーなネーミングですね。

河野 このネーミングがSNSでバズって、売上を従来の約320億円から2021年には約400億円に上げようと意気込んでいます。そして、このマーケティングを支えたのが、アサヒが20年4月に新設したValue Creation(バリュークリエーション、VC)室です。

三石 VC室とは、具体的にどのような業務を行っている部署なのでしょうか?

河野 アサヒのVC室は、グループ全体のDXを推進する専用の部署です。我々も、DearOneが提唱する最先端のマーケティング手法「Growth Marketing(グロースマーケティング)」のなかで、「専用のチームをつくったほうがいい」とお話をする機会が多いですよね。まさにそれを実行されているわけです。

三石 僕らが日々推進していることを、アサヒが実行しているというわけですね。これは興味深い。

河野 そのVC室が注力する分野の1つがビジネスアナリティクスであり、事業会社の個別プロジェクトにおいて顧客を深く理解することです。これも我々DearOneが得意とするところですね。

(編集部注:ビジネスアナリティクスとは、分析されたデータをもとに未来を予測し、次にどのような行動を取るべきかを決めることを目指す仕組みです。分析されたデータをもとに経営の意思決定を迅速化しようとする「ビジネスインテリジェンス」を、さらに進化させたような考え方ともいえます)

三石 これはいい事例ですね(笑)。

河野 さらに、ROIを見極めて、経営資源を配分する、という話です。データを基にPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回す仕組みづくりを支援する――つまり、僕らが他社に提供しているような、グロースマーケティングによって得られるデータの価値を社内にもたらしたという形ですね。VC室が専属でビジネスアナリティクスをしつつ、PDCAを回すサイクルをアサヒグループの各セクションやグループ会社に提供したと。素晴らしい活動だと思います。

部署に伴走、明確なKPIの設定、データの民主化――まさに「グロースマーケティング」

グロースマーケティング

河野 さらに詳しく紹介しますと、必要に応じて社内プロジェクトの開始段階でVC室が伴走します。以前は個々のプロジェクトで課題に対して施策を考える際、どのKPI(重要業績評価指標)をモニタリングするかといった事前の設計がなおざりにされがちでした。そこを、今後は事前にKPIを設定して、重視していくと。

三石 これはまさにグロースマーケティングの3要素を実践していますね!
“知る”(実データで顧客理解を深める「行動分析」)
“打つ”(素早く繰り返し手を打つ「アジャイル」)
“企てる”(的確な目標・指標設計を決める「ノーススター」)
この3つの重要性を毎日あちこちでプレゼンさせていただいていますが、この記事の事前にKPIを設定するところは「的確な目標・指標設計を決めるノーススター(メトリック)」そのものです!素晴らしい。

グロースマーケティング3要素

河野 そうなんですよ! そこにいち早く気づかれて実践されているんです。さらに、VC室では同社の顧客CRM「グループ顧客データ分析基盤」をつくり、「微アル」や「スマドリ」といった概念や取り組みを浸透させるべく、SNSを監視・分析していきました。VC室がデータを活用したコンサルタントのように事業部門と伴走することが、ビアリーのヒットを裏で支えたというわけですね。

三石 元の記事では、アサヒがデータをどのように収集・蓄積・加工・分析しているのかがわかりやすく図解化されています。これも、僕らDearOneが提唱している「データ活用の4Step」と全く同じですね。図も似ています。

データ活用の4Step

河野 そうなんですよ! 「伴走」して、専属でデータを見たり、ビジネスを考えたりする組織をつくり、それを実際に運営するプロジェクトチーム、すなわち各部署やグループ会社を支えた仕組みです。アサヒは自社でそれを構築したわけですが、これは並大抵なことではありません。僕らが国内事業会社にグロースマーケティングを提唱する価値はあるなと、改めて感じました。

三石 僕らが提唱していることの説得力が、アサヒの実践によって、より説得力を増しますね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

アサヒが実践しているDX戦略は、「グロースマーケティングの3要素」「データ活用の4Step」にのっとっている。そしてDX部門が事業部門に伴走することが、商品ヒットにつながったと考えられる。

河野 さらに記事の続きを紹介しますね。システムをつくったとしても、オンラインのデータがなければ分析はできませんよね。アサヒはメーカーなので流通は他社に任せており、自社でデータはあまりお持ちではありませんでした。ですが分析のために必要になったため、自社のWebサービスやSNSなどから収集可能なデータを一所懸命集めたり、流通からデータを購入したりして集めた、というところもポイントです。

三石 なるほど。

河野 この記事にも、グロースマーケティングの3大要素の1つである「行動分析」に関わる言葉も出てきます。顧客の店舗での行動履歴などのリアルな情報を集め、データ仮想化技術を使って仮想的に統合したと。アサヒはVC室を立ち上げて実行しましたが、事業会社間の壁は厚く、事業会社を跨いだデータ活用やノウハウの共有が難しい、という課題がありますよね。

三石 それもグロースマーケティングで提唱している「データの民主化」の話に通じるところですね。

(編集部注:データの民主化とは、一企業において社員全員がデータにアクセスでき、データを有効に活用できる環境を構築することを指しています。詳しくは こちらの記事 をチェックしてみてください!)

河野 その通りです。実際、アサヒではデータの民主化ができていなかったから、活用とノウハウの共有が難しかったそうです。そこで、アサヒはそこも自社でやっちゃおうと、データを読み解き、事業に活用できる人材の育成にも注力するそうです。

三石 そこも自社内で育てていくんですね。

河野 はい、既に「VC室人材育成プログラム」が開始されていて、記事にある図のように、新しい価値を創造するDX人材の要件を4分類に分けて定義しています。

ビジネス企画

マネジメント

クリエーティブ

R&D

このうち、新たな発想でアイデアを創出して、新事業を計画する社内起業家のような「クリエーティブ人材」と、テクノロジーやデータを活用してアイデアを具現化する「ビジネス企画人材」を特に強化するそうです。

三石 緻密にDXをやられていますね。

河野 さらに、最後の4カ月間は80~90人に選抜し、人工知能(AI)を活用したデータドリブンなビジネスプロセスへの応用スキルを持つ「AIビジネスプランナー」を育成すると。要するに自社の社員たちをAIビジネスプランナーとして育成しちゃおうというわけですね。

三石 そこまでも。凄いですね。

河野 まとめに入りますが、「アサヒグループホールディングスのDXが目指すのは、特定の人が特定業務でテクノロジーやデータを使いこなすのではなく、社員の誰もが自分の業務でデジタル活用して事業を変えること」とVC室はこの記事でコメントしています。まさにデータの民主化だし、働き方そのものがDXされていると感じました。

“流通頼り”だったメーカーが、自社でデータ分析を開始している

データ分析

三石 FaaSの考え、面白いですね。D2Cが発展する流れの中で、メーカーがユーザーと接触チャネルをつくる動きが出はじめているんですね。今までメーカーはずっと流通頼りで販売していて、自社ではPOS分析ぐらいしかデータ分析をやってこなかったけれど、ようやくエンドユーザーの領域に踏み込んできたということですよね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

データ分析は流通会社に頼りきっていたメーカーが、自社でエンドユーザーのデータを取り、分析をする流れがはじまっている。

河野 本当にそうで、僕もそれを感じました。やっと、メーカーがそういうデータを集めはじめたと。

三石 あとは、データ領域は資生堂のようにアクセンチュアと一緒に外部の力を使って共同会社を設立する方向にいくのか、アサヒのように自社でデジタル人材まで育てる方向と、両方織り交ぜてやっていくやり方と、企業によって異なりますね。

河野 それが今月のニュースのポイントで、じつは3番目に紹介する“ローソンが今、進めている「DXの全貌」”は、外部パートナーと組む話なんです。ただ実際は、アサヒのように自社で全てをやるのはかなり大変だと思いますね。

三石 そうですよね。

河野 それにしても「VC室人材育成プログラム」の4類型は感動しましたね。

三石 経営層でこれをちゃんと判断して、ファンクションつくって、権限を渡して実行されているんですもんね。

河野 そこまでやったのが凄いと思いました。僕らがアメリカに行ったときにイベントで「サイロ(孤立していて連携されていない)になっているから別でつくったほうがいい」「幹部自らがその組織に関与したほうがいい」という話をたくさん聞きましたよね。その動きがついに日本企業でも出はじめていて。

三石 確かに。こういう育成プログラムをやっていくときに、今はマーケティングがPowerPointをつくることと同様に、ビジネスマン全員が当たり前に身に着けるビジネススキルの1つになっているから、マーケターが出てこなくなっているんですよね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

デジタルマーケティングはビジネスマン全員にとって「PowerPointが使える」ことと同様、当たり前に身に着けておくべきスキルになりつつある

河野 そうか、マーケターは職種ではなく、今やスキルなわけですね。この記事ではマーケティングのところはデータ活用の観点ですけど、マスマーケティングからパーソナリゼーションに流れていて、グループ横断で顧客データを分析すると。あと、顧客がいつ何を買ったか、どんな告知に反応したか、顧客データをマーケティングやブランディングに活用していくと。これはまさに普段、DearOneが日々提唱していることですね。

三石 改めて、このアサヒさんのDX戦略はいい事例ですね。

河野 僕らにとっては追い風ですよね。他の企業でも、このようにあってほしいです。

―――次回の【DXニュース】では、「アメリカ・シアトル 無人コンビニ“Amazon Go”の今。レジ決済不要の利便性と課題」について、河野さんが解説していきます。ぜひお楽しみに!

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