この記事は、2023年3月8日に開催した「アプリグロースのためのユーザーインタビュー活用セミナー ユーザーインサイトの見つけ方」のウェビナーレポートです。
アプリグロースのためのユーザーインタビューはどう進める?
DearOne 安田|
本日のウェビナーは、アプリをグロースさせるためのユーザーインタビュー活用方法についてお話ししていきます。実際のユーザーインタビュー動画を見ながら進める形で、ユーザーインタビューをしてみたいけれどどう進めればいいか分からない方や、自社サービスの改善策にお悩みの方に有益な情報をお届けしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
講演の前に簡単に自己紹介と会社説明をいたします。私、司会を務めます株式会社DearOneの安田と申します。マーケティング、インサイドセールス、パートナーアライアンス等のマネージャーを担当しております。
株式会社DearOneはNTTドコモのグループ会社で、主にデジタルマーケティングのご支援をしています。特に1st Party Dataを用いたご支援ということで、オウンドメディア・アプリ・ECサイトなどをつくる/知る/育てるという各フェーズにおいて、「ツール」と「人的なご支援」の2軸でビジネスグロースをサポートしている企業です。
本日は、以下のテーマに沿って進めていきます。
・ユーザーインタビューとは
・DearOneの提供する「ユーザーインタビュー for OMO / EC」
・ユーザーインタビューライブ
(1)ドラッグストアアプリ
(2)アパレルEC
(3)動画サブスクアプリ
「ユーザーインタビュー」とは何か?
安田|
まず、「ユーザーインタビュー」とはまさに読んで字のごとく、サービスやプロダクトを利用しているユーザーにインタビューを行い、そこで生の声を聞いてくること。そしてその結果に基づき、プロダクトや施策の改善を行っていくことです。
ユーザーインタビューのメリットは、まずデータでは読み取れないユーザーの声が聞ける点、そしてユーザーが日頃伝えにくい改善の要望が聞ける点です。それらを踏まえることで、ユーザーの解像度が上がるため、企業からするとユーザーをより理解することができる施策になります。
ユーザーインタビューの実施方法にはいくつかの種類があります。デプスインタビュー(1対1)もしくはグループで行う方法と、それぞれを対面やオンラインで行うケースがあります。
実際のインタビューの流れとしては、企画から募集・質問設計などを踏まえて、完了まで大体3ヶ月ほどになります。
アプリ・ECの改善案や施策提案まで伴走!「ユーザーインタビュー for OMO / EC」を紹介
安田|
こうしたインタビューを私たち株式会社DearOneでご支援するサービスが「ユーザーインタビュー for OMO / EC」です。
これはユーザーインタビューをクライアント様に代わって行うサービスで、特徴としては「OMO / EC」という名前が示すとおり、我々が得意とするOMOアプリやECサイトの改善に特化したユーザーインタビューサービスになります。
特長をいくつか紹介すると、まず「インタビューを行うだけではなく、アプリ・ECの改善案・施策を導くところまで伴走」できることです。私たちは、150以上のクライアント様のアプリ開発およびグロース支援のほか、ECサイトに関しても多くの支援実績がございます。
これらを踏まえ、インタビューをして終わりではなく、インタビュー結果をどう活かしていくかまで、実際に手を動かしながら伴走できるのが1つ目の特徴です。
2つ目は、「インタビューによる定性的な情報・仮説を、定量データを元に検証」できることです。私たちは行動分析ツールであるAmplitudeというソリューションを扱っており、Webやアプリユーザーの定量的な行動分析を得意としています。
定性的な情報と併せて定量分析もご提供できるため、例えばユーザーインタビューの結果を定量的な分析で検証したり、逆に定量分析を行い「ここはもう少し、ユーザーインサイトを深掘りしたい」という部分が出てきた場合に、定性的な仮説とクロスして使うことでユーザーの解像度を上げていくといった支援が可能です。
そして最後に、「自社でインタビューを内製化できるようなナレッジの共有」ができることです。私たちはインタビューだけを専門としている会社ではありませんので、基本的には弊社がご支援させていただいた後、クライアント様がインタビューを内製化できるよう、さまざまなナレッジの共有をさせていただいております。
実際に私どものユーザーインタビューサービスをご利用いただいたお客様の声の一例では、「定量データ分析だけではわからないユーザーの声が聞けた」、「想像していたユーザーの行動理由とは異なる理由が発見できた」、「いくつか進めていた企画の中で、一番優先度が高い企画がわかった」といったお声をいただいております。もしユーザーインタビューをやってみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひ私たちのサービスについてお問い合わせいただければと思います。
ユーザーインタビューライブ:ドラッグストアアプリ
進行役DearOneメンバーを紹介!
安田|
ここからは皆さんと実際のユーザーインタビューの様子を見ながら、どのようにアプリ・ECのグロースに活かしていけばいいかを考えていきたいと思います。私と一緒に進行を務める弊社のメンバーから自己紹介させていただきます。
DearOne 小嶋|
DearOneの小嶋と申します。私は2012年から10年近く、アプリの立ち上げやグロースハックに携わってきました。現在はマーケティングオートメーション(MA)ツールでのシナリオ設計、アプリのUI/UX改善のほか、定量的なデータ分析に基づき施策を考えるような業務を担当しています。
日々の業務において、ユーザーインタビューに助けられておりますので、今日は施策検討を行う立場でのユーザーインタビューの良さだったり、実際の活用法をお伝えできればと思います。
安田|
ちなみに、小嶋さんは自称「日本一アプリをインストールしている男」です。
DearOne 山崎|
DearOneの山崎と申します。私は旅行会社や市場調査会社を経験した後DearOneに入社し、現在はアカウントエグゼクティブユニットというアプリの開発に関係する部署で営業を担当し、幅広いジャンルのアプリ開発に携わっております。また、調査会社にいた経験を活かして、今回の商品開発に携わったりもしております。
安田|
前職でもこの分野に携っていたということで、今日はその知見がいかんなく発揮されると期待しています。
ここからは私たち3人のメンバーによるパネルディスカッション形式で進めていきます。
小嶋|
私たちが行っている定量的な分析での示唆出しや、それをアプリの改善にどう活かしているかなどをお伝えできたらいいですね。
安田|
はい、そうした私たちの強みを盛り込んで進めていけたらと思います。それでは早速、最初のユーザーインタビューに入っていきたいと思います。最初はドラッグストアアプリのユーザーインタビューです。
実際は約1時間のインタビューを行うのですが、今回はウェビナーに合わせて5分くらいの短縮版を見ていただこうと思っております。
「ドラッグストアアプリ」ユーザーインタビュー概要
安田|
まず最初に、インタビューの目的から説明します。今回、インタビューの主催者はドラッグストアの運営企業。対象者はドラッグストアのアプリを使っている方になります。インタビューの目的は、アプリの利用方法を把握することと、クーポンやプッシュ通知の改善です。
そのため質問の内容としては、「現在利用しているドラッグストアはどこですか?」という質問から、アプリのダウンロードに関連した話。それから「クーポンやプッシュ通知をどんな風に使われていますか?」といった点を聞いていく流れで進めていきます。
「ドラッグストアアプリ」ユーザーインタビューライブ
インタビュアー|
「ドラッグストアのアプリに関するユーザーインタビューということで、まずは普段、どのドラッグストアのお店によく行かれますか?」
インタビュイー|
「一番よく行くのは、家から近いココカラファインです。引っ越す前はくすりの福太郎が一番家から近く、そこは今でも習い事のヨガに行くときに使っています。また、最寄り駅の前にあるトモズ、以上三つのアプリを使っています。」
インタビュアー|
「ありがとうございます。今、三つのドラッグストアが挙げられましたが、使い分けはありますか?」
インタビュイー|
「あります。最寄り駅にあって必ずクーポンが出ているココカラファインが一番安く買えるので、基本的にはそこで買っています。アプリを見ていて、時々割引率の高いクーポンや、自分が使っている商品に対するクーポンが出ていると別のドラッグストアに行くこともあります。それからトモズは、駅前にあったり遅くまで開いている利便性があるので、何か『困った』、『足りない』というときはそこに行っています。」
インタビュアー|
「ちなみに、最初にアプリを入れたドラッグストアはどちらですか?」
インタビュイー|
「最初はくすりの福太郎です。」
インタビュアー|
「以前のお住まいに近かったからダウンロードしたということでしょうか?」
インタビュイー|
「そうですね。」
インタビュアー|
「ダウンロードしようと思ったきっかけは何ですか?」
インタビュイー|
「経緯としては、元々カード型の会員証を持っていてよく利用していたところ、『会員証がアプリになりました』という案内を見たのがきっかけです。よく行くお店でもあり、アプリならではのクーポンも配信されていて、アプリユーザーになりました。元は、500ポイント貯まると500円のクーポンになるというタイプだったのですが、それがアプリでは1ポイント1円からすぐ買い物に使えるということだったので、それもアプリのダウンロードを後押しした一つだったと思います。」
インタビュアー|
「なるほど。どれくらいの頻度で行くドラッグストアなら、アプリを入れてもいいと思われますか?」
インタビュイー|
「定期的に行く可能性があるところであれば、入れてもいいと思います。」
インタビュアー|
「先ほどのお話だと、ココカラファインの方がトモズよりも多く行くということでした。トモズにはどれくらいの頻度で行かれますか?」
インタビュイー|
「2ヶ月に1回くらいですかね。」
インタビュアー|
「クーポンが出ているかどうかはよくチェックされますか?」
インタビュイー|
「週1くらいで買い物に行くので、そのタイミングで見ている感じですね。事前に確認することはあまりないですが、お正月などを挟むと、大体どのアプリも電子クーポンを出すので、『どこが一番お得だな』とチェックしています。」
インタビュアー|
「それでは、何かプッシュ通知みたいなお知らせが来るときに気づくのではなく、自分でアプリを起動して『何か安いものはないかな?』と見ておられるのですか?」
インタビュイー|
「私はお知らせがたくさん来ると少し『嫌だな』と感じてしまうので、プッシュ通知は基本的に全部切っています。ですから、自分が買い物に行く前のタイミングで確認しています。」
インタビュアー|
「ドラッグストアに行くのは、ご自宅からと職場からとどちらが多いですか?」
インタビュイー|
「基本的に自宅から買い物に行くことが多いです。」
インタビュアー|
「では、『そろそろ日用雑貨を買いに行かなきゃ』と思ったときに、ご自宅で先にアプリを見て、どのお店に行くかを選ぶということでしょうか?」
インタビュイー|
「そうですね。ココカラファインからクーポンが出ているので、大抵はそちらに行くのですが、万一出ていなかった場合に備えて事前に確認しておくことが多いです。」
インタビュアー|
「ご自宅で確認してから、『やっぱりココカラファインだ』とか『今日はトモズにしよう』と決めるということですね。」
インタビュイー|
「はい、そうです。」
「ドラッグストアアプリ」ユーザーインタビュー振り返り
安田|
では、今のインタビューを簡単に振り返ってみたいと思います。ドラッグストアの使い分けに関してはココカラファイン、トモズ、くすりの福太郎ということでした。
まず、メインで使っているのは最寄駅にあるココカラファインで、クーポンがあるのも魅力。トモズも駅前にあって自宅から一番近い。くすりの福太郎は習い事へ行くときに使うということでした。
アプリをダウンロードしたきっかけは、くすりの福太郎が最初で、カード型の会員証からアプリに移行し、ポイントが1ポイントから使えるようになったことがきっかけの一つでした。
アプリをダウンロードする基準は2ヶ月に一回以上行くかどうかで、定期的に行くお店なら基本的に入れておくということでした。クーポンの利用方法については、買い物に行く直前に自宅でクーポンを確認する。またメインのココカラファインに関しては、クーポンがあるかどうかをアプリを起動してチェックしているというお話でした。
最後にプッシュ通知に対する反応としては、基本的にすべて切っているという内容のインタビューでした。まずは全体的に聞いてみての感想はいかがでしたか?
小嶋|
インタビュイーの方は、とてもよく言語化ができている方でしたね。ユーザーインタビューでここまで考えがはっきりされている方はなかなか少ないので、すごくたくさんのことを聞けていると思いました。
ただ、今回は録画されたものを見たわけですが、リアルタイムですともっと臨場感がありますよね。もし追加で聞きたい内容があればその場で聞くことができるので、本来はさらにいろいろなことを聞けるのだろうと思って聞いておりました。
安田|
ありがとうございます。山崎さんはどうでしたか。
山崎|
私自身、ドラッグストアアプリを使い分けしているタイプなので、とても共感しながら聞いていました。また、一般にドラッグストアアプリというと女性が使っている比率が高そうだと思うのですが、『仮にこれが男性でも使い分けとかあるのだろうか?』などといろいろ気になるところがあるという印象を受けました。
安田|
日用品のお店のアプリなので、やはり『自分と比べてどうだろう?』という観点は結構ありますよね。ちなみに山崎さんはアプリをいくつ使っているのですか?
山崎|
私は4個か5個入っていますね。職業柄、特にリニューアルなどがあるとワクワクします。
安田|
いいですね。小嶋さんもたくさん入れているのではないですか?
小嶋|
私は日本にある全てのドラッグストアのアプリを入れています。九州などのお店にはなかなか行けないですが…
安田|
さすが自称「日本一アプリをインストールしている男」ですね!
今回のインタビューは、元々アプリのプッシュ通知で送るクーポンの改善などがメイントピックでした。これについてインタビューを踏まえ、どんな改善ができるかを皆さんとお話ししていければと思います。
改めて振り返ると、自宅から出かける前にクーポンを確認し、ココカラファインかトモズに行くというお話でした。このとき、ココカラファインの立場からすると、どのようなクーポンの改善が考えられるでしょうか。
山崎|
直接クーポン自体の改善につながるかはともかく、元々プッシュ通知を切ってしまっているという話がインタビュー中にありました。かつ、クーポン利用のみのアプリは特別な興味でもない限り、アプリの中をそれほど詳しく見ないと思います。
ですから、アプリを立ち上げたときに「クーポンが配信されました」と伝えるメッセージ的な機能や、あるいはクーポンをトップ画面に表示するなどの工夫でアピールした方がいいのではないかと思いました。
安田|
はい。私たちもアプリを開発している事業者なので、プッシュ通知を切っていますと言われてしまうと辛いものがあります。
山崎|
よくあることですが、そうですね。
安田|
そうした中、どうやってアプリのクーポンやコンテンツを見てもらうかの工夫が重要ということでしょうか。
山崎|
はい。ちなみに、たくさんアプリをダウンロードしている小嶋さんはプッシュ通知はどうしているのですか?
小嶋|
全部ONにしてはいるのですが、流石に仕事に支障が出てきたので、最近は振動のないサイレントモードにしています。
MAのシナリオを考えたりする立場としても、プッシュ通知をオフにされてしまうことが一番厳しいので、やはりオンボーディングのアプリ起動時に「あなたにとってこういうメリットがあるから、プッシュ通知をオンにしてください」というコミュニケーションを挟むことが重要です。
またアプリの改修目線からは、一度オフにされた方にも「再度オンにしてください」、「オンにした人だけにクーポンが届きます」といったIn App メッセージを送るなどの仕掛けを設けることが必要だと思いました。
安田|
どうにか「プッシュ通知をオンにしてもらえればこんなメリットがある」と、ユーザーにとって無駄なメッセージでなく、本当に必要なメッセージを届けるという意味で工夫を行うことが重要ですね。
一方で、トモズの立場だとどのような改善が考えられますか?
小嶋|
実は私もたまにトモズを使うのですが、毎週水曜に15%引きクーポンが出ていたり、とてもクーポンが充実しています。仮に私がトモズの担当としてインタビューを行っていたら「せっかくのクーポンが届いていないな」と感じるだろうと思いました。
ですから打ち手としては、例えばトップのバナーで出ているクーポンだけでなく、「毎週水曜日にクーポンを届けています」、「雨の日はトモズアプリを開こう」といったメッセージをバナーなどで訴求し、トモズからクーポンが出ていることをユーザーにしっかり認知してもらうことが重要だと思いました。
安田|
アプリのメリットをよりわかりやすく伝えるということでしょうか。
小嶋|
トップにクーポンを出すだけでなく、ほかに不定期で出るクーポンもあると思うので、ユーザーに対して「このアプリはこんな利便性を提供します」ということをユーザーにしっかり伝えることの方が、実は単純にクーポンを出したりキャンペーンを打つよりも重要になる場合があるのではないかと考えます。
山崎|
トモズは私の自宅の最寄駅の近くにもあって、店舗の横を通ると「今日はクーポン配信中!」などのフライヤーがたくさん貼ってあります。
アプリから話がそれてしまいますが、店舗から直接利便性を伝え、アプリが使われるような循環を生み出していくことも重要なのではないかと思います。
安田|
アプリはスマートフォンの中にある販促ツールなので、ユーザーがいつも持ち歩いていることが一番の特徴です。そういう意味ではご指摘の通り、アプリだけで完結したデジタルでの接点だけを作るのではなく、店舗でのリアルな接点とアプリでのデジタルな接点との両方を組み合わせて、最終的にはユーザーをどうやって店舗に送客するかを考えていくことが重要なのだろうと、お話を聞いていて思いました。
小嶋|
N1分析などで実際のアプリの使い方を見てみると、インタビューで聞いた内容と実際の使い方は異なっているケースもあります。ですから、インタビュー内容もしっかり受け止めながら、あわせて実際の使い方を見てみるとすごく深い示唆が出てくるのではないかと思います。
山崎|
もしデータ分析をしているのが、元々ココカラファインファインだけとかトモズだけだったりすると、アプリの使い分けをしているという事実をそこから得ることはできないので、データ分析だけでは分からない新たな発見がある点はインタビュー調査の面白いところだと思います。
安田|
KPIがうまく進捗しなかったり成果が出ないとき、自分達のアプリやECなどプロダクトの中で「どこが悪いのだろう?」と考えてしまうことが多いと思いますが、こういうインタビューを聞くと、意外と外に要因があったりするということがよくわかります。
ユーザーインタビューライブ:アパレルEC
「アパレルEC」ユーザーインタビュー概要
安田|
では、次のユーザーインタビューに行きたいと思います。次はアパレルECのユーザーインタビューです。こちらもまずインタビューの目的から説明します。今回は、アパレルECを運営している企業が主催者、アパレルECアプリの利用者が対象者です。
インタビューの目的は「アプリのメリットを把握する」、「プッシュ通知の改善」です。質問内容は、アプリの便利なポイントやプッシュ通知への反応に関することです。今回はグループインタビュー形式になっております。
「アパレルEC」ユーザーインタビューライブ
インタビュアー|
「Webよりもアプリの方が「こういうところが便利!」ということはありますか?」
インタビュイー1|
「動作が速い気がしますね。」
インタビュアー|
「アプリの方が、Webを立ち上げるよりも動作が速いということですね。」
インタビュイー1|
「画面の読み込みなども速い気がします。」
インタビュアー|
「特にどういう操作をしているときに、動作の速さが気になりますか?」
インタビュイー1|
「商品ページを開くときはWebでも結構速いですが、特にページをめくっていくときに速さの違いを感じることが多いです。」
インタビュイー2|
「アプリの方がよく触っているので、ボタンの配置などを覚えていて操作しやすいと感じます。また、ECでは過去に買った商品やお気に入りアイテムを見るために一度ログインし直さないといけないため、それが面倒臭くてアプリで見ることが多いです。」
インタビュアー|
「アプリだとログインしっぱなしですからね。」
インタビュイー2|
「そうですね。すぐ見られていいなと思います。」
インタビュアー|
「確かにログインって結構面倒臭いですよね。」
インタビュイー3|
「アプリの方は会員登録していて、お気に入りなども一画面でそのまますぐ見られるので便利ですよね。ECサイトだと下の方までスクロールして探さないといけないこともありますが、アプリだと一番見たいものが、スクロールなしで一発で出たりするので使い勝手が良いと思います。」
インタビュアー|
「スクロールするのが面倒ということでしょうか。」
インタビュイー3|
「『さっき見たのは何だっけ?』と該当ページに戻らないといけないときは面倒ですね。例えば、ZOZOTOWNではオススメの画像がたくさん出てきますが、『さっき見たブランドは何だっけ?』と思ってページに戻るとき、ECサイトだと『どこに行った?』となることも多いので、アプリの方が使い勝手が良いと思います。」
インタビュアー|
「アプリではどうしてすぐに画像が見つけられるのですか?」
インタビュイー3|
「アプリだとスマホ上に出てくる表示がもともと少なくて見やすいですし、またお気に入りに入れるとページ遷移も速いので快適ですよね。」
インタビュアー|
「お洋服を探しているときに、反応の速さが気になることが多いですか?」
インタビュイー1|
「私も探しにくいと、そのWebサイトを使わなくなることが多いですね。」
インタビュアー|
「皆さんはどんなときにお洋服を探されますか?」
インタビュイー3|
「スマホを触ることが日常化しているので、InstagramやYouTubeを見ているときに、『通知が来たから押そう』とZOZOTOWNを見るといった感じで、一連の流れの中で見ていることが多いです。」
インタビュイー1|
「確かに通知から入ることが多いですね。」
インタビュアー|
「皆さん、ECサイトのアプリに届く通知は見られますか?」
インタビュイー1|
「割と見ています。」
インタビュアー|
「プッシュ通知が来るのは嫌だという方も結構いますが、そこはあまり気にならないですか?」
インタビュイー2|
「ものによりますね。」
インタビュイー1|
「時にはオフにしたりしています。」
インタビュイー2|
「ZOZOTOWNは便利なので、ずっとオンにしています。」
インタビュアー|
「ZOZOTOWNの通知はどういったところが便利ですか?」
インタビュイー2|
「新商品や値下げなど、通知をきっかけに実際に『買おうかな』と思ったりするので有益です。やはり変な情報を送られてくるよりもいいですね。」
インタビュアー|
「逆に嫌なのはどういう通知ですか?」
インタビュイー2|
「自分に関係ない情報とかですね。」
インタビュアー|
「関係ない情報が来ますか?」
インタビュイー2|
「アプリによっては『ふーん』と読み飛ばすような不要な内容のものも結構ありますね。」
インタビュイー1|
「コラム系などが送られてきても、あまり私は開きませんし、読みません。」
インタビュイー3|
「私も興味がないです。反対にZOZOTOWNとかだと、以前に『買おう』と思ってお気に入りにしていたアイテムが『あと一点ですよ』、『値下げしましたよ』とプッシュ通知で教えてくれるため、これは自分の情報なので見る気がわきます。一方、『ポイントが付くから』と一応入れただけのアプリから大量の通知が来ても、元々それほど興味がないのでそのままオフにしたり、アプリを消したりすることもあります。」
インタビュアー|
「つまり、自分の興味のある商品が『おトクです』、『入荷しました』といった情報はいいが、そうではなく企業から押し売り・オススメしてくるのは嫌だということでしょうか?」
インタビュイー2|
「そうですね。ZOZOTOWNだとお気に入りブランドに入れたアイテムの情報しか来ないからいいのですが、全然違うブランドの情報が来ても多分見ません。」
インタビュイー1|
「確かに。ZOZOTOWNでも『新しいショップが追加されました』とかの通知は開いて見ません。」
インタビュアー|
「そうした中に、自分が今まで知らなかったが新たに興味を持つブランドが出てくるようなことはあまりないのでしょうか?」
インタビュイー2|
「そもそも通知を開かないから、興味があるかどうかもわからないかもしれません。」
インタビュー|
「なるほど。どちらかというと、自分で選んだ『これが好き』というアイテムだけが欲しいということですかね。」
インタビュイー1|
「はい。また、ZOZOTOWNではランキングが見られるのですが、私はその中で『かわいいな』と思った商品やブランドを発掘していくことが多いです。」
インタビュイー2|
「通知だけだとただの文字情報になってしまうので、自分で実際に見ないとわからないし判断がつかないです。」
「アパレルEC」ユーザーインタビュー振り返り
安田|
今回も興味深いインタビュー内容でした。また振り返りを進めていきたいと思います。まずアプリが便利なポイントに関しては、アプリの方が動作が速い、ボタンの配置を覚えていて操作しやすい。ログインせずに利用できるのが便利、見たい商品はスクロールせずに見られる点が良いという評価でした。
そして、プッシュ通知への反応に関しては、ECサイトのプッシュ通知は見る、お気に入りブランドの情報も見るし、自分が欲しい商品の在庫が「あと一点」などの連絡は良いということでした。
一方で、コラム系が送られてくるのは嫌だ、「新しいショップが追加されました」は見ない、そして、プッシュ通知から新しく自分のお気に入りが見つかることはない、といったコメントがありました。
ご覧になっての全体的な感想はいかがでしょうか?
小嶋|
プッシュ通知について、結構批判的に言われてましたね。
山崎|
先ほどのインタビューと比べるとそうですね。
安田|
さっきの人は単に「見ない」というだけでしたが。
小嶋|
日頃、シナリオを考えている立場からすると、複雑な思いがありますね。また、そういう批判的な方に限って、実際はしっかりコラムを見ていることもあるので。それにしても、アパレル系のインタビューだとZOZOTOWNは必ず出てきますね。
安田|
このインタビューではZOZOTOWNの評価がとても高かったですね。
山崎|
ZOZOTOWN以外のプッシュ通知に対する「関係ない」、「興味がない」という言い方がとてもシビアだなと思いました。
安田|
まさしく生の声ですね。施策の担当者の立場だと心にグサッと来てしまいそうです。今回はグループインタビューならではのダイナミズムは発揮されていましたでしょうか?
山崎|
そうですね。どういうときに服を探すかという話題で結構合いの手が入っていたり、またプッシュ通知の話題でインタビュアーから話を振らなくても、他の対象者から話が進んでいる場面があったと思うので、まさにグループインタビューならではのシーンだと思います。
安田|
話が勝手に広がっていくようなところがありましたね。
山崎|
対象者の方が愛情を持ったものについて話すと、話が盛り上がっていつまでも終わらず、時間が足りなくなったりすることもあるくらいですからね。
安田|
それでは今回もインタビュー内容を踏まえたアプリの改善について伺えたらと思います。テーマは「プッシュ通知」の改善ということで、インタビューに出てきた例でいえば、「お気に入り商品の情報」は良いが、コラムや新しいショップの案内などはイマイチということでしたが、ほかにどんなことが考えられるでしょうか?
小嶋|
One to Oneマーケティングが言われ始めて久しいですが、しっかりやろうと思うと労力もかかり大変です。そこをいかにシンプルかつ迅速に行っていくかが重要ですので、まずはツールを導入することなどが有効でしょう。
また、はじめから全配信ではなく、大枠でもいいのである程度切って配信するなど、できることから徐々に始めていくことが重要だと思います。
安田|
そのことが顕著でしたね。自分がお気に入り登録して欲しいものはアプリで送ってくれていいが、それ以外は一切送ってくるなといったユーザーの生の声が聞けました。事業者側からしたら、「あなたはひょっとしたらこれも好きかもしれませんよ」というレコメンドも送りたいものです。そういうものは「ノーサンキュー」という感じでしたね。
小嶋|
そのことがとてもよく表れていましたね。ポイントのためにお店で「一応入れただけ」のアプリの通知は見ないとも言っていましたから。実はダウンロード後1〜3週間のオンボーディング期間に、「このアプリはこのようなメリットがあります」というプッシュ通知を中心に設計すると、「不要アプリ」にカテゴライズされないというテクニックがあります。それだけオンボーディングは重要です。
安田|
ポイントやダウンロード特典目的だけでアプリを入れてもらっても、定着はやはり難しいですからね。
小嶋|
そういうお客さんに対して急に「新店舗オープンしました」、「キャンペーンやっています」とお知らせしても刺さりません。そうではなく、まずは「メリットがあるアプリです」ということを伝えるプッシュ通知を、オンボーディングで行うことが重要です。
山崎|
個人的には「便利」、「関係ない」、「興味がない」という言葉が気になりました。そうした言葉がどの機能のことを指しているかは人それぞれなので、そこを実際にアプリの行動データと結びつけて見てみたり、また追加で定量調査を取ったりして、どういうものが「便利」と判断、また何が「興味ない」と思われているのかを見るのも興味深いと思います。
安田|
その通りですね。
山崎|
対象者の方から「さっき見たコンテンツって何だっけ?」というとき、わざわざお気に入り登録しなくてもアプリだと探しやすくて良いという話がありましたが、そうした閲覧の記録をデータで取ってプッシュ通知などに活かすことはできるのでしょうか?
小嶋|
はい。最近多いケースでは、例えばAmazonのアプリでは、自分が閲覧した商品の履歴が全部残っていますよね。そのように、データとして残すこと自体は技術的にそれほど大変ではないので、あとはどう通知に活かすかが肝心です。
間違えてチラッと見ただけなのと、しっかり吟味している過程で見たかの違いなどもデータが貯まると見えてくるので、「この商品を何回も見ていて、購入を検討していそうだ」とキャッチできれば、それをフックにプッシュ通知でお知らせができるので、そういう施策が有効だと思います。
山崎|
なるほど。
安田|
面白いですね。商品ページの閲覧時間に閾値を設け、一定時間以上に達することが何回かあればプッシュ通知を送ることもできますね。また、いきなりお知らせだとハードルが高いのであれば、例えば「お気に入り登録しませんか?」などの送り方もできますよね。
小嶋|
そうですね。
安田|
そうすれば、「このアプリでお得な通知が届くようになります」と、よりアプリとのエンゲージを高めてもらうことができそうだと思いました。
またグループインタビューだと、若干他の人の意見に引っ張られることがあるかと思いますので、定量データで後から検証することも重要ですね。
山崎|
はい。インタビューだけで終了ではなく、異なる方法で深掘りを重ねることで「この人だけの事象ではないのだな」といった確証も得られると思いますので、そのような進め方がオススメです。
安田|
インタビューで、N1としてとても解像度の高いユーザー像は見えますが、それが市場規模として果たしてどれくらいのパイがあるかを見るという意味で、定量分析と組み合わせることが非常に有効だと思いました。
ユーザーインタビューライブ:動画サブスク
「動画サブスク」ユーザーインタビュー概要
安田|
それでは最後に3つ目の、動画サブスクリプション(サブスク)アプリについてのインタビューです。インタビューの主催者は動画サブスクの運営企業。対象者は動画サブスクアプリの利用者です。インタビューの目的は、動画サブスクの利用実態の把握とアプリの機能改善です。
そして質問内容は、サブスクの使い分け、使い始めた経緯、そしてアプリで重要視する機能といった内容で進めていきたいと思います。
「動画サブスク」ユーザーインタビューライブ
インタビュアー|
「まず、どの動画サブスクサービスを使われていますか?」
インタビュイー|
「NetflixやAmazon Prime Video、それからスポーツを見るのが好きなのでDAZNも使っています。」
インタビュアー|
「その中でアプリを使っているものはありますか?」
インタビュイー|
「どれもパソコンでも見られるものではありますが、特に移動中はNetflixはDAZNなどのアプリを使って見ています。」
インタビュアー|
「Amazon Prime Videoのアプリは使っていないですか?」
インタビュイー|
「そうですね。アプリ自体をあまり意識していなかったというか。映像を見る分にはあまりイメージがなかったので、何となく使っていないですね。」
インタビュアー|
「なるほど。基本的にはスマホで動画を見られると思いますが、アプリがないと不便といったことはないですか?」
インタビュイー|
「Amazon Prime Videoは基本的に映画を観るときに使っていて、やはり映画を観る時は時間を取ってゆっくり観たいので、パソコンで観ています。一方、NetflixやDAZNはちょっとしたスキマ時間でドラマやスポーツのハイライトなどを見たいときに、アプリを使って見るといった形で使い分けています。」
インタビュアー|
「一番最初にアプリを入れたのはDAZNでしたか?」
インタビュイー|
「まず動画目的以外でAmazon Prime会員に加入しており、Amazon Prime Videoで映画を観始めたことが一番最初でした。自分から動画視聴のために加入したのはDAZNが最初ですね。」
インタビュアー|
「Amazon Prime会員に加入していたのはご自身ですか?」
インタビュイー|
「いえ、家族ですね。そして、動画を視聴する機能もあることを知ったので、そこから使い始めました。」
インタビュアー|
「それで映画を観ていて、それからスポーツが好きだからDAZNにも加入したと。」
インタビュイー|
「そうですね。特にサッカーなどは見られるチャンネルが限られている中、DAZNが盛んに宣伝されていて評判も良かったので使ってみようと思いました。」
インタビュアー|
「Netflix加入はそれより後ですか?」
インタビュイー|
「はい。大学生になり、友人が皆見ていたので私も見たかったのと、それから『英語の勉強として海外ドラマを見たいな』と思ったときに、それらがNetflixに揃っていたので見てみようかなということで使い始めました。」
インタビュアー|
「今のお話だとNetflixもよく使われると思いますが、Amazon Prime VideoとNetflixはどちらかに統合せず使い分けているということですか?」
インタビュイー|
「はい。元々Amazon Primeを使っていたからという側面もありますが、そのほか、それぞれに入っている映画の種類が若干違っていて、個人的な感覚としてはAmazon Prime Videoの方が映画などの種類が多く感じます。
また、Amazon Prime Videoの場合、見放題のコンテンツ対象では無い映画でも1本数百円で購入できるので、有料でも観たい映画があるときはAmazon Prime Videoで探して、「皆が見ているから一応見ておくか」といった程度のドラマや映画はNetflixで見るというような棲み分けになっています。」
インタビュアー|
「どちらでも見られるものはどうしていますか?」
インタビュイー|
「Amazon Prime Videoでは有料コンテンツでNetflixで見られる場合はNetflixで見ていますが、どちらも無料の場合もNetflixで見ることが多いです。特に海外映画などの場合、Netflixの拡張機能として日本語と英語両方の字幕を出せる機能が使いやすいと感じているので、使いやすさの面からNetflixが多いです。」
インタビュアー|
「なるほど。アプリで見られることが多いと思いますが、今の字幕のお話のように、特にこれは良いと思うアプリの機能はありますか?」
インタビュイー|
「小さなことですがNetflixの場合、例えば映画などを観終わると最後にクレジットが流れますが、意外と観たいときがあります。エンドロールでさまざまな映像が流れることがあるじゃないですか?Netflixだと『クレジットを見る』というボタンを押したら見ることができるので、その機能の使いやすさなどが気に入っています。」
「動画サブスク」ユーザーインタビュー振り返り
安田|
動画サブスクの使い分けに関して、三つのサービスを使っていました。まずAmazon Prime Videoは映画、特にどうしても観たいもの。次にNetflixは皆が見ているドラマや映画。そしてDAZNはスポーツということで、この棲み分けは面白かったです。
動画サブスクを使い始めた経緯に関しては、最初はAmazon Prime会員に家族が加入していて、Amazon Prime Videoを見始めた。その後、スポーツが好きだったので自分でDAZNに加入し、また友人が見ていたのでNetflixに加入して三つの動画サブスクを使っているということでした。
「アプリで重要視する機能は?」という質問に関しては、「クレジットを見る機能はNetflixが非常にいい」というコメントをいただきました。インタビューを通しての全体的な感想はいかがでしょうか?
山崎|
インタビューの良いところがとてもよく出ているなと思いました。というのは、お話を聞き始めた当初は、NetflixとAmazon Prime Videoの使い分け方は利用シーンやコンテンツの長さのほか、映画/ドラマといったジャンルによるものかと思ったのですが、インタビュアーがどんどん深掘りしていくうちに、もしかしてこの対象者の方は、意外と「Netflixの拡張機能がすごくいいから」という理由で使っているのではないかと思えてきました。
これは会話の中で聞いていかないとわからないことだと思うので、すごく良いインタビューだと思いました。
安田|
この方は話の前半では、どちらかというとAmazon Prime Videoが好きな感じがすごく伝わってきました。ただ、両方とも見られるときはどちらで見ますかと聞くとNetflixという答えで、「むしろNetflixなのか」といった意外性がありました。
それから最後に出てきた、アプリで重要視する機能は「クレジットを見る」。
小嶋|
面白いですよね。
安田|
そんな使い方はなかなかわからないですよ。
小嶋|
インタビューをしていると「そこに価値を感じてるの!?」と驚くことが結構ありますよね。
安田|
ありますね。
山崎|
多分、定量調査では「クレジットを見る」なんて選択肢は作らない気がします。
安田|
作りませんね。Netflixにこの機能を搭載した人が今のインタビューを見たらガッツポーズでしょうね。こう言われたらすごく嬉しいだろうと思います。
小嶋|
アップデート時に、「ユーザーはどこに価値を感じて使ってくれているのか」と企業側が認識していないケースが結構あると思います。すごく細かくても「○○な機能が重要」というお客様が一定数いると実感しているので、ユーザーが本当に価値を感じている機能をデータではないところから引き出すという意味でも定性的に聞くことが重要です。
安田|
確かに。企業側は「別にこの機能は要らないのでは?」と消してしまった後で、ユーザーから「いや、あの機能が要ります」と言われるケースもあるでしょうからね。
小嶋|
よく大規模アップデートのレビューが荒れるのも、それが大きな一因かもしれません。
安田|
大規模なアップデート前にはインタビューで実際に聞いてみた方がいいかもしれません。では、インタビュー結果を踏まえ「アプリの機能改善」というテーマについて話していきましょう。
今回のインタビューでは動画サブスクアプリとして、Amazon Prime VideoとNetflixの話がよく出てきていましたが、それぞれの事業者の立場に立ったときに、アプリをどう改善していけばいいかをお聞きできればと思います。まずNetflixの方はいかがでしょうか?
山崎|
今回の場合は、推測になってしまいますが、便利な拡張機能があるという話や、またエンドロールのクレジットの話に関しては、ユーザーが自身で見つけたというよりも、もしかしたらNetflixを使っている友人同士で会話をしていて「そんな機能があるんだ」と知った可能性も高いと思います。
コアなユーザーに人気な機能があれば、その機能をプッシュ通知などで訴求することが必要ではないかと思います。
安田|
「こんな機能があるのを知っていますか?」という感じでしょうか。
山崎|
はい。アプリによっては積極的にそういう情報を流しているところもありますね。
安田|
確かに機能が豊富過ぎるとよく知らないというケースも多いでしょうからね。
小嶋|
アプリの使い方は習慣化してしまいがちです。何も考えずに特定のボタンを押しているという人が多い中、利便性を阻害しないようにしながら、しっかり気づきを与えていくことが非常に重要です。
安田|
そういう意味で、ボタン配置が変わると意外とストレスになったりしますよね。一方で「アプリは要らない」と言われてしまったAmazon Prime Videoはいかがでしょう?
小嶋|
通知のチャネルとしてアプリが重要になる場面が増えてきました。最近はよく、「ユーザーがサービスをいつ使っているのか」というデータを元に、自動的に機械学習で分析が行われるようになりました。
例えば、メールをよく見る人もいれば、アプリやWebを見る人もいる中、「この人はいつも夜の10時頃に動画を見るからその前に通知を送ろう」などと、チャネルや時間帯を最適化して通知を送る機能も出てきています。ですから、アプリを一個の配信チャネルと捉えた上で最適化し、ユーザー体験全体を向上させるという打ち手があると思います。
安田|
動画を見る機能というよりは、通知のチャネルとしてということですね。
小嶋|
はい。それはユーザーが欲しいタイミングで、欲しい情報を提供するという話ともつながるので、そういう使い方がオススメです。
安田|
この方など、私の感覚だと「いっそもう全部Netflixにすればいいのに」と思ってしまうのですが、Amazon Prime Videoに対するロイヤリティーもとても高いと感じていて、「やっぱりAmazon Prime Videoがないとだめだ」と思っているご自身なりのこだわりのポイントが明確にあるのだろうと思います。
Amazon Prime Videoはユーザーが感じているこだわりのポイントをアプリでどううまくカバーできるのかを考えるとよいのではないかと思いました。
山崎|
私は反対に、「NetflixとDAZNは移動中に見たいからアプリを使う」と言われていましたが、どうしてAmazon Prime Videoは「移動中に見たい」とならないのかという点と、もしかしたら一回ダウンロードした後にアプリを消していないかどうかという点が気になっています。
安田|
「あまり移動中に見るのに適していない」と思ってアプリを消したのか。あるいは試したことがなく食わず嫌いなのかどうか。確かに、どちらも観ているのは映画やドラマですからね。
山崎|
はい。しかも「同じコンテンツが配信されているときはNetflixを選ぶ」というお話だったので、そのNetflixの方が勝っているポイントは何なのかという部分について、もう少し追加で聞いてみたいと思いました。
小嶋|
なるほど。「Amazon Prime Videoは実はここが使いにくい」みたいなところまでは聞いていなかったですね。
安田|
確かにどちらでも映画を観るのに、「Netflixの方がよく利用する」と言うからには、「Amazon Prime VideoはPCで観たいです」では理由としては違う気がします。
山崎|
仮に最近よくある、あらかじめ動画サブスクのボタンが付いているテレビリモコンを使っているのだとしても、Amazon Prime VideoとNetflixはどちらも入っていると思います。そう考えると、どうして「映画は主にAmazon Prime Video」と思っていて、そこまでNetflixのボタンを押さないのかということも改めて気になります。
安田|
そうですよね。スマホに限定しなくても、家で見るならどちらでもよさそうなものです。その部分はまだまだ深掘りが足りていませんでした。
小嶋|
実際のインタビューだと最後に追加質問がありますから、そこで聞けますよね。
山崎|
はい。こういった後から浮かんだ疑問も、追加の質問事項に差し込んでくださいとお願いすれば聞けると思います。
安田
その辺りをインタラクティブにできるのが、リアルなインタビューの良いところですね。以上が、3つ目のインタビューでした。
まとめ –アプリマーケティングでリピーター増を実現する秘訣!
安田|
最後に、お二人から自社サービスの改善にお悩みの方や、ユーザーインサイトを理解したいという方向けにアドバイスをお願いします。
小嶋|
私からは、ユーザーインタビューは絶対やった方がいいですと改めてお伝えしたいです。それによってさまざまなことがわかることに加え、普段関わりの少ないエンジニアや営業の方に参加いただくことで、プロダクトへの当事者愛がより深まる効果があります。
また、個人では、目線がどうしても日々やらないといけないタスク・改修や、売らないといけないノルマに行きがちな中、組織全体の目線を合わせるという意味でもユーザーインタビューが役に立ちますので、自社で回せる企業様はどんどん回していただきたいです。「ユーザーインタビューは初めてで、まだこれからです」という企業様はぜひお気軽にご相談ください。
安田|
インタビューをすると、私たち自身もプロダクト愛で満たされるということは私も実感しています。
山崎|
今回はユーザーインタビューにフォーカスしましたが、特に店舗をお持ちの企業様では、実際にお客様と接しているのはその店舗の従業員の方だと思います。そうした方々を対象にインタビューを行っても大きな成果が得られますので、従業員の方を対象としたインタビューの場合も、弊社がお手伝いさせていただくことが可能です。
また、私は市場調査会社にいた経験があり、アプリ開発の事情もわかっているからこそサポートできることが多くあると思いますので、気になりましたらぜひご連絡いただければと思います。
安田|
今回ご紹介いたしました「ユーザーインタビュー for OMO / EC」のサービスについては、お話ししたようなOMOアプリやECサイトだけに特化したサービスで、私たちはそれらに関する専門性が高いと自負していますので、もしお悩みがあればぜひご相談いただければと思います。
スピーカー
株式会社DearOne グロースマーケティング部 エクスペリエンスユニット / チーフ・コミュニケーションデザイン リーダー 小嶋 利典
2012年DearOne参画。企業アプリ黎明期からアプリ開発に携わり50以上のアプリ立ち上げ/グロースプロジェクトに参画。その後、自社アプリ開発サービス「ModuleApps」のプロダクトマネージャーとしてSaaSサービス成長を牽引。
現在はそのノウハウをもとに、UI/UXの改善・エンゲージメントツールを使ったアプリのグロース支援・コンサルティングを実施。
株式会社DearOne 事業開発部 アカウントエグゼクティブユニット 山崎 さら
大学卒業後、旅行会社にて法人営業として勤務。その後、市場調査会社に転職し、様々な業種の100社以上の定性・定量調査を実施。
2022年にDearOneへ参画し、ModuleAppsでアプリ開発をしている 観光、鉄道、小売、大学など幅広いジャンルのクライアントを担当。定性情報からのユーザーインサイト発見、それをアプリ体験に落とし込むことを強みとし、企業様のアプリ伴走支援業務に従事。
株式会社DearOne マーケティング部 ゼネラルマネージャー 安田 一優
中小企業診断士資格保有。パソコン販売店店長、ITエンジニア、ITインフラSIerのマーケティングを経て、2020年よりDearOneへ参画。 DearOneではマーケティング、インサイドセールス、パートナーアライアンス等のマネージャーを担務。マーケティング、インサイドセールス、セールスの連携体制を構築。