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NRI未来創発フォーラム2022|デジタルが拓くポストコロナの未来像【イベントレポート】

2022.11.28

NRI未来創発フォーラム2022
NRI未来創発フォーラム2022 / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所

2022年10月17日(月)東京国際フォーラムにて、野村総合研究所(以下、NRI)の企業理念「未来創発」に基づき、社内外の専門家、有識者とともに日本や世界の未来の姿を考えるためのフォーラム『NRI未来創発フォーラム2022 デジタルが拓くポストコロナの未来像』が開催されました。

基調講演|デジタルの先にある日本の未来
野村総合研究所 代表取締役会長 兼 社長 此本 臣吾氏

基調講演に野村総合研究所 代表取締役会長 兼 社長 此本 臣吾氏が登壇し、「デジタルの先にある日本の未来」と題して講演が行われました。

野村総合研究所 代表取締役会長 兼 社長 此本 臣吾氏 / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所
野村総合研究所 代表取締役会長 兼 社長 此本 臣吾氏 / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所

2017年「デジタルが拓く近未来」をテーマにスタートした本フォーラムは、今年で第6回。2020年の「新型コロナウイルスと経済社会のパラダイムシフト」を経て2021年から「デジタルが拓くポストコロナの未来像」をテーマに開催。

長引く新型コロナウイルスなどの要因によって、急速に定着しつつある社会のデジタル化。テレワークをはじめとしてその多くは定着しつつあります。「デジタル資本主義」は働き方を変え、産業のアズ・ア・サービス化を進め、これまでの有形資産を中心とした「減価償却社会」から、時間とともに価値が増える無形資産中心の「増価蓄積社会」を生み出そうとしています。「生活レベルの満足度にはデジタルの利活用が関係しているのではないか?」という疑問を紐解きながら、さまざまなデータをもとにデジタルが拓く未来像について総括しました。

基調講演資料は、下記よりご覧ください。
https://www.nri.com/jp/news/event/lst/2022/cc/mirai_forum/2022

また、此本氏の講演の中で、North Star Metric(ノーススターメトリック)の解説もありましたのでご紹介します。

デジタルサービス(増価蓄積モデル)に最適化した経営管理モデルの導入|North Star Metric(ノーススターメトリック)

基調講演「デジタルの先にある日本の未来」資料より / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所
基調講演「デジタルの先にある日本の未来」資料より / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所

組織全体を顧客価値のための活動に集中させる指標として、North Star Metric(ノーススターメトリック)の考え方があり、それは「サービスの価値」を表し、売上成長の先行指標となるシンプルな指標であると解説。

  • Facebookであれば、加入後10日以内に7人の友達を追加したユーザーの数
  • Twitterであれば、登録後30人の他のユーザーをフォローしたユーザーの数
基調講演「デジタルの先にある日本の未来」資料より / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所
基調講演「デジタルの先にある日本の未来」資料より / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所

さらに、Spotifyの事例にて、どのようにNorth Star Metric(ノーススターメトリック)を考えているのかを、広がり、深さ、頻度、効率の観点で紹介。

North Star Metric(ノーススターメトリック)について詳しくは、こちらのページをご覧ください。

特別講演|5,000日後の世界『WIRED』創刊編集長 ケヴィン・ケリー氏

続いて、『WIRED』創刊編集長 ケヴィン・ケリー氏による、これからの5,000日間で起こるテクノロジーの進化について講演が行われ、デジタル、エネルギー、食料、働き方といった、あらゆるものがすべて変化するというケヴィン・ケリー氏が未来を予測しながら、幅広い視点で論じ、そこで必要となってくる政策について提言されました。

『WIRED』創刊編集長 ケヴィン・ケリー氏  / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所
『WIRED』創刊編集長 ケヴィン・ケリー氏 / COPYRIGHT 2022 野村総合研究所

17個のトレンドをあげ盛りだくさんの内容でしたが、グロースマーケティング編集部が気になったポイントを少しだけ抄訳します。

交通手段|自動運転車それともドローンシステムか

ケヴィン・ケリー氏|

すでに誰もが自動運転車の登場を予見しています。ただし、今はまだ1%不完全な部分があり、99%しか信頼できません。その不完全な部分の1パーセントの克服は本当に難しく、解決には10年以上かかるかもしれません。自動運転を実現しようと思ったら、そのような車に適した共通の仕様に道路システム全体を再構築させる形で、特別な車道を設置する必要があるでしょう。

ただ単に自動運転車が共通で必要とするソフトウェアを、今と同じ道路に置くだけではうまくいきません。実際に道路を作り直さなければなりませんし、見たこともないまったく新しい道路に作り替える必要があります。

そのように自動運転車用の新しい道路を作ることは困難であることから、我々に必要なのはむしろドローンシステムであるといえます。

もちろん、それにも時間がかかる。しかし、道路の裏側を全部作り替え新しい車道に変えるような道路システムを建設する方が、もっと時間がかかります。

ドローンは自動飛行が可能で、今以上に大きくなれば最終的には飛行機のようなレベルのものが登場して、乗客(人間)を乗せて飛べるようになるでしょう。バッテリーと電力の技術進歩は非常に速く、電動化されればされるほど、実際に自動運転に適応できるようになります。

アメリカ・カリフォルニア州では「今後10年程度で新しいガソリン車の製造を停止する」というルールが定められました。こうした変化は、皆さんが思っているよりずっと早く起こります。全く新しい生活様式になります。

電気自動車が自動運転するとしたら、それで何ができるようになるでしょう?私たちはVRを実現し、次はメタバース社会を活動の場にしていくと思います。

AI(人工知能)| 人間とのパートナーシップが欠かせないAI

ケヴィン・ケリー氏|

AIの恩恵を受けリアルタイム翻訳機が実現されれば、英語を何語にでもリアルタイムに吹き替えで聞くことができるようになります。つまり、あなたは世界中の誰とでも仕事ができるようになります。それこそ真のDX、変革のきっかけになるでしょう。

すでに、中国語〜英語翻訳をある程度試しましたが、十分使えますし誰でも使えます。まだ今はオンライン修正が必要かつ推奨ですが、今後どんどん改善されることで熟練した英語を話せなくても、一流のスキルを持っている人々がグローバル経済に参加することが可能になります。

今後AIは、ロボット投資家、ロボット医師、ロボット弁護士、ロボット仲買人、ロボットデザイナーになっていくにふさわしいでしょう。実際、すでに小さなAIがアーティストとなって素晴らしい作品を作り出している実績があります。

しかし、こうしたAIがしっかり働き、十分満足なクオリティを得るために重要なことが一つあります。それは「人間とのパートナーシップ」が必要だということです。人間側ではAIが正確な全体像を描けるよう、的確に指示を出すコツが必要になります。

それゆえ、最良の医師とはAIの医師ではなく、また人間の医師でもありません。人間とAIとのパートナーシップこそが最良の医師としての成果を成し得るのです。弁護士も同様で、半分人間・半分AIが結びついた組み合わせこそがベストであり、実際、我々はそういう方向へと進んでいます。

フィンテック| 将来的にはほとんどすべてのビジネスが金融ビジネスの要素を持つ

ケヴィン・ケリー氏|

「日本はテック(特に電子通貨の導入)が遅れている」、「スウェーデンは経済活動の1%は現金が関わるが、残りの99%はデジタル化されている」などとよく耳にします。

今や、銀行ではない「ニューバンク」が、銀行と同じようなサービスを提供しており、金融はお金を払えばサービスを受けられる他のビジネスにまで侵食し、将来的にはほとんどすべてのビジネスが金融ビジネスの要素を持つようになるでしょう。

あなたの会社も、アウトソーシングによって金融サービス会社になれるわけです。こうした動きはますます洗練され、ツールはビットコインや暗号通貨のサービスとして提供されるようになってきています。

ビットコインと聞くとアノニマス的な、何かアングラなイメージがあるかもしれませんが、実際にはそのほとんどが制度化・国有化されてきています。中国も米国も公式な暗号通貨を持つようになっており、もはやアングラというより制度化が進んでいる実態があります。

トラッキング|「透明性」と「パーソナライゼーション」

ケヴィン・ケリー氏|

私たちが何か端末のスクリーンを見ているとき、その端末も同時に私たちを見ています。そして、私たちの感情を読み取ることができるソフトウェアもあり、人々の役に立つべく使われています。

将来は私たち自身の感情を見たりトラッキングしたりすることで、多くのことがわかるようになります。しかし、今日私たちが見てきたメタバースやミラーワールドは、まさに私たちがそのメタな世界にいるために、常に私たちをトラッキングするからこそ機能するものになります。

私の感情や行動、どこで作業をしているか、どのくらいの時間見ているか、そういったことをすべてトラッキングして、アバターが作られるので、これはもはや「調査」とでもいうべき、過去に例がないほど大きな情報トラッキングが行われるようになることを意味します。

これらが本当に実現するかという点で、今後プライバシー問題がますます重要になるでしょう。トラッキングできるものはすべてトラッキングされます。ただし、ここで我々の考えの手助けとなる要素について言及しておこうと思います。「透明性」と「パーソナライゼーション」との2つが、スライダーのように関連し合っている様子を思い浮かべてみてください。

もし、システムが私たちをユニークな人間、尊重された特別な人間である「私」として、個別に扱うようにしたいなら、この「私」を適切に扱ってくれるシステム、会社あるいは政府とか欲しいところですが、そのためにはまずそれらが我々について知る必要があります。

だから、私は相手に対し自分のことを明かさねばならない、つまり、パーソナライゼーションのためには、自身のことを包み隠さぬ透明性が必須になるということです。

つまるところ、プライベートなサービスを受けたいのか、あるいは透明性を確保したいのか、それとも隠されて数字のように扱われたいのか、どちらがいいかということになってきます。

驚くべきことは、この2つを結ぶスライダーの中で選択の自由がある人々が行ったり来たりする中で、ほとんどの人がパーソナライズされた扱いを受けることを望むようになることです。

人々は常に、プライバシーを保護されていても単なる番号で呼ばれるより、たとえ丸裸であってもパーソナライズされた方法で扱われたいと思うものなのです。私はこの現象を「虚栄心はプライバシーに勝る」と呼んでいます。

何かを成し遂げるのに、歴史上のどの時代と比べても最も障壁が低い時代

ここまで、いくつかのキーワードをピックアップしました。ケヴィン・ケリー氏はこの他にも、「エネルギー」「アドバンス・コンピューティング」「ディスラプション」など様々なトレンドを取り上げ解説。

最後に次の言葉で締めくくりました。

私が伝えたいことは、何かを行おうと思ったら、まさに今が宇宙の歴史を通じて一番いい時期だということです。これまでのどんな過去と比べても、今が最高のタイミングです。ここにいるほとんどすべての人が、これほど優れたツールを利用できる時代は未だかつてありません。誰もが世界最高のツールを手に入れ、しかも目の前には史上最大のマーケットが広がっている。

今は何かを成し遂げるのに、歴史上のどの時代と比べても最も障壁が低い時代なのです。そして同時に、未来に目を転じれば、今後「5,000日後の世界」というスパンならAIの専門家は存在しているかもしれません。

しかし、今はまだ専門家がいない分野だらけです。メタバースの専門家も、宇宙旅行の専門家も、そして私が話してきたようなことの専門家はまだこの世に存在しないのです。これは目の前に果実がぶら下がっているようなものです。

つまり、新しすぎて競争相手が皆無、あるいはほとんどいない状態です。まさに参入障壁が低いというやつです。参入コストが安いのです。この未開のフロンティアがあなた個人、あなたのキャリア、そしてあなたの会社にとってどういう意味があるのか考えてみてください。「日本は遅れている」だなんてとんでもないですよ。”

講演者情報

以上、イベントレポートをお届けしました。

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