この記事は、2024年3月19日に開催された「MIXI TECH DESIGN CONFERENCE 2024」の基調講演レポートです。
はじめに
MIXI 村瀬氏|
こんにちは、本セッション進行役のMIXI 取締役の村瀬です。はじめにMIXIの会社紹介をしてからパネラーとディスカッションを進めていきますので、よろしくお願いいたします。
私たちMIXIは、コミュニケーションのことだけを考える企業です。現在、アプリやゲーム内でコミュニケーション機能はあって当たり前のものだと思われるかもしれません。しかし、MIXIはもっと深く、小さなネットワーク、友達や家族といった狭い強いつながりをもっと良くしていきたいと思っています。一見すると“満足”で溢れている社会のなかで、今ないものをつくる、狭く深いコミュニケーションをより良くするために何をすればいいかを日々考えながら仕事をしています。
コミュニケーションは水や電気、空気と同じぐらい大切な事です。もし「もうコミュニケーションはダメです。今後はなしにしてください」と言われたら人生は辛いものになるでしょう。MIXIは人生を豊かにするコミュニケーションについて考え続けています。
MIXIは、PMWV(パーパス・ミッション・ウェイ・バリュー)というものを掲げています。私たちのパーパスは「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」です。この実現を夢見て、事業をやり続けています。
今回のセッションタイトルにも入っていますが、バリューは「発明/夢中/誠実」を掲げています。MIXIが現場で一番大切にしているものが、この3つのバリューです。みんなでユーザーのことだけを考えて、誠実に夢中に開発やクリエイティブなものづくりをして、発明:新しいものを作っていくことを大切にしています。
また、ウェイに入っているのが「ユーザーサプライズファースト」です。これまでの時代はユーザーファーストということでユーザーに喜ばれるものをつくることが大切でした。しかし、今の時代にはユーザーファーストだけでは足りず、喜ばれるだけのサービスではコミュニケーションの中で話題には上がらなくなっています。そんな中で単に「喜ばれる」だけでなく、「驚き」があると話題になる。だからこそ、MIXIは一歩先の驚きを届けることに集中してサービス開発をしています。
大きなセグメントはスポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテインメントという3つになっています。
MIXIは「FindJob!」という求人サイトから始まり、2004年にSNS「mixi」をリリースして以降はコミュニケーションのことだけを考えています。サービスとしては2013年「モンスターストライク(以下、モンスト)」、2015年「家族アルバム みてね(以下、みてね)」を提供し、多種多様なコミュニケーションサービスを生み出してきました。
「モンスト」はお陰様で全世界でユーザーは6,100万人。10周年の盛り上がりが終わり、今年は11周年ということで変革していく年になりますので、楽しみにしていただければと思います。「みてね」も2,000万ユーザーを突破し、海外ユーザー比率が30%超のグローバルサービスになっています。家族との思い出を写真や動画で振り返り、人生を支えていくサービスです。このように世界中に温かさや熱狂を届けていくことをやっています。
スポーツの領域では「TIPSTAR(ティップスター)」、みんなで集まってワイワイと公営競技のレースを楽しみながら盛り上げていくサービスです。また、千葉ジェッツやFC東京などのプロスポーツチームの経営にも関わっています。あまり知られていませんが競輪場の施設所有や包括運営などもやっています。
本当にいろいろなことをやっていて、「何の会社か分からない」と言われることもありますが、本当にコミュニケーションのことだけを考えてやっている会社です。
アプリやサービスに関しても、ソーシャルやコミュニケーション、人と人が語り合うものって何だろう?といったことを日々話し合い、それをテクノロジーやデザインといった各文脈に落とし込みながら活動しています。アプリを通じて個人情報を預かることも多く、グローバルにサービス展開する上でGDPR等への対応等も含めて、セキュリティやリスクのことも踏まえてながらサービスを開発・運営しています。
会社紹介はここまでにして、ここからパネルディスカッションということで進めていきます。
本日の登壇者は、
・執行役員 CTO 開発本部長 吉野 純平
・執行役員 CDO デザイン本部長 横山 義之
・執行役員 CISO セキュリティ室長 亀谷 直生
・取締役 上級執行役員 村瀬龍馬
それぞれテクノロジー、デザイン、セキュリティ領域のCXO、そして役員という形になります。
CXOの役割と入社のきっかけ
MIXI 村瀬氏|
1つめのテーマということで、自己紹介からいきましょう。CISOの亀山さんからお願いします。
MIXI 亀山氏|
はじめまして。CISOの亀山です。私が見ている部署にセキュリティ室があり、セキュリティ室長としても活動しています。私はMIXIに入社して約8年になります。前職では脆弱性診断等をやっていて、その縁でMIXIに入社して脆弱性診断も含めてセキュリティの仕事をやっています。前職の仕事をしている中でMIXIで「脆弱性診断をやりたい、内製化もしたい」というニーズがあり、それがきっかけでMIXIに入社することになりました。
MIXIは、コミュニケーションを非常に重視して提供している会社ですので、コミュニケーションをなるべく阻害しないように安心・安全を提供することがCISOの仕事だと思っています。
最近のトレンドでいうと、サプライチェーンのリスクマネジメント。製品がリリースされるまでの全てのプロセスのリスクをマネジメントすることです。
MIXI 吉野氏|
CTOの吉野です。私は2008年にMIXIに入社しました。元々SNS「mixi」のヘビーユーザーで様々なコミュニティに入っており、その縁でMIXIに入社しました。私の役割は、CTOとVPoEを兼務している形で、事業の技術的な側面を支える、また開発組織のマネジメントという役割を担っています。
最近のトレンドは、AIをどう使いこなすかです。世界的なルール、国内的なルール、法的なルール等をマネジメントしながら、社内の人たちと「どう使いこなすか?」をコミュニケーションしています。
MIXI 横山氏|
CDOの横山です。私の役割は、会社のパーパスや経営目標とデザイン組織をどう接続するか。デザインで面白くしていく。より早く、より遠く、より広く、ものを作れるようにしていくことに取り組んでいます。CDOの役割を一言でいうと、全ての人にデザインが当たり前にある状態を作ること、経営とデザインを接続していくことだと思っています。
いまのトレンドは私もAIです。デザインは社会や人と技術をどうつなげるか、間をつなげる仕事だと思っていますので、AIを始めとする技術の最先端、トレンドの中でどうしたら柔らかく、みんなに伝えて広げていけるかということに興味があります。
MIXI 村瀬氏|
お三方ともしっかりと話していただきましたが、世の中に出ているMIXI製品の裏側のテクノロジーを吉野さんが見ていて、デザインは横山さんが責任を持っていて、セキュリティ上のリスク等を全部支えてくれているのが亀山さんということになります。
普段からオンラインで4人わいわい喋っていますが、オフラインの合宿等で集まってぎゅっと深夜まで喋るといった機会も作っています。
最近の出社頻度、オンラインとオフラインの使い分けは?
MIXI 村瀬氏|
自己紹介に続いて軽いテーマからいきましょう。皆さん、出社はどのくらいしていますか?
MIXI 亀山氏|
私は週1〜2回です。最近は新しいメンバーが合流したので、わりと常に出社している形になっています。会話の回数が増えそうな時、また新しい人が入ってきて慣れない環境の中で気軽に話かけられる環境を作りたい時とかは、オフラインがメリットあると感じます。
MIXI 吉野氏|
私は今は週4回程度、出社しています。オフラインのメリットは、“出待ち”と“社内散歩”ですね。
MIXI 村瀬氏|
出待ち?
MIXI 吉野氏|
会議でスケジュールが埋まっている人とコミュニケーションを取るのに、会議室からエレベーターで移動するところを捕まえて話す形ですね。これが一番早いです(笑
MIXI 村瀬氏|
なるほど。吉野さんは常にエレベーターピッチをしているわけですね(笑 横山さんはいかがですか?
MIXI 横山氏|
私は週4〜5回程度、出社しています。オフラインの人が置いてけぼりにならないように空気を作ったり、現場でわちゃわちゃと盛り上がっている時には社内のチャットに「現場は今こう盛り上がっています!」とオンラインをフォローしたりするといった形で、オンライン・オフライン、どちらも選べる状態を作ることに取り組んでいます。
MIXI 村瀬氏|
MIXIでは「マーブルワークスタイル」として、オンラインとオフライン(オフィスワーク)を融合して、働く場所を柔軟に選べる環境を提唱しています。また、「マーブルロケーション」という制度もあり、京都や福岡、滋賀など、いろいろな場所で1ヶ月間働いているメンバーもいますので、その意味でもオンライン/オフラインというのは意識しながらやっています。ただ、その中で、たとえばオフライン中心の人がいて、その人がオンライン上だと少し置いていかれているなと気づくためのサイン、意識していることなどありますか?
MIXI 吉野氏|
オンライン上での発言量が減っていると恐らく置いていかれているかな、というのはあります。オフラインでの場面と同じぐらい発言しているか?みたいなことは大事かもしれません。
MIXI 村瀬氏|
なるほど。逆にオンラインの人は、テキストコミュニケーションだと言葉が強くなる。たとえば、最近“マルハラ”ということで、語尾に「。」がついているだけで冷たく聞こえるといった話題もありました。オンライン上でのコミュニケーションで気を付けている点はありますか?
MIXI 吉野氏|
テキストコミュニケーションの表現は悩みますね。横棒1本でも、今回は「~」にしておこうか・・・とか。それを瞬間で考えて決めている感覚はあります。
MIXI 横山氏|
逆にオフラインだと、口角を常にあげておく、笑顔にすることは重要ですね。
CXOが仕事で大切にしている行動とは?
MIXI 村瀬氏|
次のテーマは「毎日何を考えながら仕事してます?」です。CXOレイヤーの人たちが普段何を考えながら仕事しているかは、社員の人も聞く機会がないかもしれません。
MIXI 亀山氏|
もちろん直近の仕事のことは考えながらやっていますが、事故が起きないかな?とはらはらしながら、今何をやったら一番事故を防げるかな?ということは考えながら仕事しています。
MIXI 吉野氏|
私はやりづらくなっている人がいないかな?と探すことが多いかもしれません。
MIXI 横山氏|
私は次の面白い仕事が何かな?と考えながら、粛々と仕事を進めています。
MIXI 村瀬氏|
次は「日々大切にしている行動ってあります?」。MIXIで大切にしているバリュー「発明/誠実/夢中」はかなり抽象度が高い言葉です。バリューを具体的な行動に落とし込むうえで、日々大切にしているような行動、部下に真似してもらったら成果が上がるといった行動はありますか?
MIXI 亀山氏|
自分が大切にしているのは、バリューの「誠実」みたいなところにつながるところです。オンボーディングの際にも話していますが、情報セキュリティというのは手間が生じたり、面倒くさかったりする話も多かったりします。だからこそ、現場と対話して現場に寄り添った対策を考えていくことは大切にしています。
MIXI 吉野氏|
成果が上がりやすいという話で行くと、嗅覚を磨くこと。また、やっていることを手離して成果が上がりそうなところに振り切ることも大事だなと思います。
嗅覚を磨いて振り切るというのは、毎日普通に仕事している中でSlackであったりドキュメンテーションであったりいろいろなインプットチャンネルがあって情報が流れてきます。その中で、これは大事かもしれないと思ったら、技術的な見地から考えてみる。そして「これをやろう」と思ったら、そこに工数を振り切るという感覚ですね。人は同時にいろいろなことは出来ないので、振り切ることが大切です。
MIXI 村瀬氏|
私と同じ程度だとすると、吉野さんもSlackは200~300チャンネルぐらい入っていると思いますが、全部見ていますか?
MIXI 吉野氏|
全部をちゃんと読んではいないですが、未読はゼロにしていますね。
MIXI 村瀬氏|
それは私も同じですね。横山さんは、大切にしている行動、いかがですか?
MIXI 横山氏|
今日のカンファレンス会場にもいろいろな装飾がされていますが、事前に何をやるか全て決めているわけではなく、作りながら、面白がりながら、「もっとこうやろう」と話て形にしていくことを繰り返して完成しています。
そうやって夢中にものをつくる組織でありたいと思っています。だからこそ、私も現場に関わるときは、夢中に対してきちんと夢中で応える。“空気を読んで言わない”とかはせずに、ちゃんと受け止めてくれるメンバーだと信じて「こうしたらもっと良くなるんじゃないか?」と遠慮なく言う。それを通じて面白い仕事をしていこうと考えて取り組んでいます。
MIXIで変えたいことは?
MIXI 村瀬氏|
次の話題は「最近変えたいと思ったことは?」です。執行役員で、変化が重要と言い続ける立場として、社内を変えたい、変えていかなければならないと思っていることなどはありますか?
MIXI 亀山氏|
セキュリティの話になりますが、先ほどのサプライチェーンリスクにも関連しますが、IDの基盤や管理は変えていきたいと思っています。社員やユーザーのIDもそうですが、サプライチェーンにおけるID管理等はまだ行き届いていないところもあると思います。そういったところもMIXIとしてグリップしていくことで、リスクマネジメントをより強化にしていくアプローチは面白いかもしれないと感じています。ID管理に加えて、認証強化等もしていけると、MIXI単体だけではなくサプライチェーンも含めて周辺全部をより強固に守っていけます。
MIXI 吉野氏|
会社紹介のところであった通り、MIXIはスポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテインメントという複数領域があって、その中に更にいくつもの事業がある会社です。その結果、横で何をやっているかを知ることがけっこう大変になっていると思っており、それを上手くに共有できるようにしたいと思っています。
「共有」のひとつの側面でいうと、何故やろうとしているか、何をやろうとしているか、いつまでにやろうとしているかを全メンバーが共通で見れるようにしたいですね。ビジョンを示して、それに巻き込んで仲間を作ることが大事だと思います。そのためにも、なぜ、何を、いつまでにをもっと上手く伝えたいと感じます。
MIXI 村瀬氏|
MIXI代表の木村さんは、伝えるうえで「コミュニケーションは人生必需品」「3Lモデル」といったワーディングを上手く使っていますが、吉野さんはビジョンを伝えるうえで大切にしていることはありますか?
MIXI 吉野氏|
伝え続けること、また、いろいろな人に当ててみてフィードバックをもらうことは大事にしています。
MIXI 村瀬氏|
吉野さんは多様性を重視する組織スタイルで、いろいろな人に当ててアイディアを沢山もらって決断するというスタイルだからこそ、伝え続ける、そして当ててみるということですね。
横山さんは「変えたいこと」というテーマでいかがですか?
MIXI 横山氏|
現在、デザイン職だけでも250人を超える程度の人数がいますので、事業が沢山あるという話と同じで、隣の部署は何をやっているんだろう?という交流をもっと活発にしたいと思っています。元々デザイン職は好奇心が強い人たちだと思うので、交流することでお互いに刺激が生まれます。マネジメントとして、交流する時間や心の余裕、環境を整えたいと思っています。
MIXI 村瀬氏|
時間と心の余裕は大切ですね。忙しすぎると目の前のものしか見えなくなってしまって、インプットができなくなったり、刺激みたいなものに弱くなったりします。睡眠時間を削れば体調も悪くなるし、何もかも悪い方向にいってしまいます。
MIXIはコミュニケーションの会社で、エンターテインメントを扱っていますが、やはり心と時間の余裕がないとエンターテインメントは楽しめません。だからこそ、余裕を作るというのは社員にも、事業にも、ユーザーにも大切ですね。切羽詰まると態度が悪くなるし、嫌な奴になってしまいがちです。時間や心の余裕を作るマネジメントは大事です。
一緒に働きたい人物とは?
MIXI 村瀬氏|
今の話にも少しつながるかもしれませんが、次のテーマは「一緒に働きたい人物像の特徴を2つ」です。横山さんいかがですか?
MIXI 横山氏|
今日登壇しているメンバーは、私以外は3人ともエンジニアです。そうやって専門領域が違う人だと言われることが刺激になる。同時に、3人とも傾聴がうまいというか、私の考えやまとまっていない思考を引き出してくれる。刺激をくれる、かつ引き出してくれるという2つをセットに会話できる人とは、良い仕事ができるなと思います。
MIXI 吉野氏|
拒否感を持っておらず、何でも「やってみましょう」というタイプ、かつ自分の得意分野があるような人が良いなと思います。
MIXI 亀山氏|
課題に対して建設的に向き合える人。あとは情報セキュリティの意識が高い人と働きたいですね(笑
MIXI 村瀬氏|
私は活発な人ですね。若い人がパソコンに前かがみにのめり込んでいる姿とかは好きですね。そういう前のめりになれる人。また、オンラインでいうと、思ったことをばんばん脳内をストリーミングで発信してくれるような人は好きで、一緒に働きたいなと思います。行動的にぱんぱんとストリーミングできる人、そして、脳内をそのままアウトプットしてくれる素直さですね。
生成AIをどう思いますか?
MIXI 村瀬氏|
次は「生成AIどう思います?」というテーマですね。MIXIではAzureAIを内包した社内向けのAIツールなどもあったりします。そういったものも含めて、今の生成AIの流れをどう思いますか?エンジニア陣はわりと流れに乗ってどんどん試したい人種だと思いますが、デザインの視点ではどうでしょう?
MIXI 横山氏|
最近見つけたトピックで、画像生成AIを使って映画を使っている人の話があります。その人はプロンプトを入れて画像を生成したら、「この前後ってどんなストーリーだった?」といったことで生成したり、「このシーンは違うアングルだとどう見えている?」と入れてみたり、生成AIを通じてストーリーテリングしたり、精度を高めたりしています。
この事例はデザイン×生成AIを考えた時に面白い使い方だと思っています。たとえば、UI開発だとしたら、「今のUIになる前にどんな改善をした?」「どんな改善をすると、何が生まれる?」「競合サービスってどんなUIになっている?」といったことをAIと対話していくと、デザイナーのインプット、インサイト(洞察)が膨らんでいきます。こうした使い方はすごく良いなと思っています。
一方で、周りからは「AIを使って一発で絵を作れるんじゃないか?」「AIで動画を作れるものはいつ実装されるか?」といった声も多いですね。
MIXI 村瀬氏|
AIを使ってぱぱっと作ることよりも、デザイナー自身の知識や感性をより高めていくといったところにこそAIを使いましょうという感覚ですね。
MIXI 横山氏|
もちろんAIを使って絵や動画を効率的に生成することも良いと思います。ただ、「かっこいい」「可愛い」というのはパッと見た時の感覚を基準に判断しやすいですが、クリエイティブの良し悪しを判断する時には、どういう文脈で何故こうなっているのか?ということも大事だと思います。そういった文脈がなく、有象無象にクリエイティブを生成していくと、逆に判断が停滞してしまう部分もあると思っています。
同時にAIを使いこなしていく上で、今話した「文脈の重要性が大事」といった私自身の感性もアップデートしていく必要性、危機感も感じています。
CXOが考える「業界で成功するために必要なスキル」は?
MIXI 村瀬氏|
次は「若手のプロフェッショナルや学生が業界で成功する必要なスキルは何だと思いますか? また、これらのスキルを磨くためのお勧め方法はありますか? 今MIXIに入るとキャリアとしてスキルとして何が嬉しいですか?」というテーマです。
MIXI 亀山氏|
自分の得意を伸ばしつつ、それをどう事業や会社に活かすか?というところが一番考える必要がある部分だと思います。たとえば、セキュリティを考えると、何もやらないことが最も安全だったりします。ただ、会社のパーパスやミッションがあり、それを実現するために事業をやっているわけです。だからこそ、「この事業や施策をやるために何をクリアすればいいか?どうしたら出来るか?」と考えて取り組むという建設的な動き方が大切になってきます。
もちろん知識や技術を身に付けることは必要です。セキュリティであればサイバーセキュリティのフレームワークであるCIS Controlsの知識等は大切ですが、それ以上に「自分の得意をどう事業や会社に活かすか?」という姿勢や動き方が重要だと考えています。これはセキュリティでも他の仕事でも一緒だと思います。
MIXI 村瀬氏|
学生や若い人たちが建設的な姿勢を持つ、会話をするためには何を磨いたらいいですか?
MIXI 亀山氏|
エンジニアでいえば、取り組む分野のエンジニアリングで課題があった時に、どんなソリューションや解決方法があるかという引き出しを自分の中でいっぱい持っておくことは大事だと思います。ソリューションをいっぱい持っていると、いろいろな提案ができるようになります。もちろん引き出しがいっぱいあっても思いつかないこともありますが、“いっぱい持っておく”ことは大事です。また、周りの人と会話して、意見や意図を聞きながらやることもやはり大事ですね。
MIXI 村瀬氏|
中途メンバーのオンボーディングや新卒メンバーには「先輩や偉い人の言うことは100%受け入れることはあっても、そのまま実行には移すな」とよく言っています。そのまま実行して良い結果になればそれも良いですが、「先輩や偉い人のいうことは、あくまでデータのひとつ。データをどう扱うか、どう決断して何をやると決めるかを自分で持ちなさい」という話ですね。これも亀山さんの話に通じるものがあると思います。いろいろなソリューションや解決方法をいっぱい持って、周りの人たちと会話して、その上で自分たちで建設的な方向を判断して実行していくことですね。
MIXI 亀山氏|
情報セキュリティの分野だとCTF(Capture The Flag)形式のハッキングコンテストなどもあります。CTFイベントだと、チームで参加して課題に対して複数人で取り組むので、手段としてはおすすめだと思います。
MIXI 村瀬氏|
吉野さんはいかがですか?
MIXI 吉野氏|
私は一番必要なスキルは合意するスキルだと思っています。合意するスキルをかみ砕くとしたら、数字などでロジックを立てること、他人を知ること、自分を知ることの掛け合わせですね。
MIXI 村瀬氏|
自分を知るにはどうしたらいいでしょう?
MIXI 吉野氏|
自己矛盾を頑張って探すとか、そういうことを繰り返すしかないかなと思います。ただ、自分を知ることは最後でよいかなと思います。それよりも、ロジックを立てる、他人を知ることですね。
MIXI 村瀬氏|
2つのスキルを磨くには何をしたらよいでしょう?
MIXI 吉野氏|
実際に提案することかなと思います。「提案する」という土俵に実際に立って、自分の提案で合意を取れるか取れないか?というチャレンジを踏み続けるしかないと思います。自分ひとりで「これはこうだ」ではなく、みんなで「やるぞっ!」という合意を取りに行くのは気合もいるので、それにもチャレンジし続けることですね。
MIXI 村瀬氏|
たとえば、新卒で会社に入った時、最初はこれまでの“文脈”を知らないので、「どうでしょう?」と提案しても断られる可能性が高いと思います。断られた時、自分の中でどう解消していけば、また次の提案をすることができますか?
MIXI 吉野氏|
提案を小出しにすることが良いと思います。みんなの前で大きく提案してダメだと、ダメージも大きいです。先輩や上司に「どうですか?」「どうですか?」と小出しに提案し続けることですね。
MIXI 村瀬氏|
いきなり大きな塊を投げ込むのではなく、細かく細かくアウトプットしてレビューしてもらう形。小さく細かく提案して、大きな合意形成までは長い期間を見ておくイメージですね。横山さんはいかがですか?
MIXI 横山氏|
必要なスキルが何か?は、成功が何か?という話かなと思います。私はデザイナーとしては、いろいろなものをデザインできる状態が成功というかデザイナーの価値だと思っています。そのためには、目の前に飛んでくるいろいろな有象無象なものをデザインすることから逃げないことだと思います。怖がらず、「これもデザインすることがあるのだな」と柔軟に取り組める人が成功していくかなと感じます。
MIXI 村瀬氏|
デザインすることが怖くなるんですか?
MIXI 横山氏|
デザイナーの人は、最初はたとえば合格した美大の学部や学科の専門性を自分の強みだと思うわけです。その時点では強みで良いのですが、その合格には何かしらの偶然性もあったはずです。それなのに、大学で4年しか勉強していない専門分野を「これが強みで、これ以外はできません」と狭くして生きてしまうと、40年50年働く上では窮屈になってしまうと感じます。
昔はもっと社会も雑で先輩や上司も雑だったので、専門や強みに関わらず、いろいろなボールが飛んできて、それを対応していくうちにデザイナーとしての体力がついたのかなと思います。ですから、所属された組織内でも、上司や先輩からでも、仕事の仕方と共にいろいろなデザインにまず触れてみて、その上で「私これも好きだな」というものを見つけると面白いデザイナーの人生になる気がします。
MIXI 村瀬氏|
無茶ぶりというと表現が良くないですが、いろいろな提案や機会をくれる上司や仲間や先輩は大事ということですか?
MIXI 横山氏|
私がその道しか通ってこなかったので、そこに確証バイアスがあるような気もしますが。ただ、自分のつくったものが通らなくても、喜んでくれる人が1人でもいれば、デザイナーとしてはもう1回挑戦できると思うので、いろいろな提案に応えて喜んでくれる人が周りに増えていったら嬉しいのではないかと思います。
MIXIのバリューを体現した仕事を自慢してください!
MIXI 村瀬氏|
最後のテーマは「あなたの分野で最近取り組んだプロジェクトで、どのようにMIXIの『発明/夢中/誠実』の価値を体現しましたか?具体的な例を挙げて説明してください」ということで、技術やデザインの自慢話をして欲しいと思います。
今日の登壇メンバーはCXOですが、3人とも現場に顔を出して、現場の人たちとわいわいと動いており、全部のプロジェクトに関わっているといっても過言ではないと思います。MIXIの仕事で「このバリューを体現しながら、こんなことをやった」というエピソードをぜひ紹介してください。
MIXI 吉野氏|
最近やっているものだと、私はスポーツが大好きなので、スポーツ周りで何か貢献したいと思ってメンバー何人かに協力してもらい、「スポーツをいかに楽しくリモートから応援できるか?」というテーマにチャレンジしています。開発したものを社内に共有すると、いくつもフィードバックがもらえて、中身をチェックして・・・とやっていると非常に楽しくて、これがバリューの「発明」や「夢中」なんだとメンバーに主張しています(笑
MIXI 村瀬氏|
自分が取り組みたいプロジェクトを自分たちで設定して、サブプロジェクト的に進行している感じですか?
MIXI 吉野氏|
そうです。メインの仕事は持ちながら、やる時間をみんなで少し確保して、「スコープはこれで、まずこれをやろう」と巻き込んでやっている形ですね。
MIXI 村瀬氏|
作っているものが自分たちの求めているコミュニケーションサービスになっているかどうかを判断できる人がそういうサポートプロジェクトをやっていると効果がありますね。亀山さんはどうですか?
MIXI 亀山氏|
「発明」という意味だと、私の部署は世の中的にすごく新しいものというよりは、考え方自体はあるけど新しいものを取り入れていく、たとえばChatGPTの社内専用環境を作ったり、ゼロトラストを取り入れたりするという形ですね。「誠実」では監査の対応など、会社として回答しないといけない場面も増えていますので、そこでの誠実さは大切にしています。「夢中」だと、夢の中でもセキュリティやインシデントのことを考えています(笑
セキュリティを守るという意味では、ホワイトハッカーに日夜ハッキングされ続けるみたいなサービスも出ており、そういったものを導入すると「まだまだ未熟な部分があるな」「早く見つかって良かった」「自分の観点とは違う脆弱性が見つかる」といったことは、ある意味で楽しい「発明」という感覚かもしれません。
MIXI 村瀬氏|
横山さんはいかがですか?
MIXI 横山氏|
冒頭でデザインをより身近にするという話をしました。最近、デザインをみんなのより身近なものにするコミュニケーションができないかな?と思って、デザイン事業本部のケイパビリティである動画クリエイティブ制作を活かして、ショート動画を作っています。
「こういうものを作りたい」というニーズがあって作ることはデザイン本部の大事な仕事ですが、同時に「こういうものを作っちゃったらどう?」というのを時々けしかけたいのがデザイナーの職能かなと思っています。そういう場を社内で作って夢中で取り組む、みんな面白がって、自分たちでも爆笑しながら作っています。こういう活動を日々の事業や組織開発の活動と並行しながら進められているというのは「発明/夢中/誠実」の実践かなと思います。
職能や事業を超えたCo-Creationの実現
MIXI 村瀬氏|
今回、カンファレンス全体のテーマとして「Co-Creation」を掲げています。私たち4人は、日々コミュニケーションしながら、現場が、経営が、数字が、データが、と領域を超えて話しています。MIXI全体でも、何ならデザイナーやエンジニアといった区分けすらしないぐらいの勢い、またオンライン/オフラインも含めて、更には社内だけでなく社外の方も巻き込んで、「夢中」で仕事していけるような環境を作りたいなと思っています。「そのために何が必要か?」ということで、最後に一言メッセージをいただいて締めていきたいと思います。
MIXI 亀山氏|
「Co-Creation」ということで、いまセキュリティの啓発活動でデザイン本部に協力してもらっていたり、セキュリティの実装・導入というところで開発本部に協力してもらっていたりしますが、まだ一部にとどまっているかと思います。だからこそ「セキュリティと開発本部が組むことでこういうことができるよ」「デザインと組むことでこんなことができるよ」というのを私も含めて横山さんや吉野さんからも発信して、気づきを生んでいくことはしていきたいと思います。
MIXI 吉野氏|
「Co-Creation」を推進していくうえでは、やはり旗印の存在が大事かなと思っていて、私も含めてビジョンを上手く話せる、伝えられる人を社内で増やしていきたいと思っています。
MIXI 横山氏|
デザイン本部には3人の部室長がおり、出社したとき、偶に「階の移動をどれぐらいしていますか?」と話しています。MIXIの執務スペースは7フロアあって、それぞれの事業部に分かれています。吉野さんが出社時にすると話していた“社内散歩”がすごく大事で、他の職能、他の事業部との「Co-Creation」につながると思います。
さきほどデザイン本部でのバリュー実践としてショート動画の話をしましたが、実はショート動画の企画は、亀山さんとの1on1で生まれた話がヒントになっています。同じように、いろいろな人、職能を超えたコラボが増えるとより良いものが生まれると思います。
MIXI 村瀬氏|
お三方ありがとうございます。これで本セッションを終了します。ぜひ今後もMIXIを応援していただければと思います。本日はありがとうございました!