この記事は、2023年6月1日に開催された「マーケターの集い」のセッションレポートです。イベント全体のレポートはこちらからご覧ください。
自社のビジネスグロースに必要な戦略/戦術とチームビルディング
戦略:目標を達成するための戦い方
ディー・エヌ・エー 今西氏|
株式会社ディー・エヌ・エーの今西と申します。今回は「“戦略から戦術をConnect”実行をするチームビルディング」と題し、まず戦略と戦術の話に触れた後、チームビルディングについて紹介させていただきます。ボリュームとして、今日話す内容について普段はワークショップ形式などで4〜5時間でやるので、30分の限られた時間で少し駆け足になるかもしませんが、よろしくお願いします。
皆様は戦略・戦術を実行するのに、なぜチームビルディングが重要になると思いますか?
まず戦略というのは、「目標を達成するための戦い方」のことで、自社のビジネスをグロースさせ、勝つにはどうしたら良いのかという時に、その前提として必ず戦略が必要になり、複数のやることの中から意思決定をして、やること、やらないことを決めていきます。
では、なぜ必要なのかというと、まず達成すべき目標があること、そしてリソースの限界があることという二つの理由があります。目標というのはビジョンや、売り上げ2億円達成などの数値目標です。またディー・エヌ・エーのアプリでよく使う指標である、マンスリーアクティブユーザー(MAU)などもあります。
一方のリソースはいわゆるヒト・カネ・モノなどで、これには限界があるので取捨選択する必要があります。というところです。
このように、戦略の要素としての目標とリソースがあり、特にリソースを配分するための選択・意思決定が重要になります。
戦術:チームビルディングを含めた具体的なアクション
次に戦術とは「具体的なアクション」のことです。リソースの中で特に何が重要かというと、もちろん「カネ」もありますが、それ以上に戦略戦術を実行する「ヒト」が大切になります。ヒトが重要なリソースである中、目標を達成していくにはチーム組成と、その中で各メンバーがどうパーソナルベストを出していくかという部分を、マネージャーは作っていく必要があります。戦略戦術パートは、まだまだあるのですが限られた時間もあるので、本日はヒトが作り出すチームビルディングというのにフォーカスして、お話しできればと思います。
「良いチーム」とは一人一人が「リーダー」として目指すべきもの
チーム:社内外通じて、同じ目標達成へ向けサポートし合う集団
ディー・エヌ・エー 今西氏|
それでは、チームの定義とは何でしょう?それは「同じ目標達成へ向けてサポートし合う集団」のことです。ポイントとしては、社内と社外の両方に関係者がいるということです。仕事で成果を出すには、社内外問わずにワンチームとして動けるかが全てです。
私は出稿する側の広告主として、社外で担当いただいている代理店さんやパートナーの方に出世してもらうということを、目的の1つとして入れてる場合があります。
どういうことかというと、同じ目標に向かって連携するパートナーの会社の中でも同様にリソースがあり、当然優秀な方に担当をついて欲しいものです。そのためには、パートナー会社の方に便益を作る必要が前提としてあります。ここでいう便益は、当然相手の売上になる直接的な出稿金額(広告費)もありますが、担当の方の新しいチャレンジだったり、一緒にプロジェクトをやることにより相手の方が更なる成長されて出世いただくようなことがあれば、長期間に渡って担当頂きやすい確率は上がります。
広告主はチームとして結果を出すことはもちろんですが、結果を出すために担当いただいている方にとって便益となりうる環境は何なのかまで、気を配れるかどうかは大切です。チーム組成は社内外含めてワンチームにして行く過程は、成功の蓋然性を上げていくには必要なアクションです。
良いチーム:一人一人がリーダー(マネジメント)として仕事に取り組む
ここまでの話を踏まえ、「良いチーム」とはどういうチームだと思いますか?良いチームにしていく仕事は、決して部長やマネージャーだけがする仕事ではなく、チームメンバーの一人一人が取り組んでいく必要があります。
このパートの冒頭では「リーダー(マネジメント)の仕事」と掲げましたが、これは役職者という意味ではなく、ぜひどなたにもリーダーの視点を持っていただけたらと思います。また、現時点でリーダーじゃない方は、上司はこういう目線でやっているのかとか、自分が将来リーダーにこういう視点を持ってやろうとか、そういう視点で聞いて頂ければと思います。
そもそも、マネジメント層やリーダーの仕事とは何でしょうか?
マネジメントという意味は2つあると思います。1つは、経営という意味で事業をグロースさせること。2つ目は管理するという英語の意味もありますが、勝つための組織作りです。英語だと管理というワードが出ますが、ニュアンスとしては管理ではなく、メンバーが気持ちよく仕事ができて能力を最大限発揮できる状況を作り上げ支えていく「チームビルディング」をしていくということです。
やはり事業というものは、成功し勝たないと継続していけませんので「経営」が最優先であることはいうまでもありません。ただし、その「経営」を達成するために「ヒト・組織のマネジメント」が前提として必要であると整理することができます。
「侍ジャパン」になれる? –強いチーム作りは多様な個性を活かす「ROOKIES」の監督を目指せ
私は、ディー・エヌ・エーでの仕事と並行し、副業で様々な企業のコンサルティングを行なっていることもありますが、そのとき「強いチームを作りたいのですが、いいメンバーがいません。チーム作りはどのように行えば良いでしょうか?」という相談を受けることがとても多いです。
本音をいえば、「いいメンバーがチームにいらっしゃるのに、マネージャーが見えていないだけではないでしょうか?」と言いたい部分も少しだけあるんですが(笑)、まずは個々人の長所と向き合うのが第一歩です。ビジネスの成功は短所を補っても難しくて、長所を徹底的に伸ばすのが早いと思っております。もちろん短所は必要最低限カバーする必要ありますが、時間の掛け方のバランスは長所に重点をおくべきです。
もちろん理想としては「侍ジャパン」のように、各球団からエースがいっぱい来てくれたら言うことないでしょう。しかし、現実に仕事をする上で、そのような「選りすぐりのチームのマネージャーになってください」などというオファーをもらえる機会はほとんどありません。少なくとも私の経験でも、「ここのチームの部長/マネージャーになってください」といわれたときに、メンバー全員が完璧という状況はそうそうないですが、それはチームの「伸びしろ」がまだまだあると言えるので、マネージャーとしてはこの上ない「やりがい」がある状況です。
実態はむしろ、漫画・ドラマ作品「ROOKIES」に近いと思います。この話の内容は、不良少年の溜まり場となってた野球部が、熱い魂をもった1人の監督によって、不良メンバー1人1人の個性が引き出されて行って、甲子園を目指すという野球漫画です。まさにチームビルディングを目の当たりにできます。例えばピッチャーでボールを投げるのが速い人もいれば、足が速い人もいたり、ムードメーカーな人や、高いリーダーシップの人など、短所はおいておき、それぞれの多様な個性長所を活かしていくことが重要だということで、実際の組織もこれに近いと思います。
「美しい景色を探すな!景色の中に美しいものを見つける」–マネージャーの仕事は「現有戦力の最大化」
侍ジャパンのように「全員が四番を打てます」ということではない、ROOKIES型のタイプの方が現実には多いかと思います。そうした中、マネージャーの仕事として重要になるのが「現有戦力の最大化」です。
画家のゴッホの言葉に「美しい景色を探すな!景色の中に美しいものを見つけるんだ」というものがありますが、実はこのスタンスがとても大事で、侍ジャパンのように完璧な選手たちが急に自分の組織に送り込まれるなどということは稀有なので、基本的には一人一人の能力をどう伸ばしていくかということがマネージャーの仕事になります。その上で、自分のチームの現時点の能力を最大化しつつ、それでも足りない能力があるとするならば外部登用も検討して、勝つための人材戦略を練り上げるのもマネージャーの役目です。
「強い組織」とはメンバーが自走し、その言葉に力と自身があふれ、目標達成に尽力する「We want〜」なチーム
強い組織:メンバーが目標に向かって、各々自走できている組織
ディー・エヌ・エー 今西氏|
それでは、そもそも「強い組織」というのは何でしょうか?結論としては、「メンバーが目標に向かって、各々自走できている組織」という定義を、私はいつも挙げています。
もしかしたら「自走」といっても、聞き慣れない方がいるかもしれないので補足します。これはまず、与えられた指示で動くのではなく、自分で考え行動に移せること、つまり指示待ち型でないことが重要です。
次にリーダーの強い言葉に加え、メンバー自身の言葉に力と自信がみなぎっている状態。それから、立場・役割関係なく、目標達成に尽力しているかという点がメンバーに共通して見られると思います。
また「should → want」、「I → We」ということで、メンバーが「〜すべき」ではなく「〜したい」と思う、もしくは主語が「私」から「私たち(=チーム)」に変わる状態にどう持っていくのかということです。
強いチームの条件1:リーダーが社内の人間を理解できている
それでは、この状態に持っていくためにリーダーがやるべきことを見ていきましょう。
まず「自走」とは逆の状態、目標に向かわずバラバラになってしまっていてはダメです。ここで重要になるのが自分のチーム内で「各々の人間理解ができていますか?」という点です。
私自身もすべてできているわけではないのですが、自戒を込めてこのことを「社内のメンバーの細部まで理解していますか?」と自分自身にも問うてますし、社内でもよく話しています。
よくマーケターは「人間理解が重要」と言われますが、それは大抵、社外のお客様に自社のサービスを使ってもらうための人間理解という意味で使われることが多く、一方で社外のお客様にサービスを伝えていく重要な役割を担っている社内の人のことをわかっていないケースもあるのではないかと思っています。
さらにいえば、本来、社内の方の人間理解もできずに、社外のお客様を理解するなんてことは不可能です。社内のメンバーのことすら理解できていないのに、社外の人のことをリサーチしようと思ってもおそらく難しいだろうと思います。なぜなら自分から見て顔の見える範囲にいる半径5メートル以内の人のことがわからずに、まだ会ったことのないお客様の理解は難しいからです。
強いチームの条件2:人間理解には「Will、Can、Must」の整理と「喜怒哀楽」の把握を
まずは社内にはどういう人がいて、どんなことに対してなら燃えるのかといったことをきちんと理解することが大切です。よく「Will、Can、Must」といっているのですが、まず「Will」はその人がやりたいことで、「Can」はその人ができること、そして「Must」はその人がやらなければならないことです。これらをきちんと整理し、用意していくことがマネージャーの仕事として重要です。メンバーの居場所作りというか、一番力を発揮できる場の提供です。
そして「喜怒哀楽」です。メンバーの方がどういうときに笑ったり、悲しんだり、怒ったりしているかを把握する。きっと「そこまでするのは過保護だ」と思われる方もおられるかもしれませんが、私は現代にあっては、これはもはや当たり前のことだと考えております。ダイバーシティが広がる昨今では、出世したい人や給料あげたい人ばかりではなく、楽しく働けるだけで満足される人もいるし、必ず定時に帰ることを重視するワークライフバランス型もいたり、その価値観は多岐にわたってるんで、理解をしておき、最適な環境を提供することは人事だけではなく、全マネージャーが求められます。
強いチームの条件3:チームに幸せの機会を提供しよう
「強いチーム」の第三の要素は、「チームに幸せの機会を提供しましょう」というものです。これはマーティン・セリグマン博士が言っているポジティブ心理学の内容ですが、幸せには「達成」、「快楽」、「没頭」、「良好な人間関係」、「意味合い」という5つの種類があり、これをメンバーに提供することで「強いチーム」に近づいていくという考え方です。
以上をまとめると、マネジメント層がすべきことは「メンバー自らが率先して動く組織(=自走)」、「メンバーの人間理解」、「幸せの機会の提供」の三つが、マネージャー側のデフォルトの機能として必要です。
チームビルディングで大切な考え方
メンバーの中長期のキャリアに向き合う
ディー・エヌ・エー 今西氏|
ここからは、さらに大切にしたい考えをお伝えできたらと思います。まず、先ほどの人間理解とも重複しますが、メンバーの「中長期のキャリア」をきちんと理解できているか。
前述の「Will」、「Can」、「Must」の交差部分が多ければ多いほど、その方のキャリアの満足度がすごく上がります。キャリアの満足度というのはその方の日々の積み上げで、マーケティング的にいうとLTV(ライフタイムバリュー)です。このバランスがいいと、その方が離職せずに今の会社で仕事をやり続けてもらえる可能性がとても高まります。ですからここはきちんと理解をしてあげて、満足度を上げていくことが大切になります。
リーダーに求められる「ロジック」と「パッション」のバランス
次に重要なのが「ロジック」と「パッション」のバランスで、これも役職に関わらず、「リーダー」として誰にも必要とされる要素です。
ロジックだけの「賢い人」とは一緒に働きたいと思わないものです。皆様も「この人、『数字、数字』うるさいな」と思うシーンがあるのではないでしょうか。もちろんビジネスでは数字という世界共通指標で判断するのは当然であり正しいですが、その過程は必ずしもワクワクするものでもないので、ロジック一辺倒では突破できない部分もあります。
一方、パッションだけの熱い人もこれはこれで煙たがられます。メンバーから「この施策やりたいです!」と言われ、「そのロジックは?」と質問した場合に、メンバーが「今から考えます!」といった勢いだけの人には、会社の予算を預けられません。
このように、やはりどちらかだけではダメで、特にリーダーである人には両方が必要です。
例えば、スライド左側のロジックゾーンで目標達成のために何が必要かというと、まず「根拠1:お客様の理解」があり、続いて「根拠2:PL*1Profit and Loss Statement、損益計算書・BS*2Balance Sheet(バランスシート)、貸借対照表・ROI*3Return On Investment、投資収益率」、そして「根拠3:先見性」つまり先を見て、物事を構造化する能力が重要です。
他方、スライド右側のパッションゾーンでは「熱い思い」、「人間性」、「コミット力・継続力」が必要で、これら両方のバランスがとても重要になります。
マネージャーの仕事は、経営層と現場の情報を隔てる「川」に橋を架けること
そのほか、「マネージャーの仕事」は何かと考えると、私はよく「流れを良くする仕事」と表現しています。経営層と現場メンバーの間には必ず「川」が流れています。この「川」というのは情報の隔たりのことです。
社長が知っている情報と現場の最前線にいるメンバーが知っている情報とを比べると、見えている世界が全く異なりますから、そこに橋を架けるのがマネージャーの仕事です。
つまり、経営層がやりたいことと、メンバーがやりたいことの間を取って、調整してあげることが一番必要とされます。例えばメンバーが「社長は現場の状況をわかってくれない」といっているときに、「いや、社長の目線はこうなのだ」と説明したり、一方でメンバーには「こういう風にして頑張れ」と激励したり、やはりマネージャーにはそこをうまく調整していくことが能力として求められてきていると感じています。
徹底的な自己開示にプライベートの出来事も添え発信
その際、リーダーが「自己開示」を行うことがとても重要になってきます。つまり、タスク進捗・課題・考えなどをきちんと書き、私の場合は毎週1万字ほど書いてメンバーに送っています。原稿用紙に換算して25枚分ですから、分量として結構多いです。
ここで普通に日記などを書いていても全然意味がなく、具体的に「これがうまくいっていない、ここの部分がダメだ」と、きちんと事業の進捗を書くのがポイントです。情報という「川」は、メンバーとマネージャーとでは見ている世界が違ってきますから、そこをブリッジするためにも積極的な自己開示が必要になります。
ただし、事業進捗だけを1万字書いていたのでは、ロイヤリティーの低い社員は読むわけがないので、例えば末尾に「最近のNetflixでは、『サンクチュアリ』や、『あいの里』が面白い」など、プライベートでの出来事なども盛り込んでおけば、雑談のきっかけになったりしていいでしょう。
それから、「こういう風に評価を行っています」と伝えることも重要です。評価の部分は基本的にブラックボックスになりがちです。たとえ、給料が何となく上がっていたとしても、メンバーには大抵納得感がないことが多いです。そこをきちんとつまびらかにするということも、「自己開示」の役割の一つだと思います。自分のメンバーの方に日報を出しなさいってコミュニケーションをする上長は多いと思いますが、そういう方はまず自分が日報を出してみてはいかがでしょうか?
「わからない」ということの大切さ
そして、リーダーにとって大切なのは、背伸びはやめ、「わからないことは、わからないと積極的にいいましょう」ということです。例えば私の場合、「ここの部署の部長をやってください」と言われた時に、自分が普段やっていた業務の延長で役職に着くならともかく、いきなり他部署のマネージャーやってくださいとなると、わからないことだらけです。
新しい環境では、わかっていることはほとんどないので、そこでわかったふりをするとメンバーとの壁ができるばかりですから、何でも積極的に聞くようにしています。
正直に「わからない」といったときに何が起こるかというと、経験上、必ずメンバーが張り切って教えてくれたりします。「ここがわからない」と伝えると、「私、これやります」と手を挙げてくれるものですから、この辺りはオープンにしていくといいのではないかと思います。この状況を作り出すのは、人間性も含めて助けてあげたいと思われることも大切です。
「前衛」と「後衛」の役割の定義
それと同じくらい重要なのが「役割の定義」です。マネージャーや部長ともなるとそれは忙しく、時間もなくなりがちです。そんな場合、決してやってはいけないのはメンバーの仕事の範囲に乱入することです。例えば、営業組織のメンバーの営業成績が悪いとき、そのマネージャーが「私が行って契約取ってくるよ」とやってしまうことで、メンバーのモチベーションが下がってしまいます。
場合によっては、目標を達成する上での一手段として、そうすることが必要な場面もあるので否定はしないですが、メンバーの成長サポートという観点からするとあまり良くないです。
それではどうしたらいいかというと、各メンバーに自走してもらうため、前衛と後衛のバランスを考えようということです。
マネージャーが果たす役割のうち、方針説明や意思決定などの「前衛」は、基本的に工数全体の1割です。残りの9割は後衛から戦況・士気の把握しながら鼓舞をしたり、戦術をUPDATEしたりすることです。「全部私がやるんだ」といったスタンスは即刻やめ、後ろから見守ることが重要です。
後ろからやるべきこととしては、メンバーが皆方針通り動けているかや、戦況がどうなっているかを把握することが大切です。例えばSlackでやりとりしていると、メンバーの1人が明らかに日々悩んで苦戦している場合もあると思います。
そんな中、その人とOne on Oneを行う際に本音をいってもらえるかどうかがとても重要です。メンバーは大抵、「うまくいっています!」と報告してくることが多いですが、日々最後衛で見守っていれば無理をしていることもわかるし、そうなったときに寄り添うための判断も利きます。これは前衛で張り切ってるだけのマネージャーだと気づけないこともあります。
そういう意味でも、マネージャーがここのバランスを間違え、最前衛に行ってしまわないということは極めて重要だと思います。
前衛しかやらなくなると、まず状況を俯瞰的に見れなくなり本来ならマネージャーがコミットしている戦略〜戦術実行までの管理が難しくなります。その状況になると、マネージャー自身の工数がいっぱいになり結果、勝つべき目標に対して負けていってしまうというのはよくあるパターンだと思うので要注意です。
強い組織に必要な考え:事業をグロースさせることが第一
以上をまとめると、「強い組織」に必要な考えとは結局、「事業をグロースさせるのが第一」というものです。事業をグロースさせれば利益が出て、そこから給料が出ているわけです。マネージャーは事業をグロースさせるのを疎かにし、メンバーに寄り添うことだけに時間を割くのは、マネージャーの自己満足にしかなりません。短期的には良いかもしれませんが、中長期ではメンバーの気持ちは続きません。グロースさせることにより、メンバーは顔を上げて前を向いて成長し、頼もしく事業をリードするようになってもらえます。
ただし、グロースさせていくにはマネージャー一人の力だけでは難しいので、メンバーが自走できるということが何より重要です。前述の「want」軸で動くには組織・メンバーのどのような欲求に応えればいいのか。それから、メンバーのことをしっかり理解できているかや、幸せの機会を提供できているかが大切だというお話をしました。
次に目的・目標・価値基準をきちんと揃えましょうということです。目標を達成するためには戦略と戦術とリソースの差配が必要ですが、これらを随時アップデートすることが肝心です。
それと同時に、メンバーの居場所や心理的安全性を常に確保することも極めて重要です。
テクニック以上に重要なのは、メンバーへの「愛」があるか
たった1分の「詰め」もメンバーには大きな衝撃に
ディー・エヌ・エー 今西氏|
実は今日、一番お伝えしたいのは、ここまで話してきたような「テクニック」の話ではないです。もちろんテクニック論も知ってるか知らないかだと知っておいた方がいいと思います。
ただ、結局は、愛があるかどうか、ということに尽きます。マネージャーがメンバーと話すときに愛がない指摘をしても全く意味がありません。
例えばメンバーと30分間のOne on Oneをしたとします。マネージャーの目線からすると、30分間のミーティングで1分しか指摘は行わず、残りの29分は褒めたり感謝したり、承認したのだから適切だと本人は自己満足で思っています。
ところが、このときメンバーの頭の中はどうなっているかというと、たった1分間指摘を受けただけでも、「たくさん詰められた」と思ってしまうのです。
チームビルディングに正解なし。愛と感謝と承認で、信頼関係の構築を
こうならないために必要なのが、今日お話ししてきた「チームビルディング」です。
まずどのように信頼を得るのか。マネージャーとメンバーの信頼関係ができていたら、絶対にこのようなことにはなりません。特に新入社員や新しいメンバーがジョインしたときはこうなりがちですから、要注意です。
よくあるのは、マネージャーに指摘されたことを「こんなことを言われた」と周りにいってしまったりするので、それも見越した上でその方とどう接することができるかが、リーダーに求められる「人間力」なのだと思います。
ですから、One on Oneでは99%、「あなたに感謝しています」と伝えることが大前提で、突き詰めると感謝と承認しかないです。
進捗管理のOne on Oneをするマネージャーの方が多いですが、それは今すぐやめた方がいいです。進捗管理はExcelなどを見ればすぐ把握できますし、One on Oneというのはキャリアなど未来について話す場であり、過去の進捗を口うるさく言うものではありません。どういう風に信頼関係を築いていくかという視点で行っていくべきだと思います。
チームビルディングに正解はありません。今年の「マーケターの集い」のテーマは「また会いたい人に出会う」で、私自身またさまざまな機会に皆様に会いたいと思っていますし、もし今日の話を聞いて「もっと聞きたい」、「今日の出会いが良かったな」と半年後や1年後に思っていただけるならとても嬉しいです。
「皆さんのまた会いたいと思う、ビジネスパーソンはどのような人でしょうか?」
会いたいと思う人になるには、日々自分磨きをして勉強するしかありません。