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アダストリアのECサイト「and ST」が見据えるスピーディーな行動分析から顧客体験価値の向上へ|Growth Summit 2024セッションレポート

2025.03.04

会員数1,920万人を超えるECサイト「and ST(アンドエスティ)」を展開する株式会社アダストリア様をゲストに迎え、顧客体験価値を向上させるためのデータ活用についてお伺いします。オムニチャネル利用推進などの戦略を実行するうえでのデータ分析における課題感とは?また、課題解決の一手として行動分析ツール「Amplitude」の導入を決めた狙い、今後の見通しに迫ります!分析に時間がかかる… ECとリアル店舗を跨いだ分析が出来ていない… といった方は必見です!

※レポートは一部カット箇所がございます。あらかじめご了承ください。

会員数1,920万を超えるアダストリアのECサイト「and ST」

DearOne 松田|
「アダストリアのECサイト『and ST』が見据えるスピーディーな行動分析から顧客体験価値の向上へ」トークセッションを始めます。皆様から自己紹介をお願いします。

株式会社アダストリア
ドットエスティ事業部
アシスタントマネージャー
上田 航大 様

アダストリア 上田氏|
株式会社アダストリアのドットエスティ事業部の上田です。アダストリアでは、9年前に学生アルバイトとして仕事を始めました。「RAGEBLUE(レイジブルー)」というメンズブランドで店舗スタッフとして4年間従事しておりました。その後、新卒としてアダストリアに入社し、主に自社ECサイト『and ST』の運営、コンテンツ企画や会員獲得を行っていました。2020年秋頃からパーソナライズ化やデータ分析を担当し、現在はand STのCRM、またパーソナライゼーションのプロジェクトリーダーとして勤務しています。本日はよろしくお願いします。

株式会社アダストリア
ドットエスティ事業部
アシスタントマネージャー
平田 みず希様

アダストリア 平田氏|
アダストリアの平田です。上田と同じくドットエスティ事業部に所属しております。新卒でアダストリアに入社して、「HARE(ハレ)」というブランドで店長、スーパーバイザーを経験してきました。2019年からリアル店舗での経験を活かして、主に店舗を中心とした会員獲得の推進やEC運用を実施してきました。2023年からCRMチームに加わり、現在はデータ分析や、店舗経由のアプリ活用など、リアルとデジタルを横断した顧客体験の向上推進に取り組んでいます。本日はよろしくお願いいたします。

DearOne 小島|
DearOneの小島です。Amplitudeという分析ツールの導入や活用コンサルタントとして、アダストリア様を担当しています。本日はよろしくお願いいたします。

DearOne 松田|
進行役は、DearOneのマーケティング部でゼネラルマネージャーをしている松田が担当します。

【アジェンダ】アダストリアのECサイト「and ST」が見据えるスピーディーな行動分析から顧客体験価値の向上へ

本セッションでは顧客体験価値を向上させるためのデータ活用について、まず「課題」、そして「解決策」、最後に「今後の見通し」という3つの観点から、アダストリア様の事例をお伺いしていきます。私はtoCやtoBのマーケティング分野を経験してきましたので、本日はマーケターの方々が聞きたいと思うところを深掘りしていければと思います。よろしくお願いいたします。

始めに上田様より株式会社アダストリア様、そしてand STについて紹介いただけますか。

株式会社アダストリアの概要

アダストリア 上田氏|
まず株式会社アダストリアの紹介をさせていただきます。弊社は、アパレルとライフスタイルアイテムの製造から販売まで行っている小売企業です。

恐らくアダストリアという会社名よりも、「GLOBAL WORK」や「niko and …」「LOWRYS FARM」といったブランド名で認知されている方が多いかと思います。こうしたブランドで、ショッピングセンターや駅ビル、ファッションビルなどのテナントに出店しており、国内外で合計1,500店舗ほどの運営をしています。国内に限定すると、約1,400店舗を全国に展開しています。

and STとは?

アダストリアの特徴として、and STという名称で会員制度を作っており、店舗と自社ECで共通する会員制度になっています。スライドには「のべ1,820万人突破」とありますが、直近で1,920万人に到達しており、2,000万人の大台が見えてきた状態です。

and STは、2024年10月23日にこれまでの名称「.st(ドットエスティ)」から「and ST(アンドエスティ)」に名称を変更いたしました。

これまで10年間、ドットエスティの名称でECサイトを運営してきましたが、現在、アダストリアでは“グッドコミュニティ共創カンパニー”を目指すと掲げています。これに伴って、ドットエスティも従来のECサイトから脱却して、お客様、他社、地域など皆さんともっと繋がることを意識したファッショントータルプラットフォームになっていくという決意で名称変更して、and STという新名称で運営しています。

現在、and STの流通総額としては約360億円、会員数は先ほどお伝えした通り、1,920万人を超えています。会員数の下にアプリ1,000万DLとありますが、and STの会員様1,920万人のうち、我々の商品・ブランドに愛着をもって利用してくださっている方々がアプリ会員様になります。アダストリアでは、約3年前からアプリ会員様に注力して施策やサービス開発を進めており、現在1,000万人のお客様にアプリDLいただいている状態になっています。

and STの強みは、会員数の他に2つあります。

1つは、スタッフ参加型のコンテンツ「STAFF BOARD」の運営です。店舗スタッフの皆さんが店舗に自分のスタイリングを撮影して投稿するというコンテンツです。and STでは、現在自社ブランド以外へのオープン化を進めており、アダストリアの自社店舗だけでなく、出店いただいている企業のスタッフさんにも投稿いただいており、「STAFF BOARD」にスタイリングを投稿いただいているスタッフが4,000人以上いらっしゃる状態になっています。

また、自社ブランド以外へのオープン化は2022年の春頃から進めており、これまで17社19ブランドにand STへ出店いただいています。美容家電の「ヤーマン」様、シューズの「ORiental TRaffic」様などに出店いただいていますが、今後も拡大していくフェーズに入っています。

アダストリアの成功を支えるマーケティング体制とKGI/KPIとは?

DearOne 松田|
直近で1,920万人を突破されたとのことで、非常に多くの会員様を抱えていらっしゃいます。マーケティング的な思考でいくと「会員数をどれだけ増やすか」「どれだけ会員様がアクティブな状態を作っていくか」の2つが、マーケティングチームが担うミッションの大枠になると思いますが、改めて上田様・平田様が現在取り組まれている業務の体制や、設定されているKGI/KPIについて公開できる範囲で教えていただけますでしょうか。

アダストリアのデータ分析体制

アダストリア 上田氏|
まず体制から簡単にお伝えします。私たちはand STという自社ECサイトを運営していますが、ECという観点では、他にもZOZOTOWNさんやRakuten Fashion(楽天ファッション)さんにも出店しております。

その中でも、2024年3月から、and STに注力しようということでドットエスティ事業部が誕生し、私たちはデータ・パーソナライズチームに所属しています。また、事業部にはもう一つ、オープン化チームがあり、“and STでしかできないこと”として、2つの軸で活動しています。

チームの業務範囲は、パーソナライズ、マーケティングオートメーション(MA)、Web接客、and STの会員様を獲得して育てる、アプリやECサイト全体のUI/UX設計という大きく5つのパートに分かれています。そして、5つに共通する土台としてデータ分析を置いており、チーム全員がビッグデータにアクセスして自分たちでクエリを書いたりしながらデータ分析をしております。

スライドでは、5つのパートそれぞれがユニットであるように書いてありますが、実際には各ユニット1名で、私も含めた合計6人で分析、パーソナライズやMAであればシナリオ作成、会員獲得であれば店舗とのリレーションをするなど、少数精鋭で業務を担当しています。

アダストリアのデータチームのKGI・KPI

次にデータ・パーソナライズチームのKGI/KPIですが、KGIに関しては売上、そしてアクティブ率を指標として活動しています。

もう一段掘り下げて紹介すると、売上は会社全体の売上等ではなく、先ほど流通総額が約360億円とお伝えしましたが、自社ECの売上を伸ばすということが最大のミッションになっています。

また、先ほど紹介したようにand STはECの会員様だけではなくリアル店舗の会員プログラムも兼ねていますので、リアルとECの合計で会員様の売上比率が目標に対してどれくらい進捗しているかが売上のKGIになっています。

もう1つのKGIがアクティブ率です。たくさんの会員様に登録いただき、商品を購入いただいていますが、全員にずっと買い続けていただけるわけではありません。その中で、アダストリアではリアルとECを併せた「直近1年間の会員の購買率」をアクティブ率と定義して運営しています。今後新たなサービス等の展開も考えていますので、そうなると売上額だけでは測れない部分も出てきます。それも含めて「会員様がand STで活動し続けてくれているか」という観点で、アクティブ率をKGIとして設定している形です。

アダストリアのデータチームのKGI・KPI|KGIを分解すると…

KGIに紐づくKPIですが、基本的にはECサイトですので、UU、CV、顧客単価、また、新規/既存といったKPIへの分解は一般的な指標です。その中で、特徴的な指標があるかと考えた時、重視しているKPIの特徴として3つあります。1つ目はアプリ継続率、2つ目はオムニ会員数、3つ目がF2転換率です。

アプリ継続率は、and STのアプリ会員様はロイヤリティが高い会員様が多い中で、会員様が翌月、翌半期、翌年と使い続けてくれているかという指標を追っています。

また、オムニ会員数はリアルとECの両方で購入いただいている会員様です。オムニ会員数をKPIとして重視している理由は、また後ほど詳細を紹介します。

最後にF2転換率です。F2転換はアダストリア独自の課題ではなく、小売業の企業共通ですが、1回買っていただいたお客様に、どう2回目に転換いただくかは非常に大きな課題となっています。アダストリアの場合、2回目を超えると、3回目4回目への転換率は非常に高くなっているため、2回目をどう乗り越えるかが重要なKPIになっています。

アダストリアのデータチームのKGI・KPI|施策の実施回数

また、最後にもう1つKPIを設けており、それが施策の実行回数です。アプリの継続率やオムニ会員数といったKPIは、私たちの日々の施策で直接的にすぐ動かせる数字ではありません。

同時に何かしらのアクション、施策であったりサービス改定であったりをしなければ、数字は上がっていきません。ただ、ひとつひとつのアクションを先ほどの3つのKPIだけで評価すると、大半の施策は「KPIは動かず意味がないね」となってしまいます。では、数字が動かなければ何も意味がないかというと、そうではないと思っています。失敗した数も含めてどれだけアクションを起こしたかが大事で、私たちでコントロールできる数として、施策の実施回数をKPIに設定して活動しています。

一方で、施策の実行回数を伸ばすことはなかなか難しい部分もあり、私たちも課題に感じていた部分がありました。課題の部分は平田から説明させていただきます。

データ・パーソナライズチームが抱えた課題とは?

アダストリア 平田氏|
上田から説明したように、データ・パーソナライズチームでは、オムニ会員数やF2転換率、アプリの継続利用率といったKPIに対して、各セクション担当がデータ抽出から分析まで実施しています。データを分析・活用して、施策を実施したり、UI/UXを改善したり、会員プログラムの改訂を提案したりしています。

チームの強みとして全員がクエリを書いて分析できる、1人でPDCAを完結できる点があります。一方で、1回のPDCAにかなり時間がかかっていました。そうなると、KPIである施策の量産が実現しません。

アダストリアのデータチームの課題

課題の要因が何かを考えた時、「分析に時間がかかっている」という点がありました。分析の流れとして「そもそも、データにどういう特徴があるか?KPI改善につながる特徴が何か?」という部分は推測から始まる側面が多分にあります。「何となくこの辺りに課題や要因があるのではないか」と推測して、SQLでクエリを書いてデータを抽出する。そして抽出したデータを分析して要素を抽出するまでに、まずそれなりの時間がかかります。

こうして分析を終えて、ようやく施策を企画・実施できるわけですが、施策を実施したら次に検証する必要があります。検証でもSQLでクエリを書いて分析するという流れがあり、これで1回のPDCAが回ります。

アダストリアのデータチームの出した解決策

このプロセスの中で、分析に時間が取られ、複数の施策を回すリソースがなかなか確保できないという問題がありました。

データ分析の自動化で施策量産へ!Amplitudeがもたらす圧倒的なスピード感

アダストリアのデータチームの出した解決策|Amplitudeによる効率化

要素抽出のためにクエリを書く部分などを省き、分析時間を短縮するためにApmitudeの導入を決めました。Amplitudeがデータを自動で分析・可視化してくれるので、KPI改善につながる特徴や要素の推測、分析工数を丸ごとAmplitudeが自動化してくれる形になっています。

また、施策の立案・実施というフェーズに関しても、要素分析の工数がなくなったことで、並行して施策を動かせるようになりました。並行して施策を動かすと検証の回数も増えますが、Amplitudeが一連の流れで検証も実施してくれます。

これによって要因分析にかかっていた時間、検証にかかっていた時間が、大幅に短縮され、課題になっていた施策の量産が実現しました。

DearOne 松田|
データ分析に時間がかかっていたため、データドリブンに施策の回数を増やしていくことに限界がある。そこで分析スピードを上げて施策回数を増やすためにAmplitudeを導入したというお話ですね。

私自身の経験と照らし合わせると、アダストリア様のチーム全員がSQLを書けるというのは非常に強い体制だと思います。一方で私が過去に在籍していた会社ではデータ分析は分析チームに依頼しデータが上がってくるのを待ち、それから施策を回すといった形でもっとスピードは遅かった記憶があります。

Amplitudeの導入支援を多くの会社で実施されている小島さんから見て、データ分析の工数といった課題感は、他社ではどうですか?

DearOne 小島|
データ分析に時間がかかっていて、施策数が増えないという企業は多いと思います。アダストリア様の場合、アパレルショップの現場からマーケティングチームに異動された方々がSQLを身に付けるというハードルを越えられているわけです。それでもデータ分析に時間がかかるという課題に当たっており、他社ではより顕著な課題になっていると思います。

サービスグロースを実現する「市場学習回数」

サービスグロースには「市場学習回数」が重要

なお、先ほど上田様のお話にあったKPIに施策回数を設定するというのは、デジタルマーケティングにおいて非常に重要です。

ここ数年、A/Bテストや施策回数のことを「市場学習回数」と呼び、市場学習回数を増やすことがサービスの成長に繋がるという考えが広まっています。NetflixやAmazonのような先進企業は市場学習回数が多いことで知られています。

サービスグロースにはPDCAが重要 -旧Twitterの事例

スライドは少し古いデータになりますが、旧Twitterのユーザー数推移です。市場学習回数が週に0.5回程度だった時は左側の赤い線のような推移でしたが、週に10回の施策回数に増やしたことで右側の緑色の成長推移になっています。施策の実施回数を増やすことで成長の角度が上がった分かりやすい事例です。

市場学習回数、いわゆる施策回数は事業成長に寄与する非常に重要な指標になりますので、「データ分析に時間がかかっていて施策回数が伸ばせない」という状態は費用を投資して解決する価値がある課題だと思います。

オンラインとオフラインを横断する分析基盤:Amplitudeの導入効果とは?

DearOne 松田|
施策回数をどれだけ増やせるか、増やせる環境をどう作っていくかが非常に重要であり、アダストリア様では施策回数を増やす解決策の一つとして、Amplitudeを導入されました。

Amplitudeとは、DearOneが導入・活用支援している世界No.1のプロダクト分析ツールになります。簡単にAmplitudeがどんなツールかを説明を小島さんお願いします。

Amplitudeについて

DearOne 小島|
Amplitudeは全世界では3,000社以上に導入されているユーザー行動分析ツールです。大きく3つの特徴があります。

まずスピーディーな分析です。チャートの表示速度や、ユーザーのセグメントを作って分析するスピードが非常に速くなっています。

また、SQLなどのコードを書かなくても非常に高度な分析が可能になります。スライドの下に並んでるようなチャートが標準で装備されていますので、マジックナンバー分析、クラスター分析、行動経路分析、エンゲージメント分析などがノーコードで実施できます。

最後がオンライン/オフラインの横断分析です。アダストリア様のようにECと店舗の両方でサービス展開されている企業様の場合、オンラインとオフラインをまたいだ利用分析は手間も時間もかかることが多いですが、Amplitudeの場合、オンラインとオフラインの横断分析を前提に作られているソリューションなので、時間や手間をかけずにすぐ実現できます。

Apmlitudeの導入から分析|DearOneの支援内容

DearOneで、Amplitudeの導入・分析を支援させていただく時は、概ね上記の流れで進めています。

大きく導入と分析のフェーズがあります。まず導入フェーズでは、要件定義をイベント設計と呼んでいますが、どういうデータを入れるかを詳細にすり合わせ、その後に実際のデータを投入します。データ投入は、基本的にクライアント企業の方々にやっていただきますが、DearOneでもサポートしています。

導入が終わると、分析フェーズに入ります。導入初期のトレーニングでは、分析報告会、操作説明会、場合によっては分析ワークショップ等をやらせていただき、クライアント様がAmplitudeを使いこなすまでを支援しています。一番右に並走支援とありますが、希望いただいたクライアント様には、DearOneによるコンサル支援も提供しています。

Apmlitudeの導入から分析|アダストリア様との取り組み

今回のアダストリア様との取り組みでは、分析ワークショップまでを一緒にやらせていただきました。実施した分析ワークショップは発見も多く、印象的なものとなりました。

分析ワークショップで見えた発見とは?

DearOne 松田|
小島さんが言及された分析ワークショップを始め、Amplitude導入後にアダストリア様でどういった分析が実現したか、また施策の施行回数にどう貢献できたか、話せる範囲で良いのでお聞かせください。

Amplitudeでの分析事例(分析ワークショップで作成)|F4ユーザを増やすためのアプリ分析

アダストリア 平田氏|
分析ワークショップでは、F2転換率を向上させる幾つかの示唆が得られました。分析ワークショップから得られた示唆を踏まえて、F1ユーザーに対して行動イベントAに誘導するWeb接客を設定するなど、具体的に既にアプリ上で実行している施策もあります。

また、アプリ内回遊を促して、来訪1回当たりの行動量を増やすことが効果的だということも分析から見えたので、この辺りはもう一段分析を進めていこうと考えています。

DearOne 松田|
特徴的な差異は仮説を基にした分析で見つかることもありますが、意外と、思ってもよらないところが成果の相関関係として見えたり、しかも、相関が複数見えてきたりするのがAmplitudeの特徴の一つですよね。従来までの自分で仮説を考えてSQLを叩くやり方と比べると、かなりスピードアップに貢献できたかと思います。もしAmplitudeがない状態で同じような分析をやろうとすると、どれぐらい時間がかかりそうですかね?

アダストリア 平田氏|
クラスター分析等まで入れると、丸一日では全然足りないと思います。丸一日だと仮定しても、1日かかっていたものが1時間になった感覚です。

アダストリア 上田氏|
単なるスピードアップという以上に、クラスター分析に関しては今だと機械学習などもあってツール自体の機能が進化していますので、SQLを書ける程度のレベルだと実施出来なかった部分もあるかと思います。

DearOne 小島|
「F4ユーザーにどういう行動が多いか?」等のクラスター分析もAmplitudeだとノーコードで実施できますので、SQLを書いていくよりも圧倒的にスピードは速いと思います。

アダストリア 上田氏|
分析結果の特徴量等に関しても、しっかりと統計学の知識等がないと見ても分からない部分があります。私たちのような“素人がSQLを学びました”というレベルだと、この要素が本当に成果に作用しているか判断できない点も出てきます。そういう意味でも、Amplitudeはそうした点をサポートしてくれるので、私たちにとって時間も短縮できますし、信頼できるデータ分析にもなり、嬉しい限りです。

DearOne 小島|
Amplitudeだとある程度のチャートが標準で備わっていますので、定義づけ等も考えなくて済みます。SQLを書いてクラスター分析等をやろうとすると、分析途中や結果に対して「このデータはどういう定義や構成か?」と確認しないといけないことも生じるので、そういった点でもスピーディーに分析ができます。

DearOne 松田|
上田さんはどういった分析をされたのでしょうか。

Amplitudeでの分析事例(分析ワークショップで作成)|F2転換率を上げる要素分析

アダストリア 上田氏|
例えば、ECで購入点数が1点の方、特に新規の会員様に対して合わせ買いをレコメンドして、もう1点2点3点と買ってもらう重要性などは得られた示唆の一つです。

また、アダストリアの強みとしてリアル店舗の存在があり、and STの会員様もリアル店舗での案内からの獲得が一番多くなっています。そうなった時、リアル店舗での初回購買でどれだけ良い体験をしてもらえるかが会員様の継続率に大きく関わってきます。そのため、今回の分析とは異なる施策になりますが、店舗とはリレーションを取って、初回の購買体験を意識するような活動も実施しています。

アダストリアでは、例えば、「お客様が何点以上、また何円以上購入されると、実は継続ユーザーになる、また来てくれる確率が高くなります」と店舗に共有すると、店舗のスタッフがとても頑張って接客してくれたり、自分たちでコンテンツを投稿したりといった行動をしてくれる文化があります。従って、ワークショップで得られたデータを店舗に共有することで数字を上げていくという方向性も分析で得られた示唆の一つです。

DearOne 松田|
ECでどういった体験を作るべきか、店舗でどうすべきか等疑問に思っていた仮説検証がAmplitudeの分析とワークショップで見えてきたというお話、ありがとうございました。

LTV最大化のカギ「オムニ会員」とは?アダストリアの戦略に迫る

DearOne 松田|
KPIの紹介で、店舗とWebを両方使われるお客様=オムニチャネル会員の数を設定しているという説明がありました。現在、OMO施策に興味を持っている小売業の方は多いかと思います。改めてオムニ会員の定義や分析に関してお伺いしたいと思います。オムニ会員の定義から教えていただけますか。

Apmlitudeを使った「戦略の可視化」

アダストリア 上田氏|
リアル店舗とEC、両方のチャネルを持っている企業は似たような名前で定義されているかも知れませんが、アダストリアではリアル店舗とEC、両方のチャネルで購入してくださっている会員様をオムニ会員と呼んでいます。

なぜオムニ会員を重視してるかというと、大きく2つの要因があります。まず年間の購入金額が高いという点、そして、先ほど紹介したKGIであるアクティブ率が高いという点です。2つの特徴を掛け合わせるとLTVが高いお客様ということですから、間違いなく重視すべき顧客層です。

年間の購入金額に関しては、リアル店舗のみのお客様とECのみのお客様を比較すると、さほど金額は変わりません。しかし、両方のチャネルを使っていただいているオムニ会員になると、約3倍まで金額があがります。

また、アクティブ率に関しても、リアル店舗のみ、ECのみのお客さまと比較すると2倍以上となっており、両チャネルでの購入をどうやって経験してもらうかが非常に大事になっていきます。

DearOne 松田|
オムニ会員関連の分析をどう実施するかと考えると非常に複雑で、分析自体も大変そうだなと思います。この辺りのオムニ化に関して、Amplitudeではどんな設計をしているのでしょう?

Apmlitudeを使った「戦略の可視化」の具体的方法

DearOne 小島|
アダストリア様では、オムニ化を1つのイベントと定義して、Amplitudeにデータを投入いただいています。私はこれを「戦略の可視化」と呼んでいます。

分析ツールでは「トップページを見た」「商品ページを見た」「購入を完了した」等をイベントとして扱うことが大半です。ただ、今回は戦略として“増やしたいユーザーの状態”、アダストリア様でいうと「オムニ化」という状態を、具体的に定義してAmplitudeでイベントとして扱うように設定しています。

Apmlitudeを使った「戦略の可視化」の実施メリット

オムニ化をイベントとして扱うメリットですが、まずオムニ化したユーザーの定義が明確になる点です。イベントとして扱わなくても、「ある一定期間に店舗で購入して、その後ECでも購買した」等の条件づけをすればオムニ化の数は出せますし、ユーザー数やオムニ化した個別ユーザーも把握できます。ただ、こうした条件付けでデータを分析していると、分析する個人によって定義がぶれやすく、出てきた分析結果に対する定義の確認、「このデータはどういう定義で出していますか?」という確認が必要なこともよくあります。しかし、イベントに設定することで定義が共通化され、明確になります。

また、数値把握や分析もスピーディーになります。イベントにしない状態でも、ある期間のスポットでオムニ化した人数、また比率等は出せますが、日別の推移や月別の推移を出そうとすると大変です。またオムニ化したユーザーと、オムニ化しなかったユーザーのアプリ内の行動を比較する等でも、分析の手間がかかります。しかし、Amplitudeでオムニ化をイベントとして設定してデータ投入いただくと、こうした分析も非常にスムーズになります。これは大きなメリットだと思います。

アダストリア 上田氏|
Amplitudeの導入時、DearOneさんに「こういうことをやりたいです」とお伝えした所、こうした点も含めてしっかりとイベント設計していただけました。自分でSQLを書いている時は、プロセス内でオムニ化を定義しているので、始めはイベントとして定義しなくても良いのではないかと思っていました。しかし、実際に分析をやり始めると、態度変容をきちんと見れることは、施策をA群B群で実施してオムニ化の有無を検証する等の際にも非常に役立っています。

and STにおけるデータ活用のビジョンとは

and STにおけるデータ活用のビジョン|増やす育てる&意思決定に使う

DearOne 松田|
これまでお話しいただいたようにAmplitudeの導入によって施策回数を伸ばせてきた状態かと思います。今後のアダストリア様におけるデータ活用の展望をお聞かせいただけますか。

アダストリア 上田氏|
キーワードで言うと、「増やす・育てる」と「意思決定に使う」という2つです。2つともあまり戦略等には聞こえないかも知れませんが、私はこの2つが非常に大事だと思っています。

「増やす育てる」でいうと、まずand STの会員様を増やしていくことが重要です。and STをプラットフォームとしてオープン化して多くの企業に出店いただく中で、会員様の数は大事な価値になってきます。

また、様々な企業に参画いただき、アダストリアのブランドも多数ある中で、ブランド同士がシナジーを生んでいくことが、and STにとって一番メリットが出ると思っています。

冒頭でお話しした通り、アダストリアでもZOZOTOWNさんやRakutenFashion(楽天ファッション)さんに出店させていただいています。こうしたECモールと流通総額で競っていくのではなく、出店していただいた企業さんや私たちのブランドがand STというプラットフォームの中で成長していく、またユーザーに楽しんで買い物をしていただく、ここに焦点を当てないといけないと考えています。だからこそ、会員様を増やす、そして、会員様を育てるための示唆をデータから導き出していきたいと思っています。

また、「増やす」という言葉でいうと、自分達で独自の顧客IDを持つことで、お客様のデータがどんどん集まっていきます。アダストリアでも、今以上にお客様のデータを収集していかないといけないと考えています。単純な購入情報や購入者のプロフィール情報だけでなく、趣味や嗜好、お客様の属性といったデータを増やしていくことで、提案できる要素も増えていき、ハイパー・パーソナライゼーションが実現できます。従って、会員様という軸と同時に、データという軸、両方で「増やす育てる」に取り組んでいきます。

もう1つのキーワード「意思決定に使う」ですが、私はデータは意思決定に使うことが一番大事だと思っています。データの計測や分析に関して様々なMartechツールが登場していますが、データは意思決定に使われないと意味がないと思っています。

私は初めてデータ分析を学んだ時、河本薫氏(滋賀大学 教授)の著書を読みましたが、そこに「データ分析で一番大事なことは、データが沢山あることでも、どれだけ綺麗に可視化するかでもなく、データが意思決定に使われることだ」と書かれていました。私はその考えをずっと心の中に持ち続けています。河本氏の書籍では更に「数字まで変えないと、データ分析は意味がない」と仰っていますが、まずはデータ分析がどれだけアクションにつながったか、意思決定や施策実行につながったかが本当に大事だと思っています。

先ほど「データ分析を通じてF2転換につながる要素が見えたり、アプリの継続率に影響する施策が分かった」と紹介しましたが、分かっただけでは意味がなく、今後、この学びを施策に変えていく必要があります。Amplitudeの導入に関しても、データ分析を通じて分かったことをお客様への施策に反映する点を一番重視する必要があると思っています。今後もAmplitudeを使って、KGI/KPIの数字を変えていくための意思決定をしていきたいと思っています。

DearOne 松田|
ここまで「アダストリアのECサイト『and ST』が見据えるスピーディーな行動分析から顧客体験価値の向上へ」と題して、データ分析のスピード化と高度化の両立を紹介いただきました。本セッションはこれで終了となります。改めて上田様・平田様ありがとうございました。

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