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ANA Pocketのカスタマーエンゲージメント施策「データ&AI」時代のデジタルマーケティングの今日と未来|Growth Summit 2023

2023.12.12

はじめに

DearOne 安田|
こんにちは。本セッションは、ANA Pocketのカスタマーエンゲージメント施策というテーマでお話を伺っていきます。それでは早速、登壇者の自己紹介をお願いします。大野さん、よろしくお願いいたします。

ANA X 大野氏|
初めまして、ANA X株式会社の大野と申します。本日はよろしくお願いいたします。私は2002年に入社してから約21年間、ANAグループで働いています。最初は旅行商品の企画や営業をやっていました。その後、ANAグループのデジタル領域の中期戦略や提携戦略などを担当してきました。いまは航空や旅行領域ではなく、日常領域の新規事業開発を担当しています。

今日のタイトルになっているカスタマーエンゲージメント施策ですが、私がANAグループのデジタルの中期戦略を担当していた2013年から2014年は、丁度マーケティングオートメーションツールの元年ともいわれるタイミングでした。

私も中期戦略の中にカスタマーエンゲージメントの考え方を組み込み、マーケティングオートメーションツールを導入して、それから約10年間活用してきました。今日はその経験を踏まえてお話しできればと思います。よろしくお願いいたします。

DearOne 安田|
大野様はANAグループとしてのデジタル戦略を描くところからツール導入、施策実行するところまで一気通貫して携わり、活躍されていますので、今日はその知見をお聞きしたいと思います。

本セッションを進行していく私は、株式会社DearOneでマーケティングを担当している安田と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですが、今日のセッション名にも入っているANA Pocketというモバイルアプリについて、大野さんから紹介いただけるでしょうか。

新たな顧客接点を生み出すためのANA Pocket

ANA Pocketアプリ

ANA X 大野氏|
ANA Pocketは私が新規事業開発のひとつとして取り組んでいるモバイルアプリのサービスです。知っていただいている方も多いと思いますが、ANAは航空事業を中心にやっている会社です。

航空事業というのは、サービスの特性上、顧客接点が非日常になります。「毎日飛行機に乗っています」という方は殆どいないかと思います。多い方でも週1回、一般の方であれば半年に1回といった利用頻度になります。そこで、もう少し日常的な顧客接点を生み出そうと開発したのがANA Pocketです。

コンセプトはシンプルで、マイレージサービスにおけるマイル提供は、これまで飛行機での移動に対して提供していたわけですが、ANA Pocketでは、AIを活用した移動手段の判別アルゴリズムを基に、飛行機以外のすべての移動に対してマイルを提供していくアプリになっています。

DearOne 安田|
ありがとうございます。仰られた通り、ANAさんといえば、飛行機というイメージがすごく強いですが、ANA Pocketでは航空移動だけではなく、すべての移動にマイルが付くのですね。

ANA X 大野氏|
取り組みの背景としては大きく二つあります。

一つは航空事業における非日常の顧客接点だけでは、お客様の体験価値の向上が難しいということです。そこで飛行機に乗っていない間も、お客様に体験価値を提供したいということで、日常における顧客接点としての位置づけです。

そして、もう一つは、航空事業以外の日常領域における新たなビジネス展開を視野に入れている形です。

DearOne 安田|
私たちはマーケティング支援という事業としていますので、さまざまな事業者様と接点があります。自社のサービスやプロダクトを使っているときの顧客体験を考えている企業はすごく多いですが、自社のサービスを使っていない時、非日常となる「飛行機利用以外までを含めた顧客体験」という考え方は凄いと思いました。

ANA X 大野氏|
ありがとうございます。そういう意味では、かなりチャレンジングな取り組みで、今までやったことがない領域です。しかし、私たちは新規事業開発をミッションとしていますし、少し長い目で考えてお客様の体験価値を上げる取り組み、またビジネスチャンスとして取り組んでいます。

DearOne 安田|
素晴らしいですね。私も実際にANA Pocketを使わせていただいたんですが、移動方法を自動で判別するのは凄いと感じました。

ANA X 大野氏|
いまはGPSも含めて、さまざまな情報がスマートフォンの中にありますので、その情報をアルゴリズムで計算して、精度としては9割ぐらいは正確に移動手段を判別できるところまできています。

サービスとして展開1年半ほどになりますが、通信環境が悪いと精度が落ちたりしますが、それなりの精度で提供できるようになってきました。

DearOne 安田|
使ってみて自動で判別されるということが、ちょっとした感動がある、面白いと思いました。

ANA X 大野氏|
ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。

DearOne 安田|
ANA Pocketは主にどんな方が使われているのですか?

ANA X 大野氏|
元々航空事業でマイレージを提供してきたこともあり、その主な会員、40代から50代の男性がANA Pocket側でもメインのユーザーになっています。

DearOne 安田|
ありがとうございます。もう少し詳しく大野さんの仕事をうかがえればと思います。ANA Pocketを担当されている中で大野さんの担当業務や目指しているKPI目標はどんなものになるでしょうか?

ANA X 大野氏|
担当業務としては新規事業開発の全てになりますが、その中でANA Pocketに関してはPM(プロジェクトマネージャー)という立場です。

ANA Pocketのミッションは、大きなところでいうとANAとお客様の日常的な顧客接点を創出する、また、ユーザーの移動手段を判別して、たとえば徒歩には多くポイントを付けるといった取り組みを通じた環境負荷の軽減や健康促進、また、「移動」という文脈を通じて地域創生なども目的としています。

その中で実際にアプリを運営していく上でのKPIとしては、日次のアクティブユーザー数、いわゆるDAU(Daily active users)を見ています。

DearOne 安田|
ありがとうございます。やはり、DAUを見ているのは、毎日起動して欲しいアプリという想いがあるのでしょうか?

ANA X 大野氏|
ANA Pocketがどこを目指しているにもつながりますが、前述の通り、航空事業での接点ではないところでも、お客様としっかりコミュニケーションを取っていきたいということがあります。

お客様は飛行機を使わない時も、毎日何かしらの移動はされていることが殆どです。だからこそ、「ANA Pocketを通じて毎日何かしらのコミュニケーションを取れる状態にすること」が私たちの目指すところであり、DAUをKPIにおいています。

DearOne 安田|
ありがとうございます。ANA PocketのPMということですが、PMとして具体的にどんな仕事をされているか紹介いただけるでしょうか。

ANA X 大野氏|
はい、PMの仕事は多岐に渡ります。プロジェクトによってPMの業務範囲は変わると思いますが、ANA Pocketの場合は自分たちでシステム開発、カスタマーサポート、UXの設計や運用までやっていますので、それら全てのプロジェクト管理をしていくことになります。

もう少し具体的にいうと、アプリ全体の戦略があるなかで、戦略をタスクに落し込んで進捗管理をしていくことが私の業務になります。

ANA Pocketが導入した「MoEngage」とは?

DearOne 安田|
大野さんの業務範疇は本当に幅広いですが、今日はその中でも、カスタマーエンゲージメントというところを焦点を当ててお話を伺っていきますので、よろしくお願いします。

お話しいただく内容の前提としてANA PocketさんではカスタマーエンゲージメントツールとしてMoEngage(モエンゲージ)を導入されています。私からMoEngageがどんなツールかを簡単にご紹介します。

カスタマーエンゲージメントツール「MoEngage」(モエンゲージ)

DearOne 安田|
MoEngageは、カスタマーエンゲージメントツール、いわゆるMA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)ツールです。日本ではまだ知名度が低いですが、世界では導入企業は900社を超えており、APAC(Asia Pacific)を中心に多くの企業で使われているツールです。

機能も充実しており、運用リソースを軽減できるAIによる自動化機能も搭載されています。また、費用としても比較的廉価です。

セグメント機能-RFM

DearOne 安田|
MoEngageの機能をいくつか紹介すると、ひとつめにセグメント機能です。実務でMAをやろうとるすと、ユーザーをいくつかのセグメントに分けていく、どういったユーザーにアプローチするのかという作業が生じます。セグメンテーションの作業は意外と大変ですが、MoEngageを使うと、RFM分析に基づいて最大10個のセグメントの自動を作ってくれます。これを使ってMAを簡単に実行できます。

ジャーニー機能-Flow

DearOne 安田|
2つ目は、セグメントしたユーザーに対してコミュニケーションを行っていく際のジャーニー設計の機能です。ユーザーの行動に基づいて、どんな風にアプローチしていくかを、Webやアプリなどを組み合わせて設計することができます。実際のコミュニケーション、メッセージングも非常に簡単に実行できます。

位置情報-ロケーショントリガー

DearOne 安田|
3つ目に位置情報を使うことも可能です。ユーザーの位置情報を使って、プッシュ通知をする機能です。たとえば、○○店の近くに来た人にプッシュ通知をするといった形です。

Webやアプリと組み合わせたクロスチャネルのカスタマーエンゲージメントをMoEngageだけで実現できるという便利なツールです。

カスタマーエンゲージメントツールの必要性と選定のポイント

DearOne 安田|
私からMoEngageの概要紹介したところで、実際にANA PocketでMoEngageを導入された背景をお聞きしたいと思います。導入される前はどんな課題感があったのでしょうか?

ANA X 大野氏|
多くの会社で同じ課題を抱えていると思うのですが、ユーザーに適切なコミュニケーションを取っていきたいということです。

アプリに限定された話ではありませんが、とくにアプリの場合は、興味のない告知を出してしまうと、離脱につながってしまったり、アプリを使っていただけなくなったりする可能性が非常に高くなります。

従って、それぞれのユーザ―が興味ある情報をきちんと出していくことが、カスタマーエンゲージメントを高めるうえでとても重要です。それをどう実現していくかという課題感が背景にあって、その実現手段としてMoEngageを導入した形です。

DearOne 安田|
たとえば、アプリでプッシュ通知を送る時、ユーザーの興味ありそうなものを設計して送ると思うのですが、導入前は運用などで何か課題があったということでしょうか?

ANA X 大野氏|
そうですね。アプリのリリースから半年ほど経過した時点でMoEngageを導入しました。そこまではリリース当初でしたので、プッシュ通知も全配信で送っていました。ユーザー数も増えてきた中で、しっかりセグメントして、興味あるユーザーに興味ある情報を提供していこうということで、導入を決めました。

ANA X 大野氏|
なるほど。ユーザーがある程度増えてきた中で、きちんとコミュニケーションしたいという気持ちが芽生えてきたということですね。

ANA X 大野氏|
そうですね。ANA Pocketの場合、ANAのマイレージ会員の方がユーザーの中で一定の割合を占めますので、お客様の輪郭がある程度見えていました

従って、「こういう情報は送ってはいけない」や「こういうトーン&マナーで送ったほうがいい」といったところは、ある程度把握できていました。しかし、サービスが安定してユーザーの裾野が広がるなかで、お客様の輪郭が見えなくなった部分もあり、そのあたりの分析も含めて、何かしらのツールを導入する必要があるという判断でした。

DearOne 安田|
ANA Pocketが元々のマイレージ会員よりも幅広い方々が使うアプリに成長してきたからということですね。カスタマーエンゲージメントツールを入れようとなった中で、最終的にMoEngageを選定されたポイントや決め手はどのようなものだったでしょうか?

ANA X 大野氏|
そうですね。元々私も何社かのMAツールを使ってきた経験があります。利用してきた中で、MAツールによっては施策設定を誰でもできるわけではなく、少し技術者に近い見識がないと運用できないことも多く、その中でMoEngageは「誰でも簡単に使いこなせる」という点が非常に魅力的でした。

私も導入を検討した際に初めてMoEngageを知ったのですが、管理画面などを見せていただいて、「これであれば誰でも使えるな」という点で非常にいいツールだと思いました。

また、料金の妥当性もありました。ご存じの通り、MAツールは場合によってはかなり高額になります。

新規事業でトライアンドエラーをしていく必要がある中で、使い勝手が非常によくて、料金も妥当というところが決め手でした。

DearOne 安田|
MAツールをこれから導入検討される方もいらっしゃると思いますが、大野さんが仰っていた「現場で使いこなすことが難しいツールもあった」というのは、たとえば、セグメントを作るところ、メッセージを送るところ、どのあたりになるでしょうか?

ANA X 大野氏|
マーケティング視点で、いわゆるSTP(Segmentation・Targeting・Positioning)分析をどこまで深掘りするかは企業によって異なると思いますが、ツールの操作さえ覚えてしまえば何とかなる作業だと思います。

他のMAツールで苦労したのは、セグメントを決めて施策を設計して実際に実行する際にボタンひとつで実現できるわけではなく、たとえば、アプリであればアプリのシステム改修が必要になるといった形で技術者の対応が必要になるケースが多かった点です。

MoEngageを見せていただいたとき、施策の実装が簡単にできるのは驚きでした。極端に言えば「このボタンを押せば出来ます」というほどの簡単さでした。

DearOne 安田|
実際に導入して運用されるなかで、その簡単さは今も実感されていますか?

ANA X 大野氏|
そうですね。もちろん最低限のシステム側での対応は必要ですが、その対応さえしてしまえば、セグメントも設定しやすいですし、施策の設定も簡単にできるので非常に使い勝手がよいです。施策の実績も管理画面の中ですぐ確認できるので、その点もいいですね。

DearOne 安田|
施策の効果を見て変えたり続けたりしていくことが非常に大事ですからね。大野さんは実際にMoEngageを使ってさまざまな施策を実施されていますが、成功事例をいくつかご紹介いただければと思います。

【事例】有料会員数数が28%増加した施策からの学び

アップセル促進In-appメッセージで月間獲得有料会員数が28%増加

ANA X 大野氏|
2つの事例をご紹介したいと思いますが、まず1つ目です。

ANA Pocketは基本的に無料で利用いただけますが、有料会員の機能も設定しており、無料会員から有料会員にアップしていただくための施策での事例になります。スライドには2つのバナークリエイティブがありますが、右側のパターンBが結果が良かったバナーになります。

個人的に興味深い結果だったと感じており、一般的にバナークリエイティブは「メッセージを分かりやすくする」ことが原則で、左側のパターンAがよく見るデザインだと思います。

私も伝えたいことを大きく表示するシンプルなデザインとして、当初はパターンAがよいと思っていました。ただ、MoEngageの良い点でA/Bテストも柔軟に試せますので、いろいろと試していくうちに結果的に右側のパターンBが良い結果になった形です。

結果からの学びとしては、必ずしも教科書通りにならないということです。やはり答えをもっているのはユーザーであり、ユーザーが実際にどう反応するかということが全てだと思います。パターンBが良い結果になった理由は全て明快にはなっていませんが、結果的にパターンBが良い結果になったということが事実です。

パターンBのクリエイティブも、文章の細かいところを変えたり、ボタンのメッセージを少し変えたり、いろいろなA/Bテストを繰り返していますが、「必ずしも教科書の原則通りになるわけではない」という好事例でしたので、紹介させていただきました。

DearOne 安田|
ありがとうございます。「有料会員+28%」という結果は、御社の中で非常に大きな成果ですか?

ANA X 大野氏|
はい、非常に大きいですね。

DearOne 安田|
クリエイティブを変えただけで、これだけの成果が出るということは凄いですね。

私もいろいろな方から話を伺いますが、教科書に載っているような原則は確かに王道ですが、実際に自分たちのプロダクトやサービスに100%適用できるかはユーザーの層などにもよるので、やってみないと分からない部分が大きいと感じます。

やはり試してみて効果を検証するということが非常に大事でしょうか?

ANA X 大野氏|
安田さんが仰る通り、トライアンドエラーがすべてだと思います。よくメンバーから笑われますが、私が「絶対こっちの方が効果が出るだろう」と思ったものが逆の結果になることは何度もあり、試さないと結果は分からないですね。私も施策を動かしながら勉強させてもらっています。

DearOne 安田|
普通はリーダーが「こっちが良い結果になるはず」というと、その意見で決まってしまうことが多いと思います。それをきちんとA/Bテストを動かして、結果を検証して、「リーダー間違っていましたね」と言える文化や風土は素晴らしいですね。

ANA X 大野氏|
そうですね。リーダーの影響力は少し無くなってくるかもしれませんが、正しいマーケティングのあり方だと思っています。

DearOne 安田|
何か施策をされる際はかなりのパターンを試されるのでしょうか?

ANA X 大野氏|
新規事業であり、スピードを重視していますので、最初から20種類も30種類もパターンを作ることはありませんが、何かしらのA/Bテストは常に動かしています。

DearOne 安田|
なるほど。A/Bテストのサイクルはどれぐらいで動かされていますか?

ANA X 大野氏|
2週間ほど動かして、結果を検証して、次は違うパターンを試してみるという形ですね。

DearOne 安田|
アプリ全体ではDAUをKPIにされているということでしたが、施策毎に目標値などを設定して結果を検証するということを2週間ほどのサイクルでされている形でしょうか?

ANA X 大野氏|
仰る通りです。DearOneさんにもサポートいただきながら運用しています。

DearOne 安田|
データドリブンで素晴らしいですね。ありがとうございます。それでは、もうひとつの事例もご紹介をお願いできるでしょうか。

【事例】休眠顧客の掘り起こしで発見したタイミングの重要性

休眠ユーザーへのプッシュ通知

ANA X 大野氏|
2つ目の事例は、休眠ユーザーをキャンペーンプッシュする施策です。

施策としては、ANA Pocketを7日以上使っていない休眠ユーザーに対して「貯まっているポイントを交換しないと損ですよ」というメッセージを送ることで、結果として20%のユーザーにまたアプリを起動していただける結果になりました。

この施策はタイミングで重要で、同じ施策を「30日使っていない」「14日使っていない」などのセグメントで同じプッシュ通知をしても効果がなく、最終的に7日にして、結果が出たという形です。

ここでの学びは、休眠顧客向けのキャンペーンに関しては手遅れにならないライン、一種の「賞味期限」があるということです。

MoEngageではタイミングも簡単に設定できるので、手遅れにならないラインがどこかということで、30日でやってみて全然起動しない、14日でも起動しない、7日にしたら起動したという形です。

逆にいえば、アプリを使わなくなったユーザーには7日以内に再び使ってもらえないとずっと休眠してしまう可能性が高く、KPIであるDAU向上も上手くいかないということです。

非常に大きな発見でしたので、今後は休眠して7日以内というタイミングを意識して、掘り起こしの施策を展開していきたいと考えています。

DearOne 安田|
興味深い事例でした。事例を聞きながら、30日でダメで、14日でもダメで、それでもやり続けるマインド、「次は7日で試してみよう」と思えるところもポイントだと感じました。いくつか試してみて成果が出ないと、「この施策はダメなのかな」と止めたくなりませんか?

ANA X 大野氏|
そうですね。安田さんが仰るところにMAツールを運用するひとつの難しさがあると思います。

MAツールは本当にいろいろな事ができます。つまり、誰に、何を、いつ、どんなメッセージで、などの変数が非常に多くなります。今回の事例では、タイミングという変数に焦点を当てて繰り返す試すことで、7日というタイミングを見出すことができました。逆に、いろいろ変数を「あれを試してみよう」「これを試してみよう」と変えていると見いだせないものだと思います。

従って、「ここだろう」という仮説を持って繰り返して試してみて検証するということはMAツールを運用していくうえでは重要になってくると思います。

DearOne 安田|
とても勉強になります。確かにいろいろ変えてしまいたくなる気持ちは凄くよく分かります。しかし、「一旦ここで仮説を立てたのだからやり遂げてみよう」という気持ちが大切ということですね。

「ユーザーインタビューがMAの活用レベルを高める」理由

DearOne 安田|
紹介いただいてきた事例のようにANA PocketさんではMAツールを使ってカスタマーエンゲージメントを進められる傍ら、ユーザーインタビューによる定性的なユーザー調査もされています。ユーザーインタビューを実施された背景や課題感はどんなものでしょうか?

ANA X 大野氏|
ユーザーインタビューもDearOneさんにご協力いただき、ありがとうございます。先ほどの通り、MAツールは何でもできるので、動かせる変数がいろいろあります。その中で、ターゲット顧客のニーズをきちんと掴んで、また、何を価値提供したいかというところの前提をしっかりと持ったうえで、コミュニケーションを最適化するためにMAツールを使うことが大切だと思っています。

従って、どういう方たちがどんなニーズやペインを持っていて、どこが価値提供のポイントで、他社さんとの差別化要素になるかというところは、施策を試して具現化していくのではなく、自分たちでユーザーに聞きながら固めていくべきだと思っています。

つまり、MAツールの効果を最大化するためにも、ユーザーインタビューをやった方がいいと考えている形です。

DearOne 安田|
ありがとうございます。実際にユーザーの声を聞いて、想像と違ったことや新しい発見はあったりしましたか?

ANA X 大野氏|
そうですね。元々ANA Pocketのプロジェクトを始める前に、カスタマージャーニーなどは書いて始めていますので、とてつもなく外れていたというものはありません。しかし、顧客育成におけるセグメントの切り口はユーザーインタビューをする中での発見が多かったです。

実際にサービス提供を開始しているからこそ、「どういうユーザーが利用を止めようとしているか?」や「アプリの利用頻度が低下しているユーザーは何を感じているのか?」など、最初の段階では見通せていなかった切り口の発見です。

DearOne 安田|
私たちはデータ分析をお手伝いすることが多いので、データから見える定量的な部分からセグメントの提案をすることも多いですが、定量的なデータ分析だけだと分からない部分が、定性のユーザーインタビューでは見えますね。

ユーザーインタビューを通じて集めた定性的なデータですが、御社の場合は定量的なデータも多くお持ちだと思います。組み合わせて活用するという部分はどんな形で取り組まれているでしょうか?

ANA X 大野氏|
先ほど申し上げた部分と重なりますが、ターゲットと価値提供の部分は企業や事業としての意思がある部分だと思います。従って、まず定性・定量、双方のデータも踏まえて意思をしっかりと固めます。そのうえで、コミュニケーションの最適化をMoEngageを使ってどうやっていくかという考え方です。

MoEngageを使って得られた定量の結果のなかで、想定していたターゲットの切り方やニーズの捉え方に影響を与えるものも出てきます。その時は、1回戻って定性も含めて確認して再びMAの施策をどんどん回していく形で、循環を作っていくことがベストだと思っています。

DearOne 安田|
なるほど。ターゲットや価値提供の部分は最初に仮説を立てて始めて、しばらくユーザーに使っていただいて、仮説が合っていたかどうかをユーザーインタビューで定性的に検証されているイメージでしょうか。

ANA X 大野氏|
そうですね。仮説が合っていたかという部分は細かい施策を動かす中で定量的に見えてきますので、仮説が間違っていたかも知れない部分は一度戻って、定性分析も含めてしっかりと行って新たな仮説を立てていく形です。

DearOne 安田|
定性的な情報、ユーザーインタビューが「MAでこういう施策をやろう」というところまでつながることもありますか?

ANA X 大野氏|
頻繁にあります。施策のアイディアもやはり考える限界があります。MAツールの事例として、先ほど紹介したようなアップセルや休眠顧客の掘り起こし施策などはよく出てくるテーマだと思います。

ただ、実施する時には、たとえば、タイミング、コミュニケーションの時間などの細かい部分が重要になってきます。

こういった部分が、定性のユーザーインタビューを通じて「この時間にこういう行動があってアプリを利用しているのか」ということが分かり、「だから、この施策が効くのか」や「では、こういうメッセージを書いてみよう」といった形でつながります。

ターゲットを変える等ではなく、ターゲットがより具現化される、顧客の輪郭が具体的になっていくイメージです。

DearOne 安田|
非常によく分かります。先ほどのコミュニケーションの時間でいえば、「どの時間にアプリ使ってる人が多いか」は定量のデータで分かります。ただ、どういう文脈で使っているかはデータでは分かりません。

ユーザーインタビューで「自宅で何をしているときに使っているか」や「アプリを使う前後で何をしているか」などが分かることで、ユーザーの文脈に合わせたコミュニケーションができるということですね。

ANA X 大野氏|
仰る通りです。

DearOne 安田|
定量のデータだけでは分からないユーザーの具象化を、定性のユーザーインタビューを通じて実現する。そして、それも含めてMAツールの活用レベルを高めて、より心地よい顧客体験を生み出すという流れですね。素晴らしい取り組みだと思います。

「ユーザーインタビューがMAの活用レベルを高める」理由

DearOne 安田|
ここまでご説明いただいところも踏まえて、最後に今後のMA施策における展望があればぜひお聞きしたいですが、いかがでしょうか?

ANA X 大野氏|
そうですね。MoEngageが持っている機能のひとつ、位置情報を活用した施策は今後取り組みたいと思っています。

ANA Pocketは元々位置情報、GPSを使うアプリになっていますので、それを活用したコミュニケーションができると、ANA Pocketらしい新たな価値提供につながると思っています。DearOneさんにも支援いただきながら、一緒にチャレンジしていきたいと考えています。

DearOne 安田|
ありがとうございます。確かに位置情報の活用は、ANA Pocketの特徴と非常に相性が良さそうですね。

ユーザーの位置情報、ジオフェンスの活用は「どこかの場所に近づいたらこういうコミュニケーションをする」といった施策につながると思いますが、何か具体的に考えているものはあるでしょうか?

ANA X 大野氏|
たとえば、地域創生の文脈で、エリア内の回遊性を高めたいというニーズがかなり多くあります。「このスポットに来る人は多いけど、周辺の地域を見てくれない」といったイメージです。

そこでANA Pocketを使って、あるスポットに来たユーザーに対して「近くにこういう魅力的なスポットもありますよ」というコミュニケーションをできないかという声もいただいています。この辺りはやってみたい施策です。

DearOne 安田|
良いですね。地域創生につながりますし、通知を見て移動すればユーザーもANA Pocketでポイントが溜まっていくわけですね。

大野さん、今日は貴重なお話をありがとうございます。視聴の方々もぜひANA Pocketを試してみて下さい。それでは、本セッションは以上で終了になります。ご視聴ありがとうございました。

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