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GLOBALIZED Marketing × Glocalization|横河電機が推進するデジタル営業&マーケティングとストーリー・ブランディング【イベントレポート】

2023.08.18

この記事は、2023年6月16日に開催されたGLOBALIZED B2B製造業向けイベントの一部セッションレポートです。

創業100年超え!インダストリアルオートメーションの老舗上場企業・横河電機

横河電機 阿部氏|
横河電機株式会社の阿部と申します。2016年に入社する前は、半導体のIntel(インテル)という会社に31年間いました。元々はエンジニアでしたが、日本発の「インテル入ってる」というブランディングキャンペーンを目の当たりにしてマーケティングに目覚め、そこからMBAを経てキャリアをマーケティングへシフトしました。

アジェンダは以下の3つです。

  • Introduction of YOKOGAWA
  • 「見つけるから見つけてもらうへ!」営業&マーケティングのDX
  • ストーリーテラーとしてのブランディング

Introduction of YOKOGAWA − 100年企業の挑戦!

最初に横河電機のご紹介ですが、後の話がすべてここにつながってきますので、そのような背景情報を共有いたします。

Global Business Expansion and Innovation

弊社は1915年に起業しました。第一次世界大戦の2年目に当たる当時、日本橋の三越百貨店、帝国劇場、昔の三井記念館などを手がけたことで有名な建築家の横河民輔が創業者で、今でいうなら建築家の隈研吾氏並に人気があったそうです。

横河45歳のときに創業した弊社は今年で108年を経ており、創業100年を超える上場企業は約5%しかないそうで、そのうちの一社ということになります。

この100年の歴史の中で、横河電機は過去2回にわたる大きな戦略的転換期があり、ビジネスポートフォリオを大きく変えてきた珍しい企業です。

主要顧客は世界のオイルメジャー!横河電機のビジネスセグメント「インダストリアルオートメーション」とは?

Yokogawa's Business Segments

弊社のビジネスセグメントとしては大体4,000〜4,500億円の規模で、三本柱としながらも今は93.7%が「インダストリアルオートメーション」事業に依る、ほとんど1本足打法に近い形になっています。

「インダストリアルオートメーション」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、これは要するにプラント系・制御系の事業です。

弊社の主要顧客、Tier1カスタマーには、アメリカのエクソンモービルやシェル、BP、サウジアラムコなど、世界のオイルメジャーなどが含まれます。

それから昔、知る人ぞ知る「横河ヒューレット・パッカード」というYHP、いわゆるオシロスコープという計測器があり、それを今でも少し手がけていますが、全体の約5%程度です。

残りは「ニュービジネス」で、弊社は今後バイオの方にも手を伸ばそうとしているので、今後はこのバイオ領域等を広げていきたいと考えています。

横河電機の3大コアコンピタンスと「OT(Operation Technology)とは?」

Yokogawa's Core Competences

弊社が強みとするコアコンピタンス(企業の中核となる価値)は三つあります。

まず一つ目は「測る:Measurement」です。具体的には目に見えないものを可視化する「センサー技術/センシングテクノロジー」が一番得意な領域です。

二つ目は、そこから出てきたデータをベースにして「制御する:Control」です。プラントに行くとコントロールルームがあり、社員が画面を見ながら「◯◯が故障だ」と話したりしています。また、弊社は圧力・温度・流量などを計る各種センサーも手がけています。

そして三つ目が「情報:Information」。このインフォメーションとはITのことではなく「OT」といいます。「OT」というのはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「Operation Technology」の略です。

皆様よくご存知のITと異なり、OTの世界は「No Intel」。WindowsもなければIntelもなく、独自のOSやプロパーなアーキテクチャを有してITとは一線を画した世界が形成されています。

最近そこの垣根が取れ、ついにITがOTの方へ流れ込んできているところです。このように、弊社はOTにかなり強いです。OT分野で活躍しているプレイヤーとなると世界でも約10社、両手で数えられるほどしかおらず、日本では「Only YOKOGAWA」といって過言ではないと思います。

SDGsにコミットする横河電機

以上、三つのコアコンピタンスをベースに7年前、SDGsの17個のゴールを因数分解しました。弊社が持っている強みを使うと、一体どれに貢献できるかということを因数分解した結果、そのうちの10個に貢献できるという自信が生まれました。

UN(United Nations): 2030 Agenda for Sustainable Development

弊社は今、完全にこのSDGsの追求に舵を切り、これにフルコミットしています。

横河電機は過去、四半世紀にわたってエネルギー産業界の発展に寄与してきたことへのプライドを持っていますが、裏を返せば地球を汚してしまった側にいるわけなので、世のお母さんが「散らかしたら片付けなさい」と子供を叱るのと同じで、今後「汚してしまったものはきちんと綺麗にしましょう」ということで、SDGsの10個のタイルにコミットしていく計画です。

横河電機の三大フレームワーク!バイオ・宇宙・海洋

それから約10年スパンで、長期的に三つのフレームワークを持っています。一つ目が「バイオ:Biology」、二つ目が「宇宙:Universe」、そして三つ目が「海洋:Oceans」です。

これらを一気にやるのはなかなか難しいので、現在はバイオにフォーカスしています。次の宇宙に関しては、ようやく今年度から宇宙事業部ができて、これからもっと宇宙に対しても業態を広げていく予定です。海洋についてはまだまだこれからというところです。

以上のように、弊社は今転換期に来ています。それはお客様に関する転換期でもあり、「脱ハイドロカーボン」を目指しています。

弊社は売り上げの約6割が、まだハイドロカーボンに依存しているので、もし10年後も同じようなポートフォリオのままだと、恐らく「反社会的だ」という烙印を押されてしまうでしょう。

とにかくこの「グリーンセールス」の割合を上げていかないといけないという岐路に立っているということです。

「顧客を見つける」から「顧客に見つけてもらう」へ!

日本企業の営業8つの課題に対する営業&マーケティングのDX

日本企業営業の8つの課題

そうした中、「見つけるから見つけてもらうへ!」という観点からコロナ禍前の日本企業の状況を見たとき、その営業には8つの課題があったといえるでしょう。

例えば「属人的」「責任分担がいい加減」「取引関係が固定している」「営業組織が硬直している」など、これら8つの課題がありました。

今行われているデジタル営業/デジタルマーケティングの動きは、この8つの中の6つを全て解決するものだと解釈しています。

そこで2017年頃、まずはデジタルマーケティングからスタートしました。特に営業の生産性と効率性というものがありますが、日本は本当に効率が悪いです。

日本では四半期ごとの数値が上がっていなくても、「営業ROI=粗利(粗利率)/営業コスト」がなぜかしっくりくるという不思議な現象が起こっています。

OECDに加入している国の国別労働生産性の国際比較で、一番上はアメリカ・ドイツ・フランスと、上に行けば行くほど効率がいいことを表しています。

その次がイギリス・イタリア・カナダで一番下が日本ということで、残念ながら主要7ヶ国で最下位という状態が今でも続いていて、「日本は未だに生産性が最も低い」と認識されています。

この生産性の低さに加え、「withコロナ」への対応という課題があります。世界的にようやく収束したかと思ったら、最近また中国などで感染者の増加が著しいですが、「withコロナ」になったときにどうするか。

営業、特にBtoB営業では顧客に寄り添う営業活動をしていくことが重要で、いかに今まで以上に顧客に寄り添うかという視点が不可欠です。

問い合わせ前に自社の購買プロセスが完了しているケースは65%!今こそ必要な「Digital Sales and Marketing Evolution!」

この数年、実はコロナ禍とは関係なく顕著になったことがあります。

それは、インターネット全体の動向やDXなどと関連し、特にBtoBで顧客の購買行動変容が見て取れるということです。どういった行動変容があるかというと、「65%」という数字が出てきます。これは何の数字かわかりますか?

これは、「外部に問い合わせる前に、既に自社の購買プロセスが完了している場合」を表す数字です。

昭和の時代など従来は、BtoB企業は自分たちが欲しいものがあると、その商品に関係している営業マンを呼び、必要に応じてカタログ・仕様・スペック表などをもらい、そこから社内で揉んで公開するといったプロセスをとるのが通常でした。

ところが、今ではもう営業マンを呼びません。自社の担当者は全部自分でGoogle検索し調べます。自社が欲しい製品の情報をサプライヤーのWebサイトから拾い、自分で勉強して、もう「ここから買おう」と決まってから初めて営業マンを呼ぶという、この割合が65%に上ることがわかっています。

昔は同じ数字が10~20%くらいだったのが、今では明らかに「勝負は最初から決まっている」という形に変容してきています。

日本にいるとまだまだそう感じないかもしれませんが、特に欧米ではこのような形が主流で、本当に「勝負は営業マンが呼ばれる前から決まっている」と実感させられます。

そこで重要になるのが「Digital Sales(デジタルセールス)」で、ご存知の通り、これには「Inside Sales(インサイドセールス)」と「Inbound Sales(インバウンドセールス)」の2種類があります。

本日はこれらを単に「インサイドセールス」とひとまとめにして扱いますが、このインサイドセールスは昔のテレマーケティング/テレセールスのように「単なるネットを使った営業だろう」といったイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、そのようなものとはまったく違います。

何が違うかというと、インサイドセールスの役割とは「上流から下流に至る販売のためのプロセス内のすべてを把握し、お客様の変化に対応することによって売り上げを最大化する」ことです。

従来のフィジカルな対面営業の営業マンよりも、さらに進んだ「コール・アンド・レスポンス」を期待されているのがインサイドセールスだということになります。

世界に広がる横河電機のインサイドセールス

弊社では今、まさにデジタルマーケティングに関連したデマンド・クリエーションセンターやMA(マーケティングオートメーション)、インサイド/インバウンドセールスなどを組み合わせていますが、特にそれらの本場である北米は、元々大陸で面積が広いので、こういった取り組みと非常に相性が良いと言えます。

それからヨーロッパや東南アジア、そして南米とインドで広く営業活動を展開しています。日本はどうしても対面営業が好きなお客様が今でも主流なので、まだ手をつけず後回しにしていますが、いずれ日本でもこれらを導入したいと思っています。

前述のように、弊社はエネルギー関連事業を手がけているのでお客様がとても国際的です。世界中の辺鄙なところにプラントを建てる必要があるので、五大陸すべてにセールスチャネル/サービスチャネルを持っています。

つまり、かなりグローバルなビジネスになるので、当然必要となる言語もたくさんあり、横河電機としてはWOVNさんとお付き合いさせていただいているというわけです。

どうしてWOVNさんのサービスを使っているかというと、弊社のコーポレートサイトは、今までは主に英語やせいぜい中国語ページを用意するだけだったのですが、やはり「これでは足りない」、「ローカルマーケティングが欲しい」という要望が各リージョンから多く上がるようになったからです。

WOVNのプラットフォームは海外拠点のローカル言語化に最適!

YOKOGAWA & WOVN

なかなか実現できずにいたところ、WOVNさんのプラットフォームと出会い、これを使ってまず昨年の10月、タイでタイ語の公式サイトを立ち上げました。

これがうまくいって今も続いていて、さらにポルトガル語・スペイン語に翻訳された南米サイトも公開しました。

世界には今約1,300の言葉があり、それら全ての言葉に翻訳することはできないと思いますが、トップ5〜7くらいの言語は翻訳対応したいと考え、まずこれらの言語から取り組んでいます。

なぜ今回導入させてもらったかというと、同じように悩んでいる方が多いかもしれませんが、Webサイトのローカル言語化は、Web担当人材の少ない各拠点にとってはなかなかタフな仕事だからです。

多くの工数がかかりチェックも必要になるということで、結構負荷が高いミッションになります。

そんな中、WOVNさんのプラットフォームは機械翻訳と人力翻訳のハイブリッドということで、しかも翻訳元の言語が変われば自動的に機械翻訳されていくという点が、非常に良いと思いました。

それからGoogleなどの検索エンジンが、翻訳後のローカル言語のコンテンツをクロール、インデックスしてくれるので、SEO的な観点からもありがたいと感じており、以上のようにベネフィットがとても大きいWOVNさんを使わせてもらっています。

弊社のインサイドセールスに関して、まず「前夜祭」というお話を紹介しますと、2017年頃には結構苦労していました。予想はしていたのですが、まずITは各拠点でスパゲッティのようにバラバラでした。

データ統合におけるエンタープライズアーキテクチャの重要性

全世界の各拠点が別々のツールを入れており、よくわからないアプリケーションもたくさんあって無茶苦茶になっていました。

「これではいけない」ということで、まずエンタープライズアーキテクチャに則って一つ一つ整理したのが最初のステップです。

デジタル化/DXなどを手がける前に、まずITのアーキテクチャを含めインフラをシンプルにしないといけないという部分からスタートしました。

また2017年頃の自社ホームページは、デザインが古くさく更新が少なかったり、商品の説明ばかりでコンテンツに何のひねりもなくつまらないほか、デッドリンクが散見され、各拠点がデザイン・クリエイティブを好きなように作っているので統一感に欠け、コンテンツもバラバラだったので「横河電機のWebサイトだな」と一目見てわかりません。

また使っている道具もバラバラなのに加え、ブランド名が多すぎてインフレーションを起こしているなど、当時のホームページにはたくさんの課題がありましたから、これを「掃除」することが急務でした。

なぜならWebサイト、特にポータルサイトというのは企業の顔なので、全てこれを整理することを考えました。

前述のようになっていた原因は、例えばWebサイトなどを作るときのバイブルのような存在としてデザインスタンダード(DS)に従ってWebデザインを進めていく基準があるのですが、ここにそもそもデジタルコンテンツが入っておらず、DS自体が昭和のままのものを使っている状態でした。

Webページはカタログを基にただ単に文章を流し込んでいるだけ、つまり魂が全く入っておらずお客様のことを考えていませんでした。

またデジタル特有の動画やeBook、ホワイトペーパーなどがほぼないなど、昭和のフレームワークそのものという状態からのスタートでした。

それから基本的にコンテンツは日本語から制作し、それをさらに英訳しているので、なかなか文章として英語圏の人たちが納得できるものを提供できていないという課題を解決する必要がありました。

IT化における諸課題に対するアクション

そして、ブランドに関する取り組みがまた面白いのですが、ブランド・アーキテクチャに基づくブランドの断捨離を行いました。具体的には、「ブランド&アイデンティティーの整理整頓、体系化」つまりブランドアーキテクチャに基づくIT化を進めました。

約1,000個あったプロダクト・ブランドを1ブランドに集約!

また「コーポレート・ブランド・スローガン制定」、「コミュニケーションガイドライン発行」、「ネーミングルール策定」などが大きなポイントになりますが、2017年当時の弊社のブランド・製品はデザインもバラバラ、好き勝手な名前を付けられたものが約1,000個あり、そのうちコーポレートサイトに常時掲載されていたのが約300個でした。

IT業界で比較的プロダクトやSKUのブランド名が多い企業としてはIBMが有名ですが、それでも約800個なので、ブランド数はIBM社より多かったわけです。

どうしてこうなったかというと、エンジニアが自分の開発したプロダクトに愛着を持ち「ハルミちゃん」、「アケミちゃん」などと名前をつけるからでした。

このようにエンジニアが勝手に名前を付けられないようなネーミングルールを策定しようという背景がありました。

これら1,000個バラバラの状態をやめ、「OpreXTM」という一つのブランドに集約し、そのタイトルの下にきちんと整理整頓した個々のブランドネームを作っていくということを行いました。

言うは易く行うは難しで、ここに至るまでは当然さまざまな抵抗がありました。エンジニアとしては自分の「子供」であるプロダクトがかわいいわけで「今から改名しろ」と言われても嫌なのですね。

そのような抵抗もあったのですが、現場のスタッフに頑張ってもらって綺麗に整理整頓できました。

実は、このような活動が外部から評価されました。世界最大のブランディング企業であるInterbrand社の日本法人が、国内で初めて「Interbrand Japan Branding Award」という賞を2018年にスタートしました。

この第1回目のアワードで「Winners」として受賞した4社はバンダイナムコ、大和ハウス、ヤマハ、そして4社目が横河電機ということで、しかもそのうち純然たるBtoB企業は弊社だけだったのでとても嬉しかったです。

以上が「前夜祭」で、スタートを切る前のお話でした。

実際にスタートしてからどのようなことを考えたかというと、まず「複雑なプロセスを可視化」することです。

どのような企業も多かれ少なかれサイロ化をまぬがれることはできず、縦割りなオペレーションになっていると思います。

デジタル営業/デジタルマーケティングで重要な「RACIメソッド」

その中でデジタル営業/デジタルマーケティングのオペレーションを回すためには横串で行う必要があり、まず「RACIメソッド」というものを実践します。

この頭文字はそれぞれ「R:Responsible(実行責任者)」、「A:Accountable(説明責任者)」、「C:Consulted(協業先)」、「I:Informed(報告先)」で営業、マーケティング、事業部、バックオフィスなどのそれぞれで行われているタスクを、このRACIという観点から全部因数分解し直します。

内側にある「環状線」のような、弊社のオペレーションプロセスを因数分解したものと、外側にあるお客様のカスタマージャーニーとを対応させた模式図です。

この「カスタマージャーニーと社内オペレーションの可視化」を実行するのは大変でしたが、その意義はとても大きかったです。

二つ目が「パーソナライズされたカタログ・製品&サービス・価格・納期」です。前述のサイロ化で起こる代表的な問題にプロセス分断があります。プロ野球などでよくあるポテンヒットというのがまさにこれで、「レフトが捕るでしょう」、「いやショートでしょう」と言い合っているうちにヒットになってしまうものです。

お客様はこうしたプロセス分断を「自分がお願いしたことがどうやら忘れられているようだ」などと敏感に察知するものです。

また、顧客に接するユニット業務がサイロ化すると場当たり的な対応になったり、対応に矛盾が生じ、対応に時間がかかったりそもそも対応してくれないようなことがあると、顧客の不満がどんどん雪だるま式に増えていって満足度が下がるなど、悪いスパイラルにどんどん入っていってしまいます。

企業とお客様の視点を合わせるため、AIで商品・サービス提案を最適化!

スライド(編集注・非公開)左側が弊社の製品、右側がサービスで、お客様から照会・問い合わせが入ると「どれを売ろうかな」と動きます。一方、お客様は個々の商品やサービス自体にはさほど興味はないものです。

そうではなく自分たちの課題ややりたいことの方に興味があるため、しばしばここでミスマッチが起こっています。そこに前述のサイロ化の問題が加わってくるので、弊社とお客様双方の視点をどう合わせていくかということが重要になります。

そこでどうするか。スライド(編集注・非公開)左側が弊社の製品・サービスです。右側がお客様がやりたいことで、真ん中では営業が持ってきた話を見繕ったりしています。

この中央部分を今「最適な組み合わせは何か」、「まず何を提案したいか」などとAIで最適化しています。

特にレスポンスを急がないといけない「ファーストエイド」の部分にはうってつけで、「まずはこちらの製品でどうですか?」という提案につながっています。

Goods-Dominant-Logic(G-DL)、Service-Dominant-Logic(S-DL)、Community-Dominant-Logic(C-DL)とは?

そして三つ目が「顧客との継続した関係(特に見込み客のファン化)」です。もともと世の中には「グッズ・ドミナント・ロジック(Goods-Dominant-Logic)」というマーケティング用語があり、これは「商材そのものの価値の最大化」のことで、要は商品そのものが価値を持っていて、モノを出せば売れていた時代の考え方です。

次にこれが「サービス・ドミナント・ロジック(Service-Dominant-Logic)」に拡張され、いわゆる「モノからコトへ」というのがこれに当たります。

さらにこの上にもう一つ「コミュニティ・ドミナント・ロジック(Community-Dominant-Logic)」というものがあり、弊社は今まさにここの部分にフォーカスしていますが、つまりさまざまな価値をコミュニティー全体のために使いたいということで、現代の企業はここまで期待されているということです。

このように今、G-DLからS-DL、そしてC-DLへと拡張されているので、これを意識してセールス&マーケティング活動をしないといけない時代に入っています。

そこで弊社ではポータルサイトの下に、カスタマーサイト/サプライヤーサイト/エンプロイーサイトを新規で作ったり、あるいはリニューアルしました。

なぜなら、彼らは全員企業にとってのステークホルダーだからです。このようなステークホルダーの人たちの意見などの情報をデータ化し、C-DLに向けてさまざまなサイトを作ろうということで、これら3つのポータルサイトをきちんと整備しました。

こうした取り組みの目的は結局、「ファン作り」に尽きます。ファンとはロイヤルティの高いカスタマーのことで、「皆さんに愛されたい会社」を目指すということです。

6つくらいのタイプがあるステークホルダー全員から愛されるという「ファン作り」がなぜ必要かというと、デジタルの時代には技術やビジネスモデルなど何でもすぐコピーされます。

その中で唯一コピーされないのは人間の感情です。そこでいかにロイヤルティの高いカスタマーを作っていくかということがBtoB企業にとって重要です。

つまりロイヤルティプログラムで付加価値を提供する。なぜなら「顧客の感情」だけはコピーされない。CRMが必要だが、それだけでは十分ではありませんし、自社の手持ちのデータだけでは不十分です。

1st Partyデータだけでは不十分で、2nd Partyデータや3rd Partyデータなどさまざまなデータを持つ必要があります。そのためにはお客様だけでなく、サプライヤーなどのパートナーや従業員からもデータをいただくことが重要です。

それからMA(マーケティングオートメーション)は差別化ではなく、効率化のためのものと割り切ることが重要です。

以上をまとめると、アフターコロナの時代にあっては、「顧客を見つける」から「見つけてもらう」へとマーケティング戦略も変えていかないといけません。

ストーリーテラーとしてのブランディング

最後に「ストーリーテラーブランディング」についてご紹介します。マーケティングとしてメッセージを外に出したり、あるいは営業トークを展開したりすることがあると思いますが、人間の脳は混乱を嫌います。

行うべきは、自社の商材が消費者にとって重要である理由を伝える競争であって、自社の商材を市場に出すことではないという区別が重要です。

人間は元々生存や成功のため本能的に、役立つ情報をカロリーをたくさん消費させずに伝えることを好みます。それゆえ、マーケティングメッセージも営業メソドロジーもいかにシンプルかということがとても大切です。

その中で勝ち残っていくのは「物語」です。最近、ストーリーあるいはナラティブという言葉が盛んに用いられていますが、「物語」とはメッセージに意味を与える仕組みです。

このような物語の各要素を自身の商材・サービスに関連付けていくことが、お客様がそれら商品に関心を持つように導く案内図です。

ですから皆様、ぜひこうしたストーリー展開やナラティブに、今後注目いただくといいのではないかと思います。

まとめ

以上をまとめると「変化する営業&マーケティング」として顧客の行動変容がありました。同時に営業を効率化し、お客様に寄り添わないといけない。そしてこれからは顧客を「見つける」のではなく、顧客に「見つけてもらう」ことが重要です。

「ストーリーテラーブランディング」としては、脳はストレスを嫌います。ですから、お客様は自分が受け止めた情報に基づいて意思決定を行いますので、「何を語るか」ではなく「何を語らないか」が実は一番難しいと同時に重要であるということを強調できたらと思います。

スピーカー

横河電機株式会社|常務執行役員 マーケティング本部本部長CMO 博士(技術経営) 阿部 剛士氏
1985年、現インテル株式会社に入社。インテル・アーキテクチャ技術本部本部長、マーケティング本部本部長、技術開発・製造技術本部本部長を歴任。
2009年以降、取締役、取締役 副社⻑、取締役 兼 副社長執行役員に就任。
2016年、横河電機株式会社入社し、R&D、M&A、知財、新事業開拓、事業計画、標準化戦略、オープンイノベーション、工業デザインなどを傘下にマーケティング本部を統括、現在に至る。

関連リンク

https://www.yokogawa.co.jp/

https://wovn.io/ja/

取材担当者

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