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CX Circle TOKYO オープニング&創業58年目のキューサイが仕掛ける、“ウェルエイジング”な世界の実現【イベントレポート】

2023.09.13

この記事は、2023年6月28日に開催されたCX Circle TOKYOの一部セッションレポートです。

Contentsquareが贈るCX Circle TOKYOオープニング「ようこそ、Experience-Led Growthの時代へ」

Webやアプリのユーザーの三人に一人がフラストレーションを感じている

Contentsquare 伊奈氏|
こんにちは、Contentsquare Japan(コンテンツスクエア・ジャパン)カントリーマネージャーの伊奈と申します。

本イベントのテーマである「デジタル体験」の現状とトレンドについてお話ししていきます。

まずこちらのスライドですが、よくある光景ですよね。我が家も最近、家族で集まるとこのような光景になっていることも多く「これで大丈夫かな?」、「もっとコミュニケーションをしないといけないのではないか?」と思うのですが、現状私の家族も皆スマホが大好きという状況です。

ともあれ、皆さまざまな目的があって、スマホを通じていろいろな体験をしていくわけですよね。例えば、お父さんは「家族旅行は次どこへ行こう?」とか、「次のゴルフはどこを予約しよう?」といったことを調べたりします。

それからお母さんは好きなブランドのショッピングを楽しんだり、子どもたちは必ずしも学習アプリではなく、NetflixやYouTubeの動画を見るなど、それぞれが好きな目的で楽しんでいます。

一方、このようなサービスを提供する側にいるのがブランドの皆様です。ますますスマホ中毒になっていきがちな消費者の皆様に対して、より高い顧客体験(CX)やその価値を提供していく必要が今ますます高まっています。

実はWebサイトやスマホアプリを使っているユーザーの三人に一人はフラストレーションを感じる経験をしているという調査結果があります。具体的には、弊社で毎年発行している「デジタルエクスペリエンス・ベンチマークレポート」の最新の結果です。弊社が提供するデジタル体験分析基盤はグローバルで1,000社以上のブランド運営者に導入されているので、その各社のデジタル接点における匿名の顧客行動データを元にトレンドを統計的に分析しているものです。

来訪者の3人に1人は何らかのフラストレーションを感じている

そして、今年調査した直近のデータによると、来訪者は3回に1回フラストレーションを感じており、その元となる特徴的な行動をしているということがわかりました。

具体的にどのような体験・行動かというと、例えばページの読み込みが遅かったり、サブミットボタンを押しても表示が変わらないことによる連打行動などのレイジクリック、特定のフィールドに必要以上に何度も登録させられるなど、さまざまなフラストレーションを感じる特徴的な行動があることが読み取れます。

それを三人に一人は経験しているということで、これはなかなかの数ですよね。

コロナ禍でオンライン需要が増えてもモバイルのCVRが2%以下と低いままである理由 

モバイルのトラフィックは継続して増大しているが、コンバージョンは低迷

Contentsquare 伊奈氏|
そしてそのことが、トラフィック観点で見たとき、企業にとって重要なコンバージョン率(CVR)の低迷につながっています。

スライドはベンチマークレポートの別の結果です。コロナ禍を経てオンラインのトラフィック自体が上がっており、デスクトップとモバイルの比率を見ると前者よりも後者の比率の方が圧倒的に伸びていますが、このような中でもモバイルのCVRは低いままで2%以下です。

オンラインの顧客体験はブラックボックス

ではこの状況がどうして起きているかというと、弊社の見立てでは多くのブランドが提供するオンラインのCXが、未だにブラックボックスになってしまっていることが理由だと考えています。

このことはオフラインとオンラインを比べるとわかりやすいです。例えば、オフラインの店舗では、来客がTシャツを見て「すごくいいなあ」と共感していたり、「どのサイズにしようか?」と迷ったり、あるいは店員さんと話したいのに話せなくてイライラしたりといった状況は比較的わかりやすいと思います。

他方、オンラインでも上記のような行動は見られますでしょうか?現状、そこが見えない/見えづらいという状況があり、CVR程度しか見られていないことが多く発生しているのが実際のところだと思います。

Contentsquare Japan カントリーマネージャー 伊奈 憲一郎氏

ただ、全てのお客様の行動を把握していこうと思ってもこれは非常に難しく、皆様も日々苦労されているところだと思います。

コロナ禍もあり、皆がオンラインに積極投資してコンテンツも増えました。機能を拡充、決済手段も追加しさまざまな施策が展開されています。

こうした中、お客様が好きなデバイス/タイミング/目的でアクセスをしてくる数としては、月数百万から数千万、数億にも上るセッションやページビューが発生しており、これだけ複雑な中、全体を正確に把握していくことは困難です。

テクノロジーがさらに複雑性を加速させている

これこそがデジタルマーケティングのテクノロジーにおける複雑性を、さらに加速させている要因になっていると考えています。具体的にはマーケティングオートメーション(MA)、そしてパーソナライゼーションエンジンによって顧客一人一人の行動に応じてコミュニケーションがより最適化されつつある状況にありますが、一方で個々のお客様の体験を見ると、それが果たして良くなっているのかどうかは、なかなか把握しづらい状況になっていると思います。

だからこそ改めて顧客目線で、それぞれのお客様の行動を把握していく必要があると思っています。なぜ、そのお客様がサイトを訪問してくれたのか、どういう目的なのか、なぜ離脱をしてしまったのか。そしてその購買行動やCXは良かったのか、それとも悪かったのか。このようなことを改めて理解した上で、CXとその価値を改善していく必要があると考えています。

顧客目線でデジタル体験の"What"と"Why"の分析が必要

CX改革に取り組んでいる企業/取り組んでいない企業では売上成長率に2倍の差

そして、Contentsquareは皆様に対して、そのような課題に関する強力なご支援を提供していきます。マーケティングチーム、デザイナー、そしてフロントエンドの技術者などUXに関わる全ての方々に対し、直観的なUIを備え、パワフルなAIを活用したアナリティクス基盤を通じて、改善に関するビジネスインパクトとインサイトを提示していきます。

全てのUXに関わる人々へ最適なソリューションを提供

そして日々話題に上るジェネレーティブAI(生成AI)に関しては、弊社もこの領域に積極的に取り組んでいきます。適切なプロンプト*1AIに対して出す指示・ヒントを通じ、AIが皆様の強力なパートナーになっていきます。

CXへの投資はビジネスにも大きな価値をもたらす

そしてUX/UIへの投資は大きな投資対効果をもたらします。皆様側の視点から見て重要なポイントと考えられる、ユーザー行動におけるビジネスインパクトにつながるたくさんのインサイトが見出されており、導入いただいたお客様に関してはフォレスター社の調査で高いROI(投資対効果)をもたらしているという結果も出ています。

優れたデジタル体験こそがビジネスを成長へと導く

また、最近のマッキンゼー社の調査結果によると、顧客ロイヤリティを測る指標であるNPS®(ネットプロモータースコア)の値で比較した場合、CXと向き合い改革に取り組んでいる企業と、そこで出遅れている企業とでは、5年間で売上成長率において2倍の差が出ているという結果もあります。

優れたデジタル体験こそがビジネスを成長へと導く2

改めて、この複雑なCX時代において、お客様個々の行動をしっかりと把握し、そしてCXの改善に努めていくことが重要だと考えています。

キーノートセッション「創業58年目のキューサイが仕掛ける、“ウェルエイジング“な世界の実現~リブランディングとデジタルで、通販ビジネスに変革を起こす~」

「青汁」で有名なキューサイが進める「ウェルエイジング」による戦略転換とは?

キューサイ 代表取締役社長 佐伯 澄氏

Contentsquare 伊奈氏|
それではオープニングキーノートに入ります。本セッションでは「キューサイが仕掛ける“ウェルエイジング”な世界の実現」と題して、そのリブランディング戦略とデジタル活用について、キューサイの佐伯社長にお話しいただきます。よろしくお願いします。

プロ経営者としてキューサイに参画されたということですが、それからどのくらいになりますか?

キューサイ 佐伯氏|
いま1年半ほどです。

Contentsquare 伊奈氏|
1年半の間、変革を進められてきた手応えはいかがですか。

キューサイ 佐伯氏|
かなりの手応えです。「会社を揺さぶるくらいの変革」といっても過言ではないくらいです。

Contentsquare 伊奈氏|
まさに「変革者」ですね。ここからじっくりお話を伺います。早速、キューサイ様が今仕掛けているリブランディング戦略について教えてください。

キューサイ 佐伯氏|
改めまして、佐伯と申します。皆様にはキューサイと聞くと青汁というイメージを持っていただいていると思いますが、2年ほど前から「会社を揺さぶる」くらい、かなりさまざまな変革を進めています。

ウェルエイジングによる戦略転換点とは

まず「ウェルエイジングによる戦略転換点」について紹介します。弊社が掲げるこの「ウェルエイジング」という言葉は、年齢を重ねることを前向きに捉えると体も充実し、それに応じて心も充実し内面の豊かさも出てくるという考えです。

それができることで「ウェルエイジング」が達成でき、ひいては「人生、新しいものにチャレンジしてみよう!」というお客様が増えてくる。この「ウェルエイジング」をブランディングのキーとして立ち上げたのが、まず最初の入り口となる弊社の戦略になります。

これにより、従来と何が変わったのか?これまでは、消費者の皆さまへのマーケティングチャネルとしてテレビCMよりも時間をかけて商品について説明できるインフォマーシャルを活用し、「青汁といえばキューサイ」というイメージを持っていただき、成長を遂げてきました。

Contentsquare 伊奈氏|
たしかに、そういうイメージが強いです。

ウェルエイジングによる戦略転換点とは2

キューサイ 佐伯氏|
ただ、やはり徐々にお客様の購入の仕方も変わってきていて、そこで「キューサイ=ウェルエイジング」と認識していただき、弊社がお客様の「ウェルエイジング」を総合的に支援する形になると、スキンケアやヘルスケアだけにとどまらないあらゆるCXまで提供・支援していくことができるようになるというのが大きなきっかけの一つです。

現在、エイジングを包括的に見る企業はまだ世の中にあまり存在していません。どちらかというとスキンケアなど特定の領域に絞っていく企業が多いのですが、弊社はこの「ウェルエイジング」という転換点でブランドを作り、最終的に熱狂的なファン層を作っていく。それが私たちの考えているシナリオです。

Contentsquare 伊奈氏|
今までは単品通販による販売がメインで、今後は「ウェルエイジング」に関わる全ての商品を開発していくとなると、取り組んでいく戦略は全く別物になると思いますが。

キューサイ 佐伯氏|
はい。ただ、お客様起点で考えると、やはりそこがお客様のLTVを伸ばしていく本質的な要因になると考えているので、避けては通れません。

一つの商品をご愛用頂きながら、「ちょっとまた違うウェルエイジングにつながるキューサイの商品に行ってみようかな」と考えてくれるファン層をお客様の中に作っていくことが、「ウェルエイジング」ブランドの一つのキーになるというのが、私たちの戦略の柱となる考えです。

「ウェルエイジング」の市場規模は約7,400億円!

ウェルエイジングの市場規模

キューサイ 佐伯氏|
「ウェルエイジング」の市場は、概算で7,400億円くらいあると見ています。「ウェルエイジングに魅力を感じますか?」という弊社の調査に対し、好意的なお客様の声も半数近くにまで上っている状態です。

いわゆる「アンチエイジング」の市場が9,000億円くらいと言われていますので、「ウェルエイジング」にはそれに並ぶ大きな市場が存在していると考えています。

売上目標

そのような中で弊社は、2021年時点で売り上げが256億円だったところ、2025年までに300億円を目指そうと定めており、さらにこれは今後もっと加速度的に伸びるような状況にあると分析しています。

弊社は「コラリッチ」などのスキンケア商品や、「ひざサポートコラーゲン」などのヘルスケア商品を通販で販売しており、ウェルエイジングに関して本当にCXを突き詰めたサービスを展開すると、おそらくここに掲げている数字の比ではないポテンシャルが想定されます。

「ウェルエイジング」のDNAとは?−コアとなる価値は何か、何を信じるか、その提供価値は何か

キューサイ 佐伯氏|
それから、弊社で「ウェルエイジングのDNA」と呼んでいるものがあります。「心と体が充実して前向きに生きる」というのはほぼ最終的なアウトプットであり、お客様側の結果です。もちろん、その先に「ウェルエイジングの世界を実現する」というさらに最終的なゴールもあるのですが、私がかねがね社員に対して伝えているのは「何が重要なのか?」ということです。

それはつまり、「なぜ私たちはそれを信じるのか?」、「そこの中核にあるコアとなる価値は何なのか?」という、私たちにとってのWhyです。

「Love your ageing, Be yourself」、すなわち「年齢を重ねていく自分自身を愛して、あたらしい毎日を送るための活力を約束する」ことが私たちの原点です。

やはり、体が健康で内面が充実すると自信も持てるし、「第二の人生で初めての体験にも挑戦して、人生を謳歌しようか」、「周りを見て年齢が近い人たちは多いけど、私の方がイキイキしているな」と少し前向きな気持ちになれる。

それを叶えるため、弊社は商品・サービスを通じてそれぞれの年齢に合った喜びをご提供する。ひいては人生初の「体験」の部分まで支援していきたいと考えているところです。

私は社員に向けて単に「利益を作ろう」とは言っていません。最終的には社会課題を解決するという、この大きな目標のために私たちは毎日走っているのだということが、会社の中で一つの大きなメッセージとしてできあがってきていると思います。

Contentsquare 伊奈氏|
社員と一緒にDNAやコアバリューを作り上げたというのが非常に素晴らしいですね。

世間一般ではトップダウンで意識改革をしていくという流れの方が比較的多いと感じますが、社内の皆様で作りあげたというのがすごいですね。

キューサイ 佐伯氏|
その上、「私たちはスキンケアを提供します」とか、「お肌に良いものを提供することが価値です」といった文言は一言もありません。

全て「ウェルエイジング」で意識統一された上でできあがった結果を見て、私の中ではある種の感動を覚えましたし、目指すべき目的に向かって一丸となって走れているなと感じています。

Contentsquare 伊奈氏|
社内のワークショップ等を通して、社員の意識改革自体も進んでいるということですね。

キューサイ 佐伯氏|
はい。私はキューサイに入った最初のタイミングで、「社長になったら一対一で全社員と話します」と宣言しました。

新卒社員までを含めてたくさんの社員と話しましたが、「ウェルエイジングってすごいですよね」といった話ではなく、「何を大切にしていきたいか」、「そのために社長には何をしてほしいか」、「逆に何をしてほしくない/変えてほしくないか」ということを確認しています。

もう一つは、やはりお客様起点で勝負しないといけないので、必ずそこに戻るという「約束」です。「仮に施策をめぐって意見が分かれたりしても、必ず『それはお客様のためになるか?』という基準に戻ることになるが、その覚悟はあるか」という一つの「約束」は社員との間でかなり徹底してやります。

Contentsquare 伊奈氏|
皆で作り上げたものをベースに、立ち返るべき基準についてコンセンサスを固めたということで素晴らしいですね。

キューサイ 佐伯氏|
キューサイと聞くと30年くらい前の青汁のテレビCMで「まず~い、もう一杯!」のイメージが強いと思います。

今の弊社はそこにとどまらず、自分たちが体現すべき「ウェルエイジング」の世界とはどういうものなのだろうということを考えています。そして、その解釈を実践して「人生初」をいつまでも体験できるような前向きな気持ちになってもらおうということを、一つのコーポレートブランディングとして新たなCMを作って展開しています。

「人生初を、いつまでも。」というスローガンを掲げていて、かなり従来のキューサイのイメージとは異なります。

Contentsquare 伊奈氏|
この新しいCMは私も大好きで、特に「人生初」って素晴らしい響きだなと感じます。自分自身、今年45歳になる感覚として、何か新しいことをやろうとするとき「ちょっと体力落ちてきたな」という実感があります。

ちょっとためらってしまうところがあったりするので、やはり勇気を出して新しいチャレンジをしていける自分になっていきたいという思いがあり、そこを支援していただけるのはありがたいと思いました。

キューサイ 佐伯氏|
今後は「ウェルエイジングといえばキューサイ」となれたらと考えています。エイジング関連商品の情報や健康に関する知識など、キューサイのところに行けば必ずそれがわかり、レコメンデーションやアドバイスを受けつつ顧客体験ができる状況というのが作っていきたい、この考え方がブランディングの基礎になります。

Contentsquare 伊奈氏|
「人生初」に挑戦したいけど、「どうしたらそんな自分になれるだろう?」と悩んでいる方は多そうです。

キューサイ 佐伯氏|
そこはITリテラシーとか関係ないですし、むしろ自身のそういう気持ちに気づいていない方も結構いると思います。最初から諦めてしまっていて、それができるかどうかという検討の入り口にすら立っていないお客様もいらっしゃいます。

ただ、そうした方でもキューサイのところに来ていただければ、「ウェルエイジング」という文脈で、必ずご自身の可能性に気づいていただけるというのが、弊社が掲げる戦略上のコンセプトの一つです。

Contentsquare 伊奈氏|
この新しいブランディングを打ち出されて約半年。市場や消費者はどのように受け取っていますか?

キューサイ 佐伯氏|
お客様の声もかなり聞くのですが、まず一つ嬉しいのは「あの」という言葉が付く感想が多々あることです。「あのキューサイが、こんなことをやっているのか!」と言われると、こちらも「そういう受け止めになるのか」という気づきにもなりますし、嬉しい部分です。

Contentsquare 伊奈氏|
以前の「まず~い、もう一杯!」のブランディングも、ある意味際立っていましたからね。

キューサイ 佐伯氏|
あの「まず~い、もう一杯!」のキューサイは「青汁だけじゃないんだ」と、やはりそこに一つの面の広がりが生まれます。

これもいわゆるブランディングの一種なのですが、それが広がってきているということは、お客様の声を聞いていると手に取るようにわかります。

「ウェルエイジング」でとらえるべきは、消費者ではなく「生活者」

Contentsquare 伊奈氏|
非常に良い感触を得ていらっしゃるのですね。こうして新しいブランディング戦略を進められているキューサイ様ですが、ここからはお客様と具体的にどのように関わっていこうとされているのか。その取り組みについて教えていただけますでしょうか。

とらえるのは、消費者ではなく「生活者」

キューサイ 佐伯氏|
はい。皆様もご存知の通り、お客様との関わり方が大きく変わってきています。釈迦に説法かと思いますが、従来はスライド左下のように顧客を「買い物客」「ロイヤルカスタマー」など、あるいはメディア媒体であれば「視聴者」など、いわゆる「消費者」として見る文化が主流でした。

これに対し、「ウェルエイジング」を掲げる弊社は一人一人の「生活者」としてのお客様を捉えており、その「生活者」の周りにデジタルや趣味・嗜好・欲求などがあると考えるとき、そこの解像度を上げていくことが、今後一つのキーになると思います。

Contentsquare 伊奈氏|
それは顧客理解を軸にしてということでしょうか?

キューサイ 佐伯氏|
はい。ですから、そのような「生活者」に関する洞察をどこまで突き詰められるかが勝負だと思っています。

目の前のお客様をどこまで理解できているか問われて、自信を持って解像度高く答えられる人はなかなかいないのではないかと思います。

おそらくお客様が何歳かといった属性的なことは把握していても、本当にお客様のライフスタイルや将来の考え方も含めた生活全体まで解像度を上げていくというのが、これからの戦い方だろうと考えています。

「ヒューマンダイヤモンド」とは?キューサイが生み出す「ウェルエイジング」の提供価値

Contentsquare Japan カントリーマネージャー 伊奈 憲一郎氏&キューサイ 代表取締役社長 佐伯 澄氏

そのような状況において、キューサイが生み出す「ウェルエイジング」の提供価値として、スライドに上から3段に分けてまとめてみました。

今お伝えしたのが一番上の「深い顧客理解からの商品・サービス価値」です。これはお客様の購買行動だけでなく、深い人間心理、動機、欲求から行動習慣まで含めて読み解いた上で生まれる商品を提供していくということで、ここは社内でかなり徹底的に議論しています。

私自身、今この解像度を上げるプロジェクトだけに全体の半分くらいの時間を割いており、それぐらい力を入れて取り組んでいます。

Contentsquare 伊奈氏|
何をどう理解していくのかという部分が重要なのですね。

キューサイ 佐伯氏|
当然年齢層やジェンダーの違いなどはありますが、そういうレベルを超えた実感があります。よくデータベースマーケティングで、「弊社には顧客・カスタマーのリストがあり、計何万人分に上ります」と言われる方がいますが、多分先ほど伊奈さんが話されたように、これからのCXはその程度の次元ではなくなるのだろうと思います。

次に中央の段は、顧客の体験を作っていく部分です。実を言うと、私がAmazonにいたときにトップの人間から「個々のお客様にとって意味のあるものを作り出さないといけない」といわれた言葉が原点にあります。

今回は「ウェルエイジング」を掲げていますが、それを叶える最高の出会いがそこにあって初めて体験も生み出されるので、やはりそこを目指すことこそ「顧客の体験価値」を作ることになると考えています。

Contentsquare 伊奈氏|
「意味のあるものを作り出す」ために、まずは理解を固める必要があるということでしょうか。

キューサイ 佐伯氏|
弊社として、この上から降りていくファネルイメージを持った上でのサービス・商品展開を行ってはいますが、ただし入り口の部分で「この商品はきっと世の中に刺さるだろう」から入るとたいてい失敗します。

やはりお客様を理解した上で、「ウェルエイジング」という軸で何を体験してもらうかをお客様に伝えるときには、「これを体験いただけば、必ずウェルエイジングの根底にある信念をご理解いただけると思います」というところまで突き詰めないと成功につながらないということを私たちは知っています。

そして下段は「つながる価値」ということで、やはり一方通行では良くないということです。

よくコミュニティやファンマーケティングなどについて耳にするようになりましたし、本当の意味でお客様とつながると何ができるのかということを結構、最近真剣に考えています。

そこから商品開発ができたり、あるいは新しいマーケティングのエッセンスなどをお客様から得られるかもしれません。そうした機会をオンライン/オフラインに関わらず、さまざまなタッチポイントで作ることができる基盤を作っていくことは、本当の意味でお客様のエンゲージメントを活かした戦い方なのではないかと考えています。

その上で、「ウェルエイジングを体現する商品開発」とはどういうことを指すのか、スライドで絵を使って説明しています。これは「ヒューマンダイヤモンド」と弊社で名付けているものです。

Contentsquare 伊奈氏|
「ヒューマンダイヤモンド」ですか?初めて聞きましたがどのようなものなのでしょうか。

キューサイ 佐伯氏|
弊社の造語なので、まだ調べてもあまり情報は出てこないと思います。まず中央に免疫・ホルモン・自律神経・細胞などがありますが、これらは人体の中身の部分です。外側は脳・感覚器や膝などの運動器、循環器を含めた「器官」が周りを支えています。

これらを弊社では「恒常性バランス」と呼んでおり、私たちが構築・蓄積したエイジングの知見からいうと、年を重ねるとこの「恒常性バランス」のどこかが崩れてくることになります。

「スーパーフード」ケールが牽引!「ウェルエイジング」を体現する商品開発戦略

ウェルエイジングを体現する商品開発戦略

キューサイ 佐伯氏|
例えば、加齢と共に肌や外皮が衰え崩れると何が起きるかというと、人体は全体でバランスを取っているので、体の他の部分も衰えます。その影響としてよくいわれるスライド右下の、腸内環境が衰えると肌も衰えるという現象もその一部になります。

このバランスは40歳頃から徐々に崩れ出すのだそうです。そのバランスをいかに維持するかというのが「ウェルエイジング」なのだと考えています。

これに対し「アンチエイジング」では体のどこかを変えていくため、大きく異なります。外皮や肌を劇的に若返らせ、加齢に「抗う」というのが「アンチエイジング」の考え方です。

他方、私たちの「ウェルエイジング」は前述のバランスをいかにキープできるか。そうすると加齢が加速しなくなったり、「この人は年齢相応以上にすごく走れるね」といった人とは違う免疫や機能の強化ということができたりするということが「ウェルエイジング」の根幹にはあります。

Contentsquare 伊奈氏|
そのバランスがとれていることによって「ウェルエイジング」が体現できるから、そのための商品を提供していくということですね。この「ヒューマンダイヤモンド」を元にした商品開発で、特に戦略的に力を入れていらっしゃる領域はどこでしょうか?

キューサイ 佐伯氏|
弊社はスキンケア・ヘルスケアから青汁まで展開しているわけですが、今スライドの真ん中に見えるのが緑色のケールの葉です。青汁にはさまざまな種類がありますが、中でもこのケールは海外を中心に「スーパーフード」と呼ばれるほど栄養素が高い植物です。

ザ・ケール リブランディング

外からの美容を超えた部分で、このケールを飲むことなどにより内面から「ウェルエイジング」を体現していく商品ができるのではないかと考えています。例えば、弊社はコラーゲン関連の商品も扱っているので、それとケールとのミックス商品ができるのではないかといったものです。

また、最近は筋肉の強化につながるということでプロテインなどもよく飲まれますが、弊社では「グリーンプロジェクト」と銘打ち、それをケール味にすることによって、今度は内面から力強さという意味での「ウェルエイジング」も作っていけるのではないかという商品開発も考えています。

Contentsquare 伊奈氏|
今は特にケールを中心にした商品開発戦略を描いておられるのですね。今このような新戦略を元に、個々のお客様に対する具体的な関わり方も変えていこうとしているとのことでした。

そして、さらに新しいコンセプトも描かれているということですが、それはどのような内容なのでしょうか?

エイジングと向き合う新サービス

キューサイ 佐伯氏|
弊社では「エイジングと向き合う新サービス」と呼んでいます。お客様に対し、エイジングを軸にCXを含め究極的なものを作ろうとすると、先ほど紹介した商品・サービスでもまだ足りないと考えています。

お客様の中にも「自分自身のエイジングの現在地ってどこなんだろう?」と考える方は多くいらっしゃいます。それはもちろん人によって全然違うのですが、「自分は同い年の人と比べてどれだけ違うのだろう?」というデータをきちんと可視化できるサービスについて、実は今アルファ版やベータ版を仕込んでいるところです。

ですから2024〜25年の早い段階で、プラットフォームとしてご提供できたらと考えています。

Contentsquare 伊奈氏|
今からリリースが待ち遠しいです。

新コミュニティ「ウェルエイジングアドバイザーズ」の構築・活用

Contentsquare 伊奈氏|
では、ここから最後のテーマとして、オンラインチャネルで考えた場合に、どのようなCXを提供していこうと考えていらっしゃるか、今後の挑戦も含めて教えてください。

ECリニューアル

キューサイ 佐伯氏|
究極的には前述のような、エイジングのプラットフォームを提供していきたいのですが、まず一番最初のマイルストーンとして、数ヶ月前に公式ECサイトをリニューアルしました。

私はAmazonにいたので、やはりECはきちんとお客様導線を作り品揃えも豊富で、直感的にお客さんが購買できる利便性を備えた「売り場」として想定しています。

刷新したECのコンセプトは「ウェルタイムストア」というもので、それはつまり弊社の商品・サービスがなぜ「ウェルエイジング」を体現できるかという理由に関わる「ウェルエイジング」商品・コンテンツの基盤/基礎となる「売り場」であるということです。

そのような、私たちが信じる価値をきちんとECに織り込んでいくというところから取り組みに着手しました。

CRM基盤強化と顧客のファン化

もう一つは、そこに来られたお客様に関しては、究極的には「参加していただく」という形を考えています。スライド左側の、データベースやお客様リストがあり、CRMで回してお客様セグメンテーションをし、ターゲットを決めたらそこに施策を打つというのは皆様普通にされていることだと思います。

そしてお客様から受注レスポンスが取れたら、それがまた一つ顧客データベースに加わるわけです。

弊社はそれにとどまらず、ファンと相互に連動するコミュニティを形成していこうということで、「ウェルエイジングアドバイザーズ」というものを作っています。

Contentsquare 伊奈氏|
新しいコミュニティを立ち上げたのですか?

あらゆる接点で常時顧客とつながり、体験価値を高める

キューサイ 佐伯氏|
そうです。この1年半ほどでもう1万人くらいの集まりになっており、そこに対しては一方的に「このような情報があります」などとメールを打つのではなく、双方向のコミュニケーションを元にコンセプトを作っていきたいと考えています。

例えば製品開発も含め、お客様が訴求すべきだと考えたメッセージの通りにやってみるのもアリだと考えています。その根底には、単純に「この集まりの中でデプスインタビューをしましょう」といったレベルを超えるつながりをお客様と持ちたいという思いがあります。

お客様の声をダイレクトに得られるのに加え、リアル施策も行えますし、かつそれがコミュニティなので双方向の意見交換もできます。このように、本当の意味での「共感」を確かめられるということがコミュニティの狙いで、これを管轄する専属部隊を作ったりもしました。

Contentsquare 伊奈氏|
専門チームも立ち上げられたのですか。

キューサイ 佐伯氏|
はい。「市場情報戦略部」として、いわゆる市場統計調査をやるだけではなく、お客様のエンゲージメントをいかに高められるかという課題に取り組んでいます。

具体的には特定のクラスターのお客様がどういう状態にあるかから、どういうエイジングのサポートを行い、どれだけロイヤリティーを高められるかまでを考え分析を行っています。

Contentsquare 伊奈氏|
試供品を提供しフィードバックをいただいて終わるという一般的なレベルとは異なる、かなりレベルの高い取り組みですね。

キューサイ 佐伯氏|
はい。従来はそうしたレベルにとどまり、集まったデータを並べて有意性がある/ないとか、「消費者にウケている/いない」といった自分たちの感想で終わってしまっていましたが、それではまったく不十分でやはりお客様とのつながりを重視・活用することが不可欠です。

Contentsquare 伊奈氏|
コミュニティメンバーが約1万人に達したというのはすごい規模ですね。

キューサイ 佐伯氏|
コミュニティ施策に関していえばそこまで多くなくても、例えば数百人規模のコミュニティがあればお客様の解像度は自ずと上がりますから、同様の施策を打てる方はぜひそこを狙うべきだと思います。

弊社はテレビのインフォマーシャルを活用して事業を成長させてきた会社ですが、今はオフライン/オンラインの垣根はほとんどありません。さまざまなお客様の声を聞いたりして解像度を高めていくと、認知はするが買わないお客様も当然いる一方で、自分自身で商品の価値を確かめたいというお客様はやはり多くいらっしゃいます。

最近ではインフルエンサーがSNSで言っている意見と、自分の意見とが合ったので初めて「この商品は信頼できる」、「キューサイの言っていることは正しいんだ」という形で、興味関心のきっかけとなったというお客様もいらっしゃいます。

ですから、社内でも「今はそこまでオン/オフを切り分ける必要はない」という議論がかなり高まっていて、もちろん時には片方のチャネルに一方的な誘導をかけたりもするのですが、どのチャネルに行っても同等の高い質・水準でのCXを受けられるような設計をしていく必要があると考えています。

キューサイが挑戦する包括的な「ウェルエイジング」軸での新しい顧客体験(CX)構築!

キューサイ 佐伯氏|
そして、先ほど究極的にはプラットフォーム的なところまで描いていきたいとお話ししました。

包括的な「ウェルエイジング」軸での新しいCX構築を行っていくためには、やはりお客様のエイジングの立ち位置がクリアになれば、そこをきっかけに「何をすればいいんだろう?」、「自分の人生は、どんな体験まで作っていくことができるのだろう?」といったところまでご支援できる必要があります。

「そのようなプラットフォームができないか?」と今作り込んでいる最中で、これはまだ概要ですが、変化を体感する興味関心の応えるサービスを提供していけたらとも考えています。

例えば「同い年の人は皆ゴルフが上手だから、自分も上手になりたい」、「もっとできるはずだ」と思ったときに、それに必要なさまざまな指数を測定するサービス。先ほどお話しした「ヒューマンダイヤモンド」のようにさまざまな角度から解像度高く分析することを目指しています。

「やはりここが弱っているのではないか?」、「ここが悪さしているのではなかろうか?」
など、これらを可視化してあげるということを考えています。

そして、なぜそれをキューサイがやるかという意味合いの部分が重要で、もちろんお客様の行動変容につなげる目的はあるのですが、ただ単に健康アプリのように面倒な体重などの数字入力・登録を毎日行ってもらい、少しずつ改善していく様子が何となく見えるといったものでは決してありません。

それだと大体、皆途中でやめてしまいますから、そうではなく主観的に体感する部分や客観的なデータを両方お知らせしていきます。

例えばゴルフであればスコアなど、自身の記録更新に体感としてつながってくれば、それが「ああ、なるほど。まだ自分の人生、次の『初体験』としてこういうことができそうだ」というところまで、お客様を持っていけるプラットフォームが理想です。

今、エイジングをこのように包括的にやっている企業はほかにありませんから、とてもやりがいもありますし、大きなチャンスだと考えています。

Contentsquare 伊奈氏|
既存のサービスとは目線が大きく違いますよね。お客様の「人生初の体験」を支援したいから、そのためのプラットフォームを提供していこう。だからこそ、コミュニティのようなお客様と一緒になって提供していくサービスが必要で、それをお客様に使ってもらいながら、一緒になって「人生初の体験」を実現していく。「ウェルエイジング」に関するそのような形のCXサービスの提供というのは、他に例がありません。

キューサイ 佐伯氏|
例えば膝が痛いお客様がいらっしゃった場合、そのお悩みに対するレコメンドをするだけでなく、お客様のエイジングの現在地を可視化してお見せするとともに、その先にある人生初の体験に結びつく行動変容を促していきます。例えばヨガや登山を一緒にしてみましょう、といったように行動変容による顧客の体験価値を提供したいと考えています。

従来のような、「膝が痛いのですね。可視化すると膝のところがバツ印になっていますから、明日からはこれを飲んでください」といったマーケティングは、多分今後はもう通用しなくなるだろうと考えています。

Contentsquare 伊奈氏|
私個人としても、早くこのサービスを受けてみたいと感じました。ありがとうございました。

スピーカー

キューサイ株式会社|代表取締役社長 佐伯 澄氏
1996年に大学を卒業後、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、その後米国ケースウェスタンリザーブ大学院(MBA)留学。

2005年住友商事に入社し、約13年勤務する中で、海外での事業投資及び事業会社経営に従事。
海外でのテレビ通販事業の立ち上げ、仏合弁事業(流通・メディア事業)の取締役や、ニュージーランドにおける総合野菜果汁加工メーカーのCEOを歴任。

住友商事退職後、Amazonにて、Amazon Freshの事業立ち上げを主導した後、2018年8月より株式会社MOA(現XPRICE株式会社)の代表取締役に就任。マルチチャネルを展開する総合eCommerce企業へと成長を牽引(2019年楽天市場にてグランプリ受賞)。
その他、株式会社さとふる取締役等を歴任。

2022年1月よりキューサイ株式会社の取締役を務め、同年3月より代表取締役社長に就任した。

Contentsquare Japan合同会社|カントリーマネージャー 伊奈 憲一郎氏
13年間のSalesforce Japanでの営業経験の後、2022年4月よりContentsquare Japan合同会社にカントリーマネージャーとして参画。

Salesforceでは、マーケティングクラウド事業の立ち上げより参画し、主に金融、自動車、製造、通信などのエンタープライズ顧客を担当。2019年から2022年まで執行役員を務めた。

現在は、Contentsquareが世界で1000を超える主要ブランドに提供している顧客体験アナリティクスの日本における普及に注力しており、すでに30社以上の日本企業のUX改善をパートナー企業とともに支援中。

関連リンク

http://corporate.kyusai.co.jp/

https://www.kyusai.co.jp/

https://contentsquare.com/jp-jp/

取材担当者

References
*1 AIに対して出す指示・ヒント

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