2022年7月12日(火)に東京ポートシティ竹芝ポートホールにて、カスタマーエンゲージメントの最先端を体験するFORGE Japan 2022がBraze社主催で開催されました。同イベントは、マーケターやエンジニアが次世代CRMを活用しながら顧客体験を高めLTV向上を実現する顧客中心の思考・戦略・方法を学ぶことができるイベントです。
Braze株式会社代表の菊地氏の挨拶から始まり、ゲストに株式会社デジタルシフトウェーブ代表取締役社長の鈴木氏を迎え、オープニングセッションとして「カスタマーエンゲージメントの未来〜消費者が求めている顧客体験〜」について講演しました。
カスタマーエンゲージメントの未来〜消費者が求めている顧客体験〜
ビル・マグヌソンとジョン・ハイマンによって2011年に創業されたBraze(ブレイズ)社は、世界1,500社以上のトップブランドで採用されているカスタマーエンゲージメントプラットフォームを提供しています。創業当時、デジタルマーケティングはユーザー獲得にフォーカスされる時代。機械的で一方通行のメッセージしか送信できないため、ユーザーと企業が良好な関係を築くのは困難でした。そこでBraze社は「Human Connection」と呼ぶ、一回の購買では終わらない、ブランドと消費者の心触れ合う繋がりをどう作っていくのかということを重視。
Human Connection実現のために重要となるポイントは下記3点
- 双方向のコミュニケーション
- 1stパーティデータの利用
- 一人ひとりに最適化されたメッセージの送信
消費者の行動や考えは、あっという間にアップデートされます。そのため、リアルタイムで行動を把握し、エンゲージメントしていくことが大切であると述べています。
Brazeのカスタマーエンゲージメントプラットフォームは、日本上陸1年半の間に40社以上のBtoC、BtoB 企業での導入実績があるとまとめられました。
日本でもDXやカスタマーエンゲージメントという言葉が使われるようになったものの、なかなか進まない現状にあり、なぜ進まないのかについてデータを基に講演が行われました。日本の多くの企業ではDXを「デジタル化」として捉えている一方で、実際にはデジタルを活用した「変革」のことをDXと呼ぶのだと説明。
高度成長期にはモノが大量に生産され、安定期からバブル期にかけて高付加価値が求められ、バブル崩壊によってコスト削減、またネット創世記、普及期にはスマートフォンファーストと言われてきました。そして今求められているのが「DX」であり、2020年から始まったパンデミックによって一気に加速しました。しかし、日本は2020年に世界デジタル競争ランキングにおいて27位であったランクを、2021年には28位と低迷。
鈴木氏は、日本のDXが暗礁に乗り上げているケースとして下記5つの理由を挙げています。
- 経営者は掛け声ばかりで、何をやるのかが不明確
- ノウハウ不足
- マーケ部門は盛り上がるが、ネット販促と分析しかしない
- システム部門が主体でやって、ツールばかり増えていく
- 大手コンサル/SIerに丸投げした結果、続かずに自然消滅
日本企業はDXを自分ごとと捉えずに他人任せにしていまい、企業変革が全く進んでおらず、ツールを入れても思った効果を得ることができていないケースが多いようです。DXを成功に導くためには経営者が先導を切って、デジタル推進体制を構築し、顧客と未来を見据え、ITを導入して業務を変革させ、定着させることが大切であると述べています。
最後に、経営者が承認しやすい提案の形について、多くの経営者は、DXをやるか否か悩んでいる現状にありますが、中間管理職に相談をしても反対をする人が多いという。経営者は特に若い人に話を聞いた方がいい一方で、社内の若い人にはなかなか話しかけづらい。そこで解決策としては、外部の人と話したり、外部の情報を取ることが大切だとまとめました。また、カスタマーエンゲージメントを考える人に「経営層と会話する時には、数字をセットにして伝えるといい」とアドバイスを送りました。
ユーザーの行動理解から始まる顧客エンゲージメント〜 チャネルを横断したパーソナライゼーションの実現〜|メルカリUS事例
これまでメルカリUS社はお客様一人ひとりに最適なタイミングで最適なメッセージを届け、エンゲージメントを最大化することをCRMのミッションとしてきました。Braze導入前には、CRMは自社システムからメッセージを送信、全てのお客様に同じタイミングで一斉送信、プッシュやメールなどのコミュニケーションのA/Bテストをするためのエンジニアが必要で、工数がかかってしまうといった課題を抱えていました。
4年前にBrazeを導入して全チャネルを統合したCRM基盤を構築することに決め、現在では全チャネルをBrazeに統合して、クーポン配信などのエンゲージメント施策、グロース施策もAPIを使ってBrazeから実施しています。顧客一人ひとりに最適化されていないCRMから、顧客の属性と行動に基づいたイベントベースでのCRM実現に成功。現在では、より適した施策を実現するために取り組んでいます。
チャネルの深掘りにも成功して、例えばプッシュ配信では、インストール後のオンボーディング、カートに入れた商品に対するリマインド、売買のトランザクションなど、オンボーディングから、トランザクションまでの全ての配信をBrazeで実現しています。
同社はこれまでに、様々なプロモーションを行ってきました。例えば、アクティブセラー向けの出品マイルストーンの導入。これは、期間内に出品数を増やすことを目的として、出品数ゴールを3段階に設定、達成度に応じたクーポンを配布します。実際にはWEBフックでA/Bテストを振り分け、全てのチャネルを使ってプロモーション認知をあげ、プロモーションのリマインドをパーソナライズして送信、そしてBrazeを用いて出品数に応じてクーポンを配信します。
メルカリUS社はBrazeを導入したことで、自社データと統合して様々な角度からの分析に成功。異なるチャネルを組み合わせることで、リーチの最大化ができるようになった他、ユースケース毎に、最適なタイミングでの最適コンテンツ配信など、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションが取れるようになりました。また、A/Bテストをマーケターだけで行えるようになり、作業スピードの向上にも成功しています。
イベントアプリの活用- アプリで体験するリアルタイムマーケティング
当イベントでは、リアルタイムマーケティングを実際に体験するための企画が用意されていました。イベント会場にはクーポンが隠された幾つかのスポットが用意されており、そこにアプリをインストールした状態で近づくと、アプリにプッシュ通知が届き、ハンバーガー等の景品と交換できるクーポンが取得できるようになっています。
このスマホアプリは様々なサービスを組み合わせて作られる、Best of Breedによって開発されています。
基本的な機能はBraze SDKを用いて開発されており、Braze上から簡単に位置情報に基づいたプッシュ通知が可能となっています。スポットに近づいたらクーポンが解除される仕組みには、Tangerineが使用されており、ビーコンが仕込まれているスポットにスマホが近づくとクーポンがゲットできる仕組みとなっています。また、施策の分析には行動分析ツールであるAmplitude(アンプリチュード)が使用されています。
実際にこのリアルタイムマーケティングを体験した動画についてはこちらでご覧ください。
Brazeアプリで実際に体験してみた【動画】
Amplitudeが解説 Brazeのイベントアプリとの連携でデータ分析【動画】
データ、テクノロジー、組織で創造する「ヒューマンコネクション」|Brazeキーノート
Brazeは2011年に設立され、2021年にはNASDAQへの上場を達成しました。日本のマーケットを重要であると認識し2020年秋に日本オフィスを設立、そして最初のローカライズ言語としてダッシュボードの日本語化を実現しました。Brazeは、最高のカスタマーエンゲージメントを実現するために、タイムリーでパーソナライズされたコミュニケーションを可能にしました。Brazeを導入することで、データを基にした実験と検証が可能となり、その結果一人ひとりに最適化された施策や、運用の改善が施され、消費者のブランド理解を深めて最高のエンゲージメント体験を提供できるようになります。
Braze社が提供するビジジュアルシナリオ開発ツール、キャンバスに新たな機能であるBraze Canvas Flowが追加されました。Canvas Flowはあらゆる規模の企業が、チャネル全体で顧客一人ひとりに最適化された顧客体験を迅速に構築することをサポートする次世代のジャーニーオーケストレーションツールです。
従来の機能であるキャンバスはユーザー行動に合わせたメッセージ配信やA/Bテストを活用したクロスチャネル戦略でのアプローチが可能でした。今回発表されたCanvas Flowでは、直感的なUI、高度なリアルタイムのオーケストレーションとパーソナライズ機能、強化されたA/Bテスト機能とバージョン管理機能の3つの特徴を備えた、よりクリエイティブで満足度の高いカスタマージャーニーを作成できるようにサポートしてくれます。
活用することで「クリエイティビティの開放」「顧客行動に即座に対応」「パフォーマンスの最適化」などのメリットを受けることができるそうです。
自社データをフル活用!アプリを起点としたCX向上への挑戦|KFC事例
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社では、食事の選択肢としてケンタッキーフライドチキンを持ってもらい、食べたいと思った時に、その気持ちの最後の一押しをCRM施策で実現することを目指しています。
これまで同社は、アプリ累計ダウンロード数2,340万、LINEおともだち数2,420万、Twitterフォロワー数220万など、デジタルにも力を入れて顧客と情報を収集してきました。しかし、これらのデータは散財しており、デジタルタッチポイントが多くあっても全チャネルから一斉送信でコミュニケーションをとっていたため、エンゲージメントが低いという課題がありました。また、施策にデータが活用できていなかったため、うまくいった施策があっても再現性が低く、問題の解決には至っていませんでした。
そこで、全てのデータをOne to One施策に活かしつつLTVを向上する事を目的としてCDPを導入。現在では散財していたデータを統合し、自社データとIDを繋げて、顧客を分類できるようになりました。CDPとBrazeを活用して、例えば来店後n日にクーポンを配信して来店を訴求するなどの購買行動をトリガーするための定常施策と、昨年のクリスマスに購入いただいた顧客に対して今年も購入してもらうためにメッセージを配信するなどのキャンペーン施策を実施。
同社は4つの段階を用いてCDP施策を成功させるためのロードマップを作成しています。1つ目の「ID統合」、2つ目の「ID収集・データ蓄積」の段階を踏み、現在は3つ目「データ活用・One to One施策」の段階にいます。今後は、最終段階である「継続利用増・オペレーション工数削減」へと進み、自社データを活用して常に生活仕様の変化と販売チャネルの進化にリンクしたサービスの提供を目指しており、顧客体験の向上とエブリデイブランドとしての価値創出を高めていきたいと述べました。
グロースマーケティングメディアでは、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社の濱嶋氏に単独インタビューを実施させて頂きましたので、本セッションの詳細と共に次の記事で詳しくお伝えしたいと思います。お楽しみに!