【ウェビナーレポート】正しい顧客が最高の顧客体験を生み出す

2022.02.24

正しい顧客が最高の顧客体験を生み出す
~ユーザートラッキングが難しい時代に備える~
正しい顧客が最高の顧客体験を生み出す ~ユーザートラッキングが難しい時代に備える~

この記事は、2021年12月1日に開催した「正しい顧客理解が最高の顧客体験を生み出す」のウェビナーレポートです。

ファシリテーター 安田

本日は、カスタマーエンゲージメントの最前線で活躍するBraze株式会社の新田様、そして株式会社DearOne赤木の講演と、両社のソリューションを組み合わせたデモンストレーションを行います。

Cookie規制、iOS15、GDPR、改正個人情報保護法等データ取り扱い規制が強まる中、顧客体験価値向上に向けた取り組みについて有益な情報を提供いたします。

それでは赤木さんからよろしくお願いします。

第一部『規制を機会と捉えよう~改めて考える顧客体験の重要性と実現手段~』

赤木
弊社、株式会社DearOneは創業10周年を迎えた、NTTドコモのマーケティング分野における新規事業型子会社です。アプリ開発及びグロースマーケティングを中心に事業展開しており、これまで150社以上の幅広い業種・業界と取引があります。お客様のデジタルマーケティングをワンストップで実現するツールを取り揃えた会社です。

マーケターを取り巻く規制強化と影響

マーケターを取り巻く規制と強化の影響について、代表的な4項目をご説明します。

マーケターを取り巻く規制強化と影響
  1. Cookie規制: Webサイト上でのユーザー識別がより困難になり、従来のウェブトラッキングの仕組みは脱Cookieへと大きな変化を迎えています。
  2. iOS15: 標準メールアプリで開封ピクセルが常にダウンロードされる仕組みで、未開封もカウントするため、開封率KPIに対する信頼性が下がります。
  3. 個人情報保護規制: IPアドレス等も個人情報として扱われる、ユーザーの明示的同意なしにデータを扱えない等、規制が厳しくなっています。
  4. ダークパターン: ユーザーにとって不利な誘導デザインに対する規制であり、今後は登録ボタンの色を変えて目立たせることもNGとなる可能性があります。

そこで、より良いUXを提供し、製品・サービスを快くご利用頂き、ユーザーが能動的にデータを提供してくれる体制を築くことが重要となります。

重要なのはデータを提供する“メリットを実感してもらう”

規制と向き合いながらも、優れた顧客体験を提供する世界TOP企業は、データ活用による「施策実行/実験」を徹底的に実施しています。例えばAmazonは年に1,976回、P&Gは年に7,000回も改善に向けた施策を回しています。

レコメンド機能の改善やニーズをくみ取った商品開発に活かされるため、データを提供するユーザーにとってもメリットを感じられる体制を築けている事例です。

新たな顧客データの潮流“ゼロパーティデータ”

ゼロパーティデータとは、ユーザーから明示的に趣味嗜好や購入傾向をデータとして取得するものです。例えばユーザー参加型アンケートの施策では、商品シャツの着用シーンや色の好みをユーザーから取得し、製品開発に反映します。

この施策は有効である反面、データ収集ではユーザーとの関係性が出来上がっていることが大前提であるため、顧客体験のブラッシュアップといった原点回帰が重要です。

顧客体験を高めるグロースマーケティング

顧客体験を高めるグロースマーケティング

弊社が提唱する顧客体験向上の施策は、グロースマーケティングの実践です。
これは、ボトムファネルの「購入~リテンション向上」に該当し、関係強化に向けて購入・利用時の顧客体験を高める営みにフォーカスする取り組みです。

グロースマーケティングの運営モデル

まずユーザーに沿った指標設計から始め、指標に基づいて数値の定点観測を行います。そこで出てきた課題に対し、変化の要因分析・示唆出しを行い、実行アクションプランに落とし込みます。アクションプランを実際に実行した結果を再び定点観測してサイクルを回し、顧客体験価値を高めていく運営モデルです。

1.    ノーススターメトリック(NSM)

グロースマーケティングの運営モデル

ノーススターメトリックとは、それさえ追っていればプロダクト(商品)が本質的に成長する「たった一つ」の指標です。「ユーザーのプロダクト体験」を評価し、ビジネス成長へつなげます。

例えばfacebookの場合「登録から10日以内に7人以上の友達になる割合」といった、ユーザー視点で指標設定を行うのがノーススターメトリックの特徴です。売上のような結果指標ではなく、売上につながるユーザー行動を定量観測する「先行指標」であり、NPS同様顧客体験を評価する指標として採用する企業が増えています。

ノーススターメトリックを設定するメリットは、目指すべき方向性が具体的に示されるので、成長速度が加速する点です。

一つは、単一の指標なので誰が見ても明瞭であることです。二つ目は、開封率等にフォーカスするのではなく、本質的なKPIに着目することができます。そして、複数部門にわたる各チーム内のKPIを追うのではなく、一つの大きなノーススターメトリックを目指すことで一体感と基軸が生まれます。

NSMを設定するメリット

2.    ユーザー行動分析ツール「Amplitude」

グロースマーケティング運営モデル

定点観測からアクションプランの策定には、米国No.1のユーザー行動分析ツールであるAmplitudeが役立ちます。

顧客理解を深める際に、ユーザーライフサイクルやファネル分析に対応した最適なチャートやデータの使用方法が用意されており、データエンジニアリングの専門技術なしで実現できるのがAmplitudeの強みです。

厳選された最先端のグロース向け自動分析チャート14種類を提供しています。 
さらに、圧倒的な速さでのデータアウトプットが可能なので、分析スピードの向上および試行錯誤の回数向上にもつながります。

チャート事例1:Funnel

ユーザーがランニングしてからサインナップしていく過程をファネル表示するので、ユーザーの離脱・コンバージョンが瞬時に把握できます。

チャート事例2:Personas

デモグラベースではなく、行動ベースで行動特徴によるペルソナが作成可能です。ボタンをクリックすると、瞬時にユーザーをクラスター分類することができます。

チャート事例3:Pathfinder

ある行動を起点に、或いはある行動に至るまでに、ユーザーがたどった動線の全体像を瞬時に可視化することができます。実行アクションプランの策定後、実際に実行に移す施策が重要になります。

特に「エンゲージメント施策」に強いソリューションを提供しているBrazeとAmplitudeを組み合わせれば、分析結果から得た示唆を元にシームレスにエンゲージメントシナリオに連携できるため、分析と施策の“知行合一”が可能です。

安田 赤木さん、ありがとうございました。続いて新田さん、お願いします。

第二部『正しい顧客理解が最高の顧客体験を生み出す 

グロースを意識した顧客エンゲージメント手法とそれを支えるBrazeのご紹介』

グロースを意識した顧客エンゲージメント手法とそれを支えるBrazeのご紹介』

新田 
Brazeは2011年にニューヨークで創立した会社であり、今年10周年を迎えました。2021年11月に米国本社はNasdaq上場致しました。

グローバルでビジネス拡大をしており、日本進出は昨年10月です。従業員数1,000人強、取り扱いアクティブユーザー数は300億超、年間のエンゲージメント(メッセージ配信)数は1兆です。

マルチチャネルにおける顧客とのコミュニケーションをリアルタイムに行う、統合型カスタマーエンゲージメントプラットフォームを提供しています。

日本と世界をリードする1,000以上のブランドにおける採用実績があり、顧客企業に共通するのは、お客様のモーメント・態度変容をリアルタイムにつかむことを重要視していることです。そして、そのモーメントを元にパーソナライズされた体験を提供することに注力しています。

ビジネスグロースを意識した顧客エンゲージメント

顧客エンゲージメントは、信頼関係構築や愛着度向上といった顧客体験価値の向上がゴールではありません。エンゲージメント向上の先には、製品・サービスのグロースを実現し、かつ収益にも貢献するビジネスグロースがゴールとしてあるべき姿です。

ビジネスグロースを目指した顧客エンゲージメントのサイクル

実際にビジネスグロースを意識する際に、顧客エンゲージメントのサイクルを回す最良の方法をご説明します。

ビジネスグロースを目指した顧客エンゲージメントのサイクル
  • まずはデータに基づいた顧客行動分析を行い、徹底した顧客理解を深めます。
  • 分析した結果、グロースにつながる特定の行動パターン或いはインサイトが見えます。これが顧客理解です。
  • 顧客理解に基づいてグロースにつながる行動を促す、態度変容を狙う施策を行います。お客様が押しつけと感じない施策が必要であり、お客様の体験価値を高めるエンゲージメントを最適なタイミング・最適なチャネル・最適なコンテンツで行うことがベストです。
  • 心地よいエンゲージメントを継続した結果、ブランドのファンになって頂きます。
  • その先に、サービスの活用度向上・継続率向上等LTV向上につながります。← ここが実際のビジネスグロースです。

このサイクルは1度きりではなく、継続して回していくことが非常に重要です。

時代はデータ中心から「人・消費者中心」のCRM=CEPへと進化

顧客エンゲージメントの元の概念はCRMです。当初は顧客データ格納システムの位置づけでしたが、その後お客様にメッセージ配信する仕組みができました。しかし当時は企業目線の一括配信が主流でした。

お客様の行動・属性情報をトリガーとするメッセージ配信は、過去の行動履歴を基にしたため、最新の顧客理解ができず、例えば朝購入した商品のクーポンが夕方届くという、エンゲージメントを下げる事態も起こっていました。

この流れから、今時代が求めるのは、顧客のモーメントを捉えたエンゲージメントを実現する仕組みです。時にはメッセージを送らない選択をする、柔軟性の高い仕組みが求められています。顧客に寄り添ったエンゲージメントを行ってファンやロイヤルカスタマーを増やし、LTVを高める必要があります。

弊社は「CRMからCEPへの進化」をメッセージとして掲げています。従来のCRM基盤はデータ統合に特化していました。今後は統合データを活用し、さらに顧客体験構築を行うことが重要です。その本質は、LTV向上・ロイヤリティ向上を支援する収益貢献基盤であり、そこに必要なのは以下の4点です。

  1. “人間らしい”顧客心理に寄り添った体験提供
  2. 従来のデータに今の行動データを加えたエンゲージメント
  3. パーソナライズされたメッセージ
  4. オムニチャネルでの一貫性のあるコミュニケーション

Brazeは、顧客のモーメントを捉えるリアルタイム性や顧客理解に基づいたOne-to-oneのエンゲージメントを、膨大な顧客に対し遅延なく実行できるスケーラビリティを有しています。また、チャネル横断した連続性のあるシナリオを単一プラットフォームで行えます。

顧客中心のリアルタイムエンゲージメントを実現するBraze

最新の顧客情報を即座に検知し、捉えたお客様のモーメントをトリガーに、エンゲージメントシナリオを実行することが可能です。しかも検知から最後のアクションまでたった1秒で実現します。

Brazeで実現可能な具体的な施策例

活性化キャンペーン 
例えサービス利用者が増えても、アクティブ利用者でなければLTV向上につながりません。

例えばアカウント登録で離脱者は一定数いますが、アカウント登録のメリットを訴求し、かつアカウント登録フローをシームレスに行える施策を実現すれば、登録が増えてサービス活性化につながります。

アカウント作成への誘導

アプリ内メッセージやコンテンツカードといったBraze独自チャネルを使用し、顧客の行動情報に応じた出し分けを容易に行える仕組みが備わっています。

収益化キャンペーン 
次に、顧客の購買意欲を高める施策例です。信頼関係を構築した顧客に対し、アップセルやクロスセルを促す仕組みが必要です。

再入荷値下げ

例えばE-commerceの場合、商品をお気に入りに追加している人に対し、商品が再入荷したり値下げしたタイミングでリアルタイムなメッセージ送信が可能です。購買意欲が高まっている人に対して適切なタイミングでオファーをできるのが特徴です。

リテンションキャンペーン

お客様がサービスを長期利用することはLTVを高める上で非常に重要です。お客様の定着・離脱防止のエンゲージメントを行い、ブランド愛着度維持を促すことが大切です。

ユーザー離脱防止

例として、ユーザー離脱防止を挙げます。離脱には何らかの原因があるため、ユーザーの行動傾向やインサイトを見つけ、それに対して施策を打つことで離脱を未然防止することが重要です。

Amplitude x Braze連携によるアジャイルな施策運用

顧客分析・顧客理解のところをAmplitudeで行い、その先の体験価値を高める施策からファン化をBrazeが担います。そしてこの二つのソリューションをシームレスに連携させることができるのです。

Amplitude x Braze連携によるアジャイルな施策運用

※操作画面でのデモンストレーションは動画をご覧ください。

安田 
それではお時間となりましたので、赤木さん、新田さんありがとうございました。

本日のまとめ

  • 良い顧客体験を提供しないと個人情報収集がより難しい時代に
  • ユーザー目線での指標設計が必要
  • “人間らしい”顧客心理に寄り添った体験提供が重要
  • 「おなかがいっぱいの人を食事に誘っても喜ばれない」
  • エンゲージメントを高めるだけでなく、最終目標はビジネスグロース

アーカイブ動画

スピーカー

Braze株式会社 最高技術&プロダクト責任者 新田 達也 氏

名古屋大学卒業後、ロータスにエンジニアとして入社。その後 IBM、アドビ、マルケトにてB2B/B2Cのソフトウェア/SaaSの開発、品質管理、製品管理に従事し20年以上の経験を有する。 創業1年目の2015年にマルケトに入社、Marketo Engage製品責任者として日本市場向けに最適化された機能の提案や実装、パートナーソリューションとの連携支援を主に務めた。 マーケティングテクノロジーと製品管理の経験を活かし、2020年12月よりBraze株式会社 日本市場プロダクトマネージャーに着任。

株式会社DearOne グロースマーケティング部カスタマーサクセスユニット

ユニットリーダー 赤木 一平太 氏

デジタルエージェンシーでのコンサルタントを経てDearOneにカスタマーサクセスとして参画。デジタルマーケティング分野におけるデータマネジメントやテクノロジースタック構築戦略の知見を元に、企業のグロースマーケティング支援に従事。
執筆|withコロナの時代に考えるべきおすすめの先端CRMテクノロジー4選

ファシリテーター

株式会社DearOne セールスデザイン部 ゼネラルマネージャー 安田一優

岐阜県出身。パソコン販売店店長、ITエンジニア、ITインフラSIerのマーケティングを経て、2020年よりDearOneに営業企画として参画。転職をするたびに職種が変わるという経歴。DearOneではインサイドセールス、パートナーアライアンス、マーケティングなどを担務。中小企業診断士資格保有。副業でマイクロソフトACCESSの受託開発を行う。

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