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生成AIが変えるデジタルマーケティング AIスペシャリスト×画像生成AIモデル提供者が対談

2024.08.01

はじめに

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
CMO X , キンドリルジャパンの加藤です。本セッションは、Stability AIの滝澤さん、ELYZAの野口さんと進めていきます。よろしくお願いいたします。最初に自己紹介いただきますが、最初にセッションの前提を少しだけ解説します。

滝澤さんは、Stability AIで画像生成AIを中心としたマルチモーダルなサービスを提供されています。また、野口さんは、AIの専門家としてELYZAで大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)を開発・提供されています。

お二人に対して、私は事業会社のマーケター、いちユーザーとしてChatGPTやマイクロソフトのCopilotを使って、メールをつくる、企画を壁打ちするといったことをしている立場です。本セッションでは、マーケターとしての立場でお二人に質問しながら、デジタルマーケティングにおけるAI活用の現在と未来を紐解いていきたいと思います。まずお二人から自己紹介をお願いできますか。

Stability AI

Stability AI 滝澤氏|
Stability AIの滝澤と申します。私は、約30年間、ずっとITとエンタメの世界にいまして、前職はdata.aiという会社で、企業やサービスと消費者の接点がモバイルにシフトしていく支援をしてきました。直近4年間はアメリカにいましたが、最近、日本に帰国してStability AIに入社しました。個人でも生成AIを使ったアプリを開発して、App StoreやGoogle Playで提供しています。よろしくお願いいたします。

ELYZA

ELYZA 野口氏|
ELYZAの野口です。よろしくお願いいたします。大規模言語モデル、いわゆるLLMを作っているELYZAという会社に所属しています。私はELYZAのCMOという立場と、同時に事業会社のAIリードとして、三井住友カードのHead of AI Innovation、コクヨのExecutive Advisor  of AI strategy、カウネットの社外取締役(データ・AI担当)等もやらせていただいており、今日はAIの専門家としての側面、事業会社のAIリードとしての側面、両側面からお話しできればと思います。よろしくお願いいたします。

AIの現在地と未来予想

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
「AIがデジタルマーケティングを変えていくのではないか」というテーマは、本セッションをご覧になっている皆さまも期待を持たれている話だと思います。専門家のお二人にまずお伺いしたいのが、AIの現在地と未来予想ということで、いま我々はどこにいて、数年後にはどんな世界になっていくのだろうかということです。野口さん、いかがでしょうか?

ChatGPT登場2年弱で、本格AIドリブン社会への突入

ELYZA 野口氏|
皆さん感じていらっしゃると思いますが、この2年ほどで生成AIが爆伸びして「人間の立場は大丈夫か?」という感覚かも知れません。あまりに進化が激しく、少し前のディープラーニングが流行った時代が、もう旧石器時代のようです。2022年にChatGPTが出てきて、Googleも追随し、今はいろいろな会社がLLMを開発して、国産モデルも出てきています。

最近リリースされたChatGPTのGPT-4o(オムニ)は、完全なマルチモーダル、音声や画像、動画、テキストをネイティブに一緒に学習するモデルです。これは人間がいろいろなインプットやアウトプットを同時に処理しているような学習方式です。

半年間程度の時間軸で、大きな変化が起きているので、5年後にどこまで進化するかは本当に分からない状態です。AGI(汎用人工知能)と言われるような人間を超越するレベルのAIが出てくるんじゃないかと改めて危機論なども出てきているのが、AIの現在と近未来の状況です。

言語AI・作るAIの技術発展が止まらない

スライドにある通り、AIは人間が出来ることを徐々に出来るようになってきたわけです。大きく分けると、見る、予測する、話す、動く・作るといった4タイプです。4タイプの中でも、「話す力」と「動く・作る力」が恐ろしいペースで急成長しており、既に人間を越えているということが共通認識になってきたのではないかと思います。

さらに大事なところとして、今後は、AIが学習するための教材やデータをAIが作ることができるようになります。結果として、これから先、さらに加速度的にAIは急成長していくというのが、いま私たちが見ている景色だと思います。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
滝澤さんは、どんな視点で捉えられているでしょうか?

Stability AI 滝澤氏|
いま野口さんが仰ったように、以前は言語系が先行してきた中で、これからマルチモーダル、言語以外のところに拡大していくところが期待できます。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
今日のセッションでは「マルチモーダル」という単語が何度も登場します。マルチモーダルは、マルチ:多くの、モーダル:モードの形容詞を組み合わせた言葉で「多くのモードを持つ」といった意味ですね。

ELYZA 野口氏|
先ほどの図で、「見る力」「予測する力」に対して、「話す力」「動く・作る力」が飛躍的に進んできたというのは語弊もあるので、少しだけ補足させてください。

「予測する力」に関しては、たとえば、CDPに過去のデータを入れていって、そこから顧客の動きを予測するといったやり方には予測精度の限界があります。ただ、CDPに入れるデータ自体を生成AIで拡張するといったやり方で予測精度をあげていける可能性は充分にあり得ます。つまり、下側の「作る力」によって、上側の「予測する力」の精度が上がる部分も出てきています。

Stability AI 滝澤氏|
違う視点でも補足させていただくと、今まで人間とマシン、機械の関係性を見てきた中で、上の「見る力」というのは認識する部分、たとえば自動運転において「人が歩いている」や「信号が変わった」ことが分かるといったところから、「作る力」も発揮できるようになったというところが注目されているポイントかなと思います。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
ありがとうございます。Stability AIさんは、まさに「作る」の中心にいらっしゃるわけです。ここから次のテーマに入って、滝澤さんにStability AIの簡単な会社紹介をしていただきなら、具体的に何ができるのかという機能レベルに落とし込んだデモンストレーションをお願いできればと思います。

Stability AIとは?

Stability AI

Stability AI 滝澤氏|
Stability AIはイギリスに本社があり、2022年8月にStable Diffusionという画像生成AIをオープンアクセス、つまり、誰もが触れる状態でリリースしました。いろいろなクリエイターの方にダウンロードして使っていただいた結果、2023年時点でAIが作った画像のうち8割ぐらいがStable Diffusionをベースに作られていると推計されています。

Stability AIでは、オープンなモデルであるという価値観を大切にしています。オープンであるということで、誰もが触れる、中身が公開されていて、企業のユースケースでも使えるようにクローズでローカルな環境、インターネットにつながっていない環境でも動かせる。また、クリエイターやディベロッパーが、自分たちでインストールして、オープンなモデルを基に新しいアプリケーションを作れる、といったことです。

その結果、AIのプラットフォームとして世界的に普及しているHugging Face上では「最もLIKEが多い企業」として評価いただいています。

Stability AI「Hugging Face上で最もLIKEが多い企業」

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
Hugging Faceはアメリカの会社が運営しており、機械学習やAIのアプリケーションを作成するためのツールであったり、そのコミュニティを運営しています。

Stability AI 滝澤氏|
GitHubのAI版といったイメージですね。先ほどマルチモーダルという話がありましたが、Stability AIでは、画像、ビデオ、3D、サウンド、テキスト、コーディングといった用途それぞれにモデルを用意して公開、またサービス提供しています。

Stability AIのポジショニング

いま展開されている生成AIのポジションを整理すると、こんなイメージです。縦軸がマルチモーダルとシングルモーダル。横軸がオープンとクローズです。この軸で、他の生成AI系の会社と比較すると、Stability AIは、オープンで、かつマルチモーダルを追及していることが特徴です。

テクノロジー、AIをベースに企業が何らかのサービスを作っていく段階では、どれだけ制御できるか、再現性があるか、透明性があるか、コストがどうか、事業継続性を担保できるかといったことが求められてきます。その時にオープンであることは、重要になってくるポイントだと考えています。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
AIを新たに開発する動きが色々な会社、また各国で活性化しており、ポジショニング争いが起きているわけですね。ここからはStability AIのデモを少し拝見したいと思います。

画像生成AIをデジタルマーケティングで活用する

Stability AI 滝澤氏|
Stable Diffusionがどんなものか、簡単に紹介できればと思います。

cat in the sky

画像生成のテストでよく使われる「猫(cat)」を描いてみましょう。入力スペースに「cat」と打ち込むだけです。また、「cat in the sky」などと打ち込んでみれば、それに合わせて描いてくれます。

ELYZA 野口氏|
描画スピードが恐ろしい速さです。セッション前に見せてもらった時、速さに驚いて「キャッシュで表示されているのですか?」ときいてしまいました。そうではなく、この場で生成しているとのことで、すごいスピードです。

Stability AI 滝澤氏|
画像のタッチを指定したければ、たとえば「cat in tokyo station anime」と打ち込んだらこんな形で調整できます。

cat in tokyo station anime

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
既存のキャラクターなど、IP(Intellectual Property:知的財産)との関係はどうなるのでしょうか?

Stability AI 滝澤氏|
Stable Diffusionでは子どもが写真や画像の画風や世界のあり方などを見て学ぶのと同じように、既存の画像などを学習することでニューラルネットワークの中の値を変えます。基盤モデルのインプットデータとして、追加学習またはファインチューニングと言われる手法になりますが、IP権利者が保有するデータを追加でインプットすることも可能です。企業などで商用利用する際には、その企業が権利保有する画像を入力することで、出力をコントロールすることができます。

ELYZA 野口氏|
マーケティングで使うという文脈で、たとえば、カメラの広告クリエイティブを作ってみるということでお願いできるでしょうか。

カメラ

更に、これをAI同士でブラッシュアップさせてみたいと思います。たとえば、Stable Diffusionで作った画像をChatGPT、先ほど話したGPT-4oに読み込ませて、たとえば、「この画像にあわせて、20代の女性向けに向けたコピーを作ってください」と依頼します。

作成したコピーに合わせて、Stable Diffusionに入れる画像生成のプロンプトを作ってください

さらに、「作成したコピーに合わせて、Stable Diffusionに入れる画像生成のプロンプトを作ってください」と指示すると、「未来の思い出を、この1枚に」というコピーと、プロンプトを作ってくれました。

作成したコピーに合わせて、Stable Diffusionに入れる画像生成のプロンプトを作ってください

そして、作成されたプロンプトをStable Diffusionに入れると、それに合わせて画像を作ってくれます。

作成したコピーに合わせて、Stable Diffusionに入れる画像生成のプロンプトを作ってください

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
これはデジタルマーケティングが大きく変わりますね。実際の業務で使えそうなイメージが湧きます。出力するクリエイティブのモードも、アニメだったり、いろいろと変えられるわけですよね。

AIがマーケターの仕事に与える影響と変化

ELYZA 野口氏|
画像を生成するクリエイターさんの仕事も変容します。クリエイターは、ターゲットセグメントの情報、CDPとかに入ったデータや、顧客の悩みのポイント、営業すべきストーリーなどを踏まえて、画像やクリエイティブを作っていくわけです。このプロセス自体も、生成AIに伴走してもらうことができます。先ほどのように、GPT-4oに「こういうターゲット、こういう訴求なんだけど、どういうクリエイティブにしたら良いかな?」と質問して、画像生成のプロンプトを作ってもらう。そして、Stable Diffusionにそのプロンプトを与えて画像を出力するというサイクルが、いまご覧いただいた通りに出来るわけで、これを実際に活かしてPDCAを回していくような手法も生まれてくるでしょう。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
確かに。たとえばContentsquareで獲得できるような顧客のインサイトがあるわけです。そのインサイトを持って、どんなクリエイティブに落としたいのかというクリエイティブブリーフさえあれば、画像出力のレベルを高めながら、アウトプットを作れそうです。

ELYZA 野口氏|
たとえば、カンファレンスのテーマであるロストジャーニーという話に関しても、「どこでロストしたのか?」というデータを踏まえて、「何が原因か?」という仮説を言葉にできたら、「どういう属性のユーザーか?」というデータと一緒に、AIに依頼すればクリエイティブやコピーに反映できます。訴求すべきシナリオに反映するといったことも、AIを使うことで、加速度的に改善案を作っていける。そんな活用もできると思います。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
野口さんの話を踏まえると、マーケティングするうえでAIに寄り添ったポジショニングが必要だなという発想のシフトが大切だなと感じます。

ELYZA 野口氏|
私は、「with AI」と呼んでいます。AIを使うというよりも、with AIのスタンスで、やるべきことの棚卸しを人間がするイメージですね。デジタルマーケティングの各職種でも同じかもしれません。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
前提として、我々がこうしたAIツールのケイパビリティをちゃんと把握して、また、進化にキャッチアップしていく必要がありますね。

ELYZA 野口氏|
先ほどのスピードで画像生成できると、たとえば、リアルタイムパーソナライズコンテンツやリアルタイムパーソナライズクリエイティブが実現します。たとえば、ユーザーが発した言葉によってリアルタイムに提示するバナーやクリエイティブが変わっていくといったことが、画像生成AIのケイパビリティとしては実現できます。それをマーケター側がどう使っていくか?どういうチャレンジをしていくか?という時代に入ったのだと思います。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
リアルタイムパーソナライズクリエイティブは、コンバージョン率もあがるイメージが湧きます。たとえば、商品購入のコンバージョンの少し手前にあるフォームを埋めていく過程でデータを収集して、入力された属性やデータに即してユーザーへのプロポーザルや商品のレコメンデーション画像が、リアルタイムにバージョンアップされるといった形ですね。

ELYZA 野口氏|
ロストジャーニーという視点でも同様ですね。たとえば、年間契約のサブスクを解約したいと思ったとします。その時、解約ページにあるクリエイティブや画像が、解約理由の入力に伴って切り替わっていく。ECサイトでの離脱を減らしていくといったところでも使えそうだなと思います。

画像生成AIのユースケース

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
Stability AIが持っていらっしゃるケーススタディーで、何か面白い事例はありますか?

Stability AI 滝澤氏|
企業のユースケースに入っていく場合に大きく2つのパターンがあります。1つは個人のツールとして使うイメージ。これはAdobeさんのクリエイティブツールの利用などと同じイメージです。

もう1つは、ワークフローや製品の中に組み込まれていく形で、今後企業でのユースケースとして広がっていきそうです。具体的なイメージとしては、例えば、広告や商品画像ですね。たとえば広告配信のエンジンに組み込む形であったり、ユーザー個々の属性などにあわせて、商品画像をユーザーの生活シーンに合わせた形にアダプトさせていったりするという形ですね。こうした広告エンジンやコマースなどのユースケースは、非常に面白い事例が出始めています。

コンテンツ制作における生成AIの役割

ELYZA 野口氏|
アニメやゲーム、エンタメ分野での活用状況はどうでしょうか?

Stability AI 滝澤氏|
コンテンツ産業は非常に大きい分野です、ただ、とくに日本は作っているパイプラインのプロセスを非常に精緻にやっており、AIが入っていくことに少し時間がかかるかなと感じます。ただ、AI-Firstでやる会社が今後出てくるかなと思います。

デジタルマーケティングにおけるAI活用の未来予測

このスライドでは、デジタルマーケティングにおける画像生成AIなどの活用がどうなっていくかについて考えたことをまとめてみました。

一番左が現在で、先ほどデモも実施したようにコンセプトワークで使われているケースが殆どだと思います。

生成AIがより進んでいくと、画像だけではないフォーマット、動画の生成などでも使われていくようになり、コンテンツ制作の分野では非常に広範囲に使われることになると思います。また、その下にあるような個別化、カスタマイゼーションだったり、ダイナミックに生成されていくところでも活用されると思います。アウトプットだけではなく、インプットして、どういうクリエイティブがコンバージョン率が高いかなども予測して、ダイナミックにコンテンツを動かしていく世界がもうすぐ実現します。

そこから更に進んだのがAI-Firstです。AIが効果を予測して個別化していく。最終的には予算の調整なども含めて、AIを活用してリアルタイムに自動化していくところまで行くかなと思います。

マーケターはAIとどう付き合うべきか?

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
ここで、大きな問いへのご意見を伺わせてください。AIが進化していくことは誰の目にも明らかで、私たちもAIを活用して進化していくことは必須です。今多くの企業がAIを使いはじめ、マーケティングでのAI活用も、いろいろな事例が出てきています。AIを使ったデジタルマーケティング、マーケティング競争に、マーケターはどう取り組めばよいのでしょうか?

コンテンツ生成における生成AIのビジネスインパクト

Stability AI 滝澤氏|
私は物事には2つのアプローチがあると思っていて「今をベースに、今後どうやっていったらよいか?」という考え方と、もう一つは、もう少し先の未来を予測して「未来から逆算して今何ができるか?」というアプローチです。

上記のグラフはどちらかというと後者の考え方に基づくものです。今後、生成AIが主導するコンテンツが、人間が主導するコンテンツよりもビジネスへの影響力を持つようになるマス状態が必ず訪れます。その時、我々は何をしていったらよいか。少し先の未来を見据えて「こういうことができるんじゃないか」「ああいうことができるんじゃないか」「それがビジネスにどういう影響を与えていくか」と逆算して考えていくことが一番良いのかなと思っています。

ELYZA 野口氏|
私は、マーケターとしてAIとどう付き合っていくかに関して、2つのか可能性があると思っています。

1つは、今時点で既に「自分のために働いてくれるAI部下を1,000人作る」ことは可能なわけです。未来の話ではなく、いま時点の話です。多少データの前後処理や知識参照とかをやる必要はありますが、オペレーショナルな部分は、ほぼAI部下に任せられます。

皆さん、いま人間の部下や同僚の方がいらっしゃると思いますが、そこで依頼しているオペレーショナルな部分をAI部下に任せることによって、マーケターとしての1人あたり生産性を爆増させることが出来ます。たとえば、30人ぐらいの人間のチームを持っているのと同じぐらいの仕事量を、1人のマーケターがやることもできるわけです。そこにチャレンジすると1人当たりのアウトプットは大きく変わるだろうと思います。

もう1つも近い話ですが、AIを活用することで、仮説検証のスピードを100倍に出来るのではないかという仮説です。まず先ほどまで話してきたような「こういったユーザーに対して、どんなクリエイティブが良いか?」といった壁打ちをAIと出来ますし、ラフのクリエイティブやコピーもぱっとできるので、仮説を量産できます。

そして、バーチャルに検証も走らせることができます。一定のペルソナに基づいた“人格を持ったキャラクター”をAIで作って、仮説やクリエイティブに対する反応を見ることもできます。また、実データに対する解釈もAIを活用することで豊富になっていきます。それを繰り返していけば、仮説構築と検証を100倍高速化できると思います。

AIを活用することでオペレーショナルな部分はAIに任せて生産性を爆上げるする、さらに仮説構築と検証を100倍のスピードで動かしていく。こういったことができるマーケターがばーっと登場してくるのではないかなと思っています。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
ありがとうございます。個人だけでなく、企業全体がそういった姿勢を持つことが求められていると思いますね。

AI活用に対する企業の取り組み事例

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
ここから先は、野口さんが取り組まれているAIの活用事例をお伺いしたいと思います。

ELYZA 野口氏|
私は、コクヨグループと三井住友カードで事業会社のAIリードと活動していますので、その事例を紹介したいと思います。

コクヨグループ、非エンジニアが16のAIツール・プロトを市民開発

まずこちらは、コクヨグループにおけるオペレーショナルな部分をできるだけAIに任せることで働き方を変えようというプロジェクトです。「AI活用の企画を考えましょう」「プロンプトを学びましょう」で終わらせずに、非エンジニア人材がAIを使ってアプリのプロトタイプを作る、また実際に自分のために働いてくれるAI部下を作るというプログラムを実施しました。

SMCCの生成AI活用の横戦略と縦戦略

こちらは三井住友カードでの取り組み事例です。たくさんのメンバーが生成AIに興味を持ってくれて、横戦略としてAI時代の人材開発、また全社向けの利用促進、そして、縦戦略として特定業務に特化しての展開ということで重要ユースケースに取り組んでいます。

国産AIの可能性

ChatGPTだけじゃない大規模な言語AIたち

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
国産LLMも実力を伸ばしており、ChatGPT一強ではない市場になってきているということですが、国産生成AIの実力というのは、どう捉えればよいでしょうか?

国産生成AIがChatGPT3.5-turbo超え

ELYZA 野口氏|
端的に答えると、いまELYZAが作っている国産の生成AIは、GPT3.5-turboを超えるところまできています。

*参考:イベント後に、ELYZAはGPT4を超える生成AIを構築しリリース。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000047565.html

最近は、いわゆる小型化も進めています。今は巨大なインフラを用意すれば、生成AIを賢くできて、たとえば、GPT-4を越えられたりします。ただ、たとえば、先ほどのStable Diffusionの画像生成も非常にレスポンスが速かったですよね。あれは、裏側にあるインフラや電力も少なくて良いということなので、環境にやさしい。また、非常にROIも出しやすいような形でチューニングする、エンタープライズ企業にオンプレミスで提供できるといったことが可能です。こういったことも実現できる状態が、国産AIでも整ってきています。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
LLM(Large Language Model)に対するSmall Language Modelですね。

生成AIの説明でよく使われるパラメータがあります。GPT3.0のパラメータが1,750億個、GPT-4では、3.0の500倍近い100兆個のパラメータを持っているとかで、その分メモリやサーバ、ストレージが必要ということですね。そして、いまELYZAの生成AIはパラメータ数700億個で、GPT3.5-turboを超えたということですね。

実際に国産AIでどれぐらいのことが出来るのでしょうか?

坂の多い町で有名な長崎。では上り坂と下り阪、どちらが多いでしょう?

ELYZA 野口氏|
5秒だけ質問を考えてみていただけますか。「坂の多い町で有名な長崎県。上り坂と下り坂どちらが多いでしょうか?」

これはひっかけ問題で、答えは「一緒」ですね。

ひっかけ問題にも引っかからないELYZA LLM

国産のLLMはこういうひっかけ問題に引っかからないぐらいまで進化してきていますということです。この問題、じつはChatGPT3.5-turboだと引っかかります。どちらかが優れているというのは、いろいろな観点や解釈がありますが、国産AIもこれぐらいまで進化して、いろいろなタスクが出来ますということです。

メール分類・メール返信もしてくれるELYZA LLM

AI-First時代に持つべき考え方とは?

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
最後、今日のまとめに入りたいと思います。デモも非常に参考になりましたし、AI Firstといったキーワードも出てきました。たとえば、これまで「全ての会社がテクノロジーカンパニーにならなければいけない」とよく言われていましたが、それを通り越して、「全ての会社がAIカンパニーにならなければいけない」のではないかという感覚を受けました。

現状を踏まえて、今後に向けてこんなコンセプト、考え方でやっていくと良いのではないかという一言をお二人からいただけるでしょうか。

Stability AI 滝澤氏|
生成AIがいろいろなところ、生活の隅々まで入っていくことで、ユーザーが商品やサービスに求めるものも変わっていくと思いますし、企業が変化にどう対応していくかも変わってくると感じます。

マーケティングやロストジャーニーという文脈でいけば、ユーザーをゴールに導くうえで、コンバージョンにより結びつけるためAIの使い方もできますし、同時に、前述の通り、ユーザーが企業に求めるものも変わってきます。AI Firstという視点をもって全体を俯瞰しながら取り組むことが大事かなと思います。

ELYZA 野口氏|
マーケティングも、ビジネス全体も、他の領域も同じだと思いますが、AI新人類が勝つ世界になると思っています。

AIを使いこなす人類たちが、業界を変えたり、会社を変えたり、仕事を変えたりしていくことは目に見えています。ですから、過度に怖がらず、私たちの世代もAIを取り込んでいくことが必要ではないかと思います。

CMO X , キンドリルジャパン 加藤氏|
ありがとうございます。我々自身もAIの進化をキャッチアップして、AI新人類になる、レベルUPが必要ですね。以上で、本セッションを終了したいと思います。最後までご覧いただきありがとうございました。

関連リンク

オンデマンド視聴はこちら
https://go.contentsquare.com/ja/cx-circle-24-tokyo-on-demand-thank-you

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