今回は、アジア最大級のオプショナルツアー予約専門サイトを展開する株式会社KKday JAPAN(読み方:ケイケイデイジャパン、以下、KKday)でマーケティングを担当するマーケティング部 ブランディング シニアマネージャーの森本様にお話をお伺いしました。
インバウンドや国内外の豊富な個人手配旅行向け商品を扱うKKday
DearOne 安田|
まず御社の事業内容とサービス紹介をお願いします。
KKday 森本|
当社KKdayはオンライン旅行代理店(OTA:Online Travel Agent)で、体験ツアー、テーマパーク、美術館、食、チケット、交通など、主に航空券・ホテル以外の旅行中に使う「旅中消費」全般を幅広く扱っております。
DearOne 安田|
申し込みができるタッチポイントは、サイトとアプリが中心でしょうか?
KKday 森本|
はい。モバイル・PCのブラウザで見るWebサイトとアプリがあります。
国内旅行利用者が海外旅行でもリピートしてくれるサービスを狙う
DearOne 安田|
森本様のご担当業務はマーケティング領域全般でしょうか。
KKday 森本|
そうですね。日本法人のマーケティング部の業務は大きく2つあります。1つ目は、ターゲットである日本人のお客様が海外旅行や国内旅行に行っていただけるような取り組みを主に担当しています。2つ目は、KKdayのサービスやブランドの認知を高める活動の推進です。ただし、広報というよりは、実際の予約を取るためのマーケティングが担当領域の中心になります。
DearOne 安田|
マーケティング活動の目的は、御社の顧客との接点であるECとアプリに来た会員に予約をして頂くことでしょうか。
KKday 森本|
実際に売り上げが立つのはご予約いただいた後、旅行に行ってもらった後になるため、その間はコントロールが利きませんが、基本的には予約してもらうことが目標になります。
DearOne 安田|
御社ターゲットのお話を伺います。先ほど日本人のお客様に海外に行ってもらうというお話がありましたが、その中でも特にどういう方が御社のターゲットになるのでしょうか?
KKday 森本|
会社全体としては、インバウンド*1インバウンド:外国人の日本旅行・アウトバウンド*2アウトバウンド:日本人の海外旅行・ドメスティック(国内)*3ドメスティック:日本人の国内旅行という3本柱があり、日本のマーケティング部が主管しているのはアウトバウンドとドメスティックの領域です。その中で特に弊社のサービスを使っていただいているお客様は、基本的に海外個人手配旅行(FIT:Foreign Independent Tour)*4団体旅行やパッケージツアーを利用することなく個人で手配をして海外旅行に行くことをされる方が対象になります。
逆に言うと、パッケージツアーで旅行される方に関しては航空券やホテル、観光ツアーなど全てがセットになっているので、当社のようなサービスを利用して個別で手配する必要がないわけです。そうではなく、ご自身で手配される方に関して、航空券とホテルは他社で取ってもらった上で、現地での体験商品や交通手段を弊社のサービスを使って買っていただくという流れになります。
このように基本的にはFITの方が対象ですが、女性の方がやや多く、年齢層に関しては20〜60代まで幅広い年代の方に使っていただいております。
直近で弊社のサービスを何度か使っていただいている方にインタビュー調査を行ったのですが、やはり旅慣れていて旅行リテラシーが高い方や、旅を自分の思うように組み立てたいといったニーズがある方が多いと感じています。
全体の定量的な把握はまさに現在進行中ですが、インタビューで回答していただいた方に限って言えば、子連れで旅行に行くという声は聞かれず、そもそも海外旅行に行く回数が非常に多く、お一人であるいはカップル、またお子様が独立されて夫婦で自由に動ける方や、比較的フットワークが軽く旅行に行かれる方にご利用いただいている印象です。
一方、ドメスティック(国内観光)の領域では、動物園やテーマパークのチケットなども扱っているので、子連れのご家族でのご利用も多く見られます。
DearOne 安田|
先ほど、顧客が予約をして売り上げが立つところが最終ゴールというお話がありましたが、それ以外に何かマーケティングチームの目標・指標として見ている重要なKPIはありますか?
KKday 森本|
商品の予約の先にある利益の部分を指標として見ています。商品ごとに単価や手数料も違いますので、最終的にそれぞれターゲットにしている利益、つまりグロスプロフィット(粗利)を達成できるかどうかを最重要視しています。
DearOne 安田|
そうなると、マーケティングというお名前ではありますが、売上・利益に対する事業責任も丸ごと負われているイメージでしょうか。
KKday 森本|
はい。特にアウトバウンド領域におけるグロスプロフィットに関わるターゲットに関しては、マーケティング部が責任を持って事業に取り組んでいます。
DearOne 安田|
なるほど。そのほか、Webサイトやアプリの改修なども業務の範囲内で取り組まれているのでしょうか。
KKday 森本|
はい。Webサイトの中でも、日本のマーケティングチームの担当者レベルで手を入れられる部分と、台湾本社の開発チームが対応する部分とに分かれています。日本チームだけで変更できる部分に関しては比較的こまめに改修し、本社に依頼しないといけない部分に関しては折々、リクエストを上げて対応してもらっています。
DearOne 安田|
御社がマーケティング施策を打つ中で、大切にしているメッセージや、お客様に対する魅せ方の方針などはありますか?
KKday 森本|
先ほど申し上げたインタビュー調査・市場調査などを現在実施しているので、それらを通してさらに明確にしていけたらと思っています。基本的にはFITで「自分らしい旅を楽しみたい」というお客様にはファンになっていただける可能性が高いと思いますので、そういう方が自分らしい旅を作ったり、組み立てたりするためのサポートができるような存在になることを目指しています。
また日本のユーザーは他国のユーザーに比べ、サービスに対する安心感・信頼感を重視する傾向があるので、弊社のWebサイトを通して「安心して予約できるサービス」、「新しい発見がある」、「新しい旅先での楽しみを最大化できる」といったメッセージが伝わるといいかなと思っています。
DearOne 安田|
「自分らしい旅」というキーワードが、御社がまさに今取り組まれている事業とマッチしていますね。マーケティングのお仕事としては当然、新規会員の獲得、初めての予約から実際の旅行を経て、その後再予約でリテンションを上げていくといった流れがあると思いますが、その中では今どの辺りに注力されていますか?
KKday 森本|
まだまだ日本では知られていないサービスになりますので、新規顧客の獲得と同時に、そのお客様にいかにリピートしていただくかという部分に注力しているところです。
国内のさまざまな施設のチケット販売をお手伝いさせていただいており、チケットの購入をきっかけに会員登録されたお客様が海外旅行に行く際にも、いかにKKdayの商品を使っていただくかという部分が特に重要なチャレンジ領域だと考えています。
DearOne 安田|
なるほど。まず国内旅行で接点を持ってもらった方が、海外旅行に行く際にも利用してくれたらということですね。
KKday 森本|
はい。もちろん、最初から海外旅行目的で入って来ていただけるお客様も多いのですが、直近では海外旅行需要もまた増えてきたとは言え、コロナ以前の状態まで100%回復したという状態でもないわけです。
よって、今は国内の商品をご利用いただいた方のデータが貯まってきているところから、いかに海外旅行の際にもKKdayを使っていただけるか、試行錯誤しているところです。
サービス利用者の状況
DearOne 安田|
会員登録された方は大体予約もされているのでしょうか?
KKday 森本|
100%ではないですが、会員登録された方は商品も買われている方が多いです。
DearOne 安田|
最初に「何か一つ予約したいな」と思って会員登録される方が多いイメージなのでしょうか?
KKday 森本|
はい。やはり多いのは、例えばどこかの施設に行こうと思ってチケットを探すときに、購入可能なWebサイトとしてKKdayが出てきて、そのチケットを買うために会員登録をするといった流れですね。
DearOne 安田|
先ほど、現在新規獲得にかなり注力されているとのお話でしたが、それでは登録さえしてもらえれば、初回の予約までは割とスムーズに進むので、その後一度予約利用された方に次にどこに行ってもらうかという、新規とリテンションの入口・出口の部分が工夫のしどころということでしょうか。
KKday 森本|
そうですね。当社の扱っているサービスのカテゴリーがかなり幅広いので、その新規流入パターンにもいくつかあります。例えば人気の高い動物園施設のチケット予約をKKdayでして頂く場合は、ユーザーとしてはKKdayで予約しているという感覚がないままにチケットを買われているケースも多いです。
そういうお客様の場合、KKdayに会員登録してサービスを使っているというより、ただWebサイトでチケットを買ったという認識になっていますので、KKdayで他にどんな商品を扱っているかなども知らなかったり、そもそも意識されてない方も多いわけです。
そうなると、ただ単にそのチケットを買うために通り過ぎているといった状態になりますので、そういう方が海外旅行に行くときにKKdayのサービスを思い出し、選択肢に入れるようになるまでにはまだまだハードルが高いと言えます。
ただ、反対にその入り口が、例えば台湾へ行って新幹線のチケットを買おうとしたときに、KKdayのWebサイト購入された方は、その次にまた台湾旅行へ行く際にもKKdayを想起・購入いただける確率は高くなっています。このように、どこが入口だったかによって、海外旅行の時に使っていただけるかどうかに差がある印象です。
DearOne 安田|
先ほどのお話でも、動物園やテーマパークのホームページから遷移しているということでしたので、KKdayではなくそのWebサイトの中だけで予約・購入しているイメージになってしまうわけですか。
KKday 森本|
その通りです。
KKdayが実践するOne to Oneマーケティング
DearOne 安田|
なるほど。そこから「いやいや、あなたが使っているのはKKdayですよ」とKKdayの認知を取るためには、どういった手法を取られているのでしょうか。
KKday 森本|
基本的にはチケットを買う際にメールアドレスで会員登録していただく形になっているので、地道ではありますが、メルマガを配信して当社のサービスで扱っているさまざまな商品について知っていただく機会を設けたりといった施策に取り組んでいます。
DearOne 安田|
そのメルマガは会員にどのような形で送られているのでしょうか?
KKday 森本|
一斉送信というよりは、ターゲットごとにセグメントを切ってメールをお送りさせていただいています。
DearOne 安田|
DearOneも事業として、まさにそのCRM領域のご支援をしている会社なので、今お話にあったセグメントを切って送る部分など、One to Oneマーケティングのお話をぜひ伺いたいです。
例えばどうセグメントを切ってどんなメールを送ると効果があるか、またどんな施策に取り組まれているかなど、具体的な例について教えてください。
KKday 森本|
例えば昨年の12月に日比谷で開催したクリスマスマーケットというイベントがあり、そのWebでのオンラインチケット販売を当社でお手伝いさせていただいたところ、それをきっかけに会員登録してくれた方が非常に多くおられた。このクリスマスマーケットで当社に会員登録して頂いた新しいお客様に海外旅行に行ってもらえるようメールを打ちました。
具体的には「クリスマスマーケットのチケット購入者」というセグメントに対して、例えばクリスマスに行ったら良さそうなオススメの海外の行き先や商品についてメールを送る施策を打ちました。
昨年末に比べると海外旅行者がだいぶ増えてきたとはいえ、日本人のお客様の海外旅行者数の回復はまだ遅れているということもあり、なかなか国内イベントに出かけるようにはいかないハードルの高さがあるのだなと実感しています。
クリスマスという切り口でアプローチを試みてはみたものの、コロナ禍の状況、燃料サーチャージ高や円安の問題なども含めて、海外旅行に向けた実際のアクションにつなげることはまだまだ工夫を続けている状況です。
ユーザー行動を軸にした顧客分析が重要
DearOne 安田|
メールの配信システムなども使われているかと思いますが、会員の管理やCRMマーケティングに使われているのはどちらのツールですか?
KKday 森本|
セグメント設定や抽出はMixpanelというツールやメール配信ツールを使っています。当社の会員情報は基本的にメールアドレスだけでも登録できる形にしているので、ECサイトでよくあるように全員の住所や名前の情報をこちらで持っているわけではないのですが、その中でも一部、細かい情報まで取れている方の属性や、あるいはどういう商品を見ている傾向があるかみたいなところでセグメント分けし、配信しています。
DearOne 安田|
Mixpanelを使われているということは、属性だけを見ているわけではなく、行動軸でユーザーの分析も行われているのでしょうか。
KKday 森本|
そうですね。具体的には「海外商品を見ている人」、「特定の韓国の商品を見て買ったことがある人」などといった行動軸で見ています。
DearOne 安田|
行動を軸にした分析は、もうずっと以前から行われているのですか?
KKday 森本|
前述のように、年齢や住所といった情報を取れてない方が多いので、行動軸での分析やセグメンテーションがメインになっていますね。
DearOne 安田|
なるほど。属性ではなく行動を軸に分析を行っていることによって、何か良かった点/悪かった点はありますか?
KKday 森本|
例えば、当社のWebサイトで台湾の商品を複数見ている方がいたら「台湾に興味があるのだろうな」と推定できるため、そこに対して台湾の商品を当てていくことで確実性の向上が図れています。
性別・年代といったデモグラデータから「台湾に興味があるかも」と推測するよりも、ユーザーの実際の行動に基づいて、KKdayの商品カテゴリーや特に売りたい商品とを紐付けやすいので、施策のやりやすさも実感しています。
DearOne 安田|
そうですよね。先ほどターゲットだと言われていた個人手配旅行をされる方や旅慣れた方といった属性というと、住所・年齢・性別からは商品購入の確実性は出しにくそうだと感じます。むしろ、Webサイトの閲覧/購入履歴からの方が精度が高そうですね。
KKday 森本|
はい。売っているカテゴリーも例えば「現地ツアー」から「海外でのSIMカード/Wi-Fi提供」まで本当に幅広いので、KKdayの使われ方も人によって大きく異なる印象です。
DearOne 安田|
確かに、Wi-Fiだけを利用している人に対しては、提案の仕方も難しそうですね。
KKday 森本|
そうですね。それこそWi-FiやSIMカードだけ使っていただいている方は単価もそんなに高くないですから、逆に我々からすると、いかにそういった方に現地ツアーなどの他の商品もご利用いただくかということが課題です。
Instagramやニュースアプリの代わりに旅行サービスをチェックする人も!ロイヤリティの高いアプリユーザー獲得に注力
DearOne 安田|
少なくとも御社との接点があるという意味では、何らかの商品を購入・予約いただいた方からクロスセルに持っていくという狙いはつけやすそうですね。メール以外のCRM施策として、例えばアプリでのプッシュ通知やクーポン配信などは行われていますか?
KKday 森本|
はい。アプリのプッシュ通知やアプリ限定のクーポン配信などの施策も行っています。また、これから力を入れていくことの一つとしては、アプリの利用者数/ダウンロード率の向上があります。
まだ会員全員がアプリを使っているわけではないのですが、お客様へのインタビューを通じて、KKdayをよくご利用されている方はやはりアプリを入れている方が多いとわかってきたので、できれば会員皆様にアプリを使ってもらいたいと考えています。
アプリを入れてくださっているお客様は、基本的には今後もKKdayを使おうと思っている、つまりロイヤリティが高い状態になっている上、スマホに入っていれば定期的にお客様の目に触れる機会も作っていけるので、アプリのダウンロード率をいかに上げるかという部分に力を入れていきたいと思っています。
DearOne 安田|
実はDearOneはアプリ開発が事業のメインになっている会社で、今森本さんがおっしゃった話を我々も普段お客様にお伝えしているので、とてもよくわかります。
KKday 森本|
最近、若年層はアプリを入れずにブラウザで済ましてしまう傾向があるという調査結果も見たのですが、一方、アプリを入れてさえいただければ定期的に中を覗きに行ってもらえますから、いかにダウンロードしてもらうかを試行錯誤しています。
また、先日インタビューをしていて、最初に台湾旅行へ行くときにKKdayを見つけてご利用いただき、アプリまで入れてくれた方がいたのですが、それがきっかけで当社が扱う台湾以外の旅行商品にも興味がわくようになったとのことでした。「確かに、台湾以外にも幅広いエリアの商品を使っていると知ってもらう努力が必要だ」と感じさせられましたね。
DearOne 安田|
おっしゃる通りですね。DearOneはクライアント様のアプリを開発させていただき、さらにその先にユーザー様がいらっしゃるという立ち位置なので、クライアント様に代わってユーザーインタビューをやらせていただくこともあります。
そこでも、やはりアプリを入れているユーザーはとてもロイヤリティが高い傾向があります。サービスの利用の仕方に関しても、アプリを入れていない方はメルマガからサイトに来る導線が多いですが、アプリを入れている方は自分から定期的に起動してくれますよね。
その時点で「ロイヤリティがだいぶ違うな」と感じていましたので、アプリのダウンロード数を増やしてくという施策の重要性については、ロイヤリティを高めロイヤルカスタマーを増やすという観点から非常に的確だと思います。
KKday 森本|
私もインタビューで聞いて驚いたのですが、当社のアプリをInstagramやニュースアプリのような感じで使っていただいている方がいたんです。通勤のときなど、大抵InstagramなどのSNSやニュースアプリを見たりするじゃないですか?その代わりに当社のアプリを見て次に行く旅行で使いたい商品などを見たりしてくれているということでした。当社としても、そういうお客様が増えてくるのが望ましい状態だと気づかされました。
DearOne 安田|
アプリのダウンロード促進のために行われている施策は何かありますか?
KKday 森本|
既にアプリで使えるクーポンなどを配信していますが、ちょうど現在、アプリ限定で買える商品や割引になる商品などの特典などを付けることでアプリダウンロードを促進する準備をしているところです。
DearOne 安田|
ダウンロード促進施策はデジタルが中心なのでしょうか?
KKday 森本|
はい。もちろん、前述のクリスマスマーケットなどでは会場に当社のポスターを貼ったりするなど告知にも取り組んでいるのですが、基本的にはデジタルの施策が中心です。
DearOne 安田|
それはデジタルの方が効果があるからでしょうか。
KKday 森本|
チケットなどをWebから、当社の商品と知らずに買う人も多いので、やはりデジタルでアナウンスする方が効率がいいとは思います。
KKdayが取り組むCRM施策
DearOne 安田|
ここまで伺ってきたメールやアプリ以外に、CRM領域の施策として取り組んでいることはありますか?
KKday 森本|
当社にはポイントプログラムなどの会員ランクシステムもあるので、それを活用したポイントキャンペーンなども実施しています。当社でしか使えないポイントになりますので、ポイント還元したら期限が切れる前にはリマインダーを送るなど、付与してからリピートにつなげる施策などを行っています。
過去においては、日本のマーケティングチームではあまりポイントプログラムを積極的に活用できていなかったのですが、昨今はポイントを使ったキャンペーンなども打つようになりました。施策を何度も繰り返し、どういう風にリテンションの成果につながっているかをこれから見ていくところです。
DearOne 安田|
確かにアプリを入れていただいていれば、そういったポイントも見やすいし、わかりやすいですよね。LINEなどはいかがですか?
KKday 森本|
LINEアカウントもあるのですが、今まであまり積極的に活用できていなかったので、今年は改めて力を入れて何かできたらと思っています。
DearOne 安田|
御社内では、LINEの立ち位置は新規獲得に近いのでしょうか?
KKday 森本|
新規獲得と既存顧客育成の両方の側面があります。LINEで発するメッセージは、メールで出す内容に近い趣旨のものを送ることも多いので、そういう意味で新規から既存顧客育成まで幅広く活用できたらと考えています。
DearOne 安田|
ただ、LINEでの配信はそこそこお金もかかりますよね。
KKday 森本|
そうですね。ただ、お金がかかるということはそれだけLINEの「友達数」も増えているということだと思いますので、費用感も含めて今後しっかり吟味していけたらと思います。
DearOne 安田|
DearOneもアプリ開発を行っていく上で、「LINEとアプリ、どちらにした方がいいのか?」といったことをよく聞かれます。最終的にはネイティブの自社オウンドアプリに持っていく方がロイヤリティも高く、コストもかからずお得という側面もあるかと思いますので、既にアプリに移行されているなら、わざわざLINEに持って行かなくてもいい気がするのですが、その辺り、戦略的にどう考えていらっしゃいますでしょうか。
KKday 森本|
それはおっしゃる通りで、自社のアプリを見てもらう方が当然、コストやロイヤリティといった観点では良いと思います。ただし、やはりLINEがベースのユーザーももちろん多く、LINE経由で当社のサービスやアプリのダウンロードについて知ってもらう機会も多いのではないかと考えています。
定量分析に加え、定性的にユーザーの生の声を聞くインタビュー調査を実践!
DearOne 安田|
サイトやアプリの機能を改修する際のアイデアについては、ユーザーインタビューの中から見つけられるケースが多いのでしょうか。
KKday 森本|
ユーザーインタビューも最近実施し始めたので、今までは社内の人間が気付いたり、あるいはお客様からカスタマーサポートやコールセンターに入ってきた情報から問題が発覚して気付いたりなど、どちらかというと対処療法的な形でアップデートしてきた状況です。
DearOne 安田|
そうした中、ユーザーインタビューをやってみようと思われたのはどういう背景からでしょうか。
KKday 森本|
元々、当社の会員情報も名前やメールアドレスしか取れていなかったこともあり、実際にどういうお客様にご利用いただいているのかなど、私自身も含め包括的に理解できていませんでした。そこで、まずは今KKdayというサービスを既に気に入って使っていただいているお客様は、一体どういう方なのか知りたいということでユーザーインタビューに取り組み始めました。
また、ロイヤリティが高いお客様を増やすべく、そのようなお客様が当社のサービスのどういうところを評価されているのか抽出するために実施しております。
DearOne 安田|
素晴らしいですね。デジタル中心の企業様は数字に関するリテラシーが高い分、どうしても大抵のことは数字で理解しようとする傾向があると感じます。その中で、「定性的なユーザーの生の声を聞こう」という姿勢を持たれるのはすごいなと感じました。
KKday 森本|
Mixpanelなどを用いて社内で計測している情報を元に、特定のお客様がどういう商品を見ているかなどは把握できるのですが、ただしそうしたお客様はKKdayだけを見ているわけではありません。
例えば、旅行に行こうと思ったときに他社とどういう風に比べられているのか、選んでいただく際の決め手は何かなど、社内のデータだけだとわからないこともありますので、日本に数多くある旅行関連サービスの中でKKdayがどういう立ち位置にあるのかなどを、定性分析も含め相対的に見ることが必要だと考えています。
DearOne 安田|
素晴らしいですね。私も実際にユーザーインタビューをやってみて同様なことを考えました。事業者側は、コンバージョンが上がらず、思うように成果が出ないとき往々にして「自社サイトのどこが悪いのだろう?」、「商品のどこが悪いのだろう?」と考えがちです。
ところが、実際にユーザーに聞いてみるとそうではなく、例えば「ライフスタイルが変わりました」、「家族の都合で」など、外側に原因・理由があるケースが多かった実感があります。ですから、外側に理由があるかもしれないという視点を持ってインタビューを実践されている姿勢が素晴らしいと思いました。
ユーザーインタビューは自社で内製化されているのですか?
KKday 森本|
ユーザーインタビューは調査会社にサポートしてもらっています。インタビュー対象者は当社のシステムを使い、参加してもらえる会員をメールでリーチする形で募集して、実際にインタビューを行う段取りなどはその調査会社に協力してもらいながら実施しています。
DearOne 安田|
具体的にはどのような方を抽出しているのでしょうか。
KKday 森本|
まず、当社のサービスを利用して海外旅行や個人手配の旅行に行かれる方が対象です。会員登録をされている方の中で、特に直近で旅行に行かれた方や、サービスを複数回使っていただいている方といった条件を中心に抽出しています。
そのほかの細かい条件付けとしては、例えばツアー型の商品だけを買ってる人や、あるいは他の複数のカテゴリーの商品を使っていただいている方など、利用回数と利用カテゴリーを基に選び、実際にお話を伺うという流れです。
DearOne 安田|
そこの設計もデータドリブンで素晴らしいですね。DearOneが普段、クライアント様にお伝えしているメッセージをそのまま体現していただいている印象です。
我々もどちらかというとデータドリブンなご支援が中心なので数字の分析に寄りがちなのですが、ただやはり「定性的な生の声も重要です」という話もしておりますので、その両方をきちんとバランスよく実践されていることに感銘を受けました。
ユーザーインタビューで把握したユーザーのコアなニーズを、さらにデータドリブンに定量分析
DearOne 安田|
そのように、ユーザーインタビューで出てきた声は、UI/UXなどWebサイトの改善に活かしたり、あるいはメールなどのメッセージの出し方に反映されたりしているのでしょうか。
KKday 森本|
はい。今回のユーザーインタビューで抽出した内容は、サービスを知って、しかも気に入って使ってくださっているという、本当にごく一握りのコア中のコアなユーザー様の意見です。
それらを基に、実際に日本市場でどれくらいの需要があるのかなどを今定量的に調べているところなので、今後は優先順位の高いものを中心に対応していく計画を立てています。
また今後、当社のサービスをどういう風に見せていくかに関しても、他社事例も参考に、お客様の目から見て、どの方向に攻めるのがいいのかを定量分析も含め考えていけたらと思っています。
DearOne 安田|
N1分析など定性で調べたユーザーのコアなニーズを、今度はデータを使って定量的に調べることが重要ですよね。
定量分析は具体的にどのようにされていますか?
KKday 森本|
ごく一般的ですが、前述の調査会社のパネルを使い、今の当社のブランドとして立ち位置がどういうところにあるのかをフラットに競合サービスと比べて、イメージや機能に関する評価にどのような差があるのかなどを、実際のデータに照らしながら調べています。
また、実際に当社のサービスを使っていただいている方に関しては、カテゴリーをまたいで使っている方や、あるいは一つのカテゴリーだけしか使っていない方がどれだけいるのかなどを具体的に調べます。そして、一つのカテゴリーだけしか使っていない方に、もっと複数のカテゴリーがあることを知ってもらうとどれくらい利用意識が上がるのかなどを確認しています。
さらに、今Webサイトに掲載しているキャッチコピーはあるものの、当社が提供していくべきブランド価値としてそれで十分なのか、あるいはもっと他の要素を足していくべき部分があるかどうかなどを確認したいと考えています。
初回利用時の体験の良し悪しなど、サービスのクオリティがその後のロイヤリティ形成に強く影響する
DearOne 安田|
最後に、今後のマーケティングにおける課題や、今後こんなことをやっていきたいといった展望などがあればお聞かせいただけますでしょうか。
KKday 森本|
日本人のお客様の海外旅行という観点でいうと、今回復率は上昇基調にはあるとは思いますが、「今すぐ海外へ」という方はまだまだ多くはいらっしゃいません。また旅行支援に関しても、県によってばらつきはありますが、3月末までだった期限が延長になったことで、むしろ国内旅行の方が魅力的に見えるようなタイミングでもあります。
また、一般的な方が年間で旅行に行く回数はせいぜい1〜3回くらいなので、その限られた機会の中でいかに当社のサービスを利用していただけるかが大きな課題です。
それから、3月からゴールデンウィークを経て夏休みに至るまでにもいくつかの限られた旅行需要期がありますが、いかにKKdayのサービスを使っていただけるかにも注力していくべきだと考えています。
幸い、今まではクロスカテゴリーでグロースしてこられましたので、そこを今後より確実にできるよう考えている施策を今後実行していけたらと思っています。
直近、インタビューをしたお客様のお話を通じて強く感じたのは、最初にKKdayの存在をどういうきっかけで認識し利用していただいたか、例えば「初めて利用したとき、サポートに問い合わせをしたらすぐに返事が来たので、とても安心して旅行に行けました」といった初回の利用体験の良し悪しが、その後のロイヤリティ形成にとっていかに重要で強く影響を及ぼしているかということです。
そのほかWebサイトの使いやすさなど、やはりブランドとしてはサービスのクオリティがすごく重要な要素だということも実感しました。
それから、当社のことを気に入ってくださっているお客様は、自分なりの旅のスタイルをそれぞれお持ちで、傾向としては定番の旅行スポット・観光地も押さえておきながら、他ではできないようなユニークな体験を求めていることがわかりました。
人によっては事前に旅の予定をガチガチに固める方もいらっしゃいますが、旅先での天候や自分の体調・体力などに合わせ、フレキシブルに旅行を楽しむような形で弊社のサービスを使っていただくという特徴の方が多いように感じますので、引き続きそのようなお客様にできるだけ応えられるようなサービスを提供できたらと思っております。
DearOne 安田|
すごくよくわかります。今の御社のサービスの特徴と、ユーザーニーズやセグメントがぴったりマッチしているのだと思いますし、デジタルの手法が中心でありながら具体的なユーザー像を明確にお持ちでいらっしゃるのが本当に素晴らしいと思いました。貴重なお話をありがとうございました。