昨今、現代のビジネスにおいて重要なKPIとなるライフタイムバリュー(顧客生涯価値:1顧客からある一定期間を通じて得られる利益)が重要視されていますが「LTVってそもそも何?」「計算方法がよくわからない」などといった声もよく聞きます。
この記事ではデータドリブンマーケティングで企業のファンを増やす支援を行っている株式会社DearOneのメンバーが「『LTV>CPA』の計算が重要な理由」を解説します。
代表取締役社長 河野
CTO 佐々木(以下 サム)
マーケティング 安田
経営企画 秋津
LTVから逆算!CPAって段々下がる?
カズ 今回のテーマ「『LTV>CPA』の計算が重要な理由とは?」について、皆さんのご経験に基づく豊富な実例も交えて、深掘りトークを行っていけたらと思います。よろしくお願いします!
河野・サム・秋津 よろしくお願いします!
安田 事業フェーズによってかけるべきコスト、CPAは段々下がるのではないかと思います。
新規顧客を1件取るためにかかるコストって、最初の段階だと「見込み顧客を何件取らないと1件獲得に至らない」といった比率の数字ですが、それが会社や商品の市場認知度が上がったり啓蒙ができてくると、見込み顧客から受注までのCVRは段々下がってくると思うんですね。
それができていないうちはやはり、相当マーケティングコストをかけないことには1件獲得に繋がらないので、どうしてもCPAが高くなる傾向があります。だから、LTVとCPAがどこで逆転するのかということに注目する必要があるのではないかと思うんです。
サム ブランディングにかけるコストということですね。
河野 なるほど。LTVから逆算するのだからCPAは割り出せますよね。そのうちのいくらをマーケティングコストとして使うかに関しては今、カズが言った通りです。
そして、徐々に1人あたりにかけるべきコストが下がってきても、実際はその分を下げずにリッチに施策を打つという理解で合ってるかな?
安田 というより、そうやってコストが下がる前のことを考えていました。「一番最初の段階では、LTVから算出したCPAの金額でも1件獲得に至らない時期があるでしょうが、そこを耐え忍んで両者が逆転するところまできてようやく利益が出る」という想定です。
河野 ちょっと待って、それ大事な話だな……なるほど。そんなことってある?
秋津 結構あると思います。
河野 そうかな〜……そもそもそんな事業、成立しないんじゃないかな?
秋津 まずブランディングにかけるコストと、商品のプロモーションにかけるコスト。これらを合わせて見たとき、先にブランディングとして認知を高めることも含めて考えれば、最初の段階ではCPAは自ずと高くなります、という話かと。
そうしてブランド認知が進んでいくと徐々に、そこに対する予算は減っていくので、結果として1件をしっかり獲得するための金額も、どんどん下がっていくのではないでしょうか。
安田 はい。獲得しやすくなってくるということですね。例えば、テレビCMを打っている会社などがわかりやすいと思うのですが、テレビCMをバンバン打って認知を高めればその分、獲得しやすくなって段々コストは下がっていくと想像されます。
ただし、その時のCPAの目安としては当然、LTVから導き出した「この程度に抑えなきゃダメだ」というラインは意識する必要があると思いますが。
サム つまり、スパンの問題ですかね。最初から3〜5年という期間を視野に入れて、ブランディングコストも全部出していくという考え方ですよね。
そうすると段々コストも下がってくるのでしょうけど、ただトータルで見ると結局、この5年分なら5年分のLTVの中からコストをかけていくわけですよね。だから、いずれ払うという意味では変わりないような気もします。
≪.LTV Memo≫
ブランディングにより認知・啓蒙が進むにつれCPAは徐々に下がりLTVと逆転する
LTV計算の落とし穴!「3分の1」ラインの重要性
河野 ただ、それだけじゃない気がするな。もう一度確認させて。例えば、月1,000円利益が上がるサービスがあるとします。この平均継続期間が2年(24ヵ月)とすると、LTVは24,000円じゃないですか。そのとき「最初は1件あたりの獲得コストとしてLTVを上回る5万円かけましょう」っていう話をしてる?
秋津 今の話だとそうなりますかね?
安田 あくまで、一番最初の段階での想定ですが…。
河野 それじゃあビジネスとして成立しないよ…慈善事業になっちゃう。別の例で話しましょう。2年でLTVが24,000円だとすると、そこにかけられるコストは?
サム はい、例えば2年間で1件あたり「3分の1」ラインである8,000円のコストをかけていいとしますよね。この場合、単年で見ると1年目の最初のうちは赤字から始まるわけですが、2年間かけて24,000円の利益を積み上げることで、そこに8,000円のコストをかけても利益が出るようになる。
つまり、最初はあまりユーザーが取れないが段々取れるようになるという前提で、獲得コストがどんどん安くなっていくという話かなと思いました。最初の段階ではより高いコストを払ってユーザーを獲得していき、それが2年の間に徐々に下がっていって、最終的に平均して8,000円になるということです。
河野 なるほど、それならわかります。
サム 単年で見ると赤字になってしまうこともあるので、LTVには長いスパンで見ていく視点が必要ですよね。LTVのスパン自体が3〜5年となってくるときに、単年で予算を考えてしまうと話がおかしくなりますからね。
河野 そう、単年で考えるとおかしくなるということです。これで結論が出ましたね。平均して「3分の1」ラインの8,000円以内に収まればいい。
サム・秋津・安田 そうです!
河野 月1,000円しか利益が上がらないサービスでは、最初の8カ月間はもちろん赤字になりますが、それを「回収期間」と呼ぶわけです。
回収期間を何カ月に設定するかは、そのサービスや会社のやり方によっても変わってくると思いますが、「3分の1」が一般的ということでしたから、今の例でいうと8カ月は赤字になるが時間をかけて回収していくということですね。長いスパンで「LTV>CPA」を意識することが重要です。
サム なんだかややこしく聞こえますが…。
河野 いえ、話自体はとてもシンプルで、実はその8カ月を「赤字」と呼ぶこと自体が間違っているということです。それだとまだ、LTVの頭になっていない考え方だと言えるでしょう。
「1カ月1,000円の利益しかないのに8,000円かけるのか?」ではなく、LTVの視点で「この顧客は8,000円かけても、24,000円になって返ってくる」と見るからこそ、その8,000円のコストをかけることができるようになるんですね。
そして、仮にこの「3分の1」ラインである8,000円を超えてしまうことがあれば、それはそもそもビジネスとして成立しないよ、ということです。
安田 ありがとうございます。このテーマの結論が出ました。
秋津 そうですね。
河野 良かったです。
≪.LTV Memo≫
常に長いスパンで「LTV>CPA」「3分の1ライン」を意識せよ!