データドリブンマーケティングとは、データをもとにマーケティング施策を企画・立案し、その効果検証もデータをもとに定量的に行うことで、マーケティングの効果を高める取り組みです。
デジタルマーケティングが主流になったことで、デジタル広告をはじめ、これまで定量化が難しかったマーケティング施策の効果がデータで可視化できるようになりました。
データドリブンマーケティングに取り組む企業も増えてきている中、どのように進めればよいかお悩みの方も多いと思います。
この記事では、データドリブンマーケティングに取り組む企業がすべきことをご紹介します。
データドリブンマーケティングとは
データドリブンマーケティングとは、データを使ったマーケティング活動のことです。
デジタルマーケティングと混同しやすい言葉ですが、デジタルマーケティングはマーケティングの手法が、Web広告やSNS、アプリなどデジタル媒体を利用することを指します。
一方のデータドリブンマーケティングは、その手法だけではなくマーケティング活動全般において、人間の経験や勘だけでなくデータをもとに最適な手法を判断・改善していく活動を指します。
デジタルマーケティングが一般化したことで、マーケティング活動の成果がデータとして蓄積できるようになり、データドリブンマーケティングができるようになったと言えるでしょう。
データドリブンマーケティングは、以下の「ためる」「整える」「分析する」「つかう」の4ステップで進めていくとよいでしょう。
4つのステップのうち、どうしても分かりやすい「つかう」がフォーカスされやすくなります。
データを使って顧客にメールを送る、アプリでプッシュ通知を送る、Webサイトのユーザーインターフェースを修正する、など。
しかし、実際には保有するデータを活用できる状態にしておくための準備フェーズ「ためる」「整える」が重要だったりします。
データドリブンマーケティングに取り組む企業がすべきことを、上記の
・ためる
・整える
・分析する
・つかう
の各フェーズに沿って見ていきましょう。
ためる
最初はデータをためることから始まります。
データドリブンマーケティングを行うのであれば、元となるデータがなければ話になりませんよね。
ここでいうデータとは、特に顧客や購買にかかわるデータです。
社内にある顧客データとしては、以下が挙げられます。
1.購買データ
POSデータやECサイトの購入データなど
2.顧客行動データ
Webサイトやアプリのアクセスログ、店舗への来店履歴、お問い合わせやイベント参加履歴
3.顧客属性データ
CRMに格納された顧客名、住所、年齢などの属性データ
この3種類の関係性をマーケティング的にとらえると、1.の購買データは結果です。
マーケティング活動はこの数値の最大化を目指して実施していると思います。
一方で、2.と3.は結果を生み出すために利用するインプット側のデータです。
以前は3.の属性データを使ったマーケティングが主流でしたが、最近ではニーズの多様化により、属性だけで顧客を正しく知ることが難しくなってきています。
同じ20代女性でも、コスメが好きな人とアウトドアが好きな人の消費動向は異なります。
こうした属性だけで判断できない顧客のインサイトを把握するために重視されているのが顧客行動データです。
ただし、属性データは顧客1人に対して1レコード(1行)ですむのに対して、行動データは顧客1人に対して膨大なデータ量になります。
こうしたことからも顧客データの蓄積を行うためのデータベースを構築することがデータドリブンマーケティングを実践する際のスタートになるでしょう。
整える
次にデータを整える段階です。
データは多く蓄積されているが、うまく活用できていないという場合はここに課題があるケースが散見されます。
先ほど提示した主な顧客データ3種、
1.購買データ
POSデータやECサイトの購入データなど
2.顧客行動データ
Webサイトやアプリのアクセスログ、店舗への来店履歴、お問い合わせやイベント参加履歴
3.顧客属性データ
CRMに格納された顧客名、住所、年齢などの属性データ
を一意のキー値をもとに紐づけて、いつでも分析できるようになっている企業は少ないのではないでしょうか。
おそらく、それぞれのデータベース単体では、データをエクスポートしてExcelやBIツールで集計・分析することができると思います。
しかし、大切なのはそれぞれのデータの関係性です。
各データベースをキーとなる値をもとにつないでいくことが重要です。
ユーザー軸で紐づけ
データを活用する際によくあるケースは、結果である購買データだけを分析して、「〇月は〇〇商品がよく売れたので売上が高かった」「×月は顧客数が減ったけれど単価は上がったので結果的に売上は変わらなかった」という分析です。
これはこれで一定の意味はありますが、重要なのは結果を引き起こした要因です。
どういった要因でこの結果がもたらされたかがわかれば、良い結果を再現できる可能性が非常に高くなります。
そして、この要因は結果データだけを分析しても発見できないことが多いのです。
先ほどの例でいうと、
【例1】
〇月は〇〇商品がよく売れたので売上が高かった
→なぜ、〇〇商品がよく売れたのか?
【例2】
×月は顧客数が減ったけれど単価は上がったので結果的に売上は変わらなかった
→なぜ単価が上がったのか?
ここまで深堀してみていかないと、ただ単に上司や経営層に場当たり的に報告するだけの内容が薄い分析になってしまい、本質的な改善を行うことができません。
そのためにも、各データベースをつなぎ、結果データだけでなく、その先行指標となるユーザーの属性や行動のデータを合わせて見ていく必要があるのです。
データの民主化
また、データを整えるフェーズではもう一つポイントがあります。
それは、データの民主化です。
社内でデータを見て分析しているのは、データ分析担当だけという企業が多いのではないでしょうか?
データ分析を行ってマーケティング施策に有益な分析結果を出すわけですが、実はここに落とし穴があります。
データ分析担当者が出したアウトプットだけを見ても、他のマーケティングのメンバーが共感できないケースが多いのです。
アウトプットだけを共有するのではなく、データの分析プロセスを含めて意識の共有を図ることが重要です。
そういった視点では、そもそもデータを社内の複数の人が自分で見ることができ、自分で分析することができる環境を整えることが、全社でデータドリブンマーケティングを進めるための必須環境と言えるでしょう。
みんなでデータを見てそれぞれの視点で分析し、そこから出た示唆を共有しながらマーケティング施策を練っていくことができれば、アウトプットに対する共有意識も高まります。
これがデータの民主化です。
分析する
次に、「分析する」のフェーズです。
ここでは、先の「ためる」「整える」のフェーズで蓄積した顧客データを分析し、マーケティング施策の立案を進めていきます。
このフェーズでも2つのポイントがあります。
先行指標の発見
データの分析を行う際、購入者数や購入回数、購入単価等の結果指標を分析している企業は多いと思います。
しかし、本当に重要なのはなぜその結果が出たのか、です。
良い結果が出たのであればなぜ良かったのか、悪い結果がが出たのであればなぜ悪かったのかを考えることが重要です。
そのためにデータ分析で見るべき点は、先行指標です。
例えば、お気に入り登録をした、クーポンを見た、SNSでシェアをした、等のユーザーのどういった行動が、購入といった結果に寄与しているのかを分析するのです。
そして、結果によい影響を及ぼす先行指標を発見し、その指標を高めるための仮説を立てていきます。
仮説立案
もう一つのポイントが仮説立案です。
データを使った分析結果をどう使うか、という視点です。
よく見かけるのは分析結果から「先月の結果はこうでした。理由はこういうことが想定されます」という過去の報告だけをして終わってしまっているケースです。
これではもったいない。
せっかく分析をしたのなら、そこから「だから、こういうことをすれば売上が増える可能性があります」という仮説を立案しましょう。
こうした仮説を早く、多く立案し、確率の高そうなものから試していくことがデータドリブンマーケティングには重要です。
つかう
さて、最後の「つかう」のフェーズです。
ここまででデータの分析を行ってマーケティング施策の仮説が作られていますので、それを実行していくフェーズです。
デジタルマーケティングであれば会員向けメール配信を行ったり、アプリでプッシュ配信をしたり、もしくはキャンペーンの実施などもあるかもしれません。
ここでも2つのポイントがあります。
顧客体験の向上
ユーザーにコミュニケーションしていく際に、常に意識する必要があるのが、
「誰に」
「いつ」
「何を」
伝えるか、です。
会員全員に同じメッセージを、時を選ばずに配信し続けるようなコミュニケーションを続けていると、せっかくロイヤルカスタマーになる可能性のある会員を逃してしまいます。
上記を意識して、ユーザーにとって心地よいメッセージをユーザー目線で考えることが重要です。そしてそれはデータからある程度導くことが可能です。
実行→検証サイクルの高速化
2つ目のポイントは、実行から検証のサイクルを高速化することです。
顧客のニーズが多様化し、移り変わりも激しくなってきました。
その結果、過去に実施したマーケティング施策を参考に新しい施策を実施しても、成功する確率が下がってきています。
こういった環境下では、とにかく小さく、早く、多く、施策を試すことが重要です。
そして施策を実行した結果をデータで振り返り、良かった部分は残し、イマイチだった部分を改善していくことで、早く効果的な施策にたどり着くことができます。
こうした、実行から検証のサイクルを早めるフレームワークとして、OODAループ(ウーダループ)があります。
OODAループとは、
Observe:観察
Orient:状況判断
Decide:意思決定
Act:実行
の頭文字をとって名付けられています。
思い付きや思い込みから始めるのではなく、まずはユーザーを「観察」し、そこから分析・示唆を出すことで「状況を判断」する。そして、迅速に「意思決定」して施策を「実行」し、そこでのユーザーの反応をまた「観察」するというサイクルで回していくのです。
こうした取り組みを行うことで、「つかう」のフェーズでのマーケティング施策の精度はどんどん高まっていくでしょう。
まとめ
以上、データドリブンマーケティングに取り組む企業がすべきことをご紹介しました。
データ活用のステップに従って、それぞれのフェーズで重要なポイントを押さえていただければ、うまくデータ活用が進められると思います。