動画配信プラットフォームとして最も認知度が高く利用されているYouTubeですが、アメリカやイギリスではYouTubeよりもTikTokの1ユーザーあたりの月間平均視聴時間が上回りました。今回は主にTikTokについて、前回に引き続き「Mr.モリスギ」こと株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。
平均視聴時間でYouTubeをTikTokが追い抜いた!スマホで気軽に投稿できるのが強み?
三石所長(当時。以下、三石) 今日もお時間頂きありがとうございます! 今回も、Z世代が使用するソーシャルメディアについてお話をお伺いしたいのですが、森杉さんにとって「これは要チェック!」と思われるものってありますか?
森杉さん(以下、Mr.モリスギ) TikTokですね。TikTokからは、新たな音楽や新たなスターが次々誕生しています。
TikTokがZ世代に浸透していることは皆さんもうご存じだと思いますが、まだまだ動画配信プラットフォームといえばYouTubeをイメージする方も多いと思います。ところが、月間平均視聴率時間でいうと、TikTokはYouTubeを超えています。
三石 TikTokといえば、15秒から1分程度の動画を投稿できるというのが特徴ですよね。森杉さんは、TikTokのどんなところに注目しているんでしょうか?
Mr.モリスギ 「これはとんでもないな」と思ったのが、TikTokの投稿率です。従来のソーシャルメディアには「90-9-1ルール」というルールがあります。
ユーザーのうち90%は、ほとんど見ているだけの人。積極的に投稿して活用する人は全体の10%で、その中でも毎日コンテンツを作って投稿するようなユーザーはわずか1%というのが「90-9-1ルール」と呼ばれるものですが、なんとTikTokはユーザーの55%が動画を投稿しているというデータがあるんです。
三石 それはすごいですね! なぜそんなにも、他のソーシャルメディアと差が生まれているんでしょうか?
Mr.モリスギ 大きな理由は、動画編集に手間がかからないことです。たとえば、YouTubeで動画を投稿しようと思ったら、ビデオカメラだったり編集ソフトだったりと、いろんな機材がいるじゃないですか。ところがTikTokの場合は、スマホさえあればサクッと動画を撮って配信できてしまうんです。
動画の長さが短いのもいいですね。15秒〜30秒、せいぜい1分程度の動画なので、それを見る側も、高いクオリティを求めない風潮が出来上がっています。
三石 前回までのお話でも、「Z世代はカッコ悪い、ありのままの姿を受け入れてくれる世代」というお話がありました。それも影響していそうですね。
Mr.モリスギ そうですね。たとえば、朝起きて「だるいな」とつぶやいているだけの動画や数秒間変顔をしている動画がバズることもあるんです。TikTokでは、「面白ければ何でもあり」の世界が実現している。そこがすごく面白いんです。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
「ありのまま」を受け入れるZ世代にとって、普段の日常を切り取って投稿できるTikTokは親和性が高い。ユーザーの55%が動画を投稿したことがあるというのも、納得できる
TikTokは、全ての人にチャンスが開かれている。フォロワーが少なくても面白ければ普通にバズる
三石 従来のソーシャルメディアでは、フォロワーの数が多いほどバズりやすいという特徴があります。たとえばTwitterなら、フォロワーが1,000人くらいはいないと、バズるのはなかなか難しい。TikTokは、その点も違うんですか?
Mr.モリスギ そこもTikTokの面白いところなんですが、フォロワーが0であっても、いい動画なら普通にバズるんです。実際に私もバズったことがあります。
以前、三鷹の森ジブリ美術館を支援するクラウドファンディングに参加したとき、宮崎駿監督のイラスト入りのポストカードをいただいたんです。それが嬉しくて、スマホで5分くらいで動画を作ってTikTokに投稿したら、2日で12,000回近く再生されました。
(※編集部注・ こちら が、森杉さんが実際に投稿されたTikTok動画です!)
ちなみに、そのときのフォロワーは5人でそれまで1回も動画は投稿したことがない状態でした。ジブリというコンテンツの強さが要因ではありますが、うまくいった事例だと思います。
三石 それはすごい! やっぱり、ユーザーはTikTokにリアリティを求めているということですね。ちなみに、先ほどユーザーの投稿率が高いというお話がありましたが、これは日本でも同じような傾向があるんでしょうか?
Mr.モリスギ TikTokの特徴としては、スターや著名人だけではなくて、一般人がバズっているケースがかなり多いと感じています。
TikTokは最後まで視聴されたかどうかをアルゴリズムとしてかなり重視しているので、エンゲージメントの高い動画を作れれば、たとえフォロワーが0人であっても、十分にバズるチャンスが巡ってきます。それは日本でも同じなので、日本でも投稿率は高いと思います。
三石 誰にでも、公平にチャンスが巡ってくる。それはいいですね!
Mr.モリスギ TikTokでアカウントを作ると、最初に「どんなコンテンツが好きですか?」と聞かれます。それに答えていくと、自分にとって関心の高い動画をTikTokが選んで配信してくれるんです。フォロー0でも関心のありそうな動画が次々にフィードに流れてくるというのも、他のソーシャルメディアと違う点ですね。
30分から2時間くらいTikTokを使っていれば、自分仕様に最適化されて、面白いコンテンツがどんどん降ってきます。面白ければ当然最後まで視聴しますから、バズる確率も上がるというわけです。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
面白い動画を作ることができれば、TikTokの「レコメンドシステム」(アルゴリズム)によって関心の高いユーザーにその動画が届きやすくなる。それはいいねやシェア、キャプション、サウンド、ハッシュタグなどに基づいており、フォロワー数や過去の投稿内容は直接影響しない。
TikTokから新しい音楽や新しいスターが続々登場!クリエイターはTikTokをどう活用している?
三石 YouTubeだと、ユーチューバーとして動画を投稿することによって利益を得られるというビジネスモデルがありますよね。YouTubeに動画を投稿する人のモチベーションも、いわゆる「お金儲け」にあると思いますが、TikTokはそのあたりはどうなんでしょうか?
TikTokに投稿することで利益を得たいのか、それとも、純粋にフォロワーとのコミュニケーションや交流がモチベーションになっているんでしょうか?
Mr.モリスギ TikTokでも、企業案件による広告収入やライブ配信による投げ銭収入を得ることはできます。ただ、クリエイターが収益を得られるようになったのは比較的に最近なので、YouTubeのようにそこがメインの収益源になるというよりも、TikTokでバズってスターになった人が、音楽アーティストになる、ファッションブランドや食品ブランドをはじめる、メディアを立ち上げるなどTikTokを超えた世界でも活躍をはじめることが多いように思えます。
三石 TikTokがプロモーションのような位置づけになっているということですね。ちなみに、これまでにTikTokから生まれたミュージシャンとしてはどんな方がいますか?
Mr.モリスギ わかりやすい事例としては、オリヴィア・ロドリゴさん。「drivers license」というデビュー曲が、TikTokでかなりバズりました。この曲は、全米・全英シングルチャートで初登場1位を記録しています。
TikTok発の音楽という観点では、オリジナルを元ネタにアレンジ、変更する「Remix文化」も盛んです。日本のTikTokでも、最近は韓国の女性アイドルグループ「少女時代」の曲が使われるダンス動画が流行したり、2021年3月には『化物語』というアニメの「恋愛サーキュレーション」というキャラソングが海外アーティストによる英語カバーをきっかけにTikTokerで広まったりしています。2021年10月現在では、390万個の動画が作られています。少女時代の曲「Gee」は2012年、「恋愛サーキュレーション」は2010年に発売されたもので、昔に作られた曲を使ってRemixされて、昔の曲が再評価される流れは非常に面白いですね。
三石 なるほど。これからの流行をTikTokがどんどん作っていきそうな予感がしますね。今回もありがとうございました!
―――YouTubeを追い越しつつあるTikTok。今回はTikTokの面白さやこれからの可能性について、Mr.モリスギにお話を伺いました。
次回は、Z世代が活用しているソーシャルメディアコミュニティや、これからのソーシャルメディアの展望などをご紹介します!