こんにちは。安田です。
アプリ開発とデジタルマーケティングを支援する株式会社DearOneでB to Bマーケティングをしています。そんな私が初心者マーケターにもわかるように解説していくこのコーナー。
前回第14回の記事では『「とりあえずデータ分析せよ」と言われたら』について解説をしました。
第1回目から順番に読んでいただければ、より理解が深まると思いますので、まだ読んでいただけていない人はぜひ読んでから戻ってきてほしいです。
それでは、今回のテーマを発表します。
最先端のビジネス指標「ノーススターメトリック」
Here We Go!
グロースのためのビジネス指標は顧客体験を重視
「ビジネスをグロースさせるぞ」と意気込み、売上や利益増加を目標にマーケティング活動を行なっている企業が多く見られます。
しかし、
これからは売上、利益という企業目線の指標だけでグロースを達成することは困難です。今後は顧客体験を加味した指標がより一層重要となってきています。
そこでAmazonやNetflix、Facebook等の最先端グロース企業が採用しているのがノーススターメトリックという考え方です。これらの企業がノーススターメトリックを採用し、ビジネスをグロースさせたことから今では海外の多くの企業で取り入れられています。
それではノーススターメトリックとは何かについて詳しく紹介していきます。
ノーススターメトリックとは
グロースマーケティングをうまく進めるために最先端のグロース企業が採用しているというノーススターメトリックですが、一体それは何なんでしょうか?
一言で説明をすると、「顧客体験を取り入れた指標」です。
これまで日本の多くの企業では、一般的に指標設計をする際、KGI(Key Goal Indicator 重要目標指標)を設定し、それに伴いKPIを設定していました。そしてKGIには概ね「売上」が設定されます。
しかし、これらは本来望ましい指標とは言えないのです。
なぜなら企業側目線でしか設定されておらず、その中にはユーザー目線、言い換えれば、お金を払ってサービスを体感しようという「顧客体験」が指標として設定されていないからです。
サービス、製品は顧客を満足させた上で、利益はそれの対価としてもらうべきはずなのですが、これまではその顧客のことは置いて指標が設定されていたのです。
そしてこのユーザー目線での評価を測れる指標として取り入れられたのが、ノーススターメトリックです。ノーススターメトリックは、経営層やマーケティング部門のみならず、営業部門、開発部門、カスタマーサービス部門等、プロダクト、サービスに関わるすべてのメンバーが目指すべき単一の指標となっています。
ちなみに、ノーススターメトリックは下記図のように、KGIとKPIの間に入れるイメージです。
ノーススターメトリックとは何かについて理解できましたかね?
つまり、
顧客体験を重視し、ユーザー目線での指標を取り入れようということです。
それでは次に、ノーススターメトリックの設計手順についてみていきましょう。
手順は3つのステップに分かれています。
STEP1 プロダクトを分類
STEP2 ノーススターメトリックを仮決め
STEP3 KPIを求める
STEP1:プロダクトを分類
まず自社のサービスがどのブロダクト種別に当てはまるのか確認します。なお、この3つのプロダクト種別は、米国No.1の行動分析ツールを提供するAmplitude が12,000 社以上の顧客のサービスを調査し、分類したものです。
1. アテンション
アテンションは「利用時間」にフォーカスしたプロダクトやサービスです。Facebook、Netflixやグノシーがアテンションに分類されます。ユーザーが一度やってくると、長時間滞在してもらい、それによってビシネスが広がるということです。
2. トランザクション
トランザクションは、ECサイトなどを通じてたくさん購入(トランザクション)してもらいたいというプロダクトやサービスがこれに当てはまります。Amazonが代表例となります。
AmazonはFacebookのように広告で収入を得ているわけではなく、ユーザーが購入をしてくれることによって、利益を得ています。そのため、どのようにすれば顧客は継続して購入し続けてくれるのかという点について考え、施策を打つ必要があるのです。
3. プロダクティビティ
プロダクティビティは多くのタスクをより効率的に実行してもらうことを目的とするプロダクトやサービスのことです。SFA(Sales Force Automation)をはじめとする業務アプリケーションなどが代表例です。
例えばFacebookはどのようにしてマネタイズを行なっているか知っていますか?
Facebookは広告が利益のほとんどを占めています。そのためいかにしてユーザー数を獲得し、さらにそこからどれだけの時間滞在してくれるかといったことが大切となるのです。
また、大事なことですので、ここで繰り返し言及しますが、ノーススターメトリックは企業目線での指標ではなく「顧客目線」での指標であるということです。
Facebookは広告が主な収益であると述べましたが、同社がもう少し利益を上げたければ表示される広告を増やせば簡単に大きく収益を上げることができるでしょう。
しかし、Facebookはこのような施策を取っていません。
それは、何度も言っている通りFacebookはユーザー側のプロダクト体験を重視しており、安易に利益に目が眩み、広告を増やせばユーザーには「広告が多すぎてうざい」「使いづらい」などと思われてしまい、そこから離脱が増え、結果的に収益を減らすことにつながる可能性があるからなのです。
目先の企業の利益は一旦無視してしまい、ユーザーが心地よい体験をしてくれるように考えることが大切となります。
STEP2:ノーススターメトリックを仮決め
ステップ1でプロダクト種別を確認できれば、次はその種別に合わせて何が重要な要素となるのかを決定し、ノーススターメトリックを仮決めします。
例えば、アテンション型だと重要な要素は滞在時間であり、そこから考えられるノーススターメトリック案は「コンテンツ再生時間」「月10時間以上滞在したユーザー数」などが挙げられます。
トランザクション型であれば重要な要素は「コンバージョン数」であり、「一度の購入商品数」「月3回以上購入をしたユーザー数」などが挙げられます。
プロダクティビティの場合はタスクをたくさん処理してもらうことを重視するので、ノーススターメトリック案は「レコード登録数」「ファイル作成数」などになります。
STEP3:KPIを求める
ノーススターメトリックの仮決めをすることができれば、次はKPIを求めます。その際、ノーススターの4つのディメンションである「広がり」「深さ」「頻度」「効率」を意識して決めていくことが大切です。
広がり?
深さ?
頻度?
効率?
とはなんなのでしょうか。
これだけでは、よくわかりませんので、トランザクション型に分類されたAmazonを例に挙げ、みていきましょう。
「広がり」とは、エンゲージメントしたユーザー数を示します。「購入ユーザー数」と設定できます。
「深さ」はエンゲージメントのレベルを表します。「購入単価」になるかと思います。
「頻度」は「購入頻度」です。3日に1回しか買わない人がいれば、2日に1回購入してくれるようにしようということです。
「効率」は、自分の欲しいものを効率よく、早く購入できるか。購入までに余分なプロセスや障壁がないか。タスク完了までの速度、時間が設定できます。
これらがユーザー目線を視野に入れたKPIになるということです。
このように顧客目線を取り入れたKPIを設定することができれば、それらの数値を高めるための施策を決定します。
例えば「クーポンを発行する」「プレイリストをもうちょっと増やす」など。エンゲージメントを高めるマジックナンバーに合わせて、施策案を練るのです。
マジックナンバーの記事はこちらへ。
このように、企業側の目線だけではなく、ユーザー目線でのサービスの価値、言い換えれば「何を持って価値と感じれくれるか」というポイントを、しっかりと指標の中に設計しておくのが、ノーススターメトリックです。
KPI設定はここで終わりではありません。
一次のKPIの下には、このKPIを支える二次KPIが必要なのです。一次のKPI設定までは人間が考えて設定する必要があるでしょう。
ただし、例えば「プレミアムユーザー数を増やすためにはどうすればいいか」ということを検討し、これらを支える実際の施策やインプットKPIを決定する際には、行動分析が役に立ちます。
行動分析を行うことで、「新規ユーザーがプレミアムユーザーになるためにはどんなイベントを体験しているのか」を容易に調べることができます
そしてそこから簡単にKPIを発見することができるようになるのです。
以上がノーススターメトリックの設計手順となります。
お役に立ちましたでしょうか。それではまた今度。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回の記事は『データをゴミにするか宝にするかはタクソノミー設計次第』です。データってただただ集めてもなんの役にも立たないんですよね。ビジネスに生かすために必要なタクソノミー設計って何なんでしょうか。