グロースハッカーが活躍する企業 (IKEA ルイ・ヴィトン編)

2021.03.11

f:id:growth-marketing:20210304110206p:plain

グロースハック= Growth Hackとは、その名の通り「成長をハックする(取り組む・うまくやり抜く)」という意味です。

ユーザーの行動を理解した上で定量的にデータ分析し、課題の改善や解決に向けて高速で施策を繰り返し、明確に設計された目標・指標への到達を目指す、製品・サービスの継続的成長をもたらすグロースマーケティングの手法です。ユーザーを獲得し売上増加に直結させるには、これまでのマーケティング概念と切り離された施策を行う必要があり、近年さらにグロースハックが注目されています。

今回は、その施策を行うグロースハッカーが活躍している企業について、ご紹介いたします。

グロースハッカーの重要性

グロースハックを活用して急成長を遂げている企業では、必ずグロースハッカーが活躍しています。グロースハッカーは主に、Webマーケティング分野で経験値からデータドリブンに基づいた成長を促すことに集中し、製品・サービスを最適化することによって、例えばブランドアンバサダーやリテンション率の高い顧客のカスタマージャーニーを通じて得た気づきから、新たな成長機会を体系的かつ迅速に割り出します。

グロースハッカーの成長戦略フレームワークは、AARRR指標(海賊指標) と呼ばれ、Acquisition(新規ユーザー獲得)・Activation(利用開始)・Retention(継続的利用)・Revenue(収益化)・Referral(紹介)の5つの指標が用いられます。

また、グロースハッカーに必要な基本スキルは、Data-Tracking &Analytics(データ追跡力及び分析力)・Behavioral psychology(行動心理学)・Learnability(習得力)・Growth Hacking Mindset(グロースハックのマインドセット)・Technical Skills(技術的スキル)です。

では実際に、グロースハッカーが活躍する企業で行われている施策を見ていきましょう。

事例1.IKEAの場合

カラフル・シンプル・モダンな家具で日本の家庭に新しい住文化を紹介したスウェーデンの家具メーカー、IKEA。

当初は大型実店舗での展開でしたが、近年オフラインからオンラインに向けて目覚ましいグロースが見られます。その背後ではグロースハッカーによるどのような施策が行われているのでしょうか。

IKEA Place アプリの開発

2017年、IKEAはAppleとの共同開発により、AR(拡張現実)アプリ「IKEA Place app」をローンチしました。これはユーザー視点から、購入を検討している家具をスマホ上で自分の部屋に3Dで設置できるアプリです。アプリ内のカタログには約2,200アイテムが取り揃えられ、ユーザーはその中からピックアップした家具をAR上に配置して保存し、価格を確認して予約すれば、実店舗で購入できるという仕組みでした。その後オンライン購入機能も追加され、保存した家具の写真から直接アクセスし購入できるようになっています。

2019年、IKEA Place は改善を行った大幅なアップデート版をローンチします。新たなUIによるカスタマイズされたフィード機能、複数家具の同時配置提案、テーマに合わせて部屋全体をコーディネートする機能が追加され、自宅なのにまるでIKEAのショールームにいるかのような画期的なUXの提供を実現しました。

さらに2020年、IKEA Place アプリ内に新しいiPad Proを使ったStudio Mode をローンチしました。これまでのAR機能では行き届かなかった壁や天井の装飾や、さらには照明器具の点灯・消灯といったディテールの実現まで可能にし、よりパーソナライズされた家具体験ができるようになりました。

Scan, Browse, Select, Move and Place.
(部屋をスキャンし、家具を閲覧、選び、移動して配置する。)

ユーザーの指先で行われるこのシンプルな行動データをグロースハッカーは分析し、3年という短期間で、アプリに関する施策および改善を高速で行ったのです。*1

ECにおけるクロスセリング戦略

IKEAは元々、実店舗でクロスセリングのUXを構築していました。

スウェーデンのフードを楽しむためにIKEAレストランに行き、そこで実際に販売されている椅子に座るという体験ができます。或いはソファーを買いに行って、休憩のためにレストランに入り、食べて気に入ったメニューがあれば、食材を買って帰ることもできます。

あらゆるユーザー行動を分析しながらUXの間口を思い切り広げたことにより、家具と食を同時に提案するという、さらなる購買の可能性を創り出したのです。

このクロスセリングをIKEAはECサイトに応用しました。ユーザーがほしい商品を一つ選んでカートに入れると、それに関連した商品提案が画面下で瞬時に行われます。

例えば、ワードローブを選択すれば、その中で使えるハンガーが何種類も表示されます。

また、物理的な組み合わせだけでなく、カラーコーディネートの観点からも提案を行います。ブルーのソファーを選べば、それに合うブルーグリーンのクッションが表示されます。

この仕組みは、ユーザーの商品購入数を増やすことだけが目的ではありません。

商品追加の提案には、ユーザーが一点一点探し、検討し、購入するまでのプロセスにあるストレスを取り除く効果があるのです。IKEAのクロスセリング戦略は、まず顧客のライフスタイルを快適にするところから始まり、リテンション率を高めた結果、長期的な企業収益につながっているのです。

グロースハック施策の効果

2018-2020年の3か年事業計画では、DXとECマーケティングへの投資金額31億ユーロにより、2020年の売上20%増加を目指していました。2020年、コロナ禍で実店舗の75%閉店により売上は減少しましたが、オンライン売上は前年比60%も増加し、全体売上の18%を占めています。*2*3

IKEAグループのDXリーダーであるGerry Rogersは「最新の技術によってユーザーがIKEA家具のナレッジにアクセスしやすくなります。多くの人々により良い日常の創造をもたらすために、最新技術を活用しているのです。」とユーザー視点に立った見解を述べています。*4

事例2. モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン グループの場合

伝統を誇りとする老舗ラグジュアリーブランドを抱えるモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン (LVMH) グループ。

フランスの人材募集を見ると「グロースハックでイノベーションを先導するマーケティングマネージャー」のように、グロースハッカーを明確に募集しています。

LVMHにおけるグロースハッカーはどのような施策を行っているのでしょうか。

オンライン上のオムニチャネル販売戦略

ユーザーがLVMHのECサイトを訪れると、商品のリアルタイム在庫状況を確認でき、購入品に応じた配達方法を選ぶことが出来ます。オプションで同日配送や2時間以内の店頭ピックアップも選べるため、ユーザーに最適なデリバリータイムを提供します。

OneStock のアジャイル注文管理システムによって配送確約機能を向上させ、オンライン上のクリックから発送までが実店舗のUXに非常に近づいたのです。

ユーザーの期待に沿ったハイエンドのサービスをテクノロジーによって提供する、つまりオンライン上でもラグジュアリー製品を買う体験ができる、まさに企業とユーザーのオンライン接点となるチャネルをECサイト・メール・スマートフォンアプリ等で広げ、さらには実店舗でのUXも融合し、オンライン・オフラインを一体化させた販売戦略を実現しています。

グロースハック施策の効果

実はOneStockは、LVMHが主催するラ・メゾン・デ・スタートアッププログラム参加企業であり、LVMHイノベーション・アワード2020のファイナリストです。両社の密接な協力関係により、LVMHのオムニチャネルは創られました。

グロースハッカーの人材育成という点で非常に力を入れていることが見受けられます。

LVMH取締役会長兼CEOのベルナール・アルノー氏も、ユーザーの新たな要求に見合うサービスをDXで加速すると明言しており、今後グロースハッカーのさらなる活躍が期待されます。*5

おわりに

グロースハックの施策を高速で進めるには、優秀なグロースハッカーの存在が必要です。社内の人材育成も大切ですが、外部企業との連携によってアプリ開発やプラットフォーム構築を行いながら、優秀なグロースハッカーと共にチームを組んでデータ分析・課題改善・目標設定を高速で回し、迅速な売上向上を図りませんか。

ナレッジランキング

タグ一覧