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小売業界が100年に一度の大変革!リテールテック最新事例【DXニュース】vol.24

2022.06.28

DXニュース第24回は小売りに100年ぶりの技術変革、“バージョン3”へデジタル活用競うを取り上げて解説します。今回のプレゼンターは、国内外のリテールテックを10年以上見続けてきた株式会社DearOne CEOの河野さん。それでは、はじめましょう!

100年ぶりの小売業界革命!「来店不要の時代」に突入

河野さん&三石所長(当時)
河野さん(左)と三石所長(当時、右)(撮影:DearOne会議室)

三石所長(以下、三石) 「DXニュース」第24回です! 今月の2本目は「小売りに100年ぶりの技術変革、“バージョン3”へデジタル活用競う」です!
 
河野恭久さん(以下、河野) よろしくお願いします!
 
三石 バージョン3って言葉、僕は初めて聞きました!
 
河野 そうですよね。バージョン3はこの記事を書いた方のオリジナル表現で、記事内ではわかりやすく解説してあります。要は今、100年に一度の転換点を迎えていると。 

三石 ほう!

河野 これは100年に一度しか変革が起きない、という話ではなく、前の変革が起きたのが100年前ということです。では今回の変革は何かというと、ECが浸透して、パンデミックが後押しをして“来店が不要の時代”になっていると。それに伴いリアル店舗の役割が問われているというわけです。 

三石 なるほど。それは 先月の「DXニュース」でもお伝えした、マルイがD2Cのブランドと組んでリアル店舗をショールーム化して、購入はECで――という流れのことですね。
 
河野 その通りです。今まではユーザー自身が気になる商品を店員に聞いたりしながら、自分でカゴに入れて、レジに持って行って、代金を支払ってもって帰ることが当たり前の購買パターンでしたが、そのパターンが崩れていることを示す事例が3つあるそうです。
 
三石 なんだろう? 気になりますね。

小売業界の3つの最新事例

河野 1つ目は ファミリーマートさんが2025年2月末までに無人店舗を1,000店にすると宣言 していること。無人店舗は僕と三石さんもアメリカで2019年に体験しましたね。

三石 しましたね~! 天井や棚のカメラやセンサーで、お客さんがどの商品を手に取ったかを把握する仕組みでした。

河野 はい、ファミマの仕組みもほぼ同じで、それを増やしていくそうですよ。

事例の2つ目はイオンです。こちらはダイナミックプライシングを導入して、AI活用を本格的にはじめています。僕らはダイナミックプライシングと聞くと、どうしてもマーケティング観点になりがちですが、違うことが書いてありました。
 
三石 ダイナミックプライシングといえば、商品やサービスの価格を需要や供給に合わせて変動させることですね。マーケティング観点ではないとしたら、他の目的があるんでしょうか?
 
河野 限られた人数や修練度が低い店員でも適切な値付けや接客ができる高効率の店舗運営を目指しているそうです。つまり、マーケティング観点ではなく、店舗効率、運営効率のところで活用しているという話でした。
 
三石 なるほど、その発想は面白いですね!
 
河野 ダイナミックプライシング自体は10年ぐらい前から再三言われていて、でも実装されてきませんでしたよね。その理由はPOSレジがサーバーの情報を読み込める仕様になっていないからです。

ダイナミックプライシングを実行するには、商品のバーコードを読み込んだタイミングでサーバーと通信して、今の価格をチェックする必要がありますが、そうなっていないハード側の仕様にも課題がありました。
 
三石 確かに。でも、今こういう記事が出てきているってことは、対応できるようになったんですかね?
 
河野 この記事ではそのあたりは深掘りされてませんでした。僕が気になるのは、消費者側は価格が変動すると、それが適正価格かわかりませんよね。

同時期に購入しているのに「隣の人は実は違う価格で買っているかもしれない」という不公平感が出る可能性があるので、適正価格はどこかに掲示しないといけないんじゃないかなと思うんですよ。
 
三石 それはありそうですね。
 
河野 ただ、本来、価格は需給バランスの話だから、仕入れが難しければ値段が高騰するものです。この記事に出ているイオンスタイル川口は既にダイナミックプライシングを導入しているみたいなので、機会があれば見に行ってみたいなと思っています。
 
三石 実際にどうしているのか、見に行きたいですね。
 
河野 そして最後の3つ目の事例は、そごう西武の「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA)」やシリコンバレーのb8ta(ベータ)です。こちらは以前のDXニュースで紹介した「マルイ」と同様に、そもそもお店で売ることを目的としておらず、ショールーム化しているという事例でした。

小売業界変革の歴史、バージョン1は「量り売り」の時代、バージョン2は「POSレジ誕生」の時代

河野 ここで改めて「100年に一度の転換期」を解説しますね。
 
三石 お願いします!

小売業界の技術変革の歴史
小売業界の技術変革の歴史(編集部作成)

河野 小売りのバージョン1、つまり最初の小売業は1916年より前を指していて、精肉店や八百屋の量り売りの時代です。

お客さんが自分で商品を取るのではなく、店員に注文して、店員が棚や倉庫から取り出して、お金をもらって渡すというスタイル。
 
三石 バージョン1は量り売りの時代と。

河野 はい、バージョン2はレジスターが発明されて、1916年にアメリカで出てきたセルフサービス方式のことです。それが後にPOSレジになり、多店舗管理がしやすく、業務効率の向上という経営面の効果が生まれました。
 
三石 なるほど。バージョン2ではお客さんが自ら商品を選び取れるようになったのですね。
 
河野 さらに決済も進化しています。ただし、進化した決済=バージョン3はまだ実現していないんですね。

この記事ではバージョン3を実現するカギになる「技術革新」があるという話です。そのポイントは3つあります。
 
三石 3つのポイント、気になりますね。

河野 1つ目は「無人決済」です。これはカメラやセンサーの技術のことで、ファミマが1,000店舗を目指していることと、北米ではもう当たり前になっていることから、おそらく実装されるだろうと。
 
三石 1つ目の技術革新はほぼクリアしていると。
 
河野 はい、2つ目はデータとAIです。ダイナミックプライシングがまさにそれですね。あとは、店内の行動をデータとして分析する。回遊動線は売上にも直結する重要な項目で、分析するツールがなかった以前はお客さんの後ろに店員などが張り付いて動いて、メモしていたほどです。
 
三石 確かに、今は人力を使わずに回遊動線をデータ化できるというのは、非常に重要な技術革新の部分ですね。
 
河野 その通りです。そして3つ目がリアル店舗とECの融合。リアル店舗のショールーム化の話ですね。この3つの技術革新――無人決済、データとAI、リアル店舗とECの融合、これらがきちんと導入されて、社会インフラとして実装されていけば、小売業としてのバージョン3は実現されるという話でした。

バージョン3を実現する技術革新のポイント
バージョン3を実現する技術革新のポイント(編集部作成)

リアル店舗の行動データをオンラインに生かす逆転の時代へ

河野 僕がポイント3つ目の「リアル店舗とECの融合」のところに関して、以前取り上げたマルイの話でリマインドしたいことがあります。それはオンラインよりオフラインの接客のほうが難しいという話です。一般的にはデジタルよりリアルのほうが当然、五感に訴えてリッチな顧客体験ができると考えられていますよね。
 
三石 はい。
 
河野 でも、リアル店舗はお客さんがよそ見をするから、その人が自分でキョロキョロして選ぶ。

一方で、自社サイトはよそ見されないからターゲティングマーケティングがしやすくなる。また、リアルの売り場は目の前の顧客が新規か既存かさえわからないまま対応しなければならないから、的確にパーソナライズされたコミュニケーションができません。
 
三石 うんうん。
 
河野 その点、オンラインなら、購入履歴はもちろん、これまでどんな行動をしていて何が趣味かなど、全部データがわかった状態で接客ができます。じつはオンラインのほうがやりやすいという話でしたね。
 
三石 そうでしたね。それに関連する話で言うと、先週の日経ビジネスの特集が「買わせる心理学、進化する本能マーケティング」だったんです。

河野 面白そうですね。今回のニュースにも繋がりそう!
 
三石 そうなんです! NTTドコモの「ナッジ理論」をもとにした事例 がいくつかありました。

ナッジとは英語で「そっと後押しする」という意味で、要は混雑状況によって仕分ける、行動経済学のベースになる理論です。そのベースとなる行動経済学理論をシステマチックにしているNTTドコモのエンジンがあるらしくて。
 
河野 それを使った事例が紹介されているんですね。
 
三石 はい。アパレル大手の三陽商会が今年4月にららぽーと横浜にオープンした「BLUE LABEL/BLACK LABEL CRESTBRIDGE」では来店客の行動分析をはじめたそうです。顧客の同意を得たうえで天井に設置した約20個の機器を使い、どの商品の前で止まったかなどの行動を詳細に把握すると。

三石 それができるとどうなるか? 今度はこれまでと逆に、リアル店舗での行動データをオンラインストアでの接客に生かす可能性が広がるそうです。

たとえば、リアル店舗で電子レンジばかり見ていたお客さんがいたら、オンラインストアのデータと紐づけることができれば、オンラインで電子レンジをレコメンドできますよね。
 
河野 間違いないですね。実現しそうです。
 
三石 これが面白いのは、リアル店舗での行動データのほうがその人の本心に近い、オーガニックに欲しがっている生々しいデータを補足できるんじゃないかということです。

というのは、オンラインの場合は河野さんが言った通り、レコメンドエンジンなどでよそ見させない設計になっていて、見るものを絞り込まれているんですよね。だからオンラインではセレンディピティ(偶然の出会い)も起きづらい。
 
河野 確かにその通りですね。オフラインなら、オンラインとは違ったデータが取れそうです。セレンディピティの観点からもリアル店舗は必要で、この先もなくならないでしょうね。興味深い共有、ありがとうございます!

DXに強いDearOneが、バージョン3へのアップデートをサポートしていく

河野 最後に僕の私見です。パンデミックに後押しされたリテールテックの実現のポイントとなるのはずばり「IT投資」と考えています。
 
三石 IT投資ですか?
 
河野 はい、小売りはもともと薄利多売の業態なので、投資とリターンのバランスにはかなりセンシティブです。

一方で、慢性的な人材不足にさいなまれているため、デジタル化は必須であり、投資をしなければ経営が立ち行かなくなる可能性すらあります。
 
三石 そうですよね。
 
河野 なので、僕らDearOneのようなデジタルのエキスパートが顧客に寄り添って、バージョン3への進化を促しながら、その実現性とリターンを見ていくお手伝いができたらいいなと思います。 

三石 まさにDXのサポートですね! 

河野 はい。リターンは具体的な売上というよりは実現後の世界観をちゃんと描けるように伝えることだと思います。

それをともに設計して、IT投資に踏み切れるよう、説得し、証明していく必要があります。この変革にDearOneとして、ぜひ貢献したいと感じました。

三石 素晴らしいです。DearOneだからこそサポートできる部分がたくさんありますよね。興味を持っていただいた方は、ぜひこの記事の最後のバナーからお問い合わせください(笑)!

河野さん、今回も興味深いニュースのご紹介、ありがとうございました!

―――次回の【DXニュース】で取り上げるニュースも、河野さんが解説していきます。お楽しみに!

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