データドリブンマーケティングとは、データをもとにマーケティング施策を企画・立案し、その効果検証もデータをもとに定量的に行うことで、マーケティングの効果を高める取り組みです。
デジタルマーケティングが主流になったことで、デジタル広告をはじめ、これまで定量化が難しかったマーケティング施策の効果がデータで可視化できるようになりました。
データドリブンマーケティングに取り組む企業も増えてきている中、どのように進めればよいかお悩みの方も多いと思います。
この記事では、データドリブンマーケティングの成功事例をご紹介します。
データドリブンマーケティングとは
データドリブンマーケティングとは、データを使ったマーケティング活動のことです。
デジタルマーケティングと混同しやすい言葉ですが、デジタルマーケティングはマーケティングの手法が、Web広告やSNS、アプリなどデジタル媒体を利用することを指します。
一方のデータドリブンマーケティングは、その手法だけではなくマーケティング活動全般において、人間の経験や勘だけでなくデータをもとに最適な手法を判断・改善していく活動を指します。
デジタルマーケティングが一般化したことで、マーケティング活動の成果がデータとして蓄積できるようになり、データドリブンマーケティングができるようになったと言えるでしょう。
データドリブンマーケティングは、以下の「ためる」「整える」「分析する」「つかう」の4ステップで進めていくとよいでしょう。
4つのステップのうち、どうしても分かりやすい「つかう」がフォーカスされやすくなります。
データを使って顧客にメールを送る、アプリでプッシュ通知を送る、Webサイトのユーザーインターフェースを修正する、など。
しかし、実際には保有するデータを活用できる状態にしておくための準備フェーズ「ためる」「整える」が重要だったりします。
それでは、こうしたデータドリブンマーケティングの成功事例をご紹介しましょう。
地道な取組で、ゲストごとに最適なパーク体験を提供 合同会社ユー・エス・ジェー
日本でも最大規模を誇るテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営する合同会社ユー・エス・ジェイ(USJ)は、データドリブンマーケティング実施によって大きく成長した企業の内の一つです。
USJのマーケティング本部デジタルマーケティングマネージャーを務める柿丸氏は、2014年の入社時からウェブ行動データやリアル行動データを組み合わせて、データに基づいたサービスを展開しようと考えていましたが、データがまだそれほど多くない業界で、他の社員の理解がまだ追いついていない状況にありました。
きっかけとなったのは、入場口のチケット筐体の入れ替えでした。
当時のCEOからハード面の入れ替えだけでなく、マーケティングでの活用も考えるように指示があり、「データドリブン」から「ユーザーエクスペリエンスドリブン」に発想を変える方針を取ったのです。
従来、チケットの購入はエントランス窓口で買う人が多く、匿名の情報しか入手できていませんでした。さらにレストランや物販もPOSから得られる情報しかなく、曖昧なデータしか収集できていませんでした。まずそこで、ゲストの情報取得のためにチケットECストアや、Webサイトを改修に取り組みました。ECストア、Webサイトを改善することで、これまでよりも詳細なデータを収集することができるようになり、さらにこれらの収集したデータを基にして、マーケティング施策の実行が可能となりました。
施策実行の結果をさらに分析して、次の施策に活かすといったサイクルを繰り返すことで、オンラインチケットの販売数を2014年からの3年間で300%アップさせることに成功しました。
次に、チケットのQRコードを読み取って入場を促進する「スマートゲート」を設置することで、サイトで得られたゲストIDと入場履歴の紐付けが可能となり、どんなゲストがいつ、誰と来場したのかがより詳細にわかるようになりました。
その後、パーク内の行動のデータ化に取り掛かりました。顧客の行動データはセンシング(センサー)やGPS、ビーコン、Wi-Fiなど様々なツールを組み合わせて計測するようにしました。その他には、地磁気データを使用して、パーク内での顧客行動をデータ化することに成功しました。
地磁気データを収集するために取られたのは「伊能忠敬プロジェクト」と名付けられたジオマグネティック手法です。ジオマグネティック手法とは、地面が発する磁場を利用する手法のことを指します。地球の磁場は、建物などの障害物の影響で変化するため、場所によって固有の「ゆがみ」が生じます。同社はこの「ゆがみ」を、場所を特定するための“地面の指紋”ともいうべきデータとして収集に取り組んだのです。
しかし、そのためには地面をくまなく特殊なアプリケーションで撮影して「地面の指紋」を取得しておかなければいけません。そこで約1年間、深夜、パークが閉まった後のパーク内を何度も練り歩き、徹底的な撮影に取り組みました。測位アプリケーションを用いて、全ての場所の「地面の指紋」の採取を行うことで、来場者の1日の移動経路を全て把握することに成功したのです。
こうした地道な取り組みが結実して、公式アプリ内では、当日の顧客一人一人に最適化された「コンシェルジュ」機能を提供しており、「朝、パークの出入り口周辺にいる人だけに、特定の商品のカテゴリをレコメンドする」といった運用も行われるようになりました。USJではアトラクションやパレードを「自由に楽しんでもらう」だけではなく、ゲスト一人一人の行動に合わせた最適化された体験を提供できるようになったのです。
マジックナンバー分析による施策実行でROI152%達成 NTTドコモ dゲーム
日本最大手の移動体通信事業者であるNTTドコモが、2013年に開始したサービス「dゲーム」は、データドリブンマーケティングによる施策実行でROI(Return On Investment)152%を達成しました。
同社はユーザー行動分析の結果を用いて施策実行を自動化し、売上向上のサイクルを構築するためにツールの導入を決めました。従来はdゲームのキャンペーン施策を企画する際、ゲーム業界の長いベテラン社員のノウハウに頼る運用になっており、既存とは異なる施策を実行するための新たな観点が不足していました。
また、分析はほぼ手作業で行われており、稼働負荷がかかり、ユーザー行動を深掘りした効果的な施策の検討や改善にはあまり時間を割くことができていませんでした。
そこで行動分析ツールであるAmplitudeを導入することにしました。その結果、新規ユーザーの場合、キャンペーン施策にエントリーしたユーザーのLTVが未エントリー者と比較して、大幅に増加、さらにROIはおよそ152%の向上を達成することができました。
新規ユーザーの課金額平均推移については、施策を行った場合に遡った経緯を2ヶ月間計測したところ、マジックナンバーを達成したユーザーの課金額は2ヶ月目に6倍近くの大幅増加となりました。また、工数削減においては、「キャンペーン後3ヶ月間の訪問、課金状況を効果測定し、キャンペーン未実施の3ヶ月と比較する」という分析においては、96%という、非常に大きな工数削減を達成しています。
わずか15分の分析でEC購入率を大幅改善 アパレルECサイト
F2層(35歳〜49歳女性)をメインターゲットとするアパレルECでは、ツールを導入し、データドリブンマーケティングを実施したことによって、わずか15分の分析で購入率を大幅に改善することに成功しました。
同ECでは、KGIである売上目標を達成するために「購入者数を増やす」を含む、複数のKPIを設定しています。購入者を増やすために、同ECではまず「購入者がどんな行動をとっているのか」ということを確認するために、顧客を4つのグループ(A ,B ,C,D)に分類しました。
分析により、グループAの中に「2回以上購入するユーザー」が最も多く含まれているということがわかり、この分析結果を基にしてグループAのユーザーがどんな行動をとっているのか」、さらに深く分析することにしました。
そこでわかったのは、グループAのユーザーは、下記の4つの行動において全体の平均ユーザーの平均値を上回っているということでした。
・閲覧履歴を見る
・カートを見る
・本人認証
・商品詳細ページを見る
特に「閲覧履歴を見る」においては、全体が1.4%に対して、グループAでは9.1%と、大きな差がありました。次に同ECで実施された分析は「閲覧履歴を見る」という行動に対し、その手前でユーザーが何をしているのかということでした。この分析によって、半分近くの顧客が「商品詳細ページ」をみた後に閲覧履歴を見ているということがわかりました。
次に「商品詳細ページ」から、「閲覧履歴」まで、ユーザーがどういった同線でたどって来たのかを考えると、直接「閲覧履歴」に移動するリンクは「商品詳細ページ」の下部にしかないことに気がつきました。また、自分の興味がある商品を一覧で見ることができる「閲覧履歴」と似たような機能として「お気に入り」というメニューもあったのですが、さらに深掘りをしたところ、利用者数もコンバージョン率も「閲覧履歴」の方が、はるかに高い数字として出ていることを把握できました。
ツールを用いて、これらの分析に要した時間はなんとここまでで15分でした。
上記の分析結果を基に「商品詳細ページから閲覧ページへの誘導を強化すれば、購入数が増える」という仮説を立てて、A/Bテストを実施したところ、
・カートへの投入率122%
・コンバージョン率156%
・購入者数114%
という、3項目において大幅な改善を施すことに成功しました。
まとめ
以上、データドリブンマーケティングの成功事例でした。
他社の取り組みの良いところを自社に生かして、データドリブンマーケティングを進めていきましょう。