はじめまして!
Contentsquare(コンテンツスクエア)でアカウントエグゼクティブをしている飯野と申します。過去にもデータ分析ソフトウェア会社で日本企業のデータ活用を支援してきました。
現在はフランス発のスタートアップである同社で、デジタル体験分析の普及に従事をしています。ウィズコロナで転換期を迎えているデジタルプラットフォーム運営者の方にお読み頂けると嬉しいです。
デジタルビジネスは転換期
ここ数年、コロナ禍の影響でデジタルプラットフォームの運営者にとっては躍進の年でした。米国では一般家庭への10年かかる、と言われたeコマースの浸透がわずか3ヶ月で実現したという報告もあります。
消費者の75%はデジタル化の結果さまざまなブランドを試し、60%はこの新しい行動やブランドを今後の生活に取り入れると答えています。日本でもeコマースに限らず、あらゆる手続きがオンライン化してきました。
それでは、デジタル運営者は満足しているのでしょうか?
Contentsquare(コンテンツスクエア)の2023年版デジタルエクスペリエンス・ベンチマークレポート*2https://contentsquare.com/jp-jp/digital-experience-benchmark/によれば、サイト訪問者数は増えているものの、コンバージョン率は低下しているとの傾向が見えてきました。セッション当たりのページ閲覧数、滞在時間、スクロール率などの指標も昨年より低い結果となりました。
これは、デジタルビジネスの市場が飽和状態にあることを示唆し、訪問者は自分たちが好みのプラットフォームを選択する意識が高まっていることを意味しています。
デジタル運営者にとって、絶えず変化し続ける市場で競争上の差別化を図るためには、顧客体験の理解が不可欠です。より優れた体験を提供することで関係性を強化し、継続する必要があります。
Forrester社の調査*3https://www.forrester.com/report/predictions-2023-data-and-analytics/RES178172によれば、データから競争力を維持しているインサイト主導型の上位企業はわずか7%であり、46%が初級者、47%が中級者との報告があります。初級者はデータとアナリティクスの活用において成熟度が低く、CXやデータは重要だと理解しつつ会社として取り組めていない企業です。中級者はインサイトの重要性を理解し取り組みを継続している企業、上位企業はデータとアナリティクスを活用して競争優位性を維持し続けています。
更に、同じデータを過去4年で比べると、全体的な成熟度が大きく変化していることがわかります。従来データの取り組みをしていなかった企業の比率が減り、取り組みを進めているのです。
デジタル体験分析とは?
CXとデジタル体験分析の違いを整理します。
- カスタマー・エクスペリエンス(CX)とは、企業との直接的・間接的な体験に対して顧客が抱く内的・主観的な反応を指します。
- デジタル体験分析(DXA)とは、顧客と企業とのオンライン上のやりとり全体の分析です。企業の自社ウェブサイトから始まる場合もありますが、モバイルアプリ、チャットボット、ソーシャルメディア、その他タッチポイントがバーチャルであるあらゆるチャネルも含まれます。
物理の店舗で例えると、マネージャーやスタッフが、陳列が顧客の関心を引いているか、商品の置き場所が間違っていないか、どこに行けばいいのか迷っていないか……などの状況を観察します。そして、顧客の体験を向上させるために変更を加える取り組みです。
一方で、デジタルにおいてすべての体験を追跡することは難しくなり続けています。
一つは、デジタルプラットフォームの多機能化です。UIや導線、機能は複雑化しており、訪問者の動きも多様化しています。このような状況でも何かが起きている理由を理解する必要があります。
もう一つは、デジタルビジネスに対応するツールの多様性です。エンドユーザーの体験向上や収益向上を謳うデジタル・インテリジェンス・ツールが利用されるようになってきました。これらのツールは素晴らしいのですが、「何が起こっているのか」についての文脈、つまり正しく活用されているか、顧客にとって価値あるものかという情報を与えてくれません。「色々なツールを導入しながら収益向上を目指したものの、思うように成果が出ていないということもあるのではないでしょうか。
これらの組織的な課題に対処し、自社のサービスを再評価して成長させることは、簡単な問題ではありません。企業はこれらの課題に対する具体的な戦略を策定し、適切なリソースの確保や優先順位の調整、ステークホルダーとのコミュニケーション強化などを通じて、新しいテクノロジーの導入と活用を成功に導く必要があります。
デジタル体験分析のステップとは?
こうした課題に対処するために、デジタル体験分析が利用されています。顧客のデジタル体験を分析し、改善案を導き出す手法です。以下に、優れた体験を提供するための6つのステップを紹介します。
- 分析方法選択:現在の顧客理解をどのデータに基づいて行うか。より粒度の細かいデータの方が具体的なインサイトに結びつきます。そのデータの内容を理解するだけでなく、複数のデータを組み合わせることによる効果も判断します。
- 分析:データに基づいて改善示唆を抽出。単なる問題提起に留まるケースも見受けられます。が、仮説検証(なぜそうなったのか)、推奨案(どうすば良いのか)の検討及びビジネスインパクトを定量的に整理することでより具体的な施策実行と実行後の振り返りが可能となります。
- 施策の優先順位付け:優先順位を決め、どのように評価するか。ビジネスインパクトを算出し、効果の大きい順に着手できることが理想。また、リリース方法は本番環境に適用をするか、事前にA/Bテスト等で影響を確認するかを整理する。
- 構想と実現:変更に関わるリソースを踏まえ施策実行の優先順位を決定し、変更します。
- 効果測定:A/Bテストもしくは新しいリリースの効果を分析。A/Bテストを行う場合は、事前にリリース判定の条件を定義した上で実行します。
- 総括:プロジェクトを振り返り全体のKPIに対してのインパクト及び改善点を振り返ります。
上記はその他の分析と同じアプローチかと思いますので、体験分析で行う分析の課題の例も紹介します。
- キャンペーンに反応して訪れた訪問者が、なぜ離れてしまったのか?
- ページ内で訪問者はどのような行動をしているのか?(どのコンテンツに魅力を感じ、逆に感じないか。ページ内で困惑していないか?)
- コンテンツがコンバージョンに与える影響とは?(同じCTAが複数あったりジャーニーが複数ある場合、どのコンテンツがコンバージョンに寄与しているか)
これらに加え、ビジネスインパクトを付与します。
- 収益に影響を及ぼす最初の改善課題は何か?そのインパクトはどのくらいか?
- 変更により期待される収益改善またはコンバージョン率はどのくらいか?
まとめ
デジタル体験分析によって、今までブラックボックスであった訪問者の細かな行動を把握し、効果的な改善策を見つけ出すことが可能です。これにより、競争力を維持しつつ顧客に価値を提供するデジタルプラットフォームの構築が可能となります。
デジタル運営者は、デジタル体験分析を通じて、顧客エクスペリエンスの向上を実現し、競争力を高める新たなステージへ進むことができます。デジタル革命/DXの波に乗り、未来に向けて挑戦に取り組みましょう。