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データでユーザーに“思いを馳せる”。OfferBoxが実践する、数字の裏側の「行動」を捉えるプロダクト改善とは【DearOne】Amplitude導入インタビュー

2025.07.18

amplitudeのご相談は、
国内初パートナーのDearOneまでお問い合わせください。

行動分析ツール「Amplitude」総合代理店の株式会社DearOneは、株式会社i-plug様が運営する新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」に2023年10月より同ツールを導入いただいています。

今回は、データ分析とUI/UXの視点を両輪にプロダクトの成長を推進する能勢氏と林氏に、Amplitudeの導入によって可能になったことや、行動分析を通して目指すサービスの形についてお話を伺いました。

課題:
  • 自社データベースの属性データと実際のユーザー行動データが紐付いておらず、セグメントごとの細かな行動分析が難しかった
  • Webとアプリを跨ぐユーザー行動を一元的に捉えられず、ユーザー体験の全体像が見えなかった
  • SQLやGAベースの分析では工数がかかり、迅速で正確な分析やA/Bテスト評価が困難だった
効果:
  • ユーザープロパティと行動データがAmplitude上で統合され、詳細な行動分析が可能に
  • コホート分析やA/Bテストの精度が飛躍的に向上し、施策の効果検証がスピーディーに
展望:
  • 今後はAmplitudeをさらに深く活用し、学生と企業のマッチング成功要因を精緻に分析、サービスの価値をさらに高めていく
  • ロイヤルユーザーの行動パターンを分析し、企業・学生双方に対してより精度の高いマッチングを提供する
  • 社内におけるAmplitude活用のリテラシー向上と分析人材を増やし、データドリブンな意思決定を全社的に推進する

企業が学生のプロフィールを見てアプローチする新しい形の就活サービス「OfferBox」

プロパティと行動が紐付かないデータ活用の難しさ。SaaSにおけるユーザー行動理解の大切さから導入を決定

「OfferBox」

DearOne 麻野|
i-plug様には、Amplitudeを2023年10月より導入いただいております。まずは御社のサービス概要をお聞かせください。

i-plug 能勢様|
私たちは新卒向けのダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を提供して13年ほどになります。新卒一括採用の中で特にナビ系と言われる、学生が企業に応募を送る形のサービスとは一線を画した、企業が学生に直接コンタクトを取る形態で、パイオニアとして大きなシェアをいただいています。

DearOne 麻野|
お二人はどのような役割をされているのでしょうか。

i-plug 能勢様|
プロダクトとしては主に企業様が使う管理画面と、学生さんが使うアプリと大きく2つありまして、全体のUX/UIを見る、プロダクト開発部プロダクトデザイングループのマネジメントを私が担当させていただいています。マネジメントなので、エンジニアリングループや戦略組織などとの連携強化や、社内のデザインリテラシー向上などデザイングループ全体のプレゼンスを上げるような部分を私が担当し、実務に関しては林に担当してもらっています。

i-plug 林様|
私はディレクターのような役割で学生側のプロダクト改善を中心に担当しています。施策の実行、立案、その前に必要なデータ分析と施策実施後の効果検証などデータ分析を中心にやっています。Amplitudeも私たち二人が中心に扱っています。

DearOne 麻野|
オファー型の就活マッチングプラットフォームの最先端を走っている中でAmplitudeを導入するに至った背景をお聞かせください。

i-plug 能勢様|
私がリテール業界から転職して3ヶ月目に、「導入させてください」と社長にお願いしました(笑)。 というのもi-plugは2021年にマザーズ上場してから一気に規模が拡大しまして、データ分析をまだしっかりやれていなかったんです。GAなどの基本的な分析ツールは当然入っていましたが、UXを分析する文化というか、UXの組織そのものが未熟だったので、行動分析ツールが無いと間に合わないなと感じました。

i-plug 能勢様|
開発部門のエンジニアリングがメインの組織なので、普段からSQLを書き自前のデータベースで分析を行ってきた文化がありツールの必要性を感じにくかったのかもしれません。「行動分析というのは、データベースに残っているステータスの分析とは違うものなんです。」ということを時間をかけて説明しました。

DearOne 麻野|
行動分析の文化自体がないところからの導入だったんですね。具体的にはどのような課題があったのでしょうか。

i-plug 能勢様|
自社のデータベースで保存している学生や企業のデータと、実際のユーザーの行動を紐付けることができていませんでした。いわゆるプロダクトの定点観測として「こういうユーザーがこのページ使っています」ということまでは分かっても、そのページの中でどういう属性の学生や企業がどういう行動をしているのか、セグメントごとの行動分析ができていませんでした。

DearOne 麻野|
GAだとかなり手間のかかる領域ですね。

i-plug 能勢様|
もう1つは、アプリとウェブでサービス展開をしているのですが、アプリ内でウェブビューの画面にまたいでしまうとデータがシームレスに取れないという課題があり、そのあたりを解決できる分析ツールを探していました。

DearOne 市来|
他のツールもいろいろ検討されたんですか?

i-plug 能勢様|
はい、Adobe Analyticsをはじめ他のツールも比較検討しましたが、私たちの使い方に対しては機能が豊富すぎてオーバースペックだと判断しました。 就活という領域がユーザーの行動を前後で比較しにくい特性を持つため、私たちが特に重視したのは、決定的な因果関係を見つけるためのA/Bテストが正確に行えることです。この要件を軸に、第一候補であったAmplitudeが私たちの要件を満たすかどうか、詳しく検証したという経緯です。

DearOne 麻野|
「A/Bテストの正確性」を特に重視された背景には、どのような課題があったのでしょうか?

i-plug 能勢様|
はい。導入前の一番の課題は、ユーザーのその時点でのステータス(例:プロフィールがどのくらい埋まっていたか)を後から追えないことでした。例えば「プロフィールの入力率が充足している学生の行動を分析したい」と思っても、分析する頃にはその学生のプロフィールが充足してしまっている。
これでは過去の行動と現在のステータスが紐づいてしまい正確に分析ができませんでした。

その点、Amplitudeは「当時この条件に当てはまっていた学生の行動はどうだったか」といった過去の状態を指定してコホートを作成、分析まで簡単にできます。この機能が我々の直面していた課題に合致していました。

他にも色々なコホートがすぐに作れるので「これも見たい、あれも見たい」と他のディレクターともよく話題になります。

DearOne 麻野|
実際にAmplitudeを導入されてみて、期待通りでしたでしょうか。

i-plug 能勢様|
ユーザーのデータをAmplitudeに取り込んでどのユーザーが何をしているのか分かるようにするという大きな目標は、狙い通りに見られるようになりました。特にコホートをうまく使って、色々な学生群ごとに行動分析ができるようになったのが大きいです。例えばこの学部の学生が何をしてるのかや、逆に超早期に動いている学生たちはどういうセグメントの学生なのかみたいな部分ですね。

DearOne 麻野|
行動分析の文化がなかったところから、大きな変化ですね。

i-plug 能勢様|
私はずっとリテール業界の中でECサイトのグロースを見てきました。そこからこのSaaS、ウェブサービスの業界に来て思ったのは、より行動に対して気を配らないといけないということでした。やっぱりものを売るのとは違う、マッチングというところでいうと、企業側、学生側の行動をより正確に理解しないといけないですよね。

業界全体ではなくあくまで私個人の経験ですが、相関だけを見てざっと動いてしまうことが多く、例えばマジックナンバーにしてもA/Bテストの結果にしても、本当に因果や有意差があるかを考えるよりも0.1%でも上のバナーを活かそうという動きが多かったんです。ウェブサービス側に来てみて、相関関係と因果関係のつながりを深く分析する必要性を感じていましたが、Amplitudeを使ってそれが可能になり、大変ありがたいです。

「就活」「マッチング」というプラットフォームにおけるタクソノミー設計*のユニークさ

DearOne 市来|
すごく興味本位の質問なのですが、やっぱり就活を始めるタイミングが違う学生さんは動きや意欲も全然違うものですか?

i-plug 林様|
そうですね。ただ結構難しいのが、政府の方針でタイミングも毎年のように変わるので、学生さんが就活を開始した時期と動きというのを今年と来年で単純に比較できないんですよね。

DearOne 麻野|
そこのところの事前設計や導入がかなり大変そうだなと拝見していました。もちろんウェブもアプリもあってプロダクトが一方向ではない点もありますし。

i-plug 林様|
自分が一番大変だったポイントとしては、ユーザープロパティの設計です。GTM(Googleタグマネージャー)で取得するか、自社のDB(データベース)から持ってくるかの検討や、DBから持ってくるならバッチをどのタイミングでどう反映するかなどを決めるのが難しかったです。

i-plug 能勢様|
御社の中でも割と大変だったなという印象ですか?

DearOne 麻野|
やっぱりリテールのほうがシンプルというか、期間も短いですし、イベントも作りやすいですね。プロパティも会員ランクや購買回数など想像がつきますので、i-plug様のプロパティは大変そうだなと感じましたね。

振り返ってみていかがですか?

i-plug 能勢様|
大変でしたが、御社にベースのタクソノミーの資料をいただいたので、それを改良するような形で社内の議論を進めることができました。

DearOne 麻野|
その大変な部分を、我々のようなパートナーが支援する価値がある、ということですね。

i-plug 能勢様|
そうですね。この初期設計を丁寧に行うことが後々の分析精度にも関わってくるので目先の効率だけでなく、長期的な視点で見れば非常に意義深い取り組みでした。

DearOne 麻野|
その初期の定義などは基本的にはお2人が考えられているんですか?

i-plug 能勢様|
ベースは林が作ってくれまして、今は林に対してこういうものを入れたいとリクエストしたり、逆に林の方からディレクターに対して例えば新しいグロース案件などをリリースするタイミングでAmplitudeのイベントを発火させた方がいいんじゃないか? などを提案をしてもらっています。

DearOne 市来|
OfferBoxならではのタクソノミーに関する特色というか。学生と企業、両面があるのが面白そうでもあり、難しい部分ですよね。

i-plug 林様|
そうですね。DBから取得しているプロパティの話で言うと、マッチングサービスなので、「学生がこの企業のオファーを受け取っている」という状況を、学生側のプロジェクトから見れるようにしています。この企業からオファーを受け取っている学生のコホートを作る、みたいなことができるのは、マッチングサービスのOfferBoxならではだなと今話していて感じました。Amplitudeが無かった頃はそういった行動分析みたいなものもできなかったので。

DearOne 麻野|
Amplitude導入で、これまでできなかった粒度でユーザー行動を見るようになると新たな気付きも出てきそうですね。

i-plug 能勢様|
我々はプロダクト全体を考えるので、あまり個者にフォーカスして細かく見ることはありませんが、例えばCS部門や事業部門にAmplitude活用が広がれば、担当企業の分析をメンバーが個々にできる土台になりますよね。Amplitudeでセグメント、コホートと行動を紐付けられていることで様々な応用が利き、サービス全体のグロースを後押ししてくれると思います。

タクソノミー設計*・・・データの収集および活用(分析・施策)を前提として、ユーザー行動データをどのように記録・管理するかを定義・整備する作業

複数ツールと併用する中で、欠かせない存在になったAmplitude

DearOne 麻野|
社内定着の面でご苦労などありましたでしょうか。

i-plug 能勢様|
現在Amplitudeの登録ユーザーは私達のチームを中心に36名で、会社全体で見ると1割強が活用できる環境です。今後更に社内定着を進めるためには、社員のリテラシーをどんどん上げていく必要があるなと思っていて、もう1人、メインで業務に使うメンバーを増やしたいと感じています。 Amplitudeを使える社員が増えれば共通言語で喋れるようになりますよね。同じレポートを見て、同じ分析結果を見て話したり、他部門の人たちがスペースに残したものがナレッジとしても貯まっていったり、そこまでの最終的には行き着くといいのかなと思いますね。

i-plug 林様|
個人的な話ですが、自分は前職でGoogle アナリティクス(以下GA)を使っており、GAと比較して基本的な横軸で見えるセグメンテーションチャートと、ジャーニーチャート、あとファネルチャートの作り方が分かると、利用するモチベーションが上がると思います。GAでもファネルチャートを使う人は多いと思うのですが、作るのが面倒なので、Amplitudeの速さには驚きました。

DearOne 市来|
以前からSQLを使って分析されていたと思いますが、複数のツールはどのように使い分けられていますでしょうか。

i-plug 林様|
もともと分析基盤があって、SQLをかける人間はRedashなどのツールで可視化していたんですが、それはそれで使いつつ、今はAmplitudeも併用で使っています。使い方としては、SQLで基本的なコホート対象の学生を抜き出して、そのデータをAmplitudeに入れ込み、コホート比較を行うようなイメージです。

Amplitudeコホート比較
Amplitudeコホート比較のイメージ(定着ユーザーと休眠ユーザーのイベントの実行割合を比較)

DearOne 市来|
その他、Amplitude導入後に面白い発見などがあればぜひ教えてください。

i-plug 林様|
直近で、学生のプロダクト離脱の分析でAmplitudeによる気付きがありました。DBから特定の離脱学生を抽出して、どこのポイントで離脱しているかAmplitudeで見にいくフローで分析を行いました。ユーザーが離脱するとドロップオフというフラグが立つので、その前のイベントを見ると、登録直後に離脱しているユーザーが多かったりして、そこから更にどのポイントで離脱しているのか細かく知ることができました。

Amplitudeジャーニー分析
Amplitude 離脱(Dropped Off)直前のユーザー行動や割合を把握するチャートのイメージ

集客パターンとも絡めた分析もしたりしまして、具体的には言えないのですが、以前から仮説として挙がっていた離脱要因を、実際の数値として確認できたのは大きな成果でした。

DearOne 市来|
貴重なお話ありがとうございます。他にAmplitudeの導入でやりやすくなった事などありますか?

i-plug 林様|
最近の話ですと、A/Bテストを実施する際に役立っています。もともとDBからA/Bの振り分けを出していたんですが、母数が大きいので、例えばポップアップのA/Bで出し分けみたいな施策になったときに、DBの母集団からポップアップが表示される数が少なくなって平均値の見え方に差異がありました。Amplitudeでは、実際にA/Bテストで施策に当たったユーザーに絞って結果を確認できるので、効果の違いがちゃんと見えるようになりました。

DearOne 市来|
ありがとうございます。導入されて1年半ほど経過されていますが、Amplitudeの特にどの点を評価されて活用を継続していただいてるんでしょうか。

i-plug 能勢様|
費用に対してどれぐらい効果があったか、という見方はあまりしておらず、Amplitudeが無いと取れないデータがあるので、その価値を見て導入を継続しています。自前でもデータ分析基盤を作るチームがエンジニア側にいるんですけれど、自前で行動分析できるような仕組みを入れるとなるとそれなりにコストもかかるので、Amplitudeを入れておいた方が当然使い勝手もよく、そういった意味での価値を感じています。

DearOne 麻野|
現場レベルでの反響はいかがですか?

i-plug 林様|
GAを使ってきた人間にとってはAmplitudeの導入で作業が絶対に早くなるので、戻りたくないですね(笑)。

DearOne 麻野|
嬉しいお言葉ありがとうございます(笑)。

i-plug 林様|
常にA/Bテストを回しているので、もしAmplitudeがなかったらポップアップの表示ログをDBからわざわざ取ってきて、SQLで集計しなければいけなくなります。この作業は正直かなり大変で…

それにGA側でコホート分析や、セグメント分析をするのもかなり難しく時間もかかるので、そうした分析をちゃんとやりたいなら、絶対にAmplitudeを使った方がいいと個人的には思っています。

i-plug 能勢様|
そういう意味では工数削減の効果は出ていますね。

数字と行動の因果関係を分析し、より良い出会いを生む

DearOne 麻野|
Amplitudeで行動分析を深く行えるようになった中で、OfferBoxの今後の展望をお聞かせください。

i-plug 能勢様|
我々は学生と企業をマッチングさせるプラットフォームですが、マッチングが成立した後は、面接といったリアルの世界に移っていきます。そうなると、内定が出るまでのプロセスがどうしても見えづらくなってしまうんです。もちろん、最終的な内定報告で結果は分かるのですが、その過程で「何がうまくいったのか」という一番知りたい部分が分かりません。

だからこそAmplitudeを使って、内定した学生が過去にどんな活動をしていたのか、例えば活動の積極性や勉強の履歴などを、長い目で振り返りたいと思っています。そうすることで、内定と行動の「つながり」をデータから見つけ出し、私たちが次にやるべきことのヒントを掘り下げていきたいですね。

DearOne 麻野|
結果的により多くのマッチングが生まれていくということでしょうか。

i-plug 能勢様|
私たちのサービスの根幹にあるのは、「学生と企業様の“相互理解”のマッチング」です。今回のデータ分析の最終的な目的もそこにあります。

内定承諾に至った方の行動パターンが分かれば、「こういう学生さんには、こんな企業も合うんじゃないか」とか、逆に企業様へも「実はこんなタイプの学生さんが御社にマッチしますよ」といった、新しい出会いのきっかけを提案できる。そうやってマッチングの可能性を広げる形で、皆さんに価値を還元できると信じています。

分析すると、どうしても定量的な数字を追いかけなければいけないんですけど、その数字の裏側で学生と企業が実際にどういった行動をしているのかに思いを馳せながら、Amplitudeで行動分析を行いより良いプロダクトに成長させていきたいと思います。

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