
株式会社DearOneは、株式会社ジーフット様が運営するASBee(アスビー)の会員向けアプリリニューアルを、アプリ開発サービス「ModuleApps2.0」で行いユーザー行動分析ツール「Amplitude」とMAツール「MoEngage」という2つのツールを組み合わせる形で導入のご支援を致しました。
今回は、ASBee(アスビー)のアプリ運営を中心にデジタルマーケティング領域を担当する高松様に、ツール導入の背景や、ハイスピードでの成長を実現するための体制やお取り組みについてお話を伺いました。
課題:
- アプリダウンロード数に対するアプリ利用率に伸び悩んでいた
- アプリを通じた最適な顧客体験を実施できておらず顧客接点が希薄になっていた
効果:
- リニューアル1年で会員登録が約106万人、月間アクティブユーザー数(MAU)が旧アプリの5倍に向上
- Amplitudeでデータを組み合わせることなく行動ベースでの分析ができ、新しい気付きが増えた
- 位置情報に合わせた施策やリアルタイムでの施策が可能となりユーザーのアプリ起動を促進
展望:
- 店舗のデータとECデータを統合させ、さらなるパーソナライズとリピート促進を実現
全国615店舗を展開するシューズショップブランド「ASBee」
アプリリニューアルでDL数もMAUも急成長
DearOne 杉本|
ジーフット様は2024年3月にModuleApps2.0で「ASBee(アスビー)アプリ」にリニューアルし、同時にAmplitudeとMoEngageを導入いただきました。御社のサービス概要と、高松様のご担当する領域をお聞かせください。
ジーフット 高松様|
株式会社ジーフットはイオングループの靴専門店事業を担う会社です。ASBee(アスビー)、Greenbox(グリーンボックス)などを運営する靴の小売店で、全国で622店舗(2025年2月時点)を運営しています。「健康的で履きやすい魅力的な靴をリーズナブルに提供すること」をテーマに、幅広い商品を取り扱っています。
私自身はこれまで16年間ほど楽天、ヤフー、ZOZOや自社サイトなども含めた、ECサイトのディレクションとマーケティング、受注管理、出荷管理、カスタマーサポートなど、EC運営を経験してきました。現在はASBeeのアプリ運営を中心にECも含めたデジタルマーケティング領域全般の運用を、2名体制で担当しています。私はいちおう管理するような立場で、アプリの運用はもう1名のメンバーが担当しています。

DearOne 杉本|
リニューアル後のアプリの状況はいかがでしょうか。
ジーフット 高松様|
2024年3月のリニューアルから約1年で約106万人(※取材時点)の会員登録と、旧アプリと比べてアクティブユーザー数(MAU)約5倍を達成することができました。
DearOne 杉本|
とても早い成長速度ですが、具体的にはどのようなリニューアルを行ったのですか?
ジーフット 高松様|
会員登録については95%以上が店舗での会員登録なので、店頭のスタッフがアプリのメリットを理解して、会員集めを頑張ってくれているおかげですね。
今回のリニューアルで一番大きな変更は、会員情報を登録してもらう形にしたという点です。旧アプリも悪いものではなかったのですが、決まったパッケージだったためできることが限られており、ユーザー情報を性別と誕生日程度しか集めることができていませんでした。
DearOne 杉本|
今回リニューアルとともにAmplitudeとMoEngageも導入いただきましたがどういう背景があったのでしょうか?

ジーフット 高松様|
社内的にデジタルマーケティングを強化するタイミングだったこともあり、アプリのリニューアルと同時に最適な顧客体験を提供できるよう行動分析ツールのAmplitudeとMAツールのMoEngageも導入しました。これまでアプリダウンロード数に対するアプリ利用率の向上も課題として抱えており、その部分の改善も今回のリニューアルの理由の1つです。
DearOne 杉本|
今回導入にあたり、最初にツールの操作説明会を行い、弊社で用意したマニュアルや動画コンテンツも共有しながら伴走型でサポートをさせていただきました。
導入から活用までで感じたことはありましたか?
ジーフット 高松様|
色々なツールをこれまで使ってきて、操作説明も毎回してもらってきましたが、今回はデジタルマーケティング施策を実際に作るというところまで一緒にサポートしてもらえたのは大きかったです。普通は、「こうやって使えますよ、あとは自分でやってみてくださいね」というパターンが大半ですよね。ただDearOneの場合は、こういう使い方がありますよ、じゃあどういうふうになるか実際にやってみましょうと、一緒に作っていけたため、活用までとてもスムーズでした。
そういう点は他社との大きな差別化になっていると思います。
DearOne 杉本|
私達はツールを導入された皆様が自立して活用いただけることを目指していますのでそう言っていただけて大変うれしいです。ありがとうございます。
仮説を検証・可視化でき、シンプルな操作で施策実施が可能に
DearOne 杉本|
アプリのリニューアルを機にAmplitudeやMoEngageを導入したことについて、どのようなメリットを感じていますか?
ジーフット 高松様|
Amplitudeを使用して行動ベースで色々なことを調べられるようになったのが一番のメリットだと思っています。以前はユーザーの動きを仮説として考えたとき、それを調べる方法がありませんでした。しかしAmplitudeでは仮説を検証し可視化できる点が非常に魅力的です。
色々なデータがダッシュボードに綺麗にまとまっているので非常に使いやすいですし、ベーシックなアクティブユーザー数を見ながら、ある行動をしたユーザーが他にどのような行動をしているか簡単に見ることができます。行動ベースでデータを組み合わせることなく調べることができるので新しい気付きが多いです。AIの機能も便利で使いやすいですね。
DearOne 杉本|
「Ask Amplitude」 ですね。「Ask Amplitude」はシンプルな質問に対してAIが最適なチャートや機能を提案し、分析チャートを作成してくれる機能ですが、私も今後さらに便利になっていくのを楽しみにしています。MAツールのMoEngageはいかがでしょうか。
ジーフット 高松様|
MoEngageも使い方がシンプルで、特に知識がなくても使えるツールになっているので、実際経験のなかったメンバーもすぐに使えています。世の中に多々あるノーコードツールは、htmlを理解していないと無理な場面も多いですが、MoEngageは本当にノーコードで使えているのが魅力だと感じています。
DearOne 杉本|
ジーフット様は店舗数がかなり多いので、MoEngageのジオフェンス機能も活用していらっしゃいますね。
ジーフット 高松様|
位置情報を活用したプッシュ通知などですね。アプリのGPS機能を常にオンにしてもらうハードルが高いので活用するのはどうかなと思っていたのですが、店ごとに数十人から数百人単位でオンにしてくれているお客様がいるので、続けていくことでプラスの成果を得られるのではないかと期待しています。
実際に外出先で、すぐそばにあるお店のロゴが出てくると通知に対する印象が全然違うと思います。ASBeeはモールやショッピングセンターの中にあるので、その商業施設が目的の人達に、ついでにASBeeにも立ち寄ってもらえるきっかけ作りができることが大きいです。
顧客データ分析による来店者とアプリユーザー層の意外な発見
DearOne 杉本|
データを分析しての気付きについてお聞かせください。
ジーフット 高松様|
まず、年齢性別も含めてユーザーのデータを見ているのですが、私たちが思っている「店頭に来ているユーザー」と「アプリをダウンロードしてくれた会員」に全く差が出なかったのが意外でした。店舗が頑張って勧誘してくれているのもありますが、アプリ会員も店頭も45歳から55歳ぐらいが一番多くなっていて、スマホだから若い世代のほうが使うっていう形になっていないのは発見でした。意外と、私以上の年代の方々にも普通に使っていただいているのだなと。
DearOne 杉本|
実際の店舗のお客様と同じ層がアプリを利用しているというのは、店舗にとってとても参考になるデータも取れそうですね。

ジーフット 高松様|
基本的にASBeeはイオンにあるので、エリアによっては年齢層が非常に高く偏っている店舗もあります。そういう店舗に対して、意外とみんなスマホを持っていてアプリも見てくれるよ、ということは伝えたいですね。若い世代になると通知を意図的に切るなど取捨選択しています。逆に年齢層が高くなればなるほどプッシュ通知に対して寛容で、意外と届くということがあったりします。
Amplitudeのおかげで、想像していたことが正しかったかどうかはっきりわかるようになりました。「うちのユーザーは年齢層が高いし、アプリで一生懸命会員を集めても成果を得られないんじゃないか」と考えている店舗に対して、シニア向けクーポンなどを使って「ほら、来てくれてるでしょ」と言えるようになりたいなと思っています。

地域別、店舗別の施策で店頭の意欲も向上
DearOne 杉本|
ユーザーの年齢以外には、データ活用で他にどのような気付きがありましたか?
ジーフット 高松様|
MoEngageを使ってエリア別でクーポンを配信するケースが今は増えており、地域ごとの興味深い発見が多々あります。例えば、冬の季節には、地域によって冬物の靴に対する反応が大きく異なります。他にも「県民の日」限定クーポンを茨城県と埼玉県で実施した際は、埼玉県でのクーポン利用率が茨城県の約7倍になりました。隣接する県でここまでの大きな差が出るとは予想外で、このような地域差をアプリのリニューアルで可視化できるようになりました。
DearOne 杉本|
これも実際に施策を打ってみなければ分からないことですよね。仮説を立てて施策の数を打っても目標に至らないことは多かったりするのですけれど、それを多く行った企業様やサービスほど精度が上がって成功率も上がっています。ジーフット様はまさにそのレールを走っていらっしゃいます。地域別のクーポンはどのように決めているのでしょうか。
ジーフット 高松様|
店舗の方々が自分たちで、このタイミングでこういうクーポンをやりたいと依頼を送ってくれるので、それで選定をしながら回しています。まだエリアによってアプリへの理解度や熱意が違うので差はありますけれど。
DearOne 二ノ倉|
全国の店舗と連携するのはかなり大変かと思いますが、具体的にはどのように行っているのでしょう。
ジーフット 高松様|
ベースの施策、例えば「何%オフクーポン」などをメニューとして用意しており、その中から選んでもらい、期間を指定して依頼を受ける形をとっています。オリジナルの提案を受けることもありますが、ある程度はテンプレート化されており、アプリ上で運用しています。今日もスケジュールされている施策は23個あります。
DearOne 杉本|
店舗に選んでもらっているのですね。店舗の方たち自身が運営に携わることのできるアプリだからこそ、店舗でのアプリダウンロード数がとても高くなっているのかもしれませんね。
ジーフット 高松様|
店舗が販促企画に参加できるようになったことは、今までと大きく異なると感じています。細かく施策が打てるようになった分、店舗のスタッフも自ら考える必要が出てきました。本部から依頼されたことへ創意工夫をして自主的に取り組む環境作りに、店舗スタッフたちも踏み込めるようになったかなと思います。
ただ、これはまだ限定的な取り組みで、積極的に参加しようとしてくれている店舗はまだ少ないので、進化していくと、もっと店舗のスタッフも参加できるようになるのではないかと思っています。

雑談ベースで施策・分析を繰り返し、高速な成長を実現
DearOne 杉本|
店舗ともコミュニケーションをとりながら、個別の施策を行い、アプリとマーケティングの両方を高速でグロースされています。なぜ2名体制でこの成長速度を実現できているのでしょうか。
ジーフット 高松様|
現在はデジタル領域についてかなり自由にやらせてもらえています。現状は、まだ分析を細かく行うフェーズではないため、色々と考えすぎずにアイデアを試していることがスピード感につながっていると思います。
DearOne 杉本|
なるほど、詳細な分析から施策を行おうとするとどうしてもスピード感が遅くなるので、アイデアベースでとにかくやってみるということですね。ジーフット様はMoEngageで実施した施策のデータをAmplitudeに連携することで、より深い洞察を得る仕組みを構築されています。
この連携により、プッシュ通知やアプリ内メッセージの効果を詳細に分析することが可能です。また施策の効果だけでなく、施策後にコンバージョンしたユーザーとしていないユーザーの行動傾向を把握し、施策精度の向上に繋げていらっしゃいます。そういった点でも素晴らしいアクションを行われていると思います。
ジーフット 高松様|
今回MAツールと分析基盤を同時に二つ入れたのも大きかったと思います。仮にMoEngageだけを入れていたら、多分MAツールとして施策の発射台に使ったところで満足してしまっていたと思います。分析がもっとおろそかになっていたと思いますし、Amplitudeが分析基盤として別にあるがゆえに、使わないともったいないなと思えますので。ちゃんと連動しているのも良い点です。
DearOne 杉本|
そうですね。MAツールにも分析機能が付いていることは多いですが、やはり深い分析はなかなか難しいです。Amplitudeはユーザーの行動体験を深掘りするために作られているようなツールなので、このふたつがうまく合致すると深い示唆が出ますね。
ジーフット 高松様|
活用する中で出てくる疑問については、全部自分で調べてやっていこうと思うとなかなか難しいですし、わからないと思ったらDearOneの皆さんに問い合わせができる体制なのが助かっています。
そういうところでつまずいたときに、結局使わなくなっちゃうってことは往々にしてあるので。使い続けられているのは、その体制の部分も大きいと思います。

DearOne 二ノ倉|
施策を打って、データを見ていると様々な気付きがあると先程もおっしゃっていましたが、そのような分析はお二人でデータを共有して話し合ったり、示唆出しをなさっているのですか?
ジーフット 高松様|
私たちはオフィスで横並びに座っているので、常に話しながらやっていますね。お互いにこれってどうなんだろうねと言われたら、ちょっと見てみようかみたいな形で。
DearOne 二ノ倉|
簡単にデータ分析ができて、話も一気に進みそうですね。一般的にデータ分析の部分で進捗が止まる方も多いと思いますので。
ジーフット 高松様|
そうですね。雑談ベースでの議論のおかげでスピード感はさらにあがりますね。
現場に立つことで得るデジタルマーケティングのヒント
DearOne 杉本|
日々打ち出す施策や改善案は、どのようにして発想しているのでしょうか。
ジーフット 高松様|
そうですね、弊社のマーケティング部は交代制で週に1回、関係する場所のリサーチに出かけるんです。月に2回は店頭にも立ちます。これが実際にユーザーの行動を、Webだけではなく店頭も見て想像するため、いろいろなことを思いついて考えるきっかけになっているかもしれません。完全にEC専門の会社だと店頭は見に行かなかったりするでしょうし、Webも店頭も両方見ることはASBeeのデジタルマーケティングにとっては重要だと思います。
DearOne 杉本|
ありがとうございます。
では最後に今後の展望についてお聞かせください。
ジーフット 高松様|
まだ店舗のユーザーがECで買う率が低いので、そこを増やしていきたいです。それで店頭の売り上げも下がらないように相乗効果を作りたいですね。
店頭では足を置いていただくだけで正確なサイズ・足底圧・重心が同時に計測できる足形計測器を置いており、今後はそういったデータもECに連動させ、接客や商品とデータも紐づいた形で活用できるようになれば、アプリも含めてよりパーソナライズした形でユーザーへのアプローチを行えるようになります。
DearOne 杉本|
店舗とECとアプリと、全体の連動がキーになってきそうですね。
ジーフット 高松様|
ECもアプリも含めて、行動ベースでユーザーの動きや感情を捉えていきたいと思います。クーポンも今のところ店舗別までしかやっていないので、その中でさらにユーザーを細かくセグメントしたような施策もできるようにしていきたいですね。
