
「1つのインサイトに1ヶ月。それが、数分に変わった」
SQLを書けるチームが、なぜプロダクト分析ツールAmplitudeを選んだのか。株式会社アンドエスティHDグループの株式会社アンドエスティが運営する公式WEBストア「and ST」は、行動データを共通言語に、分析で得たインサイトを売上へ変える仕組みを作り上げました。
株式会社DearOneは、「and ST」のさらなる顧客体験向上を目指し、プロダクト分析ツールAmplitudeの導入・活用支援を行ってきました。
公式WEBストア「and ST」は「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」をはじめとするバラエティ豊かなブランドが集結し、ファッション、コスメ、フードなど多岐にわたるジャンルを展開するPlay fashion !プラットフォームとして成長を続けています。
アパレル業界では、トレンドや商品への深い知見、担当者の勘と経験も大切な判断軸のひとつです。「and ST」チームはその強みを持ちながら、Amplitudeで行動データという新たな共通言語をもとに、分析で得たインサイトを売上へつなげる仕組みを作り上げました。
その道のりを、データ分析・改善サイクルのリーダーを務める平田様、Web接客担当の藤田様、MA配信・レコメンド担当の丸山様の3名にお伺いしました。
特筆すべきは、「and ST」がSQLを書けるチームだということ。それでも彼らは、データを「出す」作業に時間を奪われていました。クエリを書く時間を、出てきたデータを読み解き施策に変える時間へ。Amplitudeがもたらしたのは、その重心の移動でした。
導入前の課題
- SQLで特定イベントを仮定しながら分析するしかなく、1つの示唆を得るまでに1ヶ月以上かかることも
- 社内BIでは「何が売れたか」はわかっても、「誰がどのように買ったか」という行動レベルの把握ができなかった
導入後の効果
- 大量の行動イベントを探索的に確認できるようになり、仮説検証のスピードが大幅に向上
- 行動データをチームの共通言語にした議論が生まれ、分析が特定メンバーに依存しない体制に
- インサイトに想定GMVとスコアを付与し、ユニット内で実験・評価してから開発へ連携する改善フローを構築
- AIエージェントの活用で、分析専門職以外のブランド担当者も数値変化の要因を自ら把握できるように
2170万人以上が集まる「and ST」、データと現場をつなぐチーム
DearOne 杉本|
Amplitudeを導入いただいたサービスと、担当領域について教えてください。
アンドエスティ 平田様|
公式WEBストア「and ST」にAmplitudeを導入しています。お客様との接点から改善までを行うデジタルコマース事業部に所属し、その中でデータ分析、そしてインサイトを発見して改善サイクルを回していく領域のリーダーを務めています。
アンドエスティ 藤田様|
CRMの打ち手のひとつとしてWeb接客の運用と改善を回しつつ、施策に繋げるためのインサイト検証にAmplitudeを活用しています。
アンドエスティ 丸山様|
CRM領域の中で、MA配信とサイト内のレコメンドというパーソナライズの2領域に携わっていて、施策を打つための仮説出しにAmplitudeを活用しています。
DearOne 杉本|
本日は、よろしくお願いいたします。
SQLで戦えるチームだからこそ見えた、「データを出す」作業の限界
DearOne 杉本|
導入から1年半が経過しておりますが、当時Amplitudeを導入された背景についてお聞かせいただけますか?
アンドエスティ 平田様|
and ST自体の規模も大きくなり、小さな改善を積み重ねるフェーズに入っていました。「売れるものを前に出せばいい」という単純な運用ではなく、「レコメンドをどう改善していくのか」「シナリオ配信はこれでいいのか…」といった、より細かい分析と改善を繰り返していく必要がありました。
そのために、「誰が、どの商品を買ったのか」という、いわば「人が物を買った」という結果の粒度だけではなく、どう買われたのか、web上でどう行動したのかを把握することが重要になってきました。
DearOne 杉本|
より細かいユーザー理解が必要になってきたんですね。
アンドエスティ 平田様|
はい、Amplitude導入前、社内のBIツールで見られるデータは「どの部門で、どの商品が、どれくらい売れたか」の数値まででした。「誰が、どこで、どのように買ったか」という具体的な行動までは見えず、それを知るためにはクエリを書くしかない状況でした。
そんな中、データ自体がとても重くて、見たいものに辿り着くまで時間がかかってしまう。さらに、SQLを書くこと自体のハードルも高くひとつの示唆を出すのに時間がかかる——と、各メンバーに「やりたいのに、できないこと」が積み重なっていました。
DearOne 杉本|
そもそもSQLをみなさんが書けるチームというのもすごいですよね。当時、ひとつの分析の示唆を出すのにどのくらいかかっていましたか?
アンドエスティ 藤田様|
かなり時間がかかっていました。「このクエリで本当に合っているのか?」と手探りで分析をすることもあり、インサイトを見つけるまでに1ヶ月以上かかることもありました。
DearOne 杉本|
Amplitudeを導入されてからインサイトを得るまでのスピード感はどのように変化しましたか?
アンドエスティ 平田様|
数分でインサイトを得られることもあり、SQLを手で書いていた頃ではあり得ないスピード感で分析が進められるようになりました。
Amplitudeは、データを横断的に探索できるため「まず仮説を固定する」必要がなく、かなり分析スピードが上がったと思います。
例えば、F2転換(初回購入者のリピート購入)の分析では、「この行動が直接リピート購入につながった」と単純に言い切れないケースも多くあります。ただ、SQLベースで分析を進める場合は、「きっと『お気に入り閲覧』をした人がリピートしているのでは」というように、特定の行動を仮説として置き分析を組み立てていく必要があります。
その仮説が外れると、クエリの修正やデータを再集計して、「また最初からやり直しか」となることも少なくありませんでした。
DearOne 杉本|
SQLを書ける企業様に導入いただいて喜ばれるのが「探索的にデータを見に行けるようになった」という点なので、フラストレーションはそこなんだなと感じます。
アンドエスティ 平田様|
Amplitudeでは、特定の中間イベントを事前に決め打ちする必要がなく、まずは幅広くイベントデータを見ながら柔軟に分析を進められます。よく利用されている行動を起点にデータを探索できるので、従来のSQLベースの分析とは、データの捉え方そのものが大きく変わりました。
クエリを書く時間を、施策を考える時間に。
SQLベースの分析から、”見たいデータに数分で辿り着く”探索的な分析へ。
Amplitudeでできることを、資料にまとめています。
「オムニ化」を追ったからこそ見えた、チャネル内定着という次の課題
DearOne 杉本|
導入から1年半ほどが経ちましたが、行動データ分析を進める中で、新たに得られた気づきはございますか?
アンドエスティ 平田様|
導入当初は「オムニ化(リアルとECの両方で購入)」を促進するための分析を行っていましたが、DearOneさんの分析支援を受けながら分析する中で、各チャネル内の活性化がまだまだ追いついていないことが見えてきました。
例えば、ECのユーザーをEC内でF2(2回目の購入)してもらうとか、店舗のユーザーを店舗の中でF2してもらうとか、まずそれぞれのチャネルでの定着を促す動きを最優先に戦略を転換しています。
DearOne 杉本|
どのような分析結果から戦略を変更されたのですか?
アンドエスティ 平田様|
全ての店舗で一律にオムニ化を進めるのではなく「こういう店舗はオムニ化しやすい」という傾向が見えたのは、個人的にも新鮮な示唆でした。
郊外店舗はオムニ化しやすい一方で、繁華街や駅直結型の店舗はそこまで高くないという傾向がありました。郊外モールは来店自体がルーティン化しているのではないかと考えています。
DearOne 杉本|
「どの店舗でも同じように施策を打てばいいわけではない」というのが見えてきたんですね。
アンドエスティ 平田様|
そうですね。アパレル業界全体に共通すると思いますが、今リアル店舗への集客が課題になっている中で、リアル店舗集客を別チームで考えているところでした。
その中で、郊外店舗のほうが広告効果を出しやすいかもしれないといった会話に発展していき、「まずはチャネルごと・店舗ごとの特性を踏まえて体験を最適化することが重要なのではないか」という考え方に変わっていきました。
💡導入当初のお取り組みについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:アダストリアのECサイト「and ST」が見据えるスピーディーな行動分析から顧客体験価値の向上へ|Growth Summit 2024セッションレポート
データ分析が導いた、インセンティブ頼みからの脱却
DearOne 杉本|
この1年半Amplitudeを活用して、施策の発想にも変化はありましたか?
アンドエスティ 丸山様|
以前は示唆が見つかるとそれを促すインセンティブを付与することが多かったと思います。具体的には「お気に入り登録したら良さそうだ」となったら「お気に入り登録したらインセンティブを付与するキャンペーンをやろう」という感じです。
ですがAmplitudeでは「お気に入り登録しやすい人はどういう行動をしているのか」まで見られるため、その行動を見つけることができれば、まずはその行動を促す施策をするという発想に変わりました。
インセンティブの前に、お客様に自然にやってもらえる動線設計ができればサイトとしても健全です。イベントを見ることで打ち手が一つ増え、思考回路が変わったと思います。

DearOne 杉本|
仰る通りECサイトはクーポンで行動を促しがちです。分析支援を通じて、サイトの動線を変えるなどUI/UX改善の選択肢が増えたとおっしゃっていただけて非常に嬉しいなと思いました。
アンドエスティ 平田様|
あと、DearOneさんの分析支援を通じて、「示唆の中身」自体はもちろん、「分析の進め方」にも大きな学びがありました。2〜3ヶ月の間で何度も「分析の型」を見せていただけたことで、私たち自身でもその型を使って他の分析を再現できるようになっています。
実際に10〜12件ほどのインサイトをいただき、それぞれにスコア付けまでしていただいたため、優先度を判断することができ、スムーズに開発への起票・依頼に繋げることができました。
一方で、インサイトの量が多く、開発対応が追いつかず案件を溜めてしまうこともあったため、改善フローの仕組み構築という課題も見つかりました。
インサイトを売上に変えるための改善フロー構築
アンドエスティ 平田様|
そんな中で自分のチームを見つめ直したとき、私たちのチームにはオンライン接客の手段が包括的に備わっています。さらに社内でA/Bテスト推進の動きがあるからこそ、即座に施策を実行できる環境が整っているのは大きなメリットだと思いました。
今期は、まずAmplitudeを使ってインサイトを発見する。それに対して想定のGMV(流通取引総額)を付け、インパクトが大きい順に並べ、持っている手段で実験、そして評価する。一連のサイクルを「私たちチームの働き」にしようと決めました。
DearOne 杉本|
一気に仕組み化を進めているんですね。
アンドエスティ 平田様|
今までは「インサイトでスコアが高い」程度の解像度で開発へ進めていたものを、今後は「インサイトのスコアが高いもので実験・評価した結果、年間でこれぐらいのGMV(流通取引総額)が見込めます。だからこれは『勝ちチケット』です」という粒度で開発に上げる流れに変えました。
インサイトを売上に変えることを具現化するためのアップデートです。
DearOne 杉本|
社内向けの説得力も変わりますよね。
インサイトのスコアや実験評価はどのように管理、共有されているのでしょうか。
アンドエスティ 平田様|
Backlogで管理しています。1インサイトを1案件として起票していくことにしていて、中身もテンプレート化しています。インサイトフェーズ、実験フェーズ、評価フェーズを1枚に書いているので、誰が開いても埋めていくだけで、その案件を起票できます。
DearOne 杉本|
とても参考になる動きですね。まだアクションにつなげられていないインサイトも、Backlog上で管理できているイメージですか?
アンドエスティ 平田様|
はい、管理できるようにしました。まずインサイトで分析したタスクに対してGMVを記入しています。スコアも書くようにしてるので、スコア順に並び替えることもできます。
最終的に勝ちチケットになったら、想定GMV、純増GMVの欄を埋めるルールにしています。完了チケットのうち、GMVが埋まっているものを全部開発側へ渡すべきチケットとして「見える化」できる仕組みになっています。
Backlogが、普段社内で根付いてるツールだったため、開発への受け渡しも相当楽になりました。

DearOne 杉本|
開発はすでにそれだけ埋まっていれば、インプットも早いでしょうし良いサイクルですね。
アンドエスティ 平田様|
はい。誰が見てもわかるよう、今期どれくらいの案件を起票するかも目標値として立てており管理しやすいようになっています。
AI活用で、ブランドの現場も要因分析に近づく

DearOne 杉本|
Amplitudeの新機能「AIエージェント」もご活用されているとうかがっていますが、いかがでしょうか。
アンドエスティ 藤田様|
私がAmplitudeを使って分析し始めたのが直近2〜3ヶ月ほどですが、AIが入ったことですごく分析に着手しやすくなったと感じています。
直近ではブランド担当者向けに振り返りや分析用のダッシュボードを作ったので、AIの使い方と合わせてブランド側に展開しています。
今までは、数値の変化などに違和感を感じても要因がわからなかったメンバーが多かったですが、「AIに聞けば要因を返してくれるので分析しやすくなった」という声があります。
DearOne 杉本|
ブランド側の方など、データ分析やSQLの知識がない方でも、ある程度の分析ができる状態になっているんですね。
アンドエスティ 平田様|
AIコンテキストにand STの大きなキャンペーンである20%還元施策の日程を全て入れてあり、「最近の変化は?」というざっくりした質問を投げたときに20%還元を踏まえた分析を出してくれ、それを見た担当者も驚いていました。
DearOne 杉本|
Amplitudeが御社内で普及する可能性も大きくなりそうですね。
アンドエスティ 平田様|
まさに今、出店企業さまと向き合う担当チームにダッシュボードを展開していくところです。メンバー全員が使えるようにサポート活動を推進しています。
DearOne 杉本|
AI活用のためにとにかく必要なのは、このコンテキストとイベントの説明文の追加ですので、平田さんを中心に日々ブラッシュアップしていただいてるのかなと思います。
アンドエスティ 平田様|
コンテキストを書く作業はリソース上優先順位が下がりがちですが、Amplitudeがそこもやってくれるというのが衝撃を受けました。0→1ではない点がとてもありがたかったです。
DearOne 杉本|
丸山様は施策の前段階でのインサイト取得などに活用されているというお話でしたが、AIエージェント活用で何か変化はございましたか?
アンドエスティ 丸山様|
今は分析の過程、例えばどんなチャートが必要かというところからその具体的なチャートを作るところまでを高速化できています。その先の具体的な施策提案までAIに踏み込んでもらえるかは、これからまさに試していきたい領域ですね。
DearOne 杉本|
御社のアクションの背景をインプットしておくとより多くのアイディアが出てくるので、そこからさらに丸山様の感性と経験で良いインサイトを導いていただければと思います。

「使えば使うほどROIが出る」Amplitudeの行動分析を事業部全体へ
DearOne 杉本|
実際にご活用されている中で、Amplitudeをおすすめしていただくとしたらどのような企業様に有用でしょうか。
アンドエスティ 平田様|
GA4(Googleアナリティクス)を活用している企業におすすめしたいです。
個人的にはGA4は、難易度や専門性の高いツールと感じているので、ファネルなどチャートを出すならAmplitudeの方が圧倒的に簡単だと感じています。
また、ユーザーの行動の転換を知りたいという課題をお持ちの企業にはぜひ入れて試してみてほしいなと思います。
DearOne 杉本|
嬉しいお言葉をありがとうございます。では最後に今後の展望をお願いいたします。
アンドエスティ 平田様|
インサイト発見から評価に至るまでの部分で、Amplitudeを活用する仕組みは構築できたので、今後は活用の拡大に向けた展望を描いています。
まだまだ使いこなせていない機能もたくさんあります。例えば、AI visibility(AIに発見されやすくする機能)は社内ではすごく興味を持ってもらえます。現状、AIに拾われにくいサイトやLP設計になってしまっているので、AI visibilityを使ってAIに発見してもらえるようなページの構成をマーケティング部と組んでいきたいなという構想を練っています。
また、A/Bテストの仕組みが整えば、テストデータを連携して、外部要因の分析を売上と紐づけて考えられるように拡大していく予定です。
使えば使うほどROIが出るツールだということを実感し始めているので、事業部での活用を推進していくための構想を描いています。
DearOne 杉本|
本日は貴重なお時間をありがとうございました。

【DearOneの分析支援について】
DearOneは、Amplitudeの導入支援にとどまらず、お客様のデータを用いた実践的な分析支援を提供しています。「and ST」のプロジェクトでは、2〜3ヶ月にわたり分析の「型」を繰り返し共有し、お客様自身が再現できる状態を目指しました。さらに10〜12件のインサイトに想定GMVとスコアを付与し、優先順位をつけた開発連携まで伴走。「ツールを入れて終わり」ではなく、インサイトを売上に変える仕組みづくりまでをご一緒します。
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