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ニップン ファンを幸せにしながら事業を成長させる方法|マーケターの集い 2Days Camp -Under34-

2024.03.29

コミュニティを作るうえで忘れてはいけないこと

株式会社Asobica 事業推進室/室長 佐藤 頌太氏
株式会社Asobica 事業推進室/室長 佐藤 頌太氏

Asobica 佐藤氏|
今日のセッションを進行する、株式会社Asobicaで事業推進や事業戦略などに携わっている事業推進室長の佐藤と申します。本日はよろしくお願いいたします。

「ファンを幸せにしながら事業を成長させる方法」ということでセッションを始めるに際して、改めて、ファンの方々とは企業にとってどんな存在なのか? 逆にファンが企業やブランドに求めていることは何だろうか?ということを少し考えてみたいと思います。

お客様がブランドに求めるものは本当に様々

私たちはコミュニティを運用している会社ですので、多くのファンコミュニティに携わっています。その中で、ファンが企業に求めていることはコミュニティによって大きく違うと感じています。たとえば、「好きな商品をお勧めすること自体がすごく嬉しい」という方もいらっしゃるし、「商品にすごく詳しくなって蘊蓄を語りたい」というお客様もいらっしゃいます。「ブランドに対して意見を言ったり商品開発に関わりたい」という方もいますし、「自分の好きな商品を使っている仲間と使い方を共有したい、語り合いたい」という方もいます。

お客様がブランドに求めていること、かつ、ブランドが事業成長に活用できるところ、その掛け算をうまく見出して固めていくこと、これを私たちは「共創」と呼んでおり、マーケティングで今すごく重要なことだと考えています。

セッションでは、この「共創」について話していきますが、共創、そして、ファンコミュニティづくりを考える時に忘れてはいけないと思っていることをお話しします。

ファンの方々というのは、既に売上や宣伝効果としてすごく大きな貢献をされているはずです。だからこそ、コミュニティを始めるにあたって、コミュニティは「ファンを大切にする場所」ということを絶対に忘れてはいけないことだと思っています。

ただし、同時にどれだけ心優しい経営者やマーケターであったとしても、ファンサービスやコミュニティ運営をKPIなしで運用するわけにはいかなことも事実だと思います。

だからこそ、今回のタイトル「ファンを幸せにしながら事業を成長させる」の通り、ファンの方々に心地よい場所を提供しながら、事業を成長させる、ないしは事業貢献成果を定量として出していくことに私たちはこだわっています。

顧客中心の経営を実現するAsobicaとcoorum

Asobicaは現在7期目、いまのコミュニティ事業をはじめて4年になりますが、設立当初、雑居ビルの一部屋で会議室もなかったところから成長させていただいたスタートアップ企業です。

Asobicaは「顧客中心の経営をスタンダードにする」というビジョンを掲げています。

事業を運営する中で、商品を作って、プロモーションをして、買ってもらうことをゴールにするのではなく、「買っていただいたお客様を中心に事業を伸ばす」ということを当たり前にしたい。コミュニティやファンづくりも施策として1回やって終わりではなく、永続的に取り組んで事業を伸ばしていく。それをマーケティングや経営のスタイルとする会社を増やしていくことが私たちのビジョンです。

「顧客中心の経営」をどう定義しているかというと、私たちはコミュニティのサービスをやっていますので、コミュニティの中でお客様の声、体験、データなどを収集して、マーケティング施策に反映する。それを通じて、LTVを向上させる、ロイヤル顧客と共創するという循環を作っていくスタイルだと考えています。

顧客中心の経営とは

これまでお話ししたことが私たちがやりたいビジョンですが、マーケティング環境としても「顧客中心の経営」が必要な時代になっていると思っています。

顧客中心の経営が必要な背景

簡単に言えば、日本はいま人口が減っています。一方で、物やサービスを作ることは簡単になって商品数は増えています。つまり、市場が減少するなかで競合が増えています。その中で、自社の商品やサービスを選ばれるブランドにしていくことが非常に大切になってきます。

コロナ禍以降、衝動的な購買が減ったことも「指名される」ことの重要性を後押ししています。また、パレートの法則で知られる通り、一部のロイヤルユーザーが売上の多くを支えている事実もあると思います。こうしたことも踏まえて、ロイヤルユーザーを中心とした経営の重要性が増していると思っています。

そして、ロイヤルユーザーを中心とした経営を実現するためにAsobicaが提供しているのが「coorum(コーラム)」というサービスです。

coorum

コミュニティを作るcoorumコミュニティ、また、リサーチ機能であるcoorum research、集めたデータとクライアントが保有するデータを統合・分析してロイヤル顧客の育て方が分かるBIツール、coorum insightといったプロダクトで構成されていますが、まずはコミュニティの事業ということで覚えていただければと思います。

coorumは今日事例を紹介いただくニップンさんも含めて、多くの企業に導入いただいています。

コミュニティを事業成果につなげるステップとは?

ここでコミュニティの成果は何かということを考えてみたいと思います。一般によく言われるのは、顧客の声(VOC)が取れます、ユーザー生成コンテンツ(UGC)が生まれます、そしてLTVが向上しますというものです。

一般的に考えられているコミュニティによる事業貢献成果

書いてあることはその通りなのですが、一方で現実的にはすべての企業が自社のコミュニティに大量のユーザーを集められるわけではありません。

そこで私たちは、「コミュニティで得られる価値」を顧客データと顧客の声という2つの軸で、合計4つに分類して捉えています。

コミュニティで得られるアウトプット

まず顧客データは、一般顧客とロイヤル顧客の違い、たとえば、両者のサービスの使い方の違いといったデータです。また、コミュニティを通じて一般顧客がロイヤル顧客になった時に何が起きていたかというデータも取ることができます。これらがあると、マーケティングをやりやすくなります。

次に顧客の声ですが、顧客の声は定量と定性に分けて考えられます。定量データは、投票やリサーチ結果、コンテンツへのエンゲージなどです。定性データは、アイデアやフィードバック、また批判意見といったものです。

コミュニティから事業貢献成果を創出するうえで大切になるのは、まずコミュニティサイトです。

コミュニティで事業貢献成果を創出するための活動イメージ

コミュニティサイトにユーザーが登録して、アクセスし、アクティビティが溜まっていく中で、先ほどお伝えしたような顧客データや顧客の声といったアウトプットが蓄積されていきます。

それを事業上の業務課題やミッションにどう活用できるか、言い換えれば、コミュニティを使って業務改善をどれだけできるかが成果を生み出せるかのポイントになります。だからこそ、私たちはコミュニティで獲得するアウトプット(顧客の声やデータ)を業務プロセスや業務改善にどう活かすかに非常にこだわっています。

成果創出の方向性

業務改善への活かし方はスライドのようなイメージです。基本的に企業の各部門というのは、お客さんにどんな商品を提供したら良いか、どう見せたら良いか、どう相手に伝えたら良いかを考えて、決めて、やってみて、振り返るというサイクルを回しています。

そして、サイクルを回すなかで、必ず「お客さんってどう思うのだろう?」が気になる瞬間があります。その時に顧客データや顧客の声を活かすことで、PDCAを早く、安く、精度を高めて回すことができます。

コミュニティからの成果創出事例【すかいらーく(しゃぶ葉)】

アウトプットの活かし方ですが、ニップンさんに登壇いただく前に、すかいらーくさんの事例を少しだけ紹介します。

すかいらーくグループの「しゃぶ葉」というブランドはご存じでしょうか? しゃぶしゃぶ食べ放題のブランドで、ランチだと1,000円台で食べられるぐらいコストパフォーマンスが良い店です。最近はPRも非常にうまくいってテレビなどでも露出されていますが、「しゃぶ葉」さんでは、Asobicaのサービスを導入してコミュニティを運営されています。

すかいらーく(しゃぶ葉)事例

「しゃぶ葉」さんのコミュニティ「おやさい学校 しゃぶしゃ部」は少し面白くて、入部試験みたいなものが用意されており、入りたい人全員が入れるわけではありません。いま2期生を集めているんですが、テストを受けて100点を取った人しか入部できませんという形で、100人ぐらいしか合格していません。

「しゃぶ葉」さんはメーカーと違って、飲食店ですので目の前にお客様がいるわけです。ただ、店舗はばらばらに存在しており、マーケティング本部の人からすればお客様の食べ方は分かりません。

そこでコミュニティを作り、コミュニティの中でお客様と交流することで、「今日はどういう風に楽しみました」「しゃぶ葉に行くときは、こんなことを考えています」といった顧客体験データをお客様に教えていただいたりして、アウトプットを収集しています。

当たり前の話ですが、飲食店を経営するうえではリピーターを増やすことがとても大切です。しゃぶ葉さんがリピーターを増やすためにコミュニティでやっている施策がこちらです。

すかいらーく(しゃぶ葉)事例

コミュニティの中で「しゃぶ活」報告として、皆さんが楽しみ方や「しゃぶ葉のこんなところが好き」といった話を投稿してくれるので、それを顧客の利用頻度別に集めて比較・分析するということをやっています。

ニップンさんも同じ活動をしていて後ほど紹介いただけるので詳細は割愛しますが、分析していくと超ロイヤルユーザーだけがやっている楽しみ方といったものが見えてきます。そうすると、「これを一般ユーザーや離脱ユーザーに広めていくことで、リピートや復活してもらおう」という施策につなげることができます。

すかいらーく(しゃぶ葉)事例

また、私たちはクライアントの業務プロセスを分解して、どこにコミュニティや顧客の声、顧客データを活用できるかという業務改善提案も無料で提供しています。

すかいらーく(しゃぶ葉)事例

上のスライドは商品開発プロセスを大雑把に分類したものです。すかいらーくさんの場合、コロナ禍以降、予算が取れず、顧客調査などが出来なくなっていました。

結果、メニュー開発の流れとして、たとえば、商品のアイデアを1回社内会議で出して、ブランドリーダーが整理して、ネットサーベイをかけてスコアリング。良かったものを実際にプロダクトを作って写真とかにして、もう1回ネットサーベイをかけて、50人ぐらいの試食テストを他社に依頼して実施して、6人ぐらいの声を聞いて修正して・・・といった流れで商品開発を実施されています。

ただ、本来リピーターを増やしたいわけなので、「リピーターの方々が喜ぶか」という基準でメニュー開発を判断したいところですが、予算がないので出来ない。判断軸が社内の感性やネットサーベイといったランダム要素が入ってしまっていました。

これを「コミュニティで収集できる顧客の声や顧客データといったアウトプットをこう活かしましょう」と業務改善したところ、コストカットの実現、今まで例えば6ヶ月程かかっていた期間が4ヶ月で出来るようになった、意思決定の質もあがって売上も上がったという結果になりました。

主な取り組み

実際に新しいフローに変えて開発したフェアメニューの売れ行きを、以前のフローで開発したフェアメニューと比較してみると、売上で5倍ぐらいになっているという成果が出ています。コミュニティを活かした商品開発の業務改善における非常に優れた事例です。

ニップンアマニコミュニティの取り組み

Asobica 佐藤氏|
ここまでコミュニティの価値や事例をお伝えしてきましたが、ここからはニップンの大橋さんに登壇いただき実際の事例を詳しく紹介していきます。よろしくお願いいたします。

ニップンアマニコミュニティの取り組み
株式会社ニップン 加工食品部  大橋 佳奈氏

ニップン 大橋氏|
株式会社ニップン 加工食品部の大橋と申します。普段は調査・分析を基に営業や開発のサポートを行っています。本日はよろしくお願いいたします。

株式会社ニップンは創業128年を迎える総合食品メーカーです。以前は日本製粉という名前でしたが、2021年にニップンになりました。事業カテゴリーはパスタ・ソース、小麦粉、冷凍食品、健康食品等多岐に渡ります。

今回紹介するコミュニティ「ニップンアマニ コミュニティ」は健康食品分野の「アマニ」に関するファンコミュニティとなっております。じつはニップンは、2003年からアマニを販売している”アマニのリーディングカンパニー”で、アマニを扱いはじめてから昨年で20周年を迎えました。

アマニについて|概要説明

アマニ(亜麻仁)というのはアマ(亜麻)という植物の種子(仁)です。その種子を搾って作ったのがアマニ油になります。

アマニ油には、必須脂肪酸のα-リノレン酸が豊富に含まれています。これは青魚等に含まれているDHAやEPAといったオメガ3の一種で、血圧や悪玉コレステロールを下げる効果があります。

アマニについて|推奨量

α-リノレン酸の成人一日当たり摂取目安量は1.6〜2.2グラムなのですが、実は、マグロの刺身に換算すると75切れ分に相当します。しかし、アマニ油であれば、小さじ1杯で一日分を補うことが出来るのでとてもお手軽なのです。

Asobica 佐藤氏|
コミュニティでの取り組みを理解しやすくするために、アマニの市場やニップンさんのアマニ商品について伺っていきたいと思います。

まず、アマニの市場について教えてください

ニップン 大橋氏|
主軸の商品はアマニ油で、当社が発売を開始した頃は、国内市場はほぼゼロでした。2015年頃に、ココナッツ油がけん引した健康油ブームで市場が一気に拡大し、大手企業も参入しました。

さらに2018年頃にもメディアで紹介され、再び拡大しましたが、現在はやや落ち着いている状況です。

Asobica 佐藤氏|
ニップンさんのアマニの特徴、他社との差別化ポイント、また商品ラインナップについて紹介いただけますか。

ニップン 大橋氏|
当社のアマニ油は、α-リノレン酸が豊富なカナダ産のゴールデン種を100%使い、コールドプレス製法で丁寧に搾油、精製することで、クセのない味わいになっています。

中でも「アマニ油効果」という商品は機能性表示を取得しており、 「悪玉(LDL)コレステロールを下げる」「血圧が高めの方の血圧を下げる」といった効果があります。

当社はアマニのリーディングカンパニーとして商品化に注力しており、アマニ油、アマニ粒、アマニ粉末、アマニ油入りマヨネーズ、アマニ油入りドレッシング等を展開しております。

Asobica 佐藤氏|
ここでコミュニティの話に入れればと思います。まずニップンさんがアマニ事業でコミュニティを始めた理由ですが、私がコミュニティを提案した背景を簡単にまとめました。

コミュニティを始めたきっかけ

ニップンさんに限定した話ではありませんが、BtoCの製造業の場合、流通・小売を経由してお客様に届くため、実は消費者の顔が意外と見えづらくなっています。

自分たちの商品をどう楽しんでもらっているのかが意外とつかめない。また、様々な販促施策を実施して「こういう風に使って欲しい」と提案したことが顧客に届いて態度変容や行動変容につながっているのか分からない。更にロイヤル顧客を増やすためには利用頻度をあげるような提案をしたい。でも、実際のロイヤル顧客はどんな使い方をしているか分からない。こういったことはありませんか?

また、先ほどお伝えしたようにロイヤル顧客になった瞬間が分かれば、いろいろな施策のヒントが得られるかも知れない。販促予算が限られる中で、顧客のインサイトを理解する上で、顧客の体験が見えれば役に立つのではないか? と考え、コミュニティ施策を提案させていただきました。

コミュニティを始めたきっかけ

提案内容をキャッチーに表現したのが、まず「隣の会議室にファンがいる環境を作る」です。コミュニティを通じて、いつでもファンに質問できる状態ということですね。

コミュニティを始めたきっかけ

そして、2つ目に「消費者同士の交流から顧客の利用インサイトを掴みたい」です。企業からのリサーチではなかなか聞けないようなインサイトが、消費者同士の交流などのデータを分析すると取れるんじゃないですか? データを活用することで「顧客不在会議からの脱却」をしませんか? ということで提案しました。

大橋さん、改めてご覧になっていかがですか?

ニップン 大橋氏|
書いていただいた通りです。BtoCのメーカーはどこもそうだと思いますが、お客様が見えない状態で社内会議をするという環境に課題がありました。参加者の勘と経験で決めていく状態だと、成功しても再現性がありません。そういった部分もファンコミュニティで改善できるのではないかと考えました。

Asobica 佐藤氏|
ニップンアマニコミュニティですが、2024年の2月でちょうど開設して1年になります。Asobicaのサービスを使って立ち上げていただき、このようなコミュニティサイトになっています。登録者限定での公開になっていますので、ご覧になりたい場合は登録ください。

コミュニティでの取り組みをすべては紹介しきれませんが、いくつかピックアップして紹介をお願いできればと思います。

【成果①】ロイヤルユーザーの解像度が格段に向上

ニップン 大橋氏|
まずは、「アマニ継続チャレンジ」です。アマニ継続チャレンジは、コミュニティの中でも一番活性化しているコンテンツです。アマニに限らず何かを継続することは、非常に難しいですが、その継続の後押しをするコンテンツとなっています。

「今日でアマチャレ何日目、今日はこんな食べ物にかけました」ということを投稿いただいていて、自身の記録として投稿される方もいますし、コメントで「今日で何日目ですね、おめでとうございます!」と励まし合い、“仲間がいる”ということが継続のモチベーションになっている方もいます。数日前には365日継続を達成した方が2人いらっしゃって、達成した際にはコメント欄が祝福の声で溢れました。

Asobica 佐藤氏|
アマニは日々の摂取が重要ですし、もちろん購買サイクルも早くなるわけです。ただ、スゴイのが「トーストにかけました」というだけの投稿に10件のコメントが来ることですよね。普通、毎日やっていたら家族でもコメントはくれなくなりますよね。そこにいつも10件ものコメントが来るのはすごいことです。

ニップンアマニコミュニティはユーザー数が非常に多いわけではないので、「アマニ継続チャレンジで売上効果がいくらあります」ということよりも、「こういう提案をすれば利用頻度があがるんじゃないか」という仮説を持てたことが成果でしょうか?

ニップン 大橋氏|
そうですね。仰る通りです。

Asobica 佐藤氏|
「アマニ継続チャレンジ」は、先ほどのすかいらーくの「しゃぶ葉」さんの事例と同じでロイヤルなお客様に教えていただいていることがすごく多いなと思います。たとえば、アマニ油は普通の油と比べると少し高額なので、美容意識や健康意識が高い人たちが使っているのかなと思っていました。

「アマニ継続チャレンジ」

しかし、コミュニティの投稿を見ると、「今日はアイスにかけました」「今日はカップラーメンにかけました」といった投稿もあったりと、意外とそれだけではないという発見がありました。

ニップン 大橋氏|
実はニップン内でも、アマニ顧客のペルソナがハッキリと描けていなかったです。ただ、コミュニティでユーザーさんの投稿を見ることで、ロイヤルユーザーの解像度が格段にあがりました。カップラーメンにアマニ油をかけるロイヤルユーザーがいるとは、事前には思ってもいなかった部分です。

Asobica 佐藤氏|
リアルな生活習慣が見えると、解像度がぐっと上がりますね。

ロイヤル顧客に教えてもらったこと

しゃぶ葉さんの事例でも簡単に紹介しましたが、ユーザーの利用頻度別に「アマニ継続チャレンジ」の投稿で書かれていることを分析したのがスライドのデータです。分析してみると全然キーワードが違うんですね。

これは私の感想ですが、ニップンさんのアマニのホームページではアレンジレシピをいろいろ紹介していますが、実はロイヤルユーザーになるほど「今日はヨーグルトに入れました」や「今日もサラダにアマニをかけました」しか言っていないんですね。そうすると、実はアレンジを工夫しようとする人ほど継続しにくいとも読み取れるなと思いましたが、いかがですか?

ニップン 大橋氏|
そうですね。そこまで想像と乖離はしていませんが、仰る通り、実際にふたを開けてみるとロイヤルユーザーの方ほどアマニが日常に馴染んでいて、”いつものメニューにかけるだけ”ということが改めてよく分かりました。

Asobica 佐藤氏|
このデータを活用して、コミュニティでテストマーケティングの企画をやってみたという事例があると聞いていますので、紹介いただけますか。

【成果②】コミュニティでのテストマーケティング

【成果②】コミュニティでのテストマーケティング

ニップン 大橋氏|
これは、コミュニティでの投稿数が大幅に増加し、アマニの利用頻度も向上したという結果が得られた企画になります。

元々運営側は、コミュニティを通して、新たな食べ方を発見できるのでは、という期待があり、「アマニを使ったアレンジレシピ募集」という企画をやっていました。ただ、8ヶ月で8件の投稿だけ、と殆ど集まりませんでした。

しかし、先ほどの通り、ロイヤルユーザーの方ほど「日常で普通のメニューにちょっとかけるだけ」という事実が分かったわけです。そして、「投稿のハードルを下げるためにも、敢えて“普段のメニューにちょっとかけるだけ”というのを募集してみてはどうか?」と提案いただいて実施したのが「ちょいかけ図鑑」の企画です。結果は、1ヶ月で147件と非常に多くの投稿が集まりました。

Asobica 佐藤氏|
さらにcoorumの機能を使って、企画の前後で利用頻度を調べてみました。「ちょいかけ図鑑」を見たユーザーの利用頻度を比較してみたところ、「ちょいかけ図鑑」の影響で利用頻度が上がったという結果が出ました。

先ほどお伝えした通り、コミュニティ自体は決して大きなものではないので、これで売上効果がどうこうということではありません。ただ、この結果を商品開発や販促企画に活用していけると考えると、非常に面白い施策になったと思います。

【成果③】前年比120%を実現した顧客の声による気づき

【成果③】前年比120%を実現した顧客の声による気づき

ニップン 大橋氏|
次に紹介するのはアマニ会議という、オフラインイベントです。コミュニティ会員の方5名を招いて行いました。

Asobica 佐藤氏|
いわゆる企業とユーザーの和気あいあいとした交流会というよりも、いわゆる社内会議みたいな雰囲気だったと聞いていますが(笑

ニップン 大橋氏|
「本当にアマニを売りたいんです。助けてください!」みたいな感じで、かなり真剣な会議でした。

【成果③】前年比120%を実現した顧客の声による気づき

会議を進める中で、”ロイヤル顧客が求めていること”と”ニップン側が考えていたもの”が全然違うことが分かりました。この会議でのお声を踏まえて、現在商品のリニューアルを検討しています。

【成果③】前年比120%を実現した顧客の声による気づき

また、販促にも顧客の声を反映しています。上記はアマニ油のパッケージに付ける店頭POPのキャッチコピーを募集した企画です。候補をこちらで作って、会員の皆さんに投票してもらいました。

当社は、当初「α-リノレン酸60%以上」という成分を打ち出したいと思っていたのですが、結果を見ると「小さじ一杯でWの機能」という効果を打ち出した方がいいと思っているユーザーがほとんどでした。

投票結果も踏まえて、機能面を打ち出したPOPを付けて販売したところ、直近3ヶ月の販売数量は前年対比で約120%、店頭での回転もUPしており、ユーザーの声を反映したPOPが売上・購入につながっています。

【成果④】ロイヤルユーザーが生まれるきっかけを知る

【成果④】ロイヤルユーザーが生まれるきっかけを知る

Asobica 佐藤氏|
最後はロイヤル顧客化されるきっかけという話です。冒頭に少し説明した通り、Asobicaでは、coorum insightというロイヤル顧客の状態や生まれ方が分かるBIツールを提供しています。利用頻度が上がったお客様を発見して、その理由を分析して、商品開発や販促に活かしていくことができるものです。

コーラムインサイトの利用

スライドはニップンアマニコミュニティで分析をした結果です。少し分かりづらいかもしれませんが、コミュニティ内で利用頻度アンケートに答えたユーザーの59%が、いずれかの商品で利用頻度があがっていました。そして、全商品で利用頻度が上がった、つまりLTVが上がったお客様が41%。その中で、コミュニティ内で示唆を得るために十分な投稿をされていたお客様が15%います。

この利用頻度が上がって、かつ、分析できる活動データがある15%の顧客のプロセスを今、分析しています。コミュニティ内での活動のデータ、そして、クライアントが持っているデータ、たとえば、ECの購入データや閲覧データなどを掛け合わせて分析することで、「ロイヤルユーザーになったタイミングが分かり、その人がロイヤルユーザーになった前後で何をしていたのかが分かる」というイメージです。

コーラムインサイトの利用

たとえば、ある40代の愛知の女性の方がいて、過去には「サプリメントはあまり好きではありません」「妹が健康診断の数値が良くなかったのでアマニをプレゼントしました」「柿とかスープにアマニが合う」といった投稿をしていました。

それまでは週3~5回ぐらいでパンやトーストにアマニ油をかけて食べていたのですが、ある時から、アマニドレッシングを買って生野菜サラダを食べるようになり、利用頻度が上がりました。

この方は、過去に「生野菜は嫌い」といった投稿をしていたので、嫌いだった生野菜のサラダを食べるようになったきっかけが何だったのか、きちんと分析した方が良さそうだ、ということになりました。

実際に検証してみると、ある時コミュニティでやってた「検証!ご飯と相性の良いアマニ油入りドレッシングは・・・!?」という検証コンテンツが態度変容したトリガーであろうと分かりました。

コーラムインサイトの利用

ここからは仮説ですが、この方は「野菜を摂らなきゃいけない」「食生活を変えないと」という自覚はあるぐらいに健康志向は高いけれど、サプリメントは志向に合わない、やっぱり野菜は好きではない・・・。というなかで、検証コンテンツを見て、「どのドレッシングが美味しい」「ご飯に合う」とニップンが教えてくれたことが態度変容を後押ししてくれたのかと。「ダメでも生野菜以外にも使えそうだし、今まで使っていたアマニ油の派生だから・・・」ということで、アマニドレッシングの購入に踏み切ったのでは、と仮説を立てています。

ニップンさんの場合、導入から1年が経過して施策のPDCAが回るようになり、コミュニティ内のユーザーさんに働きかけるだけではなく、そこで得た成果を他の施策に活かしていけることが見えた、実際の商品開発や販促にも反映されている状態です。

ここまでAsobicaが考えるコミュニティの価値、また、実際にcoorumを活用して、ニップンアマニコミュニティを運営されているニップンさんに施策や成果の事例を紹介いただきました。


「ニップン ファンを幸せにしながら事業を成長させる方法 課題解決ワークショップ」前半のインプットセッション、ニップン様のお取り組みを記事化させていただきました。

「コミュニティ活用による課題解決」事例として、ぜひご参考にされてみてはいかがでしょうか。

後半は参加者テーブルごとでワークショップが行われており、「マーケット再拡大のためにどのような戦略が有効なのか」を皆さん真剣に議論していました。

ワークショップ
ワークショップの課題発表
参加者テーブル
真剣に議論する参加者
参加者テーブル
テーブルごとに課題解決策を言語化

関連リンク

ニップンのアマニ

coorum(コーラム) | ロイヤル顧客プラットフォーム

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