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NewsPicks 811万人のLTV向上施策に迫る!カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵|Growth Summit 2023

2023.12.21

はじめに

Braze 吉永氏|
「NewsPicks811万人のLTV向上施策に迫る!カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵」というタイトルでセッションを始めていきます。本日は株式会社ユーザベース NewsPicks事業 執行役員のCMO 菊地 幸司さんをお招きして、Braze 吉永がモデレーターを務めていきます。よろしくお願いいたします。

Brazeとは

最初にBrazeの会社紹介をして参ります。Brazeは2011年にニューヨークで創立され、2021年にNASDAQに上場しています。本社はニューヨークにあり、ロンドン・パリ・シカゴなどにオフィスを展開し、従業員も1,600人を超える規模となっています。

Brazeというカスタマーエンゲージメントプラットフォームを提供しており、モバイルプッシュやSMS、ブラウザメッセージ、アプリ内メッセージなど、顧客を中心としたメッセージの配信基盤になっています。

外部からも高く評価され、SalesforceさんやAdobeさんなどと並んでリーダーポジションの企業だと評価いただいています。

Braze導入効果

Braze 吉永氏|
Brazeの強みは、端的には「効果が出る」という点です。Brazeが提唱しているマルチチャネルのコミュニケーションを通じて、購入ユーザー数、購入回数、あるいはリテンション率、LTVなどの数値が実際に上がっているという実績がでています。

Braze導入効果2

Braze 吉永氏|
成果数字とも関連しますが、フォレスター社と共同で実施しているトータルエコノミックインパクトという調査では、Brazeの製品を活用することで、840%のROI になるという試算が出ています。

導入いただいて1年目、2年目、3年目と使っていただくに連れて、ROIが上がっていくという調査結果になっており、注目いただきたいポイントのひとつは2,200時間のキャンペーン構築時間の削減という点です。

Brazeを導入いただく際によく評価いただくポイントに「ユーザーが使いやすい」「マーケターがやりたいと思った施策を実現できるツールになっている」ということがあります。2,200時間のキャンペーン構築時間削減という実績は使いやすさの証拠であり、「実施したい施策を短時間でスムーズに構築できる」という証明だと思っています。

Brazeの評価や実績を具体的に知りたい方は「Brazeが実現するコスト削減と事業利益」というタイトルでWebを検索いただくと詳細なレポートが出てきますので、ぜひご覧ください。

Braze導入企業様(一部)

Braze 吉永氏|
Brazeは2021年から日本で展開しており、本日登壇いただくNewsPicksさんをはじめとして多くの会社に導入していただいています。スライドに表示されているロゴの通り、業界や業種を問わず、事業をグロースしていきたい企業に活用いただいています。

続いて、本日登壇いただく菊地さんにNewsPicksの紹介をお願いいたします。

News Picks 事業内容・サービス紹介

NewsPicks 菊地氏| 
株式会社ユーザベース NewsPicksの菊地と申します。よろしくお願いします。NewsPicksはビジネスに役立つ経済サービス、経済ニュースアプリです。

サービスの特徴は3点あり、まず分かりにくい・難しいと思われがちな経済ニュースを図解で分かりやすく説明して、誰もが簡単に理解できるようにしています。

次に動画コンテンツが豊富で、難しい経済ニュースも楽しんで学んでいただくことができます。最後に、有識者やビジネス現場の方々のコメントが掲載されることで、ニュースそのものや周辺情報を深く理解することができるようになっています。

News Picks 事業内容・サービス紹介2

NewsPicks 菊地氏|
2023年11月現在、登録ユーザーは811万人を超え、有料会員であるプレミアム会員が19.8万人となっています。

昨今はビジネスパーソン以外に、学生の方々にも多く使っていただいています。私たちも次世代を担う学生や若年層の方々に使っていただけるように日夜サービスを改良しています。

Braze 吉永氏|
登録ユーザーが811万人ということは、人口換算すると15人に1人ぐらいが使っているサービスですね。

NewsPicks 菊地氏|
そうですね。経済ニュースなので、日本の全人口に使っていただくことを前提にしたサービスではありませんが、将来的にはすべての社会人と学生の方々に使っていただけるサービスとなることを目指しています。

Braze 吉永氏|
ご紹介ありがとうございます。それでは「カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵」というテーマに沿って話を進めていきたいと思います。

カスタマーエンゲージメントが重要性を増している背景

2023 カスタマーエンゲージメント調査より

Braze 吉永氏|
まずはカスタマーエンゲージメントが重要性を増している背景を紹介します。

スライドはBrazeが直近3年間で調査したカスタマーエンゲージメントレビューの結果です。世界中のVP・マーケティング部門の意思決定者1,500人に回答してもらった調査です。

結果としては、経済の先行きに対する不透明感が増していく中で、新規の顧客開拓よりも既存の顧客維持に積極投資する傾向が3年連続で高まっているという調査結果になっています。

「実際にエンゲージメント施策を強化するか?」という直接的な質問に対しては99%が「強化する」と回答する結果になっており、新規開拓よりも既存顧客、CRM領域に積極投資して既存顧客のアップリフトに注力していくことがグローバルの明確なトレンドになっていることが分かります。

Braze事例:カスタマーエンゲージメント施策によるアップリフト

Braze 吉永氏|
カスタマーエンゲージメント施策を打つことでアップリフトに成功した具体的な事例もひとつご紹介します。

事例で紹介するTUI様は、世界規模の旅行会社です。ドイツに本拠があり、北欧にオーロラを見に行く旅行、また、カリブ海クルーズなどの特徴的なツアーを提供しています。

TUI様では、Brazeを利用することで、それぞれの顧客、さらに旅行のステップに応じてパーソナライズされたリアルタイムコミュニケーション、各ユーザーにとって意味があり、一貫性のあるユーザー体験を実現しています。

予約前、予約から出発前、旅行中、旅行を終えて帰宅した後といった各ステップにおけるユーザー体験の向上を目指し、状況に応じてリアルタイムに、パーソナライズされたメッセージで顧客とのコミュニケーションを取る形です。

たとえば、

・休暇の行き先やプランを検索した後に予約に至っていなければ、直近の検索結果をリマインドするように促す。

・旅行中にはジオフェンス(位置情報)を利用して、目的地やその周辺に関連する付随商品のお勧めをモバイルアプリに表示する

・移動時にはリアルタイムの位置情報を利用して、交通情報を提供する

・旅行後には帰宅のタイミングを捉えて、次の休暇に向けたお勧め情報を案内する

といった形で、Brazeを使って顧客それぞれの行動に合わせたリアルタイム、かつパーソナライズされたメッセージを送っています。

さらに、AIによる機械学習を利用して顧客のカスタマージャーニー、行動履歴や趣味嗜好も踏まえる形で上記のコミュニケーションを実施しています。

これらのカスタマーエンゲージメント施策により、TUI様では

・アプリを通じた予約数 118%増加
・旅行に付随する購入(空港のパーキングや保険など) 205%増加
・セール期間中の売上 78%増加

という驚異的な成果を実現しています。

今日はこれほどの可能性を持つ「カスタマーエンゲージメント施策」について、NewsPicksの事例を紹介いただきます。

「残念な顧客体験」はブランドを毀損し、ビジネスを弱くする

「残念な顧客体験」がブランドを棄損し、ビジネスを弱くする

Braze 吉永氏|
NewsPicksの事例に入る前に最後にもう1つだけ、データを紹介させてください。

スライドはBrazeによる調査結果になっており、スライド左側は、顧客体験に一貫性がないとブランドの乗り換えを検討する顧客が72%いるというデータです。

たとえば、表示されるクーポンの割引内容がWebとアプリで異なっているといった事象があると、「このブランドは信頼できないんじゃないか・・・」と感じてしまうユーザーが72%いるということです。

自身がユーザーとして考えると分かりやすい感覚ですが、このように調査結果の数字でみると考えさせられる結果です。

また、スライド右側の結果は、自分と無関係なコミュニケーションが届くと不快だと感じる顧客は90%にのぼるというデータです。

視聴されている皆さんもWebやアプリや通じて、日々多くのメッセージを受け取っていると思います。その中で、自分に関係がないメッセージが届くと「これは一斉配信だな・・・」と分かってしまいます。

そのような自分と無関係なメッセージの配信が繰り返されると、「このブランドからは適切なメッセージは期待できないな」と感じてしまいます。そうすると、せっかく新規登録していただいたユーザーに「もう受け取りたくない」と配信や通知を解除されてしまいます。

CRMの強化、カスタマーエンゲージメントを考えるうえでは、上記の観点が非常に重要になります。適切なメッセージがブランドの信頼維持につながる。エンゲージメントを高めるような適切なメッセージを送ることが非常に重要であるということです。

NewsPicksが抱えていた3つの課題感

カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵

Braze 吉永氏|
それでは「カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵」というテーマで、先進事例であるNewsPicksでの取り組みを紹介していきます。

結論として、3つの鍵は

  1. 多様なユーザーに対して、パーソナライズ体験を提供する
  2. 頻度高い実験を繰り返し、勝ちパターンを見つけていく
  3. 全社一丸の顧客志向・ユーザー体験をよくする文化

というものです。

まず菊地さんに、NewsPicksが考えるカスタマーエンゲージメント、またカスタマーエンゲージメントツールとしてBrazeを導入した背景を紹介いただきます。

NewsPicksのカスタマーエンゲージメントの捉え方

NewsPicks 菊地氏|
まず大前提としてNewsPicksはサブスクモデルのビジネスとなっており、ユーザーの方々と長期的に良い関係を築きたいと思っています。

吉永さんが話された通り、今の時代は関係ないメッセージを送ると、ユーザーに「ちょっと嫌だな」と感じさせてしまうわけです。

従って、今の時代にはユーザーとのコミュニケーションで「下手な鉄砲も数を打てば当たる」という考え方はやってはいけないことであり、「適切なタイミングで適切なメッセージを送る」ことが重要だと考えています。

Braze 吉永氏|
「適切なタイミングで適切なメッセージを送る」ことを実現しようとするうえで、ぶつかった壁があったのでしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
はい。適切なタイミングと適切なメッセージは、ユーザーそれぞれに違いますので、パーソナライズが不可欠になります。

しかし、パーソナライズしたコミュニケーションに取り組もうとすればするほど、実現は大変になります。全員に同じメッセージを送っていた状態から、個別に異なるメッセージを送ろうとすれば、システムを担うエンジニアの負荷が非常に大きくなります。

また、各ユーザーの適切なタイミングがいつかと考えた時、少しでもタイミングがずれると、受け取るユーザーは「今ではない」という感覚になります。たとえば、5分前は新しいサービスに加入するつもりだったのに、5分経つと気持ちが変わっている可能性もありますので、適切なタイミングに送ることは非常に難しい。これもエンジニアが苦労するテーマです。

更に弊社の場合、複数ある部署がそれぞれ「ユーザーとコミュニケーションをしたい」と考えてメッセージを送ってしまうと、同じユーザーにAという部署からのメッセージ、Bという部署からのメッセージ・・・と何通も送られてしまいます。

送る側の部署は複数でも、受け取るユーザーは1人ですので、メッセージの量が過剰になってしまえば、配信拒否などになってしまいます。これも解決する必要がありました。

こうした課題感があるなかで検討した結果、Brazeが良いソリューションだと感じて導入しました。

NewsPicskの課題感・Braze導入背景

NewsPicks 菊地氏|
Brazeを導入したことで、エンジニアの稼働を減らし、ビジネスサイドだけでパーソナライズを実現出来るようになり、施策の回数を増やすことができました。

また、個別ユーザーのイベントを捉えてリアルタイムに配信できるので、適切なタイミングという点でも顧客体験を改善できたと思います。

1人のユーザーに届くメッセージの通数管理も出来るので、送信側が細かく気にしなくても同じユーザーに送りすぎないということも実現できるようになりました。

Braze 吉永氏|
確かに施策を試してみたいと考えると、メッセージを送ってしまいがちになります。システム側が制約をかけてくれることでユーザー側の過剰なメッセージ受信を回避できた形ですね。

菊地さんに抱えていた3つの課題感と現状を話していただきましたが、より具体的に課題を解決できたり施策を実現できたりした事例の紹介をお願いできればと思います。

成果事例①「適切なタイミング」がもたらすインパクト

NewsPicksのエンゲージメント施策 具体事例1

NewsPicks 菊地氏|
1つ目は、コミュニケーションするタイミングの最適化に関する事例です。

NewsPicksの有料会員サービスは、月額プランと年割プランがあります。年割プランは、月額プランよりも1カ月当たりの課金額が安くなりますのでユーザーにもメリットがありますし、NewsPicks側も解約率が下がって継続的な関係を生み出せるので、基本的に年割プランをお勧めしたいと考えています。

その中で、既に月額プランを更新されているユーザーさんに、いつ年割プランのご案内メッセージを送るのがいいかというテーマがありました。

たとえば、月額プランの更新日の直後に送っても、「先ほど契約したばかりだよ」と感じられてメッセージはスルーされてしまいます。

そこで、更新から半月ほど経った後、次の更新日までの間にメッセージが届けば、「確かに次の更新で年割プランにしてもいいかな・・・」と思ってもらえるかと考えて試したところ、年割プランの契約件数が日次で3倍から5倍に増加するという成果が得られました。

成果からも分かる通り、ユーザーにいつメッセージを送るかというテーマは非常に重要です。しかし、ユーザー1人1人にメッセージを送るタイミングを社内でシステム開発してコントロールしようとすると非常に大変です。Brazeであれば、契約日の情報を共有れば、あとは自動で配信できるので非常に助かっています。

Braze 吉永氏|
3倍から5倍の増加というのは大きな成果ですね。

NewsPicks 菊地氏|
「年割プランへの切り替えを促すか否か?」でも大きな違いがありますが、促すにしても更新日の直後に送るよりも、更新日から少し経ったタイミングで送る方が効果が大きくなります。

Braze 吉永氏|
なるほど。確かに送るタイミングが重要だなと思っても、実現できるツールがなければ、たとえば、毎月15日に一斉配信してしまうといったことが起こります。Brazeを導入いただいたことで、顧客それぞれの適切なタイミングで送ることができ、成果につながったということですね。ありがとうございます。

それでは、次の事例もご紹介をよろしくお願いします。

成果事例②「適切なメッセージ」を送ることの効果性

NewsPicksのエンゲージメント施策 具体事例2

NewsPicks 菊地氏|
2つ目は、メッセージを送るセグメントを適切に絞ったという事例です。

スライドは10周年キャンペーンの施策例になり、左側が全体に一斉送信したパターン、右側は学生だけにセグメントを絞り込んで送ったパターンです。

CTR(Click Through Rate:クリック率)を見ると、一斉送信では大体10%前後でした。一方で、きちんとセグメントして、そのセグメントに適切なメッセージを送ると、CTRは30%程、約3人に1人が興味を持ってクリックしてくれるという結果になりました。

つまり、セグメントを適切に絞ることで、CTRを3倍にあげることができました。また、必要なセグメントにだけ送ることで、送らなかったセグメントにはまた違うメッセージを送ることもできるようになりました。

この結果を見ても、やはり「下手な鉄砲を数打つ」のではなく、きちんと適切なユーザーに適切なメッセージを届けることが重要だと感じます。

Braze 吉永氏|
Brazeを入れる前はセグメントを絞ることがなかなか難しかったのでしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
そうですね。セグメントを切る際には基になるデータと下準備が必要になります。そして、絞り込みたいセグメントの要素が複雑になるほど、またリアルタイムに送信しようとするほど、エンジニアの工数が必要になっていました。

しかし、Brazeを入れたことで、Brazeに共有しているデータであれば、ビジネスサイドが自分たちで操作してセグメントを絞れます。これは非常に助かっています。

Braze 吉永氏|
ありがとうございます。Brazeが便利だと評価いただけるポイントのひとつに、ダッシュボード上でリアルタイムに「このセグメントだと大体どれぐらいの人数か?」が分かる点があります。NewsPicksではどんな形で活用いただいていますか?

NewsPicks 菊地氏|
施策をする際に、成果にインパクトがある施策から実施したいという優先順位の考え方があります。

たとえば、施策Aだと1,000人しか対象にならない、施策Bだと1万人が対象になるということが分かると、やはり施策Bから実行しようと思います。Brazeだと「この対象が何人になるか」が管理画面からすぐ見れます。さらに「セグメントのパラメーターをこう変更したら何人になる」まで分かります。

これによって、施策実行のタイミングで「やはりAよりもBのセグメントを優先しよう」といったフレキシブルな対応が実現しています。

Braze 吉永氏|
ありがとうございます。NewsPicksではセグメントの試行錯誤という部分で、インターン生にBrazeの権限を渡して操作してもらっていると聞きましたが、どのような形でしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
インターンや業務委託の方の場合、最終的にメッセージの送信までを担当範囲にしてしまうと、責任が重くなり過ぎてしまいます。しかし、Brazeではアカウントの権限管理ができるので、インターンや業務委託の方には送信準備まで出来るアカウントを渡しています。

こうすることで、インターンや業務委託の方は柔軟にセグメントや施策を考える。そして、最終的には社員がチェックした上でメッセージを送る、ということが出来ています。

権限管理を活用することで、社内でBrazeを使えるメンバーの人数を非常に多くできています。

Braze 吉永氏|
確かにセグメントを絞るといった部分に関して、安心して繰り返し試行錯誤できることは大事ですね。続いて3つ目の事例をご紹介お願いします。

成果事例③「ネガティブな影響」を検証する必要性

NewsPicksのエンゲージメント施策 具体事例3

NewsPicks 菊地氏|
3つ目の事例は、施策の実行に伴うネガティブな影響の検証というテーマです。

さまざまな施策をするなかで、結果が出る施策もあれば、そうでないものもあります。NewsPicksでは、結果の効果検証する際に、施策に伴うネガティブな影響も確認しています。

スライドは、学生セグメントに限定して、あるコンテンツのレコメンドをプッシュ通知した施策の事例です。この事例では誘導したコンテンツのアクセス数が5倍に増え、かつ、プッシュ通知の解除率は変化しないという結果になりました。

上記の施策は非常に良い結果です。一方で、プッシュ通知を送ることによって解除率が増えているようであれば、短期的に5倍のアクセスを得る代償として、長期的なエンゲージメントを失っているわけです。

施策を検証する際には、こうしたネガティブな影響がないかどうかも確認しています。

Braze 吉永氏|
今回はネガティブな影響がなかった事例を紹介いただきましたが、ネガティブな影響があった施策もあるのでしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
なかにはアクセスが増えるというプラス効果が殆どないのに、送った分だけ解除率が上がる施策もありました。こうした施策はすぐに変えていく必要があります。

Braze 吉永氏|
良かれと思ってメッセージを送っているはずなのに、マイナス効果だけが出ているといったケースですね。

NewsPicksにおけるカスタマーエンゲージメント施策の効果検証

Braze 吉永氏|
先ほどの事例で「施策の効果検証」というテーマが出てきました。NewsPicksでは施策の効果検証をどんな形で確認されているか紹介いただけるでしょうか。

NewsPicks 菊地氏|
効果検証に関して、NewsPicksでは2つのツールを使っています。

実効した施策効果の確認方法

NewsPicks 菊地氏|
ひとつはBrazeの管理画面です。施策のリアルタイムな結果は、Brazeの管理画面が一番早く、かつ分かりやすいので、Brazeで見ています。

一方で、3つ目にお伝えした事例に関しては、「クリック率が良かった」というデータはBrazeの管理画面で見えます。ただし、「その後に解約してしまった」といったデータは他のデータと付き合わせる必要があります。

こうした部分はBrazeのデータをNewsPicksのデータベースに取り込んで、Metabase(メタベース)というツールを使って分析をしています。

実行した施策効果の確認方法2

Braze 吉永氏|
ありがとうございます。Brazeからログを吐き出して取り込むという流れはシステム構成としてはスライドのような形になっています。

BrazeにはCurrentsという機能があり、ダッシュボードで設定するだけで生ログに近いデータを吐き出すことができます。これもBrazeを選定いただいた際のポイントでしょうか。

NewsPicks 菊地氏|
そうですね。基本的に施策の結果データはBrazeで見れますが、長期的なデータ、プレミアム会員の継続情報などはNewsPicks側のデータベースにしかない情報になります。

BrazeのCurrentsでは施策の結果だけではなく、「どのユーザーにA/BテストのAとB、どちらが送られたか」というコントロールグループのデータまで吐き出せますので、NewsPicks側のデータと掛け合わせて見ることで施策の長期的なプラス・マイナスの影響を確認できるようになっています。

Braze 吉永氏|
ありがとうございます。Brazeで短期的な施策の効果を見るだけでなく、データをかけ合わせることで長期的なカスタマーエンゲージメントにどんな影響を与えたかまでしっかりと検証する素晴らしい事例です。

先ほど短期的な効果・長期的な効果というテーマが出ましたが、その手前で「どういった施策をすればいいか分からない」という方も一定数いらっしゃるかと思います。NewsPicksではどういった形で施策のPDCAを回しているのか、運用体制をご紹介いただけるでしょうか。

カスタマーエンゲージメント施策の運用体制とPDCA

Brazeを使ったグロースの運用体制+PDCAの回し方

NewsPicks 菊地氏|
まず施策の選定に関しては、先ほど言及したようにインターン生や業務委託の方も含めて、いろいろなアイディアを出しています。そして、複数の施策アイディアを持ったうえで事業インパクトの高いものからやっていくという考え方になります。

インパクトの強さに関しては、対象となるユーザーがどれだけいるかというボリュームもひとつの要素ですし、仮説になりますが「期待する結果が高いか」という要素も考慮して判断しています。

Braze 吉永氏|
施策の検証はA/Bテストをして有意差まで確認するということですが、これはBrazeを使ってやっている形ですか?

NewsPicks 菊地氏|
はい。BrazeはA/Bテストの結果として、Aが何件、Bが何件というコンバージョン件数などの結果に加えて、本当にそれが意味のある違いなのかという有意差まで自動で計算してくれますので、Brazeでやっています。

Braze 吉永氏|
実施期間は2週間のサイクルで回されているということですが、なぜ2週間という時間軸なのでしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
NewsPicksは経済メディアであるため、平日と休日でユーザーの行動が大きく変わります。そのため、たとえば、視聴態度などを検証する際には月曜日から日曜日までの1週間単位で見る必要があると思っています。

従って、結果の信頼性を担保するためには最低でも1週間分の結果、通常は2週間分の結果があれば信頼できると考えています。逆に、1カ月経っても有意差がつかなかった施策に関しては筋が悪かったと諦めて、次の施策を考えます。

Braze 吉永氏|
ありがとうございます。施策選定の段階でどのようなにアイディアを作ったり膨らませたりしているか、NewsPicksで心がけているポイントはありますか?

NewsPicks 菊地氏|
原則として、ユーザーが何か行動を起こした時がユーザーが一番ホットな状況だと思います。従って、ユーザーのイベントベースで「何かアクションをしてくれた際、その効果を高めるためにはどうしたら良いか?」という視点を大切にしています。

また、日常的にデータを見ていく中で、ちょっとした違いがあった時、「その違いは新しい仮説、次の施策につながる可能性がある」と思っています。従って、何かが変わったから違い・変化点が生まれたはずという考え方で、「何か違いがないか?」という視点を持ってデータを見るようにしています。

Braze 吉永氏|
なるほど。説明いただいた2つの視点はどういった経緯で生まれたのでしょう?

NewsPicks 菊地氏|
「ユーザーのイベントベースで考える」「変化点に着目する」という2つの視点は、私のマーケティングの師匠にあたる方から学んだことになります。それを私も受け継いでデータを見ていますし、メンバーにも「変化にチャンスが隠れているから、データを見るときは変化点に注目していこう」と伝えています。

全社的な取り組み姿勢を実現するまでのプロセス

全社一丸の顧客志向(カスタマーエンゲージメント)を持つ文化

Braze 吉永氏|
NewsPicks事業にBrazeを導入いただいた当初はビジネスサイド中心に利用されていましたが、現在はビジネスからエンジニアサイドまで、殆どの部署でBrazeを活用されています。事業全体としてどんな風にBrazeを使っていらっしゃるか、現状や社内展開のプロセスを教えていただけますか。

NewsPicks 菊地氏|
NewsPicksでは元々マーケティング部署が主体となって、マーケティングツールとしてBrazeを活用していました。しかし、ユーザーと向き合うのはマーケティング部署に限られた話ではなく、NewsPicksユーザーとは、コンテンツの部署、コミュニティーの部署、エンジニアの部署、それぞれがコミュニケーションを図ることが必要になります。

それであれば、マーケティング部署のメンバーだけではなく全員がBrazeを使えた方がいいと考えて社内で勉強会をする中で、「そんなに簡単なら使いたい」というメンバーが増えて、いまは殆どの部署がBrazeのアカウントを持ってユーザーとコミュニケーションをとっている状況です。

Braze 吉永氏|
なるほど。社内の利用者を広げていく中で苦労した点はありますか?

NewsPicks 菊地氏|
初期のころは、それぞれの部署で自由にコミュニケーションのフォーマットを作ってしまうという課題がありました。やはりユーザーにコミュニケーションする時、統一されたメッセージやフォーマットがないと、ユーザーの違和感につながります。

現在はマーケティング部門でトンマナやメッセージの質がぶれないように共通フォーマット、また共通ルールを作ったうえで、各ユーザーが設定できるようにしています。

Braze 吉永氏|
ありがとうございます。施策の検討や実施にあたってビジネスサイドとエンジニアサイドでの役割分担がうまく進んでいるという話もお聞きしましたが、いかがでしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
ビジネスサイドは、やはり売上に直接結びつくような施策を中心に担当しています。たとえば、マーケティング部署であれば、プレミアム会員のご案内であったり、またNewsPicksの出版事業における新刊のお知らせなどです。

一方で、エンジニアサイドでは、継続率の向上を促すような施策を中心に取り組んでいます。たとえば、プッシュ通知のタップ率向上に向けた施策などもBrazeを使って動かしていますし、コメント記入率の向上施策などもやっています。NewsPicksは冒頭でご説明した通り、コメントが重要なコンテンツになっていますので、コメントの記入率向上が継続率につながってきます。

上記のような役割分担がある一方で、「これはビジネスサイドの施策か、エンジニアサイドでやる施策か?」という判断はケースバイケースであり、ビジネスサイドとエンジニアサイドで一緒にプロジェクトを作って進行する場合もあります。

役割分担はありますが、NewsPicksでは「全員がユーザーと向き合う」という意識を大切にしています。

Braze 吉永氏|
なるほど。「全員がユーザーと向き合う」という価値観の共有が大事ですね。

他社では「ビジネスサイドがこういうアイディアを試したいと提案しても、エンジニアサイドがOKしてくれない」といった話も偶に聞いたりします。NewsPicksでは、エンジニアサイドも含めてBrazeを活用するという状態にどうやって至ったのでしょうか?

NewsPicks 菊地氏|
いまNewsPicksのなかでは、エンジニアサイドに「Brazeはエンジニアの仕事を楽にするもの」だと理解してもらえています。

マーケティングサイドが新しいツールを導入した時、エンジニアが「自分たちにはメリットがない。むしろ自分たちの仕事が増えるのではないか・・・」という感覚を持つことは普通に起こり得ることだと思います。

しかし「ツールを活用することで、エンジニアサイドがコーディングで使っていた時間を減らし、かつ早く結果を出すことにつながる」と説明していくことで、エンジニアサイドにも理解してもらい、現在はどんどんBrazeを使ってもらえるようになっています。

Braze 吉永氏|
NewsPicksでは、ビジネスサイドが「こういう施策をやりたい」と言った時、エンジニアサイドが「その施策ならBrazeでやれば良いんじゃないか」と返すほど、エンジニアサイドにも浸透していると聞きました。

NewsPicks 菊地氏|
おっしゃる通りで、エンジニア側も「Brazeならすぐ出来るよ」と返すことで自分たちの工数を減らせているわけです。

Braze 吉永氏|
なるほど。いまのポイントは私たちSaaSベンダーとして活用していただく上でも非常に重要ですね。

菊地さんが社内で「Brazeは便利だよ」と啓蒙いただいた結果ですが、ビジネスサイドに留まらず、エンジニアサイドもツールを理解することで、組織一丸となってカスタマーエンゲージメントを高める、より早く施策を動かすということに取り組めている形ですね。

まとめ

カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵

Braze 吉永氏|
それではセッションのまとめになります。本セッションは「カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵」というタイトルですが、菊地さんの事例から具体的なイメージが見えてきたかと思います。

まず多様なユーザーに対してパーソナライズ体験を提供するためには、それぞれのユーザーに関係ないメッセージを減らして、ユーザーが開きたくなる適切なコンテンツを届けることが重要であるというポイントです。

次に、パーソナライズ体験を実現するためには、エンジニアの工数がないと施策を実行できない状態から脱して、ツールを活用して高頻度でA/Bテストを動かし勝ちパターンを見つけていくという内容でした。

最後に「どのようにコミュニケーションしていけば、ユーザー体験を向上できるか」という価値観を中心にして、エンジニアサイドも巻き込んで、組織一丸になってカスタマーエンゲージメントの向上に取り組んでいくということです。

最後に、今後NewsPicksとしてBrazeを使ってどんなカスタマーエンゲージメントの向上施策をやっていきたいと考えているか、菊地さんから一言いただければと思います。

NewsPicks 菊地氏|
現在は、昔では考えられなかったほどユーザーのニーズが多様化しています。一斉配信に関しても「これぐらいならユーザーも許してくれるかな」という過去の常識が通じない時代になっています。

私自身もユーザーとして使っているWebサービスやアプリにかなりレベルが高いことを求めている、基準があがっていると感じます。

だからこそ、本当にユーザーとの関係性、カスタマーエンゲージメントが重要になっているわけです。

一方で、ユーザーとの関係性は数値化が難しい側面もあります。そうすると、「費用対効果は見合うのか?」といった議論にもなりがちです。

しかし、事例で紹介した解約率のような費用対効果が明確に見える指標もありますし、「自分がやられて嫌なことを相手にしてはいけない」という人間関係の原則にも則って、コミュニケーションのパーソナライズ、適切なユーザーに適切なメッセージを届けていくことを意識して実現していく必要があります。

今後も愛されるサービスになることを目指して、パーソナライズ体験の提供を進めていきたいと思っています。

Braze 吉永氏|
Brazeも期待に応えられるように製品の強化、またサポートを提供していきたいと思います。本セッション「カスタマーエンゲージメントを成功させる3つの鍵」というタイトルで、NewsPicksの菊地さんに解説いただきました。ありがとうございました。

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