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【GROWTH SUMMIT 2021 KEYNOTE(基調講演)】DX打開のカギは「データ+組織」マネジメント

2022.02.07

GrowthSummit2021_keynote
DX打開のカギは「データ+組織」マネジメント ~米国の最新動向を自社のDX推進にどう生かすのか~

この記事は、2021年11月17日に開催した「Growth Summit 2021」の基調講演ウェビナーレポートです。

基調講演ゲスト

株式会社圓窓 代表取締役
澤 円 氏

元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。日立製作所 Lumada Innovation Evangelist、武蔵野大学教員、JAC Digital アドバイザーなどの肩書を同時に持ち、複業のロールモデルとしても情報発信している。

株式会社IBAカンパニー 代表取締役
射場 瞬 氏

ニューヨーク大学スターン経営大学院でMBA取得後、グローバル企業の米国本社にて約15年間在籍し、事業開発やイノベーションをグローバルにリード。その後、日本コカ・コーラ社副社長を経て、2010年にIBAカンパニーを設立。現在、同社代表取締役として、デジタル技術やビジネスモデルの米国最新知見を活かし、事業開発やデジタル活用による変革をサポート。 2021年6月に「嵐に学ぶマーケティングの本質」(日経BP)を出版。

基調講演モデレーター

株式会社DearOne 代表取締役社長
河野 恭久

人材ビジネスを営むスタートアップからキャリアをスタート。営業、経営企画、事業企画に従事し収益構造改革や新規事業を企画・立案。2004年には東証一部上場を果たす。2009年におてつだいネットワークスにジョイン。販売・企画・戦略立案等に携わりながら、イマナラ!事業の立ち上げに参画。2011年に現DearOneを共同創業、スマホアプリ開発サービスModuleAppsを立ち上げ2015年1月より現職。アプリビジネスを軌道に乗せ、現在は米国Amplitudeとの協業により国内のデジタルマーケティング活性化に邁進中。モットーは「WOWを創る」

米国と日本のDX推進状況

河野| 
すでに周知の通り、日本のDXは米国に遅れを取っています。この現状を打開するために何が必要なのか、まずは澤さんからお話頂けますか。

澤| 
マイクロソフトでテクノロジーセンター長をしていた時、お客様のご要望で最も多かったのは、成功事例のヒアリングでした。確かに、成功を最短距離で導くには事例が良いと思われがちですが、構成要素がたくさんある上に、自社でも同じことができるかは別問題です。

ケーススタディーは参考にはなれども、成功を保証するものではありません。事例を聞いてわかったつもりでいても、実際にアウトプットしながら手を動かしてできるものは全く異なります。

ですので、どこにボトルネックがあり、どんなリソースが不足しているのか等、まずは自分たちで実践しながら棚卸をするのが大事であるというのが持論です。事例だけにこだわりすぎるのは、時間の無駄になると考えています。

河野| 
ありがとうございます。 
射場さんは米国事情に精通されていますが、日本のDXは遅れていると感じますか?

射場|  
日本が遅れているというより、2016年頃から米国全土でデジタル化が一気に進んだという方が正しいと思います。流通やクルマ、金融といった異なる業界が、デジタル化の必要性に関しての危機感を抱き、高速での進化と大型投資を行ったため、デジタル化が急速に進んだと言えます。

米国の流通コンベンションなどに行くと、30年分の変化が3年で起こったと半分冗談のように言われていました。日本も同じ危機感を抱いているとは思いますが、米国が進んだ理由には二つのきっかけがあります。

一つは2016年4月のGDPR(ヨーロッパ一般データ保護規制)制定によって、お客様とつながっていなかった業界の企業が、これまでのようにサードパーティーデータを入手できなくなると危機感を抱き、対策の検討を始めたことです。

もう一つの理由は、デジタルマーケティングコストの高騰です。現在、広告費全体に占めるオンライン広告の割合が50%にまでなっているので、効果的なデジタル広告の価格は当然のように高騰しており、ROIが合わなくなった商品やサービスも多いです。

PDCAを回して効率化する作業が安価に続けられなくなったこともサードパーティーデータからファーストパーティーデータへのシフトが進んだ要因になりました。中国でも同じく高騰により、このシフトが一気に進んだと聞いています。

このような理由で、業界を超えてデジタル化が一気に進んだのですが、澤さんはどう思われますか?

澤|  
日米を比較する際によく使われる数値なのですが、米国の場合、ITリソースの6割以上が事業会社側にいます。一方で日本では7割以上がITベンダー側にいます。この構造の違いは大きいです。

また日本企業の場合、人事異動が絡むためITの知見が蓄積されにくい傾向にあります。昨日まで営業部長だった人がIT部長になると、門外漢のままITの責任を負わされることになります。

射場|  
データ分析人材に関しても同じことが言えると思います。私がAMEXの米国本社でパフォーマンスマネジメントチームのヘッドだった十数年前、すでに社内にデータサイエンティストが、正確な人数はわかりませんが、数百人単位で在籍していました。

データ分析と人材育成

河野|  
やはり米国企業の場合は、データ分析人材を育成されているわけですか?

射場|  
そうですね、例えばAMEXでは、データサイエンティストとマーケの担当者をペアにしてプロジェクトを担当させるといった人材育成を行いながら、長期視点でビジネスを考えていました。そうして業界で育った人材が、データドリブンな領域を強化しなければならない別の会社にヘッドハンティングされて移るということが当時からずっと続いています。

まず、カードや金融で育ったデータ活用のノウハウが、専門人材が転職することによって航空会社やオンライン旅行会社、ECなどに広がっていくということが起きています。専門人材の流動性がデータ活用の知見の広がりにつながっている米国の強みであると思います。

河野|  
日本はそこまで人材の流動性が高くないのですが、国内企業は今後どのように動いていくべきですか。今から人材育成に注力すべきでしょうか。

澤|   
もちろん育成は必要ですが、日本の場合、人材育成予算が極端に新卒に寄りすぎています。これは、大学に入るのが難しく卒業するのは簡単で、そこから一括採用を行うため育成が必要であるという構造上、ある意味仕方のないことです。

その一方で、日本は人材流動性が低く長く勤めてくれるため、投資回収のチャンスは大きいのです。

ただこの構造上の偏りは課題です。中間層等ビジネスをある程度理解している世代に対してトレーニングを行い、その中でも興味を抱いた人材には、そのスペシャリティを生かせる職場環境を提供し活躍してもらうこと、これを複数の会社が行うようになれば良いと思います。

しかし、多くの日本企業が人材の流動を恐れています。確かにゼロから育てた人材に辞められるのは困るという気持ちも分かりますが、辞めた後により優秀な人材を入れることができるという発想の転換が必要ですね。

河野|  
ちなみにそれは、国内企業の複数社が同時に行うべきなのか、それとも一社単位でその努力を始めても良いものなのでしょうか。

澤|  
まず始めることが重要です。そして、早めに始めて化けることをお勧めします。化けることができるのです。皆がやるのを待つ必要は全然なく、まず始めてみること。そして先行者特権でどんどん進むマインドセットを持つことが重要です。

国内企業が米国に追いつくために

河野|  
ありがとうございます。ここでお二人の得意領域に触れながら、国内企業が米国に追いつくための手法を是非お伺いしたいと思います。

まず澤さんの組織マネジメントの観点から、国内企業が取り組むべき課題を教えて頂けますか。

澤| 
最近はメンバーシップ雇用とジョブ型雇用が二極対立でよく語られますが、どちらがいいという話ではないです。ただ、メンバーシップ型を生かしつつ、評価軸をきちんと合意の上で定着させる努力が必要であると考えています。しかし、この評価軸含めマネージャーによる主観がまだまだ横行しているのが現状です。

そこで重要なことは評価基準を明確にし、絶対値に据えた上で、年齢や勤続年数、性別といったパラメータを出来る限り排除することです。年齢に関係なく飛びぬけたマネジメント能力があれば、マネージャーにして部下を付ければいいのです。それによってビジネスを最大化できます。

しかし、マネージャーになる平均年齢は米国が33歳に対し、日本では44-45歳と10年以上差があります。つまりこの10年以上、人を動かす経験がないのが課題です。適正があれば30代からチームを任せるべきだし、適性がなくとも能力が高ければ、ピンのまま給料を上げて責任ある仕事を任せた方がよいでしょう。

そのためには明確な評価軸が必要であり、かつそれが社内で合意されていることが重要です。

河野| 
少し、ベーシックなレベルの質問になりますが、DXの専用部署は設けた方がいいのですか?

澤| 
DXは全員事で、全員でトランスフォームしなければならないと考えています。これも合意事項ですが、コンセンサスが取れていません。DXを遂行する際に、それはDXの部署の仕事であるという考え方は違うと思っています。

セキュリティも同じく、セキュリティ部署の仕事ではありません。特にサイバーセキュリティは全社員が対象です。なぜなら狙う側は、全社員をお客様として見ているからです。だから全員で武装しなければなりません。

ただセキュリティは「守る」ところであり、DXはその上に乗って「攻める」ところです。ですので全員が当事者意識を持つことが重要であり、そのためには評価に入れなければ効果的に機能しないと考えています。

河野| 
DXは全員事、これは名言ですね。ありがとうございます。
射場さんはいかがですか?

射場| 
日米の一番大きな違いは、米国のDXは現在のビジネスやオペレーション、収益モデルの延長上という枠を取り払っているということです。例えばウォルマートは流通の企業として知られていますが、2015年に、今後はデジタル化を通じて、収益の成長をめざすこと、その収益成長の分野は金融・広告・ヘルスケアであることを明言し、デジタル化を進めました。

さらに2021年には「今後はプラットフォーマーになる」と、GAFAと競合していくのかともとれる発言をしています。つまり、事業の延長線上でデジタルを活用してお客様をより理解するのも一つの方法ですが、ウォルマート等の大手企業は、より収益性の高い儲け方、ビジネス領域にDXで参入するという戦略で突き進んでいるのです。

ちなみにウォルマートは2018年にGoogleとほぼ同額の1兆300億円をDXに投資しました。これは、Amazon, Googleにつぐ世界3番目の投資額ですが、今後の収益成長が見込めるデジタル化であるからこそ、こうした投資に踏み切れたのだと思います。

「成長をめざす」という点で、自社の業務範囲から一歩出て効率化を行うことやお客様を理解して売り上げをあげることだけでなく、違うビジネスモデルなどで収益を上げることを考えていくのも重要だと思います。

米国のデータ組織には現在、組織自体を変える兆しがみえます。会社名は言えませんが、最近インタビューしたある著名な会社はデータ組織をわけていました。以前は中央に集めた一つのデータ組織で全ての分析をしていましたが、データを分析してビジネスインサイトを分析するチームを作ったようです。

自社顧客やトレンド、市場の動きなど、総合的に分析し、データから自社の収益成長に繋がる、ビジネスインサイト分析をする。データ分析は、会社が大きくトランスフォームするためにも活用できるのです。自社の成長のためにデータ組織を変える動きが出始めているのが興味深いです。

河野|  
データを分けたというより、チームを分けたのですね。

射場| 
そうです、チームを分けたのです。効率化のためにデータを見ているチームに対して「何か、あっと思うような、自分たちの知らないデータを見つけてくれないか?」と期待するのが間違いだと気づいたそうです。データを分析する目的を分けない限り、期待するような発見は出てこないと。

既存事業の最適化を行うためにデータを分析するチームと、データを使って自社の収益成長に繋がる発見を探すチームと、目的別に分けたのです。

河野|  
それは面白いですね。澤さんはいかがですか?

澤|  
NETFLIXは元々、弱小のレンタルDVD屋でしたが、郵送でサブスクを始めたのです。15ドルほどで借り放題、延滞金なしというビジネスモデルでした。そこからデジタルに移り、オンデマンドでオンライン配信にまで至ったのです。

まさに過去の延長線上ではなく、顧客が何を望んでいるかという視点にフォーカスしたのです。そして返却が面倒だというニーズに対する答えを最終的にデジタルの力で実現できたので、ネット配信大手となりました。

射場| 
データを分けて考える時に、顧客のニーズだけを見るのではなく「ビジネスインサイト」を見ることが重要と言われ始めています。ニーズは他社も気づいている可能性が高く、それを満たす機能、商品、サービスなどはもう作られている可能性も高い。他社がまだ気がついていなかったり、自社ならではの収益性が高いモデルやサービスが作れる「インサイト」をデータ分析技術を使って探す。

それを、データの専門家チームがビジネスチームと組んで分析し、掘り起こす。先ほどもグループを分ける話で触れましたが、トップマネジメントの直轄組織下で、そうしたインサイトを会社の戦略に活用する動きがでてきています。

10数年前は顕在化されたニーズを解決する事で大きなビジネスが実現できたのだと思います、中国でもアメリカでも。デジタル化が進み、顕らかな困りごとが少なくなってきました。もっと深いところで、顕著化されていない、自社の強みと組み合わせて収益性をあげるインサイトを掘り起こさなければならなくなったのだと思います。

データ分析や業界分析も、そうした視点で考えるのが大事かなと思っています。

河野|  
国内企業でも同様のことができると思うのですが、ハードルはありそうですか。それとも Just Do It.ですか。

澤| 
企業組織内の個人が持つリスクとは、怒られたくないことです。上司や株主、顧客、マーケット、ネット民といったところから怒られるのを避けようとする、これがリスクであると考える、チャレンジしないひとつの理由付けです。

ですので、怒る・怒られるでなく、チャレンジする・しないをプライオリティにすることが非常に重要です。

河野| 
先程の評価の話にも通じますね。ありがとうございます。 
射場さんはいかがですか?

射場|
大きな失敗をする経験や、それができる力を持っていれば、仮に今いる会社でうまく行かなくとも他社に行ける世の中になる可能性が高いと、私は思っています。難しいことかもしれませんが、失敗するのが怖くなくなれば仕事でチャレンジすることが本当に楽しくなります。

河野|
本日は、澤さん、射場さん、素晴らしいお話をありがとうございました。

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