この記事は、2023年6月23日に開催されたGrowth Leaders 2023の一部セッションレポートです。
コース数約2,000、累積ユーザーは約75万ID!グロービス経営大学院がベースのビジネス系オンライン学習サービス「GLOBIS 学び放題」を紹介
DearOne 泉|
DearOneカスタマーサクセスの泉と申します。よろしくお願いします。
DearOne 小島|
DearOneグロースマーケティング部でAmplitude(アンプリチュード)の導入支援などを行っている、シニアアナリストの小島と申します。よろしくお願いします。
DearOne 泉|
行動分析ツールAmplitudeに限らず、SaaSツールを導入した際に社内でなかなか定着しないという課題感を持たれているクライアント様もたくさんいらっしゃると思います。
本セッションではSaaSツール導入後に、社内で利用定着させていくためにどうするのかを、実際にグロースマーケティングに取り組まれている事業者様の事例を元に、ご意見を伺いながら参考にしていただけたらと思います。
GLOBIS 神崎氏|
株式会社グロービスの神崎と申します。「GLOBIS 学び放題」というプロダクトなどのマネージャーをしています。
キャリアとしてはデザイナーから始め、5年ほど前にプロダクトマネージャーになりました。学習に関するプロダクトなので、学習の顧客体験(CX)改善などに取り組んでいます。
「GLOBIS 学び放題」をご存じの方もしくは使ったことがある方は挙手をお願いします。(会場の大部分の参加者が挙手)
DearOne 小島|
すごく多いですね。
GLOBIS 神崎氏|
今日は開発責任者も参加しているので喜んでいると思います。
「GLOBIS 学び放題」はビジネスパーソン向けに展開しているサービスで、ビジネススキルを網羅的に学べることが特徴です。
学習方法としてはオンライン学習・動画学習がメインで、一つ一つの内容は短く細切れになっているので、お風呂やランニング中などのスキマ時間を利用していただきつつ、楽しみながら使われる方が多いです。
内容に関しては、グロービス経営大学院で培われた教材をベースに作られていて、コース数は現在約2,000あり、累積ユーザーID数が約75万となっています。
個人のお客様向けのプランは6ヶ月で11,000円、12ヶ月で19,800円の2つがあります。
DearOne 小島|
実は、私自身もグロービス経営大学院に通っていた時期があり、「GLOBIS 学び放題」でもたくさん学ばせていただいているので、こういった形で一緒に登壇させていただきとても光栄に思っています。
GLOBISは行動分析ツールAmplitudeをどう使っているか?
DearOne 泉|
自社サービスの中で、Amplitudeをどのように使われているか教えてください。
GLOBIS 神崎氏|
大きく三つあって、まず一つ目は「KPIの観測」です。
サブスクリプションサービスである「GLOBIS 学び放題」のプロダクトには6ヶ月プラン/12ヶ月プランがあり、その継続率をKGIに置いていますが、さらにそこから紐づく細かいKPIにブレークダウンし、ダッシュボードで管理しています。
二つ目は「機能改善」です。改善するにせよ新しく作るにせよ、どの機能がどれだけユーザーに使われているかを計測していますが、その際、単に利用率だけを追うのではなく、KPIにどれくらい寄与しているかも測定しています。
また「GLOBIS 学び放題」には検索機能があるので、その利用率やどのような検索ワードが多いかなども確認しています。
「GLOBIS 学び放題」は動画がメインなので、「コホート」機能でロイヤリティの高いグループと低いグループの差を見てその境目を見極めたり、どのような経路で見ている場合に最後まで飽きずに視聴してもらえるか?を導くことが重要で、そこから施策のアイデアにつなげています。
DearOne 小島|
普段ご支援していると、「ユーザー抽出」を行った上での効果測定や、KPI観測に関連してプロダクトがエラーを起こしたときの検知などに利用しているという声もよく聞きます。
DearOne 泉|
このように、Amplitudeにはさまざまな場面で使える豊富な機能がありますので、ぜひご参考にしてみてください。
熱量高く学習途中の社内エバンジェリストをナレッジ共有のハブに!
DearOne 泉|
続いて、SaaSツールと一口にいっても、Amplitudeに限らず今の世の中のツールはSaaSが主流で数多くあると思いますが、そうしたSaaSの利用者を増やすためにどのような取り組みをされているか教えてください。
GLOBIS 神崎氏|
ここが本セッションの本題で、私も具体的な施策をお話しできたらと思っています。私たちも苦労しながら取り組んでいる最中ですが、もし何か参考になればと思います。
先ほど申し上げた通り、弊社のサービスの前提としては6ヶ月プラン/12ヶ月プランにおけるサブスクリプションの継続率を基準にしています。
社内ではさまざまな人からプロダクトへのフィードバックをもらう機会があり、その中には、参考になるものもあれば、数字に基づかない主観的な意見も多いです。
もちろんGoogle Analyticsレベルですぐ見られればいいのですが、Amplitudeでじっくり分析しないとなかなか議論が進まない部分が多くあります。Amplitudeをさらに活用し、社内へ広げていくことで、数字に基づく議論の下地を作っていきたいと考えています。
導入前は、私と分析への熱意があるエンジニアの二人で「Amplitudeはすごいぞ!」と担当者を呼んで導入を進めていったのですが、そこから社内の他チームへと大きく広げるにはまだまだ途上にあると思っています。
そんな中、試行錯誤しながら3つほどうまく行った事例がありますのでご紹介します。
スライド左側が、社内のメンバーの最初の反応です。「Amplitudeなんて導入して、何かいいことあるの?」という反応もあったのは、必ずしも取っ付きやすいツールではないからです。
初めてAmplitudeを見たとき、とても多くのことができるがゆえに却って「わからない」、「ハードルが高そう」、「何がいいの?」と思ってしまう人が一定数いることも確かです。
別の反応としては「Amplitudeを使いこなすためには勉強しなきゃいけない」、「時間をかけてやらなきゃいけないのでしょう?」というものもあります。
それから開発ではなく企画職メンバーからは、「既に日々の業務ががっちり組まれているので、なかなかそこにアドオンで分析ツールを理解するために時間を割くことはできない」ともよく言われました。
このようにそれぞれのメンバーが異なる考えを持っている中、手を打っていく必要があったので、どうしたのか。
先ほど、熱意あるエンジニアと二人で導入を進めたとお話ししましたが、それ以外のメンバーに関しては、我々二人とのリテラシーレベルに差がありました。もちろん「使ったことがないものについてはよくわからない」というのは誰でも同じです。
そうであれば、「まずは熱量が高くツールを使いこなしている二人が主導して、他のメンバーを巻き込んでいくことから始めよう」と考えましたが、これはこれでなかなか難しいことでした。
というのは、やはりとても詳しく知っている人から、馴染みのない機能や用語などを何か当たり前のようにいろいろ話されると、わからないことがあっても聞きづらくなってしまう人もいるからです。
そこで工夫したのは、「中間くらい」の人に目をつけるということです。熱意自体はあり、ツールに興味を持っているが、まだ全然わかってないという人に白羽の矢を立て、その人をハブにしてコミュニケーションを取っていくことにしました。
そうすることで、そのハブになった人に「エバンジェリスト」のような役割を果たしてもらい、彼自身が「あれも知りたい、使ってみたい」となることで、周りのメンバーも共に学んでいくということができました。
勉強会を開催し、熱量をチーム外にも広げていく!
GLOBIS 神崎氏|
これによってエバンジェリストメンバーが中心となって、全員での勉強会を開催するに至りました。勉強会では皆、分析テーマを設定して実際に手を動かしながら進めました。
Amplitudeは多機能でさまざまなことができますが、最初一番わかりやすかったのは「ファネルチャート」機能です。
ファネル自体は他の分析ツールにもあり、扱いに慣れている人が多いので手軽に作りやすいです。
それから、ログ周りについても工夫しました。ログの一覧を見やすく分かりやすいようにしてあり、「ここをタップするとこのログが飛ぶ」、「ここのページに行くとこのビューログに飛ぶ」などの対応一覧と、Amplitudeとを並べながら見ていくということをしました。
その際、Amplitudeのユーザー検索なども使いながら、実際に触ったものに対してどんなログが飛んでいるかをまず理解してもらうことが、皆が最初に超えるべきハードルであったと感じています。
このように皆で勉強していく中、それぞれがチャートを作れるようになり、「こんな簡単に出るのか」、「これなら使ってみようかな」と態度変容が起きていきました。
そして、それぞれが課題に思っているところに対し、分析のゴールを明確化していけるようになると、単なる興味・関心レベルから目的達成のためへと利用用途が具体化していくというステップアップがみられました。
最後に、他の業務との兼ね合いという課題についてです。
Amplitudeを使うメンバーの上長に対し、「このような理由でAmplitudeが必要だから、こういうミッションの下、業務上時間を割いてもらう必要があります」とチームを超えて交渉することで、メンバーもSaaSツールを業務の一部として気兼ねなく使え、分析がやりやすくなります。
ここの体制を整えることが重要で、以上の3ステップで徐々にコンセンサスを広げていくことができると思います。
あまり再現性がない例かもしれませんが、たまたま新しく入ってきたエンジニアが分析好きで、「Amplitudeって面白そうですね」と言ってくれ、エバンジェリストのような動きも喜んでしてくれたということで、運が良かったです。
DearOne 泉|
キーパーソンを見つけることが大切なんですね。
GLOBIS 神崎氏|
はい。導入の当事者だった自分たちだと、現場のメンバーとは熱量や知識が違いすぎてどうしても乖離がありましたが、そこにはいい意味で客観的な視点を持っている「中間」くらいの人間の存在が必要だったのだと実感しました。
SaaSの活用ナレッジ共有にはチャートやダッシュボード、ドキュメントの活用を
(ここからは、会場にお集まりいただいた50名近くの事業会社マーケターの皆様にアンケートを実施した模様です。)
DearOne 泉|
非常に共感できる部分が多く、私たちとしてもすごく勉強になりました。ここでまた会場の皆様に質問ですが、「SaaSの活用ナレッジを共有するために何をしていますか?」ということで、お取り組みについて教えてください。
結果を見ると、「操作説明会・ナレッジ共有会」を実施されている方の割合が一番高く、先ほどご紹介いただいたような「社内エバンジェリストの育成」に取り組んでいる方は、まだそこまで多くないようです。それから、「何もしていない」という回答もそれなりにありますので、ぜひ今日のお話を活かしていただければと思います。
この点、GLOBIS様ではどのような取り組みをされていますでしょうか。
GLOBIS 神崎氏|
ここも至ってシンプルで、ナレッジ共有会などは以前から開いていたのですけれども、どうしても単発になってしまう傾向があり、準備などが大変な割にはコストに合わないと感じていました。そのような経緯もあり、前述のような当事者を巻き込んで全員が手を動かす勉強会という形に落ち着いたという経緯があります。
今、SaaSの活用ナレッジ共有のために行っていることは大きく二つあり、まず一つ目はAmplitudeダッシュボードの共有です。
メールでのリマインド機能やSlack連携があるなど、とても共有しやすい仕様になっているので、これらを活用しさまざまな場面にAmplitudeを登場させて認知度を高めることが重要です。
Amplitudeでできることは多岐に渡り、まずは実際にチャートやダッシュボードに触れて初めて「このようなこともできるのか」とわかってくる側面もありますので、その中で「ユーザーはここで離脱している」、「この機能はあまり使われてないね」などと実際にAmplitudeを見ながら日々の会話を行うことが有効です。
二つ目は「ドキュメントの活用・充実化」です。Amplitudeの「基本操作ガイド」*1https://growth-marketing.jp/knowledge/amplitude-guide-notion/はとても充実していますし、特に私が最初に読んだ「Amplitude虎の巻」*2https://info.amplitude.com/Retention-Playbook-JPはコンセプトレベルから良いドキュメントで、そのように多くのマニュアル類が揃っています。
それに加え、先ほどお話しした社内でのログ関連のドキュメントが意外と重要になります。チャートをどう作ったかの過程がわかるメモとその時に使ったログをセットで残しておくことで、メンバーの理解も進みます。
DearOne 泉|
「Amplitudeの登場シーンを増やす」ということで、とにかく見る機会を増やしていく取り組みと、それから勉強会などをしたときにログを残しておくことが重要なのですね。
DearOne 小島|
具体的に気をつけるべきポイントをご紹介いただき非常に勉強になりました。Amplitudeに限らず、SaaSツールはこれからますます広く使われ、重要性が増していくと思いますので、ぜひまた知見をご共有ください。
GLOBIS 神崎氏|
SaaS活用ナレッジの具体的な施策へのニーズが高まっていると思いますので、私自身多くの方と情報共有を進めていけたらと考えています。
スピーカー
株式会社グロービス|グロービス・デジタル・プラットフォーム部門 シニアプロダクトマネージャー 神崎 正明氏
「GLOBIS 学び放題」のプロダクトマネージャー。デザイナーとしてキャリアをスタートさせ、プロダクトマネージャーへキャリアチェンジしたのち、2018年グロービスにジョイン。GLOBIS 学び放題の受講画面を中心に、ユーザーの利用体験・学習体験の改善を行う。