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GLOBALIZED インバウンド 2.0|訪日DXで進化する日本の未来【カンファレンスレポート】

2023.03.20

この記事は、2023年2月16日に開催された「GLOBALIZED インバウンド 2.0|訪日DXで進化する日本の未来」のカンファレンスイベントです。

インバウンド2.0にアップデートせよ!Wovn TechnologiesとGLOBALIZED

WOVN 上森氏|
こんにちは、私はWovn Technologies株式会社 取締役副社長 COOの上森と申します。

私たちWovn Technologiesは2014年に創業し、インターネットを多言語化するソフトウェアを開発しています。創業以来、私たちのミッションは、「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」です。多言語化のシステム開発を技術で解決しようと、技術者であった林が創業し9年が経ちました。

GLOBALIZEDとは

Wovn Technologies株式会社 取締役副社長 COO 上森氏(左)

このGLOBALIZEDというカンファレンスは2019年に始まりました。日本に住んでいる外国人約300万人や、インターネットユーザーの約40億人、世界で「国際移民」と呼ばれる、自分が生まれた国以外で過ごしている約3億人など、これらの人々が母国語でネットを楽しめる世界を作りたいという目的を掲げ、さまざまな対談やセッションの場を重ねてきました。

ソフトウェアの国際化を進めて垣根を取り払うというものもあれば、地域ごとに適応する翻訳を含めインターネットをグローバル化するというコンセプトのものもあります。このようにさまざまなテーマの下、2019年から5回開催してきました。

今回のテーマ「GLOBALIZED インバウンド 2.0|訪日DXで進化する日本の未来」については、ワールド・エコノミック・フォーラムが2022年に発表した観光地に関するレポートにおいて日本が初めてランキング1位を取ったということ、世界中から「行きたい国」という評価を得ていることが大きな要因となりました。

また昨年10月には国の政策として、インバウンドを復活させようという流れもありました。

このような状況下、私たちは特に「インバウンド」に焦点を当て、あらゆる事業者、小売業、観光業、外食産業、システム開発などさまざまな業界の技術の話を通じて、皆様が本日、「インバウンド2.0」にアップデートされるお役に立てたらと思っています。

なぜ東京タワーか?「都市のランドマーク」が導くインバウンド

WOVN 上森氏|
本日は日本のランドマークとして知られる東京タワーでこのイベントを開催できることをとても嬉しく思っています。皆さんも普段、東京タワーに遊びに来たりすることはあると思いますが、どんな歴史を持っているのかを、株式会社TOKYO TOWER代表取締役社長執行役員の前田伸様にお話しいただけたらと思います。

株式会社TOKYO TOWER 代表取締役社長執行役員 前田 伸 氏
株式会社TOKYO TOWER 代表取締役社長執行役員 前田氏(右)

TOKYO TOWER 前田氏|
株式会社TOKYO TOWER代表取締役社長の前田と申します。まずは簡単に自己紹介ですが、2005年から現職を務めております。

当時を振り返りますと、ちょうど東京タワーにスポットを当てた小説や映画が増えていた頃でリリー・フランキーさん主演の映画や、『ALWAYS 三丁目の夕日』などの話題が盛り上がっておりました。

一方で、スカイツリーが建設されることが決まっており、私が最初に記者から受けた質問は「東京タワーはどうするんですか?取り壊すんじゃないですか?」というものでした。こういう状況の中、私の社長としての歩みがスタートしました。

東京タワーの歴史を振り返ると、おそらく多くの方がご存知の通り、1958年に建設されました。当時は、本日のテーマであるインバウンドのお客様がおらず、「インバウンド」という言葉すらなかったわけで、海外から日本への入国者数が年間で10万人程度。今や年間3,000万人を超える規模に増えていますので現在の300分の1、0.3%の訪日観光客しかいなかった時代にスタートしています。

当時、東京タワーに来られたお客様は、主に修学旅行生であり、新幹線も整備されていない時代でしたので、夜行列車でやってきていました。実は先ほどご登壇いただいた菅元総理が中学生の頃に東京タワーに来られたというのも、こういう中のお一人だったというわけです。

その後、2013年頃から電波塔機能が徐々にスカイツリーに移行していきましたので、電波収入が大幅減。また、「もう観光も駄目なんじゃないか」などと言われる時期がありました。

東京タワーはそこから、さまざまなメディアで取り上げてもらうなどして、「都市のランドマーク」、「街のランドマーク」として地位を確立できるようになってきました。

放送というのは一対不特定多数で、例えますと、大きな海に餌を撒くような情報発信です。これに対してデジタル・SNSはOne by Oneで、必要な発信者が特定の方とやりとりしていく。通信においては、このような両方のやり方を並行することで相乗効果があると思います。

東京タワーでのさまざまなSNS画像などの発信が、それを欲しい人に届く。情報としてここが相まって、「街のランドマーク」、「都市のランドマーク」としての地位の確立につながったのだと思います。

これは東京タワーだけの現象ではありません。ニューヨークのエンパイアステートビルディングでもパリのエッフェル塔でも、世界中の観光地がSNS上に映像などの形で繰り返し出ることによって、人々が「ああ、ここに行ってみたい」と思う。こういうきっかけが世界中に広がった。このことが、大きなインバウンド需要のきっかけになっています。つまり、世界から東京タワーに来て、ここでSNS発信すると「東京に来たぞ!」ということを象徴的に発信して再び盛り上がることができる。こういう時代へと大きく転換してきました。

ご承知のようにこの3年間、コロナ禍によりどこの観光地でも観光客が激減しましたが、各観光地がこれに一生懸命耐えながら、また政府もさまざまな施策を打つことで、今日、ほぼ乗り越えられる見通しが見えてきたと考えております。

現在、通常期の海外観光客数は80%程度まで復活してきております。2月16日現在、中国・タイの方はまだ戻っておりませんが、他の地域の方は通常時に近い数まで回復してきております。

東京タワーはもちろん、菅元総理が「インバウンド目標6,000万人」と掲げているように、今は日本全体が「量から質へ」と向かうべき時です。つまり、観光客にどれだけ消費をしていただくかが重要です。

本日の日経新聞のトップ記事も、観光客数が戻るだけではなく、どれだけ観光消費が戻ってきているかに焦点が当たっていました。

ですから入国者数一辺倒ではなく、さまざまな指標の整備が不可欠です。消費額もそうですし、恐らく滞在日数・訪問都市数など、今後さまざまな指標を整えていくことが、インバウンドを後押しする大きなポイントになるのではないかと考えており、この辺は観光局をはじめ政府機関にも大いに期待したいところでございます。

それから、日本がどうやら貿易赤字国になってきている中で、どうやって外貨を稼ぐか、これもインバウンドや観光事業だけでなく、そこから裾野を広げた全産業共通の大きなテーマですし、何よりも世界中の方が日本にいらっしゃって、人と人とが文化的な国際交流をしていくことの意義が今、問われていると思います。

世界では今、戦争が起こり国際的にぎくしゃくしているところがありますから、一番基本的な人と人との交流が、今の地球で最も重要なのではないかと考えます。私たち観光産業や、今まで観光産業と認識されていなかった全てのサービス業やお客様業全体が一丸となって、このインバウンドを盛り上げていけたらというのが今日、世界から愛されたい東京タワーからのメッセージです。

株式会社TOKYO TOWER 代表取締役社長執行役員 前田 伸 氏
株式会社TOKYO TOWER 代表取締役社長執行役員 前田氏(右)

WOVN 上森氏|
ありがとうございます。このように訪日インバウンドの取り組みによって、どんどん業界を盛り上げていけたらと考えております。

よく「コロナ前の水準への回復」という言い方がされることも多いですが、コロナ前の訪日観光客3,200万人に戻るのは2024年2月と予測されており、どこに行っても外国人でいっぱいで、ホテルは予約が取れない状態に戻るという試算が出ています。

ただ、この3年間でインフレ、為替の変化、戦争やサプライチェーンの混乱などさまざまなことが起き、価値観などが変化しているため、ただ戻すだけではなく、新しい価値体系を作っていけたらと考えています。

訪日需要・多言語化需要の高まりに応えるHuman Computationとは

「観光」ではなく「訪日」全体のDXが急務

Wovn Technologies株式会社 取締役副社長COO 上森 久之 氏
Wovn Technologies株式会社 取締役副社長 COO 上森氏(左)

WOVN 上森氏|
インターネットのユーザー数は2019年当時40億人でした。これが2020年には53億人ということで13億人増加。調べると、今までインターネットを使っていなかった人も、コロナ禍で仕方なく使うようになったり、仕事で使っていなかった人が使うようになったりして、13億人増えたそうです。

人口も5億人増えて80億人と、大きな成長がある一方で仕事や観光で日本に来ていた3,200万人の訪日外国人は90%減少しました。

2022年は約400万人で、当時に比べ大きく2,800万人が減った状況でした。なぜかというと、そもそもパンデミックや戦争があったり、金融的な量的緩和、インフレやサプライチェーンの混乱などさまざまなことが起きたので、海外の方も来日できなくなるような環境でした。

そんな中、訪日需要は高まっているというお話を、昨年の夏頃から徐々に聞くようになって、このことはデータにも表れています。

Forecast - 訪日消費額

2022年には約9,000億円のインバウンド消費があり、これが2023年は2兆円くらいになるだろうという予想されていたのが、2022年10月に3.5兆円くらいになるという上方修正がありました。

水際対策の緩和によって、外国人が入ってこられるようになるという上方修正をしたことで、当初の予想よりも2.6兆円大きく上回る3.5兆円の訪日消費額になる予定です。訪日外国人は来年1年間で約4倍に増えるとされており、さらにコロナ前の3,200万人という水準に戻るまで、あとちょうど12ヶ月だと言います。つまり2024年2月ですが、これも8ヶ月の前倒しです。

今回のGLOBALIZEDのお申し込みも、当初3,000人予定だったところ5,000人と約1.6倍のお申し込みがありました。そして、実際にご来場いただくご希望も想定の5倍以上いただきました。

これからも水際対策緩和の政策パッケージが出たことや、2025年の大阪万博、2030年頃にはニセコまで新幹線が通ったり、2030年には札幌で冬季オリンピックが開催されるかもしれないなど、インバウンドに関連するイベントがたくさん予定されています。

これに関連して、多言語に関するトレンドも紹介したいと思います。かつては一部の日本企業だけで使われていた我々WOVNですが、今では数多くの、主にはエンタープライズ企業の多言語化を下支えしています。

コロナ禍以前は、2つのマーケットにおいて多言語需要がありました。1つ目は訪日インバウンド消費(約5兆円)。それから2つ目が在留外国人の生活をサポートするサービス(約5兆円)。合わせて約10兆円のマーケットを対象にWOVNのサービスを展開していました。

ですが、コロナ禍によって全く新しい需要も出てきました。例えばグローバル規模でのDX、BtoBや製造業、それからSaaSを中心とするソフトウェア企業、留学生向けサービスの他、上場企業のコーポレートサイトでも海外投資家に情報提供するため英語化が求められていました。

中でも2023年以降、訪日観光客向けサービスに関するお話をとりわけたくさんいただいていることから本日のイベント開催に至りました。そこで、「観光DX」ならぬ「訪日DX」というタイトルに少しこだわってみました。

英語だとどちらも“Tourism”になるのですが、それを「観光」と言ってしまうと観光業だけに限定されてしまう感じがあります。しかしながら、インバウンドや訪日に関連するのはリテール、食品、外食業、交通、まちづくり、都市開発、宿泊、観光、レジャー、エンターテインメント、コンテンツ、アニメなど、あらゆるコンシューマービジネス*1一般消費者をターゲットにした商品やサービスなどを販売するビジネス。が関連するということで、「観光」と言わず「訪日」という言い方をしています。

1.0から2.0へ

さて、インバウンドが今後、新しく変わっていく上でのポイントをスライドにまとめました。ここでいう「Inbound 1.0」というのはコロナ禍より前に起きていたこと、それから「Inbound 2.0」として、2023年以降重要になるだろうことを3つの観点から並べてみました。

1つ目が昔から言われていますが、昨今、改めて注目が集まる「量から質」へ。2つ目が「訪日体験」をいかに設計していくか。そして3つ目が「多言語対応」、つまりどんな国の方々が日本に来るのかという話です。

まず「量から質」ということに関しては、昨年10月にインバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージが出されました。ここで掲げられたのが、「速やかに5兆円の消費水準に戻しましょう」ということでした。

かつて、コロナ禍より前のインバウンド政策では「目指せ訪日外国人4,000万人」、「2030年には6,000万人だ」ということで、私たちもその数字がまず頭の中にありました。ただし、これをより高度化すると変数がもう一つ増え、消費額5兆円という数字が中心に来ることになります。このように金額という変数も考慮に入れつつ、十分安価なネットと高価なリアル体験を両立させることが重要になります。

例えば、フランスのパリに住んでいる方が京都の雰囲気を楽しみたいと思ったとき、YouTubeなら月11.99ユーロ=1,500円ほどでいくらでも見放題で楽しめるわけです。一方、実際に日本に来ようと思ったら、航空券を買って、宿泊予約をしたりお土産も買ったりするだけで、少なくとも30万円はかかります。

つまり、インターネットで楽しむのか、実際に訪れるのかで使う金額は200倍も違ってくるわけです。しかもインターネットのサービスはどんどん安くなっています。他方、わざわざ日本に来て特別な体験として何をしたいかというと、ネットで見られるものというよりはそこでしか味わえないこと、買いたいこと、使いたいこと、してみたいことがあるはずで、それを考えていくことが重要です。

日本は、このような高額な価格帯に関しては伸びしろがたくさんあると思います。時間を節約したり、サービスをアップグレードしたりできる余地がたくさんあります。そして、この体験の部分に関しては、コロナ禍では都心での消費が中心になりました。

これに加え、今後は自然の中での体験というところを大きく重点的に出していこうと政府も示しており、実際これを希望する声も多く挙がっています。

このような、都心での消費と自然の中での体験とそこへの投資というのは、「消費が牽引する経済」をどんどん刺激しようという試みです。

たくさん買ってもらってお金が動けば、企業も潤うし景気も良くなります。一方で、ニセコが代表的なように「投資が牽引する経済」というものもあり、例えば、使っていない間にお金を稼ぐホテルコンドミニアムという仕組みを使えば、あるホテルに部屋を買い、使っていない間はAirbnbのように貸すことができ、投資としての収入も得られる上に、実際に遊びに行くこともできるという例が増えています。

他業種では、テスラが2016年に出したマスタープランもこれと同様の発想で、車に乗っていないときにカーシェアリングして、その間の時間を稼げるようにしたいというもので、消費に加え投資の概念が含まれています。昨今はNFTなどが流行っていますので、インターネット上のデジタル所有が増えていくことで、投資はますます身近なものになるのではないかと思います。

多言語対応 - 2019

次のトピックは「多言語対応」です。これは2019年の日本における消費の国別の割合です。中国、台湾、韓国、香港、米国の5ヶ国で7割を占めています。

米国を除くと6割が韓国と中華系の方で、ほとんどが中華系向けのサービス提供となりました。我々が多言語対応してきたのは英語、中国語の簡体字と繁体字、そして韓国語が断トツ多く、これらに対応できていれば一旦十分と言えるでしょう。

そんな中、ワールド・エコノミック・フォーラムが2022年に発表した観光地に関するレポートで、日本が初めてランキング1位を取ったことが示すように、「日本に行きたい」と世界中で言われるようになりました。

多言語対応 - 2023

そして、為替もドルはじめユーロやバーツのほか、インドネシアやベトナムの通貨など、それぞれ10〜20%円安になっています。従来より割安なお得感を持って日本に来やすくなっていることもあり、米中韓だけではなく、東南アジアのベトナム語、タイ語、それからヨーロッパのフランス語、スペイン語辺りへの対応が、2023年以降にまた新しく増えてくるだろうと思っています。

多言語対応

ただ、こういう言語対応の必要性は理解できていても、時間もお金もかかるし、急速に4倍も増えるとマンパワーでは対応できないこともあると思いますので、これをテクノロジーで解決していきたいと考えています。

多言語で拓くインバウンド2.0

Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長CEO 林 鷹治 氏
Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長 CEO 林氏

WOVN 林氏|
Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長 CEOの林と申します。私の方からは「多言語で拓くインバウンド2.0 –テクノロジーで言語の壁を乗り越える」というテーマでお話しさせていただきます。

コロナ禍により2020年以来、訪日外国人がほぼストップするという状況がありました。その間、日本で何が起きていたかというと、「DX」が一種の合言葉になってデジタル化が格段に浸透したり、日本語のコンテンツが増えていました。例えば、銀行も窓口ではなくネットで全部手続きできるようにするなど、さまざまな分野でデジタル化が進んだこの3年間だったと考えています。

2023年からインバウンドが復活する兆しがあります。直近のニュースによると、前月比で約84倍の外国人観光客が来日しているそうです。

先週、旭川にスキーに行ったのですが、大きなゴンドラに乗っていた日本人は2組程、あとは皆外国人で、スキー場などにはかなり外国人が戻ってきているなと実感しました。これから日本社会に急激に外国人観光客が押し寄せるというのが今、私たちが置かれている現状だと強く感じます。

これまでのWebサイト多言語化の運用方法

デジタル化が進み、多くのことがWebでできるようになったこともあり、外国人へのWeb訪日対応が急務になります。これからは、アクティビティやホテル、飲食などの予約サイトなども、外国語対応が不可欠です。

Webサイトを多言語化するに当たっては、従来、機械翻訳するか、人力で翻訳して多言語化するかという、主に二つの方法がありました。機械翻訳に関しては、ECサイトなどによく「この画像はイメージです」という注釈書きを見かけると思うのですが、「This image is an image」(この画像は画像です)と訳したり、また「ホーム」ボタンを「家」と訳してしまうなど、Webサイト上のコンテキストを理解せずに機械翻訳をかけるとそのような間違いをしてしまいがちです。

それから、英語にすると文章の長さが長くなってレイアウトが崩れてしまったりするため、どうしても人によるチェックや修正が必要になります。また、そもそも翻訳が適当かどうかわからないという問題もあります。

一方、人力翻訳だとどうなるのか。当然、どんどんコンテンツが増えていく中で、ものすごくお金がかかります。また、例えば上司から「これ間違っているよ」と指摘されるなど、多くのステークホルダーから誤りの指摘が入ったりもします。この対応にもすごく時間がかかります。

クオリティ・コスト・納期のQCDがトレードオフに陥ってしまうことが、課題だと考えています。

機械翻訳と人力翻訳が補完し合うHuman Computationが拓く未来

Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長CEO 林 鷹治 氏
Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長 CEO 林氏(右)

私たちは今、Human Computationという新しい概念や技術を使ってこれを解決しようと考えています。

かつて、スティーブ・ジョブズは「コンピュータは、知性の自転車である」と言いました。どういうことかと言うと、動物には「運動効率」というものがある。運動効率というのは少ない力で遠くまで行く能力のことですが、動物の中ではコンドルが一番高いそうで、コンドルは動物の中で最も少ないカロリーで遠くまで飛べます。

一方、人間はかなり運動効率が悪く、最下位から数えた方が早いくらい下の方にいます。ただ、自転車に乗った人間となると実はコンドルよりも運動効率が良く、少ないカロリーで遠くまで行けるという話を引用して、スティーブ・ジョブズは「コンピュータは知性・脳みそにとって自転車みたいな存在だ」という話をしたわけです。

人間とコンピュータのそれぞれにとって難しいことと簡単なこと

つまり、人間にとって難しいこととコンピュータにとって難しいことや、人間にとって簡単なこととコンピュータにとって簡単なことというのはちょうど真逆の関係なのだと思います。私もそうですが人間にとっては記憶・計算は難しいですが、状況判断は得意です。そして、コンピューターの場合はこれが逆になります。

Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長 CEO 林 鷹治 氏
Wovn Technologies株式会社 代表取締役社長 CEO 林氏(右)

つまり、Human Computationというのは、人間とコンピュータが得意なところと不得意なところをお互いが補完し合うという考え方に基づく技術で、ここからAIと人間の付き合い方には2パターンあると考えています。

まずは、AIが人間を補完するというパターンです。これは、どういうところで活用されているかというと、例えば最近だと名刺管理ツールや領収書管理のように、ただ写真を撮るだけで、それを全てデータにしてくれる技術がいろいろあると思います。これは画像認識に基づくデータ化ですが、画像認識だとやはりどうしても間違ってしまう部分もあります。そして、その間違った部分は最後、オペレーターが修正しており、つまり、ここではコンピュータと人間が補完し合っているわけです。

もう一つは、人間がAIを補完しているパターンです。例えば自動車や信号機の画像を選んで、「私はロボットではありません。人間です」という証明をするとき、実はそれと同時に、裏側でAIの学習データに使っているんです。

最近だと「ジェネレーティブデザイン」といって勝手に絵を書いてくれるAIや、ChatGPTという高精度のチャットツールなどが出てきていますが、これらはこうした膨大なデータで学習をしているもので、これはある意味、人間がコンピュータを補完しているといえると思います。

WOVN Autopilot

そこで、我々はLocalization(ローカライゼーション)という、Webサイトやインターネット上のコンテンツを多言語化するサービスを完全に自動化するためにHuman Computationを開発しました。

コンテンツはどんどん更新されていきますが、従来は更新を検知したら機械翻訳し、品質チェックをし、その中に問題を見つけたら修正してということをずっと繰り返しながら運用していかなければいけませんでした。

Autopilotはファイルと動画字幕に連携可能

これを自動で運用できるようにしようと考えたのがWOVN Autopilot(オートパイロット)という製品です。そのコンセプトは「5分で検知、10分で修正。全自動で安心のローカライゼーション」というものです。

機械翻訳では文脈を理解しない誤訳が多いという話をしましたが、WOVNでは今、裏側でAIと人間のハイブリッドであるHuman Computationにより、チェックと修正を全自動で行っています。そして、チェックと修正が完了すると、Webサイトは翻訳からレイアウトまで含め全て反映・修正されているというわけです。

つまり、QCDのトレードオフではなく、これらの両立を実現できるサービスになっており、事業者様は自身の有益な情報を作ることに専念することができます。このように、多言語発信は完全自動化できるので、頭の中のToDoリストから外してよくなるというサービスになります。

さらに、ファイルと動画字幕にも連携が可能になっていて、例えばWebサイトはPDFが貼られたり動画が埋め込まれているケースがあると思うのですが、それらの多言語化にも対応しています。

これらはあくまで進化の途上であり、Webサイトを多言語化するとまだまだ問題点が多くあります。例えば私は「文化適合」と呼んでいるのですが、入力フォームに「ふりがな」とあるものが自動で多言語化されても、外国人はそもそもふりがなを入力する文化がないんですね。このように不要な欄は取らなきゃいけないという考え方が「文化適合」です。また、世界には採用フォームで年齢を聞いてはいけない文化があったりなど、いくつかそういう文化の違いが存在するので、そういうところを適合させていくことが今後の課題です。

それから「法令適合」もあります。それぞれの国で個人情報に対する考えや法律は異なるので当然、法律違反にならないよう、それに合わせてプロダクトも変えていく必要があります。

このほか、もし暑い国でECサイトを開いてトップページにダウンが出てきても、誰も買おうと思わないですよね。暑い国ではTシャツ、寒い国ではダウンが出るといったコンテンツの出し分けによるローカライズも必要だと思います。また、そのECサイトに購入ボタンがあったとして、これをどう翻訳するかという問題もあります。「Add to Bag」、「Add to Cart」、「Purchase」のどの訳語がいいのかを、それぞれユーザーの動きを見ながら、実際に効果が高い翻訳を選択できるようにするといったことも、今後考え得る進化だと思います。

WOVNは改めて「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」というミッションを掲げて、日々プロダクト開発に取り組んでおります。

スピーカー

株式会社TOKYO TOWER|代表取締役社長執行役員 前田 伸氏
Wovn Technologies株式会社|代表取締役社長 CEO 林 鷹治氏
Wovn Technologies株式会社|取締役副社長 COO 上森 久之氏

関連リンク

https://mx.wovn.io/

https://www.tokyotower.co.jp/profile/

References
*1 一般消費者をターゲットにした商品やサービスなどを販売するビジネス。

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