この記事は、2022年1月26日に開催した「第1回 データモンスターNo.1決定戦」のウェビナーレポートです。
日本では初となる、Amplitude主催プロダクトアナリティクスの実務能力を競うデータ分析コンテスト。プロダクトデータを分析し、改善のための示唆を見出し、改善提案を行うというテーマに対して、50組以上のコンテスト出場と大反響のイベントとなりました。
エントリーチームには事前に「音楽ストリーミングサービスのユーザー行動を分析して、事業成長を提案する」という課題を提示、架空の音楽ストリーミングサービスAmpliTunesのデータを使って分析して頂きました。
今回のレポートは、コンテストで披露され最優秀賞を受賞した日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」のTeam LIFULL HOME’Sによる分析プレゼンの模様です。
Team LIFULL HOME’S
全体把握
まず、2021年11月のビジネスKPIの主要な外観を見ていきます。売上は昨期から今期にかけてほぼ横ばいで成長していません。
次に売上構成比別で見たところ、楽曲購入・チケット購入・広告でもあまり変動が見られません。
11月単月で見ても、各々3〜5%レベルでしか増えていないのが実状です。
チャネル別で11月単月のトラフィックを見ると、Email、ソーシャル、ダイレクトで約7割5分、Google からの流入が20%程度であるため、SEO対策での伸びしろが考えられます。
最後にリテンションです。一番下の青線が全ユーザーのリテンションですが、ソーシャル系の行動を取ったユーザーはおしなべてリテンション率が高い特徴があります。
サービスの分析
1.楽曲購入
まず楽曲購入のDAUを見ると二つの大きなポイントがあります。ユーザー数が土日に一気に減る特徴と、平日10時頃・土日12時頃にスパイクしている特徴です。
CVRの観点では、昨年と比較すると今年は約10%落ちています。そしてDAU同様CVRも土日に落ちるトレンドが見られます。
全ユーザーは最初のステップで大きく減っている一方、音楽コミュニティに参加したユーザーは殆ど離脱していないという特徴が見られます。
30日以内に7分以上聴いているとリテンション率が大きく向上するという分析が、ダッシュボードでありました。さらに深掘りすると、プロフィール編集や楽曲シェアといったサービス系の行動や、サービス化の上でのクリティカル系の行動を取っているユーザーは、リテンションが高い特徴が見られました。
一般的な楽曲の長さは3〜4分のため、1曲目を聴いたユーザーに2曲目を聴かせることで7分以上を実現し、リテンション改善に繋げられる施策の示唆が出ると考えています。
2. チケット購入
次にチケット購入です。DAUのユーザーが土日で減ること、一日のうちでスパイクする時間帯があることは楽曲購入とほぼ同じです。
CVRも同様に、昨対での悪化と、土日にCVRが落ちる特徴が見られます。
そこでチケット購入のコンバージョンユーザー分析を行いました。「コンサートのLP」の相関性が高いのは当然ですが、それ以外の分析を見ると「友達にシェア」「プロフィール編集」の行動で高い相関性が見られます。加えて、ソーシャル系の行動との相関性が高いことも分かりました。
さらにファネルで見ると、チケット購入の手前にある楽曲の再生とコンサートのLPの間に大きな落差がありますが、音楽を聴く行動とコンサートチケットを購入する行動では実際のところ隔たりがあると思われます。音楽購入には約50%が進むので、購入にはそれなりのハードルがあるものの、その後はスムーズにチケット購入に遷移しています。
それから、チケット購入を複数回行った人を、コンパスチャートでイベントとの相関性を見たところ、30日以内に5回以上では、楽曲のシェアやコミュニティ参加といったソーシャル系イベントと相関性の高い傾向が見られました。これは1回以上でも10回以上でもほぼ同じ傾向です。
施策の企画立案
以上を踏まえて今回我々がご提案したいのは、「“聴いて、シェアして、ライブ行って”キャンペーン」です。
具体的には、Day1からDay7までユーザーの自然なオンボーディングの流れに合わせて、ユーザー行動を活性化させるイベントを設定し、訴求して利用促進を行います。
上記設定したイベントはいずれも、楽曲の購入・チケット購入との相関性の強さが見えています。さらに7日間で達成させることで、土日に大きく減っていたユーザーを底上げし、事業の売上増につなげられると考えています。
ユーザー数・利用頻度から見た現状のソーシャル系の行動は真ん中より下の位置づけにありますが、これによって下表の右上に持って行くことでユーザーエンゲージメントを高め、事業売上拡大につなげられると考えています。
最後に、先ほど定義づけしたキャンペーンのマイルストーンですが、これはそのまま以下のプロダクト改善につなげられると考えています。
こういった継続的なプロダクト改善の取り組みも御社の方で行って頂くことにより、キャンペーン等の一時的な取り組みに限らず仕掛けを行い、事業売上を実現するというのが、我々からのご提案です。
Team LIFULL HOME’S メンバー
- 大久保 慎 氏
- 鈴木 真衣子 氏
- 東山 佳子 氏
- 相田 可奈子 氏
- 廣瀬 友哉 氏
- 水野 幸恵 氏
審査員コメント
データ相関関係を非常に丁寧に分析していました。ユーザー特性として、自分の0.1秒後の行動をついつい選択しているところがあり、それは惰性なのか選択なのか、その「つい」行動の積み重ねをいかに設計できるかで、大きく売上やリテンションが変わります。今回の発表はどこの「つい」を改善すれば良いのかを丁寧に発見しているのが非常に興味深いです。
Web解析の場合、ここにユーザーインサイトの仮説も一緒に考えるアプローチを取ることが多いです。音楽を聴いている状況のデモグラを類推したり、数値的根拠を持たせて生活シーンを可視化するといった取り組みです。
例えば、アプリで一曲聴くのは音楽にハマる、シェアするのは友達やファン同士の交流、ライブだと友達と盛り上がる、等インサイトが微妙にずれます。そのずれをいかに滑らかにするかに、施策やクリエイティブが出てきます。
分析→仮説としてのインサイト→その体験を滑らかに次に移動させるためのクリエイティブ、という観点を追求すると、よりAmplitudeの良さが実感できると思います。
【最優秀賞:Team LIFULL HOME’S】
日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」、いつでもどこでも誰でも快適でスムーズな住まい探しができるサービスを運営する株式会社LIFULLより、チームを代表してプロダクトプランニング1部 部長 大久保 慎氏が登壇。
【審査員】
- 米田 匡克 氏(Amplitude ジャパン・カントリーマネジャー)
- 朱 赫 氏(Amplitude ソリューション・アーキテクト)
- 山浦 直人 氏(Amplitude ソリューション・コンサルタント)
【ゲスト審査員】
- 窪田 望 氏(株式会社クリエイターズネクスト CEO & Founder)
- 松島 七衣 氏(Senior Sales Engineer, Dataiku)
- ウルフ松陰 氏(松下村塾株式会社 CEO & Founder)
LIFULL HOME’S様のWebサイトURL| https://www.homes.co.jp/