この記事は、2023年7月12日に開催されたBraze City×City Japanの一部セッションレポートです。
「新しい視点を集めて、経済の未来をひらく」NewsPicksを紹介!
Braze 新田氏|
こんにちは、Braze(ブレイズ)の新田と申します。
本セッションは、株式会社ユーザベース様のNewsPicks事業執行役員CMOの菊地様、同プロダクトディビジョン クリエイターエクスペリエンスユニット リーダーの加藤様にお越しいただき、共にセッションを行っていきたいと思います。
NewsPicks 菊地氏|
NewsPicksの菊地と申します。NewsPicksは「新しい視点を集めて、経済の未来をひらく」というミッションを掲げ、経済情報という形で皆様にさまざまなニュース・情報を届けるメディアです。
それは記者が新しい視点からニュースをお届けするのと同時に、有識者の皆様のコメントという形での新しい視点もあり得ると思っており、そのようにさまざまな「気づき」につながるようなメディアを目指しております。
単にニュースを知ってもらうだけではなく、インフォグラフィックや動画などでわかりやすく、いかに簡単に理解してもらえるかという点をかなり重視しており、そのようなコンテンツを数多く作っています。
現在の登録ユーザー数は811万人で、プレミアム会員・有料会員という形でお金をお支払いしていただいているユーザーは19.8万人いるという状況です。
弊社がBrazeを導入したきっかけは、マーケティングを担当している私主導で、いわゆるビジネスサイドから「さまざまなユーザーのエンゲージメントを高めたい」と考え導入したのですが、使っていくうちにやはりエンジニアサイドの理解も重要で、エンジニアが理解してくれればくれるほどビジネスサイドでもどんどんさまざまな施策ができるようになってくるので、いかにエンジニアを巻き込むかが重要だということに途中で気付きまして。
そして弊社の加藤がBrazeをどんどん使いこなしてくれているので、本セッションでは実際に加藤の方から、具体的に使っている内容を説明いたします。
NewsPicks 加藤氏|
NewsPicksの加藤と申します。マーケターの方が多く来場されていると聞いていますが、私はエンジニアなので、エンジニアの視点からBrazeについてお話しさせていただきます。
エンジニアこそBrazeを理解すべき3つの理由
理由1:効率性と自動化 −年間コメント振り返りメール配信事例
NewsPicks 加藤氏|
タイトルにも掲げた「3つの理由」とは何かというと、「効率性と自動化」、「パーソナライゼーションとユーザー体験」、「分析と統合」です。
エンジニアの得意な領域としては、やはり「効率性と自動化」という専門分野になりますが、Brazeを使う上では後の二つも重要になってきます。
それではまず「効率性と自動化」から紹介します。スライドは去年の暮れに実施した施策で、2022年のコメントを振り返ってみたという内容のメールを、いつもNewsPicksを盛り上げコメントしてくれているユーザー様に配信する施策を実施しました。
パーソナライズしたメールをお送りしているのですが、具体的な内容としてはコメントごとの年間合計「いいね数」や、ランキング形式でユーザー様が1年間に、コメントにもらった「いいね数」が何位かを配信しています。この施策は企画から2週間で配信しています。
スライドは社員のデータのみで集計した数字です。一般向けの結果もこれに準ずる高い数字が出ており、全体的な結果として好評をいただいた施策でしたので、これを受けて「それでは定期的に送ろう」ということで、「週間コメント振り返りメール」という施策を考え、開発・実施するに至りました。
これは前回のベースがあったのでそれを元に、「閲覧数」の要素を追加するなど若干の変更も加えつつ、2週間程度で開発できました。
スライドに、どういう構成で実施したかを示しました。データ分析基盤は各社でお持ちだと思いますが、実際に条件を付けて定期的に処理を実行できるワークフローエンジンを使い、データ分析基盤から事後的にデータを集計し、その集計したデータをBrazeに連携して、パーソナライズ化したメールをユーザー様に送るという構成をとっております。
アドホックに一度送るだけのときは、CSVか何かを用意して取り込んで送るだけなので、1日か2日で実現できる機能もBrazeにはあります。
このように、何かやりたいことが出てくればまずはアドホックに試して効果を見て、良ければ自動化して送ることができるようになっています。
具体的には、社内でまずはちょっと試してみて、要件さえ決まれば1週間ほどで実施できるので効果を見てみて、もしいい結果が出たら開発提案して回していくというこの一連の流れが、うまく回り始めてきたのが最近の状況です。
オンボーディングメール配信事例
また類似の事例として、初めて乃至3回目のコメントをしてくれた方に、オンボーディングのそれぞれ異なる内容のメールを3日に分けて送信した施策があります。
それから、コメントの閲覧数が100など一定の閾値を超えたら、次の日に自動的に「閲覧数が100に達しました」といった通知メールをお送りしたところ、ユーザー様の反応もとても良くうれしく思っています。
エンジニアの観点からみたBrazeの強み3選!
エンジニアの観点から、Brazeの強みを3つ挙げてみました。
まず個人的に一番いいなと思っているのはプッシュ通知です。プッシュ通知のよくある開発課題としては、特に大量配信でセグメントを動的に変更してパーソナライズしたメッセージを送るようなとき、数千通程度なら問題なくいけますが、それが数万〜数百万という規模になってくると結構開発のリソースに負担がかかってくるということが往々にしてあります。
そもそも、プッシュ通知はどういうケースで刺さるかというと、動的に変更されるセグメントに大量配信することなどが挙げられるのですが、これはそもそも実装がやや面倒になってしまうなど難しいため、大量配信が絡んでくると他の施策も圧迫するコストになってしまいます。
ただ、もしこのようなハードルを超えたユースケースが実現できるのであればすごく刺さると考えています。
2つ目はインテリジェント機能です。これはどういうケースで刺さるかというと、ユーザーごとに朝から夜まで開封されやすいタイミングは異なるので、最適化を自動的にBrazeが判別し、そのタイミングで送ってくれる機能です。
例えば、ABテストを最初はそれぞれ50%ずつで行っていたが、実際の効果があまりにも違ってきて「AよりもBの方がいいからそっちでいこう」と判断し、効果を最大化することが容易にできるようになります。
また、ユーザーごとに届きやすいチャネルという観点からは、メールがいいのか、あるいはプッシュ通知がいいのかなど、どのチャネルをユーザーが優先的に選んでいるか自動で判別してくれる機能が備わっていて、同様のケースではさまざまな使い道があるだろうと思います。
そして、3つ目がアンケートです。アンケートというとSaaSのサービスを契約するか自前で作ることになると思いますが、外部サービスと連携する場合でも若干人手はかかってきます。
理由2:パーソナライゼーションとユーザー体験 −プッシュ通知のユーザー体験向上事例
NewsPicks 加藤氏|
そんな中、個人的にBrazeがいいなと思うのは、アンケートの結果がそのままユーザーの属性として設定できることです。
例えば「何に興味がありますか?」といった簡単な質問を1問だけ聞いたとき、その答えを使ってセグメンテーション化することがとても簡単にできるので、とても便利です。
続いて、ユーザー体験にフォーカスし事例を紹介いたします。NewsPicksではご存知の通り、プッシュ通知でニュースをお届けしております。
基本的に毎日決まったタイミングで配信する定時プッシュと、緊急事態時などに配信する速報プッシュの2種類があります。
実は、この定時プッシュは今もAIなどではなく、人間が選んでいます。弊社の編成チームが毎日どの記事がいいか考え、一つ一つ選んで送っています。
この記事の開封率を全体的に上げたいという課題があったため、そこで実施したのがスライドにある「事前テスト」というものです。
どのようにBrazeを使って開封率を上げているかというと、最初に10%のユーザー様に編成が配信直前までどれを送ろうかと迷いながら吟味したニュースを、均等に送っています。
それから5分後に、どの記事が一番開封されているかというデータを取得し、その結果を元に残りの90%のユーザー様に、そのニュースを一斉配信するということを実はしております。
これがなかなかいい結果を出しているのですが、やっていることはごく単純で、メッセージ内容、サムネイル画像とリンク先をどう送るか検討し、送った結果としてその開封率を取ったりしていました。
そこでさらに効果測定のために、編成が吟味して「これが一番である」と判断したニュースをABテストで設定・運用してみたところ、結果的に実際に送った通知の開封率と比較した差分が最大10%以上アップするという、良い結果が得られる施策につながりました。
このように、なかなか自前で実装するとなると「難しいな」と思うことでも、Brazeを使って簡単に開封率を取ったりすることによって実現可能になります。
理由3:分析と統合 −コストの最適化&効果の詳細分析の事例
NewsPicks 加藤氏|
最後に「分析と統合」です。ここで弊社のチーム構成について簡単にご紹介します。
私は現在プロダクトディビジョンという部門に所属しており、その中にも各事業ごとの開発チームがいるような構成になっています。
私はクリエイターエクスペリエンスユニットのリーダーを務めており、それぞれのチームにエンジニアやデザイナーなどが所属し、各チームがそれぞれ目標の数値を追っています。
各チームには、やはり「施策の結果を簡単に見たい」というニーズがあり、Brazeの「Currents」という機能がこれによく応えてくれています。
どのような機能かというと、Brazeで管理している多くのデータから任意のものを選び、外部連携することが設定だけで簡単にできるものです。
基本的に、Brazeはそれ単体でもさまざまなことができるのですが、全てをBrazeだけでやろうとしてしまうと、若干コストが膨らんでしまうという課題があります。
やはり「自社が持っている大量のデータと組み合わせて分析をしたい」と考えていたので、
そこでコストの最適化をしつつ、効果の詳細分析を行いました。
構成としては、Brazeからデータを分析基盤の方に出していて、それをBIツールで分析しています。
データはキャンペーン情報と合わせるので、何かキャンペーンを実行したら自動的に当該データが流れていくということができるようになっています。
その結果、何ができるかというと、例えばメールを送ったりプッシュ通知を配信したり、施策の種別に対してテンプレートのダッシュボードを作っておくことによって、施策を実行すると情報が自動的に連携されるようになります。
こうして、テンプレートとダッシュボードさえあれば、関連指標が見られるような構成になっており、弊社ではチームごとに数字を追っているのですが、自チームだけでなく他チームの目標も見ながら、高速にサイクルを回すことができています。
NewsPicks 加藤氏|
最後にまとめです。「エンジニアきそBrazeを理解すべき理由」は、限られたエンジニアのリソース・コストの中で最大限ポテンシャルを活かしていくには、設計がとても重要だからです。
ご紹介した事例のように、簡単な設定だけで外部サービスも含めた全体最適を目指すことが可能で、私たちエンジニア側の視点と同様、ビジネスサイドの視点もしっかり認識・理解し受け入れ、協調して目標達成に取り組んでいくことが重要だと思っています。
Braze × NewsPicks 3者ディスカッション!エンジニア間でBrazeの有効性をどう周知する?
Braze 新田氏|
加藤様から、まさにエンジニア視点でのさまざまなお話をいただきました。今エンジニアとしてBrazeを使っておられると思いますが、弊社のお客様を見ていると、なかなかエンジニアの中で積極的にBrazeの価値を理解し使っていくというようなモチベーションにならない企業様も、中にはいらっしゃいます。
加藤様がBtazeのことをどうやって知り、どういう経緯で「Brazeが有効なソリューションだ」というご評価をご自身の中で固められたのかを教えてください。
NewsPicks 加藤氏|
偶然、社内でBrazeに関する勉強会が開催されたことがありました。実は菊地が主催した勉強会だったのですが、最初は何か具体的な目的があったわけではなく、「どんなものか知りたい」という純粋な興味から参加しました。
そうして参加したときに、これも偶然なのですが、チームでこれから実施を計画している施策に使えそうな機能があり、詳細を聞いていくうちに「これを使ったらできるのではないか?」と思いました。その後、少し調べながら実施してみたら、それが実際にうまくいきました。
Braze 新田氏|
その勉強会というのは、菊地様としては「エンジニアも含めぜひ聞いてほしい」という意図・理由から開催されたのでしょうか?
NewsPicks 菊地氏|
まさにそうです。元々はマーケティングサイド主体でBrazeを導入し、そのさまざまな機能を活用して「これはとても有効だ」と思っていました。
ただ、それ以上のこともしようと思うなら、やはりエンジニアの力が必要だと考えていました。
もちろん、エンジニアの皆にも「Brazeがあるよ」と伝えてはいたものの、それが本当に有用かどうかわからない上に、エンジニアは忙しくて調べる時間もありませんでした。
正直、エンジニアの間でのBrazeの認知度はまだまだ高くないので、積極的に勉強会を社内で開かないと伝わらないという状況がありました。
社内での勉強会も実は1回だけでなく、新しい機能が出るたび2回、3回と地道に回数を重ねていました。そうすると、たまに加藤みたいに「あれ、自分がやろうと思っていることにBrazeの機能が使えるかも?」というシンクロが始まるエンジニアが出てきます。
語弊を恐れずいえば、エンジニアには少しでも楽にできるならそうしたいという習性があると思うので、「これで自分の仕事が楽になるならやろう」と使ってくれるんですね。
だから、「Brazeを導入したからエンジニアの皆さんも使ってよ」といってもなかなか重い腰を上げてくれませんが、自分から「仕事が楽になるぞ」と気付くともう勝手に使ってくれるというところがあります。
今も悩んでいるエンジニアがいると、「Brazeのこの機能が使えるのでは?」と押し売りの感じで提案していて、そこでうまく嵌まると「それなら使おうかな」となることが多いです。
実は加藤は、弊社の中でBrazeを使いこなすリーダーとしては2人目です。1人目は先にチームにいたメンバーで、課金の部分に関してBrazeを使っており、同時にユーザーのエンゲージメントの部分でも加藤が使ってくれているような状況です。
今また別のチームが、ユーザーのアンケートにBrazeの機能を使おうと考えていて、弊社の中でも徐々に広がってきています。
ですから、勉強会を1回で終わらせるのではなく、新機能がアップデートされるタイミングなどを見ながら、常に継続的に勉強会を開くことによって、加藤のようにエンジニアの中でBrazeの価値をしっかり理解してくれる人を徐々に増やしていく活動が重要です。
ビジネスサイドからするとこうした活動が不可欠で、最初は地味ですが加藤のように、一度「Brazeが結構便利だ」とわかってくれると、そのエンジニアがハブになってくれることも大きいです。
やはりエンジニアは、ビジネスサイドよりもエンジニアがいうことの方をより信じますし、加藤が「これいいな」と思うことは、他のエンジニアにとってもいいことに違いないので、そうやって広がっていくとどこかのタイミングでブレイクスルーが起きて、しっかり活用してくれるようになります。
せっかく契約しているからには「Brazeのサーバーに負荷をかけまくりたい」というのは冗談ですが、このように社内で広めています。
Braze 新田氏|
負荷はお手柔らかにお願いします。NewsPicksのメンバーの皆様を見ていると、マーケティングサイドとエンジニアサイドとが、とてもうまくコラボレーションできていると、私も肌で感じます。
その背景としては、今お話しいただいたように定期的に社内で勉強会を開催することで、Brazeの価値がわかるエンジニアの数を社内でどんどん増やしていくという狙いがある。だから、そのような活動が非常に重要なのだと改めて感じました。
エンジニア視点で役に立つBrazeの機能を深掘り!
Braze 新田氏|
2点目として少しお聞きしたいのが、先ほど加藤さんから、メールの大量配信をエンジニアが自前で作るのは大変で、特にパーソナライズをしていくようなメールだとものすごく手間がかかるというお話がありました。
メール以外でもそのように、自前で開発するのが大変であったりコストや時間のかかることはあったりしますか?
NewsPicks 加藤氏|
そうですね。コスト面も含め、先ほどの「インテリジェンス機能」などを自社だけで開発・実施するのは難しそうです。
メールテストもエンジニアの手が必要になるのですが、Brazeを使うと好きな値を埋め込んで検証するという部分が、実際に使っていてとても楽だと感じていて、社内で聞いてみたら皆同じような評価をしていました。
NewsPicks 菊地氏|
エンジニアには「作るのはいいけど、検証するのは嫌い」という人も多いですよね。
Braze 新田氏|
なるほどエンジニア視点でも、テストやデバッグなどの検証の部分でもBrazeの機能が使えるということですね。
それから、知ってはいるがまだ使っていないBrazeの機能で、「エンジニアのコストを下げるのに使えるんじゃないか?」など、今後使ってみたいものはありますか?
NewsPicks 加藤氏|
今一番興味があるのは「プレディクティブスイート」という機能で、ユーザーの行動を予測してくれる機能だと認識しています。
具体的に何に使いたいかというと、課金しそうな人や反対に辞めそうな人を、行動履歴から推定したいです。
それができれば、「この人はどれくらいのスコアで課金しそうか/やめそう」かといったことが、課金に限らずイベントを定義してしまえば推定できます。
そうしたことに興味があるので、Brazeのどの機能が最適かを、さらに考えていきたいと思っています。
Braze 新田氏|
実際に今、今NewsPicks様の方でプレディクティブに機能を検討され始めていると聞いていますし、まさに消費者の行動を予測することによって、予測結果が出た方に対して有効になりそうな施策を打っていくという形で使っていける機能だと思いますので、ぜひそこの活用を進めていただき、また成果をこのような場でご共有いただけると非常にありがたいです。
スピーカー
株式会社ユーザベース|NewsPicks事業 執行役員 CMO 菊地 幸司氏
株式会社ユーザベース|NewsPicks事業 プロダクトディビジョン クリエイターエクスペリエンスユニット リーダー 加藤 健一氏
Braze株式会社|日本市場プロダクト責任者 新田 達也氏