【ウェビナーレポート】2022年こそDXで店舗運営力向上!

2022.03.14

2022年こそDXで店舗運営力向上! 〜顧客体験を引き上げるデジタル活用〜
2022年こそDXで店舗運営力向上! 〜顧客体験を引き上げるデジタル活用〜

この記事は、2022年1月12日に開催した「2022年こそDXで店舗運営力向上!」のウェビナーレポートです。

安田
本日は、小売業界向けAIデータ予測プラットフォームAIseeをご担当されているコニカミノルタ株式会社の荒井様、飲食業界向けフードサービスDXプラットフォームOkageシリーズをご担当のOkage株式会社の碩(せき)様、そしてNTTドコモ戦略的子会社としてデジタルマーケティング支援を行う株式会社DearOneより長縄と安田が参画し、パネルディスカッションを行って参ります。

デジタル活用が進まない要因

DXの現状:国内企業のDX成功率は各種調査でも1桁台

安田
経済産業省や民間調査会社のレポートによると、DXへの取り組みに成功している日本企業は全体の3〜8%台*1出典:IT media エンタープライズ「成功率わずか1桁、「デジタイル敗戦」農耕の日本企業のDXその行方は?と、わずか一桁台にとどまっています。

デジタル活用が進まない理由

デジタル活用が進まない理由

デジタル活用が進まない理由の上位に「情報セキュリティ」や「リテラシー」が来ています。リテラシーとは、ツールを導入しても実際に使いこなせない、スキル面の課題が背景にあります。

IT投資の用途:日本では攻めのDXへの投資が不十分

IT投資に関して日米を比較したところ、米国企業は「ITによる顧客行動/市場の分析強化」といった攻めのDX傾向があるのに対し、日本企業は「働き方改革の実践のため」など守りのDX傾向があります。*2出典:JEITA「日本企業のDX に関する調査結果」日米ではDXに対する投資傾向が異なるのがビジネスの現状です。

そこで、デジタル活用が進まない要因についてどうお考えですか。

荒井
弊社顧客でも、PoC段階でROI測定や投資効果を求められて決裁がなかなか降りないなど、攻めの阻害要因が見られます。
その他、慣れ親しんだ従来のやり方で業務を継承したいという声も、阻害要因の一つです。

長縄
弊社顧客では、従業員のリテラシー問題があるため人的支援から相談したいという声が多いです。


弊社顧客の場合、営業企画部門は賛成でも情報システム部門で話が進まないケースもあるので、組織全体でチャレンジを試みることも重要と考えます。

安田
情報セキュリティがネックになることも未だあるのですか。


あります。相当分厚いセキュリティチェックシートを埋めるところから始めるとなかなか進まないので、実験的な観点からもセキュリティを大目に見て頂くことが必要と感じています。

荒井
親会社が伝統的な会社だと、オンプレミスの基準をクラウドにまで求められることがあり、基準から見直しが必要だと思います。

安田
一方で、DXの効果を社内でうまく謳えていないこともありますか。

荒井
PoCを小スケールにした故に効果も小さくなり、評価されない場合があります。しかし最初からPoCを大きく構えられるかどうか、そのバランスが難しいところです。

長縄
まずはやってみることですね。最初は初期投資を抑えてミニマムで行い、効果を見て分析しつつ、そこからリッチに仕上げていくのが重要と考えます。

安田
Okage株式会社様の場合、わかりやすいソリューションなので効果も伝えやすいですか。


効果がはっきり出る一方、スタート時にクラウドシステムへの抵抗感がネックとなって滞ることはよくあります。

長縄
弊社のクラウドSaaS型サービスは、あらゆる企業様と組み合わせるBest of Breed で創りやすい体系になっているため、販促アプリのクラウドへの抵抗はあまり聞かれないです。

DX成功事例とポイント

ユーザー行動データに基づくUI改善施策で、アクティベート率131%改善

長縄
これまでは「デモグラフィック変数(性別・年齢・職業)」や「サイコグラフィック変数(趣味・嗜好・ライフスタイル)」といった、属性情報を軸に分析・施策実行を行うことが多くありました。

しかし現在はユーザーの嗜好がかなり多様化している上に、例えば父親が持つECアカウントで娘が洋服や化粧品を購入しているケースもあります。
そこで行動を軸に分析を行った行動変数を基準に、ユーザーのニーズに合った情報配信を行うことが非常に大切です。

 

DX成功事例1

弊社でアプリ開発・分析を行っている飲食店業界の顧客事例です。
アプリに実装したプリペイド機能の利用率向上が課題であったため、分析を行ったところ、チャージに至る途中で離脱ユーザーが多くいる結果となりました。

そこで実際に、プリペイド登録→チャージといったステップごとにミッション化し、ミッション達成の形へとUI改善施策を行いました。結果、アクティベート率が131%改善しました。

データドリブンマーケティングにより、UI向上に加えて売上向上も実現した事例です。

安田
ありがとうございました。
碩さんも同じく飲食店業界の顧客を多くお持ちですが、前出事例との共通点はありますか。


アプリ開発からデータ分析まで行っているのは一部の大手飲食店チェーンに限られますが、テイクアウト・デリバリー・ECとビジネス多角化により、お客様の反応をつかみにくくなっているため、マーケティングに向けたオンラインのデータ分析が重要になると考えています。

荒井
弊社顧客でも、MAツールなどを実際目の前にすると、何を調べてどのような施策に繋げれば良いのかわからないという声は多く聞かれます。

長縄さんが伴走支援を行う際はどんな工夫をされていますか。またその場合、顧客側はどこに重心を置けばうまくバランスが取れるのでしょうか。

長縄
弊社では、ツール提供に限らず、伴走型として人的支援も行っています。また分析ツールを複数導入されている企業様も多いため、弊社のように示唆出しまで一貫して請け負える企業を見つけることも重要かと思います。

最終的に施策決定するのは顧客側なので、伴走するだけでなく、最終的な目標設計にも弊社が関わり、一緒に走る協力体制が重要になってきます。

荒井
同じツールベンダーの立場から、碩さんが顧客とのコミュニケーションで気を付けているのはどんなところですか。


DXに関しては、5年後10年後といった中長期的ビジョンを一緒に語り、シフトしていく中で何を一緒に取り組むか、顧客ごとにすり合わせています。

テイクアウトと店内飲食を統合管理して、完全キャッシュレスを実現

DX成功事例2


弊社顧客のドムドム様の先進的なDX取組事例です。

新橋にオープンした新しい業態のTREE&TREE’sは、オールキャッシュレスであり、モバイルオーダーのテイクアウトとモバイルタブレットのキャッシュレスレジを1Fに採用しました。レストラン形式のB1は、QRコードから注文する店内モバイルオーダーで、キャッシュレス決済です。

テイクアウトと店内飲食を統合管理して、完全キャッシュレスを実現した事例です。

またECサイトを立ち上げてマスクやアパレルグッズを販売したり、自社キャラクターを活用してEC販売の売上を伸ばしています。将来的にはアプリを作成し、店内モバイルオーダーで会員登録や、そこからEC販売につなげたり、店舗商品企画会議をアプリで行うアイデアも出ています。

オンラインとオフライン融合を図るためにも、アプリを活用し、店舗にいないお客様ともコミュニケーションを取りながらマーケティングを行うことが重要であると考えます。

安田
ありがとうございました。店舗は圧倒的に強い集客媒体であり、お客様理解には最善ですが、お客様が店舗にいない時間帯もデータ収集を行い理解を深める取り組みは非常に面白いです。

DX推進で入手したデータをマーケティングに活用することについて、荒井さんはどうお考えですか。

荒井
マーケティングありきで考えるのではなく、オペレーション改善から入り、DXを統合することで自動的に溜まるデータをマーケティングの最適化や未来の予測の基盤データとして活用し、二次・三次展開を繰り返すことが大切です。

グランドデザイン全体の設計からスタートすると時間がかかるため、まずは解決すべき課題にフォーカスした取り組みから展開していくことが、時代にマッチしていると考えます。

安田
一方で、店舗オペレーションやコスト削減の部門とマーケティング集客や売上向上の部門間で、オペレーション改善に向け取得したデータをマーケティングでうまく使うためには社内の横連携が必要ですが、なかなか難しいのではないですか。

荒井
難しいです。比較的規模の大きい弊社内でも、誰が何を使っているのかわかりづらく、また類似した仕組みを入れていることもあり、定期的な棚卸の必要性を感じています。顧客も同様だと思います。

長縄
弊社の大手顧客様でも、一部門が分析ツールを導入しても隣の部門は把握していないことがあり、統一して使える組織作りが必要と感じます。


ドムドム様の場合、比較的トップダウンで進められる組織だったため、DX推進は円滑でした。オーナー社長のいる中小企業の方が進みやすい傾向はあります。しかし大手企業でも社内で合意形成を行い、一体感を持ってチャレンジできるかどうかがポイントと考えます。

ただ、DXでキャッシュレスを推進することで現金のお客様が入れなくなり、現金売上に対する懸念もあります。一方で店員が現金を数える負担は減るので、その分お客様とのコミュニケーションが増えます。
最初から完璧を求めるのでなく、実際にやってみて発見をしていくのが大事と考えます。

ロイヤルカスタマー獲得の重要性と実態

ロイヤルカスタマーの重要性

長縄
DX化とロイヤルカスタマー獲得は因果関係にあると考えています。
ロイヤルカスタマー獲得のためには、溜めたデータをしっかり分析して、分析内容を基にニーズに合った最適な施策実行・情報配信が必要です。

パレートの法則によると、企業売上の80%を上位20%のロイヤルカスタマーが生み出しているため、この層の顧客獲得が重要になります。

マーケティングはトップファネルよりボトムファネルに

マーケティングはトップファネルよりボトムファネルに

従来のマーケティングは「トップファネル」であり、新規顧客を獲得することで初回売上向上につなげていました。しかし今後は、既存顧客のカスタマーサクセスを追求し、リテンション向上する結果LTVを高める「ボトムファネル」が重要になります。

ボトムファネルの拡大をしやすい業界

ボトムファネル拡大を行いやすい業界について、アプリMAU率からアプリ利用率の高い業種を見たところ、以下のランキングとなりました。

ボトムファネル拡大に成功している業界
株式会社DearOne 分析ツール「スマレポ」の結果より

1位~3位は日常使いの店であり、4位~5位は飲食店、6位~8位は比較的週末に行く店が入っています。全体的に高いMAU率が見られます。

安田
ありがとうございます。新規獲得より、既存顧客をロイヤルカスタマー化するのがアプリですので、MAU率の高さはロイヤルカスタマー拡大を示していると考えられます。
荒井さん、クライアントのロイヤルカスタマー獲得に向けた取り組みをお話頂けますか。

荒井
アプリを活用したロイヤルカスタマー拡大は、よく相談を受けるテーマです。例えば沢山のアイテムを持つ百貨店様は、高単価低頻度のお客様も低単価高頻度のお客様も総購入額があまり変わらず、誰がロイヤルカスタマーかわからないという悩みを抱えています。

そこで弊社のアプローチは、実売データを預かり機械学習にかけてセグメント分けし、派生要因がわかる仮説に対して施策を打っています。この形の支援は最近増えています。

安田
弊社も同じく、施策の成功率はやってみないとわからないため、いかに早く仮説を立てて試し、その結果、続けるかやめるか変えるのかを決定するのが大事であると伝えています。

荒井
やめる決断は大事ですね。いかに改善するかにフォーカスしがちですが、外れていることもあるわけで、やめて次の手を打つのもひとつと考えます。


小売業界に比べて飲食店業界はこれまで、CRMにあまり積極的に取り組んでいませんでしたが、コロナ禍を機にCRMへの意識が高まっています。

ロイヤルカスタマーの方々とEC立ち上げの商品について一緒に考えるといった、踏み込んだお客様とのリレーションシップ作りも考えています。お店に来れない間、その2割のお客様とどうつながってビジネスにつなげていくかが重要だと思っています。

安田
逆に、顧客層にターゲットを絞ることで出てくる悩みはありますか。

荒井
あります。先程の碩さんの、完全キャッシュレスにすると現金払いの人が離れるのではないかといったように、弊社顧客からの元々のオーダーが特定のセグメントを絞り込んでOne to One マーケティングに近いものを実現したいにもかかわらず、一方で絞り込みによりドロップしたお客様への機会損失を懸念するケースです。

ですので、弊社が「やりましょう」という言葉に乗って頂けるか、成功するかよりも進めるかどうかの分岐点になると考えています。

安田
まずは効果が高そうなところからやってみる、それができるかどうかが大事であると。

荒井
そして絞ったが故に、効果自体の見え方を過大評価しないことも大事です。ベンダーサイドとしても、評価の仕方をしっかり説明して正確な事情を伝えることが義務と考えます。

安田
進めていくための効果を客観的に評価するのは難しいですが、実際に始める際の目標設定のポイントについて、碩さんいかがですか。


弊社システムの場合、売上やオペレーションにゴール設定しています。店舗ビジネスではECとの連動が重要になるので、それも含めて売上を伸ばす目標設定がこれからは必要になってくると思います。

安田
モバイルオーダーシステムの場合、売上の上がり方をダイレクトに取れるため、評価しやすいイメージがあります。一方で長縄さん、アプリの場合はいかがですか。

長縄
弊社はPDCAより早いサイクルのOODAループを意識し、施策実行→検証→分析→施策実行のサイクルを回すことが重要と考えています。施策を回す中で良い悪いを分析し改善していくという、施策の回し方もポイントの一つです。

荒井
施策を沢山回せば回すほど、回すことが日課の仕事になると、振り返るタイミングを見失ってしまうので、我々のような外部メンバーが客観的に評価・サポートを行い、成功に向けて伴走することが大事だと思います。我々自身もツール導入をゴールに設定するのでなく、しっかり提案をしていくことが必要ですね。

長縄
ツール導入時に、KPIやKGIをベンダーと一緒に考えることも一つの手ですね。

荒井
ツールに知見があるのはベンダーサイドなので、我々もしっかり説明し顧客側も我々に頼る関係性が、成功要因と考えます。

安田
導入効果の目標設定について、荒井さんのところではいかがですか。

荒井
弊社は予測の仕組みを提供しており、業務標準化・効率化なので、誰の時間をどれだけ削減できたかを可視化していくことを伝えています。特に店長といったキーパーソンの時間をどれだけ解放できるかが、弊社サービス提供の価値です。

顧客のオペレーションをヒアリングしながら、弊社ツールを導入すれば現時間から削減できる時間をビフォーアフターで結果まで追う形です。

DXに着手する際に取り組むべきこと

荒井
まずやってみることに尽きます。ただ盲目的に行うのではなく、我々自身もお客様と目線をしっかり合わせた上で、効果や何を期待するのか提案を行う必要があります。
その上で「まずはやってみる」のが今後の取り組みとして重要なポイントと考えます。


知見が溜まっているお客様は、3~5年のスパンでDXを推進する意思決定の下で、行動計画を立てて新たなことにチャレンジし、知見を溜めることを繰り返しています。
一度きりで成功・失敗を判断せず、中・長期的視点でDX推進を捉えてチャレンジし続ける取り組みがベストと考えています。

長縄
まずは目的と課題を整理・把握することが大切だと考えます。様々な目的と課題に着手して自社に足りない部分を把握すれば、問い合わせるべきベンダーも明確化します。
全てを自社だけで決めずに、ベンダーにも頼って未開拓の課題を掘り出し、DX推進を行うのが良いと思います。

安田
本日は皆様ありがとうございました。

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スピーカー

Okage株式会社 取締役CSO 碩(せき)典一 氏

Webマーケティング会社経営などを経て、2016年にOkage株式会社に参画。
創業メンバーとして、SMB、エンタープライズ領域のセールス、自社のマーケティングを行いながら、セールス、マーケティング、パートナーリレーション各チームの組織化に従事。現在は、取締役CSOという立場からセールス・マーケティングの責任者を務める。

コニカミノルタジャパン株式会社 マーケティングサービス事業部MS営業部 荒井 勇輝 氏

2006年にコニカミノルタ(旧コニカミノルタビジネステクノロジーズ)に入社し、ICTソリューション企画業務を担当。2008年から、主にWeb・デジタルマーケティング領域を専門とするアカウントセールス及びソリューションセールス、マーケティングに従事。
現在は、AIsee(AIデータ予測プラットフォーム)事業のセールス・マーケティングの責任者を務める。

株式会社DearOne セールスデザイン部 ゼネラルマネージャー 安田一優

岐阜県出身。パソコン販売店店長、ITエンジニア、ITインフラSIerのマーケティングを経て、2020年よりDearOneに営業企画として参画。転職をするたびに職種が変わるという経歴。DearOneではインサイドセールス、パートナーアライアンス、マーケティングなどを担務。中小企業診断士資格保有。副業でマイクロソフトACCESSの受託開発を行う。

株式会社DearOne セールスデザイン部インサイドセールスユニット 長縄 和樹
大学卒業後、2017年広告代理店に入社。2019年から株式会社DearOneに新規・既存営業として入社しアプリの新規提案や既存アプリの改修プロジェクトに携わる。2021年4月からインサイドセールスユニットとして従事。

References
*1 出典:IT media エンタープライズ「成功率わずか1桁、「デジタイル敗戦」農耕の日本企業のDXその行方は?
*2 出典:JEITA「日本企業のDX に関する調査結果」

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