この記事は、2023年7月26日に開催されたAdjust Ignite Tokyoの一部セッションレポートです。
5日間でユーザー1億人!Threads(スレッズ)はTwitterを超えるのか?
data.ai 江副氏|
data.aiでSenior Account Executiveを務める江副と申します。よろしくお願いします。
Adjust 高橋氏|
AdjustでSales Leadを担当する高橋将平と申します。本セッションは「data.aiに聞く、日本の最新アプリトレンド」というテーマでdata.aiの江副浩一様にいろいろお話を伺う形で、皆様にとって有益な情報になるようお伝えできたらと思っております。
早速ですが今のトレンドといえばスライドにあるこのアプリかと思います。
data.ai 江副氏|
そうですね、話題のThreads(スレッズ)ですね。
Adjust 高橋氏|
会場の皆様も8割くらいの方がインストールされているとのことですが、ニュースなど見ていると「5日で1億ダウンロード突破」とか「でもTwitterには敵わない」「いやTwitterを超える」など、さまざまな声が挙がっています。
このような初速やデータという観点から、data.ai様ではどのように見ておられますでしょうか?
data.ai 江副氏|
7月にリリースされたばかりなので、皆様もまだ記憶に新しいと思いますが、1日のダウンロード数が世界で6,800万とのことでした。これは多分アプリ史上の最高値で、その後は段々1日1千万ダウンロードくらいに減っていき、直近は1日10数万ダウンロードまで落ち込んでいます。
Adjust 高橋氏|
データで見ると、日本は世界のユーザーの中でどの辺りの位置付けになるのでしょうか?
data.ai 江副氏|
一番ピークのときで、1日最大380万DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)くらいでした。
Adjust 高橋氏|
なるほど、5%をちょっと超えているくらいですかね。
data.ai 江副氏|
そうですね。驚異的な数字だと言えます。
Adjust 高橋氏|
Twitterが「X」に名称変更して、Threadsにも影響があるのかとても楽しみですが、ThreadsとTwitterやInstagramの数字を比較して、何か見えてくることはありますか?
data.ai 江副氏|
Instagramは元々大きな数字につながりやすいですが、インドやアメリカ、ブラジルなどは人口が多いのでThreadsのユーザーも、Twitterと比較しても自然とそれなりに多くなります。
また一般に、日本も含めた先進国でThreadsへの注目度が比較的高く、ユーザーも多くなっています。
ただ、Twitterがまだまだ圧倒的にユーザー数などで優位にあります。Threadsも1日に5,000万〜6,000万ダウンロードと健闘したのですが、TwitterはMAUが約6億あります。その辺り、まだまだ大きな差がついているといえるでしょう。
そして皆様もThreadsを使われていても、継続的に利用されている方となるとそんなに多くないのではないかと思います。しかし今後、もし魅力的な機能追加などが行われればTwitterとのパワーバランスが変わってくる可能性もあります。
Adjust 高橋氏|
なるほど。まだ出たばかりなのでデータも右往左往している段階だと思いますが、今後の動きも興味深いですね。
data.ai 江副氏|
はい。まだまだ注目です。
Clubhouseは未だ日本で7〜8万人、インドで100万人以上のユーザーが利用!
Adjust 高橋氏|
続いてスライドは一世を風靡した、会話を楽しむための音声SNSアプリ「Clubhouse」の最新のアイコンです。こちらのDAUなどはどうなっているのでしょうか?
data.ai 江副氏|
Clubhouseは2021年2月に日本でもバズって、そのときはDAUが100万人以上と、ユーザーの1/3は日本人でした。
Adjust 高橋氏|
1/3が日本ですか!?
data.ai 江副氏|
日本を皮切りに広がっていきましたが、その後は皆様もご存知の通り、ユーザーが増えないままグーッと低空飛行していったという経緯になります。
Adjust 高橋氏|
今でも流行っている国はありますか?
data.ai 江副氏|
はい、実は21年6月にインドでは約1,350万人のMAU、ピークのDAUは約530万人を記録していて、今でも300万人ほどが使っています。
Adjust 高橋氏|
人口の母数が違いますからね。
data.ai 江副氏|
一方、日本ではもう10万人を切っていて、7〜8万人になっています。
Adjust 高橋氏|
それでもまだ数万人も使っているのですね。
data.ai 江副氏|
深く使っている人は、使い続けていますね。
data.aiとAdjustが共同制作!モバイルアプリトレンド2023の一部を紹介
Adjust 高橋氏|
ここからは特定のアプリだけではなく、全体観のお話もさせていただこうと思います。
スライドはちょうど今日、data.aiとAdjustで作ってリリースした「モバイルアプリトレンド2023」です。
50ページにわたる大作、かつ日本のデータを見た内容で、data.aiとAdjustが共同で作っているので、信憑性といった点でも非常に読み応えある内容になっていると自負しております。
その中から、いくつか皆様が気になるであろうデータを持ってきております。
グラフの青い線はセッション、水色はインストールを表していて、一番左の2021年1月から右に向かって推移しています。
セッションは2021〜22年、比較的順調で9%伸びていて、さらに2022年の最後のクォーターから今年の最初のクォーターも1%増えているので、ずっと増えてきているわけです。
一方、インストールを見ると21年は右肩下がりに結構落ちているように見えるのですが、この辺りでは何が起きていたのでしょうか?
data.ai 江副氏|
まず全体の流れとしてセッション・インストール共に、やはりコロナ禍の影響が大きく出ています。
2021年はITの利活用が社会全体で増え、一種の「バブル」の様相を呈していたのですが、その反動もあり2022年はその伸びが止まってやや落ち着いた状況になりました。
インストールが減っている部分については、特に大ヒットアプリの不在が大きいです。2020〜2021年には、例えば先ほど紹介したClubhouseや、Zoomのアプリなどが多くインストールされました。
それが昨年は比較的少なかったということで、前年に比べ新規インストールが減ったということがあると思います。
Adjust 高橋氏|
もしインストールがこのまま減っていってしまったら、皆様のマーケティング施策上も困ってしまいますよね。
ただ、グラフの直近の数字を見ると微増傾向にあるようなので、2023年は明るいと捉えてもいいものなのでしょうか?
data.ai 江副氏|
確かに今年に入ってからセッション・インストールとも伸びているのに加え、他の指標を見てもやはり伸びているので、このままいってほしいなと思いますし、今の数字を見る限りはそのように伸びるのではないかと思っています。
Adjust 高橋氏|
慣れ親しんだアプリを開く回数は増えたが、新しいアプリが出てきていないので、インストールが伸びていないということだと思います。
ここでまた新しいアプリが出てきつつ、慣れ親しんだアプリも使うという形になれば、どちらのグラフも伸びていくでしょうから、2023年は期待の年かなと思っています。
アプリ内課金額はiOSで世界1位、Androidで世界2位!
Adjust 高橋氏|
こちらはアプリ内課金の状況を示すグラフです。これを見る限り、あまり調子はよくないように見えますが、この辺りについてはいかがですか?
data.ai 江副氏|
これも「コロナバブル」崩壊後の反動があり、先ほどのセッションやインストールと同じ動向が見て取れます。
Adjust 高橋氏|
ただ、直近のクォーターを前期比で見ると13%伸びていますね。1年前、2022年の第1クォーターも伸びていたかというとそうでもないので、傾向としてはしっかり伸び始めたとも見て取れますよね。
data.ai 江副氏|
その通りです。
Adjust 高橋氏|
このように、日本の課金状況は若干低調にも見えますが、世界ランクで見てみると実は1位なんですね。
data.ai 江副氏|
はい。これはもうゲームの影響が大きく、一人当たりのiOSの課金額は世界ランク1位で、Androidでも2位という状況です。ゲーム産業における日本の消費の大きさの表れと見ていいでしょう。
Adjust 高橋氏|
Androidでは2位ということですが、1位はどこの国でしょう?アメリカですか?
data.ai 江副氏|
いえ、アメリカは3位で、実は1位は韓国です。
Adjust 高橋氏|
韓国ですか?何か特別な要素があるのでしょうか?
data.ai 江副氏|
そもそも日本ではiPhoneユーザーが多いのに対し、韓国はSamsungのAndroidスマホが多く逆の構造になっているので、それが影響している可能性が高いです。
Adjust 高橋氏|
なるほど。iPhoneではなくSamsungのAndroidスマホを選んで課金しまくっているわけですか。
いずれにしても、日本は引き続き重要で注目される市場だということですね。
data.ai 江副氏|
はい。Androidにしても2位なので、世界の中でもかなり大きな位置を占めています。
バンキングアプリが人気の世界と異なり、日本で好調なファイナンスアプリはほとんどがスマホ決済!
Adjust 高橋氏|
続いてファイナンスアプリについて切り取ったグラフです。ファイナンスはお金に直接関わるだけあって、ガンガン伸びているグラフになっています。
私自身、日頃生活していて「アプリで払えるようにしてくれたな」、「さまざまな種類のPayが現れたな」、「PayPayの自治体コラボすごいな」などといろいろなことを感じていましたが、それらも影響しているのでしょうか?
data.ai 江副氏|
はい。皆様も日頃PayPayはじめさまざまな電子決済をコンビニなどで使われているかと思います。
それらの普及率が日本でも上がってきたことが一番大きいですね。
Adjust 高橋氏|
そのジャンルの内訳を見てみると、ほとんどがスマホ決済アプリでしたが、これってグローバルなトレンドとはやや異なりませんか?
data.ai 江副氏|
そうですね。ファイナンス/金融系のアプリって日本以外、例えば中国などでは基本的に銀行のバンキングアプリが1位ですが、他方日本だけ圧倒的にスマホでの決済額が多くなっています。
Adjust 高橋氏|
その要因は何なのでしょう?
data.ai 江副氏|
バンキングアプリが未普及ということもあるでしょうが、やはりPayPayの存在は大きいと思います。
また、世界の中でも日本は未だに現金使用率が高いわけですが、皆様も実感しているかもしれませんがここ数年、いろいろなお店で複数の決算手段が使えるようになってきていますから、それがこの数字にも現れているのだと思います。
Adjust 高橋氏|
そこにまだ世界と溝があるので攻めどきだということですかね。
来年からはNISAが新しくなるなど、またファイナンス領域が盛り上がってきそうですから、今後も注目していきたいですね。
ChatGPTアプリは50万〜100数十万DAUでまだまだ堅調!
Adjust 高橋氏|
ここからまた、個別のアプリに着目していきたいのですが、スライドは言わずと知れたChatGPTですね。
ChatGPTについて、アプリという側面からデータを見るとどういうことがわかりますか?
data.ai 江副氏|
皆様ご存知の通り、最初はWeb版から始まりものすごくバズった生成AIで、その3ヶ月後にスライドにもある純正のアプリがリリースされています。
それ以前は世の中に数多ある「◯◯AI」の裏側でGPTが使われているものが多かったのですが、このアプリが出てからは直接ChatGPTを使うユーザーがさらに増えています。
Adjust 高橋氏|
ChatGPTを毎日使うDAUもそれなりにいるのか、あるいは減衰傾向にあるのかどうかが気になります。
data.ai 江副氏|
記事などでは「頭打ちだ」とかいろいろいわれていますが、DAUで見ると約50万〜100数十万で推移していて、比較的順調だといえるでしょう。
ただ、アプリで使われている方よりWeb版を利用している方の方が多いと思います。ですから、まだWebで検索を行う延長でしか使われていないというのが現状でしょう。
日本では楽天よりAmazonが優勢だが、今もセール期間中に伸びるのは楽天だけ!
Adjust 高橋氏|
続いては、話題のAmazonと楽天のアプリになります。実際、日本ではどちらの方がより多く使われているのか気になります。
data.ai 江副氏|
日本では2023年6月のDAUは、Amazonが1位、楽天が2位となっています。具体的な数字は伏せますが、Amazonの方がやや優勢という状況です。
Adjust 高橋氏|
「Amazon Prime Day」や「楽天スーパーSALE」のときの上がり方には、やはりすごいものがあるのでしょうか?
data.ai 江副氏|
皆様そういうイメージをお持ちかと思いますが、ダウンロード数についてはどちらも普及しきっているということもあり、若干伸びはしますがあまり大きくはありません。
DAUについては「楽天スーパーSALE」のときに約10〜20%伸びているのに対し、Amazonも同様に、約10〜20%ほど伸びています。
セッション数も、Amazonは1日平均3回のところ、セール期間中は4回に上がるくらいですね。
中国発の越境EC「SHEIN」(シーイン)や「TEMU」(ティームー)は日本でもこれから伸びる!
Adjust 高橋氏|
ECつながりで、SHEIN(シーイン)とTEMU(ティームー)も見てみましょう。TEMUをご存知の方は少ないかもしれませんが。
data.ai 江副氏|
TEMUはSHEINと同じような中国発の越境ECで、最近日本にも進出してきて徐々にユーザーが増えてきています。
違いは、SHEINはファッションECであるのに対し、TEMUはAmazonみたいにさまざまなものを安く買える越境ECであることが魅力で、アメリカではアプリのトップダウンロード数の上位に食い込んでいるので、日本でもかなり普及するのではないかといわれています。
Adjust 高橋氏|
日本でもユーザーは増えてきているのでしょうか?
data.ai 江副氏|
会場の皆様の反応を見ても、日本ではまだご存知の方は少ない状況だと思います。ただ、これからますます伸びてくると考えています。
動画視聴アプリは海外勢よりTVerやABEMAなど国産アプリ勢が好調!
Adjust 高橋氏|
次は動画視聴アプリです。最近もHuluとDisney+が日本でセットプランの販売を開始したり、「NTTドコモPresents WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ スティーブン・フルトン VS 井上尚弥」がLeminoで独占無料配信されたりといろいろ盛り上がっています。
この辺りのトップレベルの動画視聴アプリは、ダウンロード数がまだガンガン伸びているのか、それともやや下がり気味なのかいかがでしょうか?
data.ai 江副氏|
かなり浸透しているYouTubeなどはこの一年ほど、正直あまり伸びておらず微増あるいは横ばいで推移しています。
またDisney+も日本ではむしろ下がっています。
Adjust 高橋氏|
反対に上がっているアプリはありますか?
data.ai 江副氏|
日本だと、国産アプリでTVerやAbemaTVがこの1、2年ユーザー数を伸ばしています。特に後者は昨年後半に大きく伸びました。
Adjust 高橋氏|
いろいろ勉強になりました。ありがとうございました。
スピーカー
data.ai|Senior Account Executive 江副 浩一氏
Adjust|Sales Lead 高橋 将平氏