購入して終了の「パッケージ型」から、継続して使用してもらうための「SaaS型」サービスへ移行を試みる企業が増えました。ここ数年で良く耳にするようになりましたが、「なんとなくSaaSってこんなものだろう」とぼんやり理解している人が多いように思われます。
そこでこの記事ではSaaSの基礎知識から、似た言葉PaaSやIaaSとの違いを解説します。
SaaS(サース)とは
SaaSとは、Software as a Serviceの略語で、日本語では「サース」と呼ばれています。供給側(ベンダー)のクラウドサーバー上で稼働するソフトウェアを、インターネットなどを経由することで利用者である顧客側が利用できるようにするサービスのことです。
SaaSは1998 ~ 1999年ごろに普及し始めた「ASP(Aplication Service Provider)が元になっています。その後2005年頃に、当時のASPが抱えていた欠点を解消したことで、ASPがSaaSと呼ばれるようになりました。
SaaSは大きくHorizontal SaaSとVertical SaaSに分けることができます。
Horizontal SaaS(ホリゾンタルサース)
Horizontal SaaSとは、凡庸性が高く、どのような業界や、業種でも利用できるSaaSのことです。Horizontalは「水平」を意味しており、ビジネス全般に適応する機能が搭載されています。
具体的には、Slackなどのチャットサービスや「人事向け」「マーケ向け」といったどの業界・業種でも必ず存在する部署で利用できるサービスなどがあります。
Vertical SaaS(バーティカルサース)
Horizontal SaaSが凡庸性が高く、どの業種でも利用できるのに対し、Vertical SaaSはある特定の業界・業種で利用されることを目的として開発されています。Verticalは「垂直」を意味し、垂直のように特定の業界で深いポイントで利用できます。
業界特化型SaaSとも言えるでしょう。最適なものをみつけ出すことができれば事業を大きく成長させることも可能です。
SaaSの特徴・実現できること
SaaSについて、その特徴や実現できることをご説明しましょう。
SaaSでは主に
・インターネット環境さえあればどこからでもアクセス可能
・複数名で管理可能
といった特徴があります。
インターネット環境さえあればどこからでもアクセス可能
SaaSはサーバー上で管理されているサービスであるため、インターネット環境があればどこからでもアクセスすることができます。コロナ禍で、リモートワークに切り替えた企業が多く存在しますが、これはSaaSが実現可能にしたと言えるでしょう。
また、「どこでも」という場所の制限だけでなく、「いつでも」という時間の制限もないため、朝早くに働いたり、夜間に働いたり、フレックスタイム制などのように時間に柔軟に働けるようになりました。
複数名で管理可能
SaaSでは、複数のユーザーや管理者で一つのファイルを共有することができます。一つにファイルに対して管理者全員が編集可能であるため、効率的に業務を進めることが可能です。
また、作業の進捗管理などもサービス内で行えるため、コミュニケーションミスから生じる認識の違いを防ぐことができ、時間短縮により効率的に、そして確実に作業を遂行できるようになります。
Microsoft Office365、Google Docs(Google ドキュメント)、Dropbox等のサービスを一度は利用したことがあると思いますが、これらのサービスが存在せず、ファイルを共有できないシーンを想像すれば、SaaSがどれほどありがたいサービスなのか理解できるのではないでしょうか。
SaaSと、PaaS・IaaSの違い
SaaSとよく似た言葉で、混同されがちな言葉が2つあります。「PaaS(パース)」と「IaaS(イアース)」です。PaaSはPlatform as a Serviceの略語で、「サービスとしてのプラットフォーム」を意味しています。
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略語で「サービスとしてのインフラ」として訳されます。
それでは、SaaSとそれぞれの違いについて紹介します。
SaaSとPaaSの違い
PaaSは「サービスとしてのプラットフォーム」という意味で、パースと呼びます。アプリケーションを実行するために必要なプラットフォームであるミドルウェアや、OS、データベース等を、ネットワークを経由して利用できるサービスです。
AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azureなどが代表的なPaaSとなります。
SaaSとIaaSの違い
IaaSは「サービスとしてのインフラ」を意味しており、「イアース」と呼びます。情報システム稼働に必要な仮想サーバーや、機材、ネットワークなどのインフラを、インターネット経由で利用できるサービスです。
IaaSの代表的サービスには、Amazon Elastic Cloudや、Googke Computer Engineなどがあります。
SaaSのメリット・デメリット
SaaSのメリット・デメリットをそれぞれいくつか紹介します。
SaaSのメリット
まず初めにSaaSのメリットを下記の3つ紹介します。
・手軽に導入できる
・導入コストが低い
・ソフトウェアの管理が不要
手軽に導入できる
SaaSの導入は非常に簡単です。
SaaSはパッケージ商品のようにソフトウェアをダウンロードする必要がなく、アカウントを開設すれば利用できるため、わずか数分で利用開始できます。
導入コストが低い
また、導入コストが低いというメリットもあります。利用するための環境構築が不要でパッケージ型のように一括購入をするわけではなく、月額制で、月々利用した分だけ支払いをするシステムですので、1ヶ月試しに利用してみることも可能です。利用してみて合わなければ解約をして、最適なものに出会うまでまた次のものを試すといったこともできます。
ソフトウェア管理が不要
SaaSでは、ベンダー側がソフトウェアの管理をしてくれるため自社でOSアップデート、セキュリティ対策を施す必要がありません。システム運用のためのメンテナンス費用等もかからないので、ランニングコストの計画も非常に立てやすいです。
SaaSのデメリット
SaaSのデメリットを3つ紹介します。
・カスタマイズの柔軟性が低い
・セキュリティ面の不安
・サービス停止時などの利用制限
カスタマイズの柔軟性が低い
SaaSはオンプレミス型のシステムと比較して、自社に適したものになるようカスタマイズなどができない場合があります。そのため、ある程度はアプリケーションに合わせて業務を行うことが必要です。
セキュリティ面の不安
SaaSでは基本的に、不特定多数の利用者に提供するパブリッククラウドを利用しており、誰でもアクセスが可能であるため、オンプレミスのシステムと比較するとセキュリティリスクが高いと考える企業も多くいます。そのため、重要度の高いデータを扱う場合には、少し不安が残りますので、プライベートクラウドのSaaSの利用などを検討してみてもいいかもしれません。
また、「インターネット環境内であれば時間も場所も問わず、どのような端末でも利用可能」「複数人で共有可能」というSaaSの特徴がありますが、利用者の不注意によって、情報漏えいのリスクが高まることも念頭に置いておかなければいけません。
そのため、会社内で利用時のセキュリティガイドライン等の整備が必要となります。
サービス停止時、メンテナンス時などの利用制限
SaaSはベンダー側で管理されているため、大きな変更を伴うアップデートや、問題が起こった際のサービス停止、メンテナンス時などには利用が制限されてしまいます。その時期に大きな案件があり、どうしても使う必要があるのに、という際にも使用できません。
ただ、メンテナンスやリリース時期は事前に告知され、利用者の少ない時間帯に行われることが多いので、その時期を把握しておけば大丈夫でしょう。
SaaSサービスの具体例
ここまでで、SaaSがどのようなものかを理解していただけたかと思います。ここからは具体的なSaaSサービスを紹介していきますので、抽象度を高めてください。
・Gsuite
・Slack
・freee
Gsuite
GsuiteとはGoogleが提供しているSaaSサービスであり、ビジネスパーソンであればほとんどの人が利用しているのではないでしょうか。Gsuiteの中には、Gmail、Goggle Map、Google Calender、Google Driveなど多くの機能があります。
Google DriveではGoogle Document、Google Spredsheetなどが含まれており部署やグループ内で共有することで効率的に作業を進めることが可能です。
Slack
Slackは、Slack Technologies, Incが提供するビジネス用チャットツールです。Slackもまた多くの企業で利用されているサービスで、チャット、ダイレクトメッセージ、チャンネル作成、音声通話等の機能があり、ビジネス上で必要なコミュニケーション機能を提供しています。
また、リマインダー機能が搭載されているほか、拡張機能が充実しており、外部サービスとの連携も容易にでき、Slack上でスケジュール確認や、メールの送受信等も可能で、作業効率をアップすることができます。
freee
freeeはfreee株式会社が提供する会計ソフトで経理や会計の業務に特化したHorizontal SaaSです。会計や経理の業務効率化に特化しており、中小企業や個人事業主の会計を自動化し、時間を削減することができます。
毎月freeeで経理処理を行うことで、決算書作成や確定申告も簡単に行えます。
まとめ
SaaSとはクラウド上で稼働するソフトウェアをインターネットなどを経由してアクセスすることで利用できるサービスのことです。インターネット環境であればいつでも、どこからでもアクセスでき、また複数名で一つのファイルを共有、管理できるのが特徴で、作業効率向上を目指すこともできます。