昨今、現代のビジネスにおいて重要なKPIとなるライフタイムバリュー(顧客生涯価値:1顧客からある一定期間を通じて得られる利益)が重要視されていますが「LTV向上のために何をしたらいい?」「ロイヤルカスタマーって誰?」などといった声もよく聞きます。
この記事ではデータドリブンマーケティングで企業のファンを増やす支援を行っている株式会社DearOneのメンバーが「LTV向上に必要なポイントは?ロイヤルカスタマーが求めること/求めないこと」を解説します。
代表取締役社長 河野
CTO 佐々木(以下 サム)
マーケティング 安田
経営企画 秋津
LTV向上に「ポイント還元」などのキャンペーンは逆効果!?
安田 今回のテーマ「LTV向上に必要なポイントは?ロイヤルカスタマーが求めること/求めないこと」について、皆さんのご経験に基づく豊富な実例も交えて、深掘りトークを行っていけたらと思います。よろしくお願いします!
河野・佐々木(以下 サム)・秋津 よろしくお願いします!
安田 LTV向上の具体例って皆さん何かご存じですか?
秋津 私の近親者でハンドメイドアクセサリーのEC販売を手がけている者がLTV向上に取り組んだ事例があります。
彼女がお客さんを先につかまえておきたいと考え、最初に行ったのはアクセサリーの「1,000円企画」でした。つまり、定価から「1,000円」まで安くすることによってフォロワーさんを集めることを狙ったんです。
この「1,000円企画」である程度の販売数は達成したのですが、あるとき「ちょっと待てよ?」と思ったそうです。「定価だと3,000円くらいする商品を一度買ってくれる人と1,000円の商品を3回買ってくれる人って、どちらの方がいいんだっけ?」という観点に一度立ち戻ってみたというんです。
そして、制作・販売側としては、後者だとやりとりも含めたコストが3回発生してしまうわけで「実は1,000円で売るのってあまりよろしくないんじゃないか…?」と気づいた。そこで逆に「3,000円で買ってくれている人は何に興味を持ってくれているんだろう?」という点を深掘りしてみました。
安田 うんうん。
秋津 すると、この3,000円の定価購入って実はブライダル、結婚式のときに買われているということがわかったんです。なので、コンセプトをガラッと変え「1,000円企画」はバチッとやめて、全部ブライダルの価格帯に合わせて、ブライダルブランドとして販売を始めたところ何と……売上が5〜10倍にグワーッと伸びていったんです。
安田 おお〜!
河野 すごいですね!実体験でその答えを導いたとは…。
秋津 いや〜、そうなんですよ。そうなるとやり方は、もう企画自体が変わるんです。これまでの「1,000円企画」というやり方をやめた結果、単価が高いので獲得コストを上げられることになり、結果、インスタ広告などマスの方でガーッと面を広げていくという方向にシフトしたんです。
そうなると、別にどこで結婚式を挙げてもらっても立地は関係ありませんのでECの強みが発揮されることになりました。投資対効果の観点からも、インスタ広告をベタ貼りしていた方がいいですからね。
安田 なるほどねぇ。
河野 いや〜、素晴らしい。「1,000円企画」だと「チェリーピッカー」的な人もたくさん来てしまうし、そういう人たちはそもそも「その値段だから買う」わけだから、逆に言うと「次もその値段じゃなきゃ買わない」ということになります。
そのうち、値引きをし続けざるを得なくなるはずですが、値引きってそんなに続かないから結果、安価にしているにもかかわらずチャーンが早まり、LTVが下がるらしいんですね。
安田 まあ、安いものしか買っていないわけですからね。
秋津 そうですね。
河野 うん。値引きで人を集めた場合、フリークエンシーは上がるが、トータルでLTVが下がることがわかった。そこでオルビスの小林社長は、CRM的観点で行っていたポイントプログラムのポイント還元率を思いっきり下げたらしいんです。いわゆる値引きを一気にやめて、本当にこのブランド「オルビスが欲しい」って言って買ってくれる人を残すという戦略に移したら、それがLTVに一番効いたとのことです。
安田 わかります。
サム 面白いですね。一般に「ロイヤルカスタマーを作ろうと思ったら、ロイヤリティプログラムを実施しましょう」といってポイント還元を行うことが「王道」だと思われているじゃないですか?
河野 うんうん「王道」ですね。
サム それをやめたんですか?
河野 一切やめたわけじゃないですが、還元率を大幅に下げたんですね。
サム その結果、LTVは上がったんですか?
河野 はい。ロイヤルカスタマーは「ポイントなんか関係ないんだ」と。彼らはオルビスが欲しくて買っているんですからね。
≪.LTV Memo≫
LTV向上にはポイント還元などのキャンペーンではなく、「この商品、ブランドこそが欲しい!」
と言ってくれる人 = ロイヤルカスタマーに絞った戦略が最も有効!
ロイヤルカスタマーが求めているのは自身のペースでブランドに関われること!
サム すごいですね!企業目線でお客さんを動かそうとすると逆効果なんですね。
河野 はい。お客さん自身のタイミングでブランドに関われる選択肢を幅広く持ってもらうことが大切です。
小林社長と直接お話しした際にも「需要喚起も大事だが、LTVの観点からはお客様がブランドに関わる選択肢を幅広く、一番心地良い形で持っていただくことの方がより重要で、お客様のペースでブランドとの接触頻度が多くなると、LTVの質も上がっていく」と言っていました。
安田 単価を下げるなどの小手先のサービスではなく、本質的価値を提供するというわけですね。
河野 そのように、一貫してキャンペーンよりブランドとしてお客さんとつながることを追究してきたオルビスさんがたどり着いたのが、データドリブンなパーソナライゼーションだったといいます。
秋津 LTV向上に不可欠な要素ですね。
河野 はい。小林社長の言葉を借りれば「企業としての目的はお客様にベネフィットを提供することなので、お客様が今後どうなりたいかという思いに一緒に伴走していくという考え方に基づき、顧客価値創出のためのブランド体験を進化」させていくことが肝心になる。そのためには、パーソナライゼーション施策に最適なアプリをコアに顧客体験を作っていく事業戦略が不可欠であるとおっしゃっていました。
サム アプリの開発支援とデータドリブンマーケティングの両方に携わっているDearOneにとって、何よりもうれしいお話ですね。
≪.LTV Memo≫
ロイヤルカスタマー自身のペースでブランドとの接触頻度が多くなるとLTVの質も上がる。
パーソナライゼーションに最適なアプリをコアに価値ある顧客体験を創出せよ!