IT技術の発展により、顧客の嗜好やニーズが多様化しました。以前はテレビや雑誌等のマスメディアを通じたマーケティング手法であるマスマーケティングが主流でした。しかし、現在では顧客が多様化したことにより、顧客一人一人に焦点を合わせたマーケティング、One to Oneマーケィングを施す必要が出てきたのです。
この記事ではそんなOne to Oneマーケティングの重要性・メリット・始め方を紹介します。
現代に合わせたマーケティングを実施しビジネスをグロースさせようと考えている人はぜひ参考にしてみて下さい。
- One to One マーケティングとは
- One to One マーケティングの重要性
- One to Oneマーケティングのメリット
- One to Oneマーケティングの始め方
- One to Oneマーケティング事例
- まとめ
One to One マーケティングとは
One to Oneマーケティングとは、「顧客一人一人のニーズ、特性に合わせたマーケティング」を意味します。ペルソナ*1・ターゲット層が多様化し、ITが急速に発展したことにより個々のニーズを満たすため、現代社会において必要なマーケティング戦略がOne to Oneマーケティングです。
One to Oneマーケティングは、これまでのマスマーケティングと異なり、顧客維持、顧客満足思考と顧客を中心とするマーケティング方法の一つです。
グロースマーケティング*2を実施するために必要な「顧客の行動理解」を行うためにも重要な役割を果たします。
One to One マーケティングの重要性
One to Oneマーケティングの重要性を理解するためには、Webマーケティングの手法が変わりつつあることを知る必要があります。
これからWebマーケティングの手法はますますサジェスチョン(提案)の時代へと入っていきます。
検索の時代からレコメンド(おすすめ)の時代を経てサジェスチョンの時代へと移り変わりました。検索の時代は、文字通りGoogleなどの検索プラットフォームを利用して、消費者が必要とする情報を、自ら検索することで取得していました。
そこからAIや機械学習が急速に発展をしたことによって、レコメンドの時代(消費者の趣向、興味に基づいたおすすめ)に突入をし、広告などで消費者の興味のある商品やサービス、Amazonでは消費者の購入履歴に基づいて商品をおすすめしていました。
これからはサジェスチョンの時代で、レコメンドの時代からさらにデータを細分化し、詳細に管理をすることで消費者の潜在的ニーズを満たした商品やサービスを提供する時代が訪れたのです。
そこで、サジェスチョンの時代を生き抜くためにもOne to Oneマーケティングが必要なのです。
One to Oneマーケティングのメリット
One to Oneマーケティングの重要性を理解したところで、次にOne to Oneマーケティングによって施されるメリットを紹介します。
顧客との関係構築
One toi Oneマーケティングを行う一つ目のメリットは「顧客との関係構築」です。顧客との関係構築は、顧客一人一人についてよく知ることから始まります。
顧客一人一人それぞれのニーズ、好み、購買意欲等を理解することで、それぞれに適切な商品やサービスを提供できるようになります。そうすることで「リピーター」や「ファン」が増え、持続的にビジネスをグロースさせることが可能になるのです。
顧客の満足度を高め、収益も高める
あなたが顧客の求めているものを提供し続ける限り、顧客はあなたのファンとなり、継続的に商品を購入、サービスを利用してくれるようになります。
One to OneマーケティングではAIや機械学習の技術を利用して、上記のような顧客一人一人のリアルタイムのデータ、過去のデータを集めて管理します。収集したデータを元に、ピンポイントで商品を提供することで顧客の満足度を高めて、結果として収益も高めることができます。
顧客の興味に基づいてキャンペーンや商品情報を届けることができる
メールを送信する際は、顧客一人一人のことを理解していることを示し、顧客が購入した商品を中心にキャンペーンを実施できます。
顧客一人一人に名前をつけてメールを送ることは非常に大切で、名前をつけることで顧客はよりメールを開封する傾向があります。*3
顧客が検索した商品、カートに追加した商品、カートから削除した商品、過去の購入品に基づいて提案を行うことが大切です。例えばAmazonは推奨商品を顧客それぞれの購入商品と関連しているものにすることで、大きく売上を伸ばすことが出来ました。
広告を適切な場所、時間に打つ
顧客データの収集に注力することは大切ですが、収集したデータを活用できる環境を構築することがより重要です。データを収集するだけでは、データは価値を持ちません。活用できて初めてデータを集める意味があり、社員全員がデータを収集し、データにアクセスでき、さらにデータを有効に活用する環境を整えることで、ビジネスをグロースすることができます。
収集したデータを活用することで、顧客行動を理解し、顧客の趣向、ニーズを把握し個々に適した場所で「ちょうどいいタイミング」で顧客にリーチできます。
One to Oneマーケティングの始め方
ここまででOne to Oneマーケティングの重要性、実施するメリットを解説しました。ここからは実際にOne to Oneマーケティングの始め方を見ていきます。
実施するために必要なステップは下記4つです。
- 顧客・見込み客を特定する
- 顧客と接触する
- 顧客の差別化を行う
- 顧客一人一人に合わせパーソナライズする
それではそれぞれのステップについて見ていきましょう。
顧客・見込み客を特定する
One to Oneマーケティングを実際に始めるためにまず、あなたの顧客・見込み客の特定をします。顧客の名前、住所、電話番号等の個人的な情報から、趣味趣向、ニーズ、習慣などできるだけ詳細に把握することが重要です。
さらに企業内のそれぞれの部署で、できるだけ多くの接点、媒体、場所で顧客行動を理解することでより一貫したサービスを提供することが出来ます。
顧客と接触する
早い段階で顧客と接触する機会を作るようにし、フィードバックを受けられる環境を構築しましょう。フィードバックは顧客が求めているものを正確に把握するのにとて重要な役割を果たします。ネガティブな意見は改善を試みるために、ポジティブな意見はさらに強化するために取り入れましょう。
顧客の差別化を行う
顧客は大まかに2つの点で差別化を行うことが出来ます。1つ目の点が、顧客の重要度で、”より”重要な顧客を特定します。2つ目の点がニーズです。顧客を特定することができれば、顧客を差別化することが可能で、より重要度の高い顧客にもっとも手厚く対応することが出来ます。
差別化を行うことで、その顧客の価値とニーズを反映させるためにそれぞれの顧客に合わせた行動を取ることができるようになります。
顧客一人一人に合わせパーソナライズする
顧客の数だけニーズがあります。以前は顧客全体をターゲットにしたマスマーケティングが主流でしたが、顧客のニーズが複雑化したため、これからはビジネスをグロースする手段として、IT技術やSNSを用いてOne to Oneマーケティングを実施する必要があるのです。
顧客それぞれに適切なサービスを提供するためには、上記で述べたように他部署とも連携をしてデータを扱うことで一貫したものを作り上げることができるようになります。
顧客それぞれに適切なサービスを提供するためには、まず第一に他部署とも連携をしてデータを扱うことが大切です。部署を超えての顧客データ管理が実現することでより深く顧客を理解できます。。さらにそれらのデータを活用することで一貫したサービス体験の提供を可能にし、顧客満足向上にも繋げることができるのです。
One to Oneマーケティング事例
One to Oneマーケティングの始め方を理解できたところで、ソニー、Spotify、Amazon3社の成功事例を紹介します。実際に行われた事例を理解することで、より具体的に理解することが可能です。
ソニー
ソニーは家電製品を中心としてマーケティングを行なっていました。しかし、市場が縮小傾向にあり、2020年以降は人口減少、高齢化社会といった社会的問題により、新規顧客の獲得が困難になると予想されました。そこで、ソニー商品を継続的に使用する顧客「ソニーファン」を増やすことを目的としてOne to Oneマーケティングに踏み切りました。
ファン作りを強化するために、顧客がソニー商品を知り、ファンに至るまでのそれぞれの顧客接点において異なる方法で、さらに顧客一人一人に寄り添って顧客が求めているものを、適切なタイミングで提供するようにしました。
One to Oneマーケティングを成功させるためにソニーは、データを一貫して管理すること、組織を超えた連帯体制を取ること、共通のビジョン・フレームワークを持つことが重要だと述べています。
Spotify
SpotifyはOne to Oneマーケティングを用いて、顧客それぞれに合わせたおすすめのプレイリストを作成し、提供しています。
このアルゴリズムを使用して、毎週新しい曲を含んだプレイリストを提供し、顧客を飽きさせない工夫を施しています。
しかし、このアルゴリズムに基づいて作成されたプレイリストは完璧ではなく、あくまでも過去に聴いた曲、聴かなかった曲に基づいて推測をしたものに過ぎず、パーソナライズを実施する初期段階においては、おすすめを提供するには保守的なアプローチを取るのがベストかもしれないと述べています。
パーソナライズやアルゴリズムを用いたOne to Oneマーケティングを行うためには、まず最もアクティブな顧客を特定し、試験的に試してもらう機会を設けるようにしましょう。そうすることで、フィードバックをもらい、改善を何度も試み、より良いものを提供することができるようになります。
ペルソナとは、調査に基づいて作成する架空のキャラクターのことで、貴社のサービス、製品、サイト、ブランドを同様の方法で使用する可能性のあるさまざまなユーザータイプを表現するために作成します。
Amazon
Amazonは莫大な量のデータを用い、顧客一人一人に最適な「おすすめ商品」を提供することで、2012年第二四半期の売上は前年同期の99億ドルから29%増の128億3000万ドルまで増加させることに成功しました。*4
同社は強力なアルゴリズムを使用して、検索商品、過去の閲覧商品、過去の購入品、過去にカートから削除した商品など顧客の行動を分析に、ホームページを顧客の趣向に合うようパーソナライズしています。
「一緒に購入した商品」や「この商品を購入したお客様も購入しています」という広告を打ち、さらにほしい物リストに入っている商品と顧客データを組み合わせることで大きく収益を上げることを可能にしたのです。これらの施策により多くの顧客がおすすめ商品から購入するようになりました。
まとめ
これまでマーケティングの対象が”顧客全体”だったのに対し、これからはビジネスをグロースさせるために顧客一人一人を理解し、それぞれに適した施策を打つOne to Oneマーケティングがとても重要です。
情報をできるだけ詳細に集め、社員全員がデータにアクセスでき、有効にデータを活用できる環境を構築することことで、より効果的にグロースマーケティングを実施できます。
*1:マーケティングにおける架空のユーザーモデルのことで、ターゲットよりも詳細に人物設定を行います。
*2:企業・事業・製品・サービスの持続的成長にフォーカスしたマーケティング活動の総称。行動理解、高速に施策を繰り返す、的確な目標・指標設計の3つを軸とする。
*3:https://www.superoffice.com/blog/email-open-rates/
*4:https://fortune.com/2012/07/30/amazons-recommendation-secret/