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Twitter BlueとSnapchat+を解説!メディアのビジネスモデルはハイブリッドのさらに先の多角化へ【海外Hot Info】vol.50

2023.03.28

今回の「海外Hot Info」は「メディア」の最新ビジネスモデルとしてTwitterやSnapchatの事例について株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。

認証にまつわるブラックボックスを見える化することで、企業向け課金に舵を切った「Twitter Blue」

Twitter Blue

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) 今回もよろしくお願いします!前回 は「メディア」のビジネスモデルの変遷と「ハイブリッドモデル」としての広告付き有料サブスクのお話でしたが、今回はTwitterやSnapchatにおける最新事例を紹介していきます。

昨今、従来の広告モデルからサブスクモデルに参入するSNSなどが増えてきました。Twitterで改めてリブランドされたTwitter Blueは認証済みマークが取得できる機能が目玉で、それぞれ個人アカウント・青色、企業・金色、政府系機関・灰色のマークを有料で取得することが主な目的になります。

このほか、個人向けに使いやすくなった機能もあるのですが、その中で重宝されているのはツイートの取り消し機能くらいでしょう。また、スレッドにおけるTwitter Blueユーザー優先表示の機能もあるのですが、タイムライン上にずっと勝手に出続けてしまうので、かえって批判を集めています。

つまり、ユーザーが離脱してフォロワーがいなくなってしまうのですが、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんもTwitter Blueに入ったところこの現象が起こって、「フォロワーが減ってしまった」とツイートされていましたね。

中村 「かえって逆効果じゃないか」と。

Mr.モリスギ はい。ただ以前は、どうしたらTwitterで認証マークを取れるのかについては、完全なブラックボックスでした。もちろん申請はできるのですが、どういう基準で通ったり通らなかったりしているのか、フィードバックもなくわかりませんでした。

時折、著名人が申請しても認証マークが取得できず、その理由もわからなかったり、企業やサービスのアカウントでも結構同様の例が多かったんです。企業アカウントや政府関連アカウントは当然、本物かどうかを厳しく認証しているとは思いますが、長らくブラックボックスだった部分をきちんと見える化したことは評価できると思います。

中村 イーロン・マスクもずっとそこを問題視したツイートをしていました。

Mr.モリスギ そうですね。イーロン・マスクがTwitterの経営者に就任してから、自業自得な部分もあると思いますが、従来の広告モデルの広告主が結構離れてしまったので、サブスクで収益を上げることは待ったなしの課題でした。そこで、狂ったようにコスト削減をしながら、サブスクでお金を稼いでいるという状況ですね。

中村 すごくわかりやすい構図ですね。

Mr.モリスギ はい。実はTwitter Blue自体は以前からあったのですが、どちらかというと個人向けの機能が多いものでした。それが、こうした認証の話をきっかけに、ターゲットとして企業やインフルエンサーなどビジネス側での課金重視に完全に戦略を切り替えたことが今回の大きな意味だと思います。普通の個人ユーザーは認証マークなどなくても別に構いませんからね。

言い換えれば、LINEと同じような戦略に切り替えたということです。LINEも結局、企業ユーザーからお金を取るかわりに公式アカウントとして認めるということを行っていますが、Twitterをそれと同様の形に変えようとしてるということでしょう。

中村 なるほど、わかりやすいですね。

コアユーザーが求めるニッチな機能を絶妙な価格で提供する「Snapchat+」

Snapchat+

Mr.モリスギ 次の例はSnapchatです。余談ですが、Instagramには「ストーリーズ」という短い動画の投稿機能がありますが、あれは実はこのSnapchatのコピーです。Snapchatが最初にストーリーズという機能を作り、Instagramがそれを真似したという経緯です。

もはや説明不要かとは思いますが、改めてストーリーズとは何かというと、24時間以内に消える短いメッセージや動画をアップできるコミュニケーションツールのことで、特に10〜20代に人気があります。SnapchatはAR機能がとても充実していて、画像や動画を加工できるフィルターなども、Instagramよりもかなり多くの種類を出しています。

このように、SnapchatはAR機能やコミュニケーション機能が若者向けに特化して作られているSNSで、もちろんストーリーズにも広告が存在するのですが、広告収益が作りにくいです。

どういうことかというと、Snapchatは個別のメッセージ送信が目的で使われることも多いので、ユーザーからすると個別のメッセージとして使っている画面に広告メディアが現れるとUXがとても悪くなるので、あまり頻繁にそういうことはできないんです。ですから、基本的には時々このストーリーズや、またSnapchat全体のマップみたいなのものがあるので、その中に差し込むくらいのことしかできません。

おそらく、それだけでは収益として厳しいということから、Snapchatも有料サブスクリプション「Snapchat+」(スナップチャットプラス)を始めています。まあまあ安く、月額約4ドル(約560円)で始められ、先ほどのTwitter Blueと似たような細かい機能が使えるようになります。

例えば、ストーリーズは通常24時間で消えるのですが、その期間を「6時間」「3日間」などのようにコントロールできたり、また自分が好きなインフルエンサーに課金ユーザーが返信すると、自分の返信がより上位に優先表示され、そのインフルエンサーが最初の方に見てくれるなどといったことができるようになります。

そのほか、「この人は僕の親友です」といった「親友フラグ」が立てられるなど、そうした細かい機能が使えます。こちらは、おそらく普段使い慣れていない人にしてみたら大したことない機能に見えるのではないかと思います。

ところが、ストーリーズで時間がコントロールできたり、優先表示ができたりといった機能は、「月額4ドルくらいなら、お金を払ってでもその機能を付けたいな」というちょうど絶妙な値段なんですよね。

中村 手頃だし、使い込んでるユーザーにとっては「まさにこういう機能が欲しかった」といったところでしょうか。

Mr.モリスギ はい。そういったさまざまな機能を寄せ集めてうまくパッケージングし、コアに使い込んでいるユーザーが求める価値を提供できているので、人気があって、開始1ヶ月で100 万ユーザーを達成しています。

中村 素晴らしいですね。

Mr.モリスギ これはSNSがサブスクを始め、単に有料にすれば広告が出なくなるというだけでなく、まともな機能が備わっていて人気を得ている珍しい例だと思います。

例えば有料のYouTubeプレミアムなどは、YouTubeオリジナルコンテンツなどを別にすれば、ほとんど広告を無くしたいという需要に応えているだけで、機能としての価値はSnapchatほど提供していないといっていいでしょう。ですから、Snapchatは成功例としてユニークでなかなか面白いです。

中村 なるほど。

メディアのビジネスモデルは物販やゲーム、クリエイターエコノミーなどさらなる多角化へ

ソーシャル/ストリーミングメディアの次のビジネスモデル

Mr.モリスギ それでは、メディアのビジネスモデルは今見てきたようなハイブリッドモデルが究極なのかというとそうでもなく、さらに拡大する余地があります。

例えばNetflixは2年ほど前から物販を始めたり、またゲームの制作スタジオも自前で持っており、ゲーム業界にも参入していたりします。そのように、NetflixオリジナルTシャツといったアパレルから、キャラクターが出てくるゲームまでを一気通貫で作っていて、ある意味、任天堂のようになりつつあります。

つまり、オリジナルコンテンツを使ってシナジーのある事業を展開し、プラスアルファで収益を高めようということに数年前から取り組んでいるわけです。ただし、会社全体の収益を大幅に上げられるだけの効果まではまだ出ていない現状です。

他方、Twitterはジャック・ドーシーが経営者だった時代からやろうとしていたことをイーロン・マスクが引き継ぐ形で、ユーザーアカウントに決済や口座連携といった金融機能を持たせる構想を発表しています。

また、クリエイターがブログやメールマガジンなどのコンテンツを、有料限定版として公開できるようにしています。ユーザーアカウント制御(UAC)モデルのクリエイターエコノミーをTwitterの中に作り、決済時の手数料などによる収益化を図ろうとしています。

そのように、Twitterをスーパーアプリに変化させていきたいという狙いがあり、同様の構想は旧FacebookであるMetaも抱いているでしょう。また、TikTokやInstagramもそこを狙っていると思われますが、広告と投げ銭によるマネタイズ以外は意外とうまくいっていない現状です。

もっとも、InstagramショッピングやTikTokショッピングなど、外部のShopifyと連携した試みもあったりしますが、そのように物販系に行くのか、あるいはデジタルコンテンツのクリエイターエコノミーに行くのかは、おそらく現時点では両方を模索している段階なのだと思います。

過去、SNS発で金融機能まで含めたスーパーアプリ化には、中国のWeChat以外にうまくいった例はないので、イーロン・マスクがそれを成功させられるかどうかが今後注目される点だと思います。

中村 そのようなスーパーアプリになることによる、より強力なプラットフォーム化を目指しているということで、とてもわかりやすいですね。

Mr.モリスギ 以上のように、今回の結論はどのメディアも多角化を模索しているということになりそうです。

中村 今回も大変勉強になりました。ありがとうございました!

≪中村`s Memo≫

メディアのビジネスモデルはTwitterやSnapchatが展開する「ハイブリッドモデル」にとどまらず、物販やゲーム、クリエイターエコノミーなどさらなる多角化へ向かう!


―次回の【海外Hot Info】では、ChatGPTなどAIが変えるコンテンツ制作!3D生成AI「Poly」を紹介について、引き続き森杉さんにお話を伺います。次回もぜひお楽しみに!

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