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進化するメタバース体験!RobloxとFortniteを起点とした新たなコミュニティとデジタル消費の広がりとは【海外Hot Info】vol.48

2023.03.07

今回の「海外Hot Info」は「メタバース」とは一体何なのか、そしてメタバースの現在について株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。

「同時接続性」は遅延の解消が難しい

安田 今回もよろしくお願いします!

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) 今回もよろしくお願いします!前回 はメタバースには7つの特徴があり、そのうちの「空間性」の実現が難しいというお話でしたが、今回は「同時接続性」「相互互換性」実現の難しさと、Roblox・Fortniteにおける最新事例を紹介していきます。

同時接続性

Mr.モリスギ メタバースの7つの特徴。続いて「同時接続性」についてです。オンラインで大量の人が同時に接続するとき、実はサーバーは違っていたりします。3D空間上の同じ場所に大量の人がいる状態をオンラインで作るのは実はものすごく難しいのです。

例えば、Fortniteにおいては、3D空間上で100人が同じ場所にいます。そこで100人で対戦して、最後の一人になるまで倒し合うゲームをやるわけです。

ちょうど100人くらいがゲームとして面白いという側面もあるのかもしれませんが、実はそれを1,000人でやれと言われたら、多分技術的にも難しくてなかなか実現できないと思います。一つのサーバーで処理できる能力やネットワークの遅延低減には限界があるので、同時に同じ場所に1,000人のユーザーを収容をすること自体が難しいんですね。

そこでどうするかというと、同じ空間に見えるものを量産し並列させて100人ずつ入れれば、皆が同時接続して遊んでいる感を出しています。Fortniteは何千万人、何億人が遊んでいるゲームですが、本当の意味で同じ空間にいるのは100人で、それが多重に様々な地域のサーバで行われています。ですので、例えば「バーチャル空間上で1万人が集まるライブをしよう!」ということになると、外見上どうしても「あれ、100人くらいしかいないぞ?」という状況にならざるを得ません。

また、ネットワークはどうしても遅延を伴います。特にeスポーツなどに顕著ですが、例えばオンライン格闘ゲームで人は20ミリ秒くらい遅延があっても許容できますが、50〜100ミリ秒にもなるとオンライン上でうまくプレイができなくなります。音楽でも例えばオンラインコンサートで3Dアバターでハイタッチをしようと思ってもタイミングが合わないということになってきます。

そのような遅延がサーバー・通信・表示・入力など各所で起こるということでゲーマー、特にオンラインの対戦ゲームなどのプレイヤーたちは、この遅延をいかに小さくするかに苦心しています。さらに言えば、こうした遅延があるという前提で動きを読んだりさえして戦っているような状況です。

このように、どうしても物理的に遅延が発生してしまうので、例えば私がアメリカの人と「一緒にオンラインライブ楽しもうぜ」と言っても、 ネットワーク遅延のせいで体験が台無しになるということも起こりえます。

安田 これは最早、物理的な問題ですね。

Mr.モリスギ はい。この辺は「本当に技術的に解決できるのか?」とすら思えます。正直、光の速さで通信できても遅延は起こるので、完全に解消することできないと言われています。ただし、本当に地球上のある地点と地点とを光速で通信できれば、人間を騙すことはできるので、100%の解決は不可能ながらもそこに近づけていくことになるのだと思います。

先ほど、ゲーム上の領域を並列させて、同時に接続してる感を作っていると言ったように、何らかの技術を使ってさもリアルタイムに大量の人がいるような状況を作ることはできるかもしれないとは思います。

ただ、実際に100人を1,000人や1万人にしようとしても、今すぐにはできないというのが現実だと言わざるを得ません。

安田 そうですよね。あるいは、圧縮技術の方を追究すべきなのかもしれませんね。

Mr.モリスギ 圧縮もそうですし、あるいは光より速い物質を探すしかないとか、本当に天才にしか解決できないような難問の一つだと思います。

「相互互換性」は企業/サービス間の提携が至難の業

相互互換性

それから、「相互互換性」です。こちらの方が「空間性」「同時接続性」よりも、まだ解決可能性が高いかもしれません。

これはNFTの文脈でもよく語られるのですが、メタバースというものは本来、単にオンライン上の一つの空間があればよいわけではなく、さまざまなゲームやサービスの間で同時に相互接続できるものです。

ところが現状は自由にコンテンツを別の場所に持って行ったり、反対にどこかから拾ってきたりできるかというと、そこに関しては全く未整備な状況です。

そもそも、メタバースを代表するRobloxとFortniteの両者だって、全く別物じゃないですか?例えば、RobloxのアバターをFortniteに持っていけるかと言われたら現状、持っていくことは不可能です。

「それなら、ブロックチェーンは共通規格なのだから、NFTを見せれば誰でも相互利用できる形にすればいいのでは」という声が聞こえそうです。確かに、下位のレイヤーに限って言えばその通りです。ただ、例えば「NFTによってRobloxのアイテムをFortniteで実現しようと思ったら、そもそもどういうデザインになるのか?」などの問題が発生します。

Robloxのアバターやアイテムはレゴみたいなブロック状のデザインなのですが、対するFortniteのよりリアリスティックなデザインなんですね。「ブロック的な見た目のアバターを、リアリスティックな描写をされる世界にそのまま持って来るのか?」、「別の場合も含め、それらのルールは誰が決めるのか?」というその一点に限っても、誰がどう調整するのかを考えると結構面倒な問題なんですね。

解決しようと思ったら、コンセンサスの下、記述のためのレイヤーをコンソーシアムみたいな形で作ることで「共通規格を作りましょう」といった動きが生まれない限り多分難しいでしょう。

他方、VR機器の中には既に実現例があり、例えばOculusと、Valveという企業が提供しているOpenVRという規格で動く別々なデバイスがあるのですが、OpenVRの規格においてもOculusが動くという、VRの共通規格は既に存在しています。ただし、これをメタバースで実現しようと思ったら、大げさに言えばVRの場合の1万倍くらい難しい話を、共通規格で整理しなければいけないことになります。

しかも、Apple、Roblox、Fortniteなどといった企業が一丸となって協力しないと、実際に相互利用できるような環境の実現は難しいでしょう。一番難しいのはそこで、技術的には頑張れば実現できないこともないのでしょうが、今まで囲い込み戦略で競争してきたビジネスサイドの要素が実現を難しくしていると言えます。

安田 確かにAppleなどは乗ってこなさそうですね。「むしろ、我々のところに持って来い」ということになりそうです。

Mr.モリスギ はい。そして、そんな駆け引きばかりが続いて、いつまで経っても真のメタバースは実現しないということになりそうです。水平展開型のEpic Gamesが、垂直統合型のRobloxや、Appleのことを批判したりしているのはそういうところにも原因がありそうです。

誰がどう協力するのか「みんなで頑張ろう」という動きが生まれない限り解決に向かわないハードルの高い状況です。何かすごいブレイクスルーや会社間のアライアンスなどが立て続けに出てこない限り実現は難しいでしょう。

安田 「空間性」「同時接続性」の方が感覚的には理解しやすいですね。「リアルとオンラインがつながらないといけない」、「多くの人が同時に入れないと世界として意味がない」という話はよくわかるのですが、「相互互換性」が保たれないとメタバースとは言えないという部分のデメリットは具体的にどこに出て来るのでしょうか?

Mr.モリスギ 「相互互換性」が実現されないと「結局、1個のゲームストアで遊んでいるのと同じに過ぎない」ということですかね。

例えば、私がセブンイレブンに行って、ひたすらセブンポイントのお金を貰って遊んでいるとします。一方、ファミリーマートに行っても、そのポイントは使えませんが、Tポイントだったら、どこでも使えるという状況に近い話だと思います。

囲い込み戦略と共通ポイントのどちらにもメリット/デメリットはあると思いますが、メタバースにおけるエコシステムがさまざまなサービスで生まれてくるためにはコンテンツ・サービスの相互利用が進まないと、恐らく単なるクローズドなコミュニティがたくさんできるだけで終わってしまうということですね。それは経済発展や社会全体の利便性向上という観点からは、あまり意味のないものになってしまいます。インターネットがこれだけ広がったのもオープンで共通規格が作られたからだと思いますし。

安田 なるほど。メタバース上の世界の広がりが狭くなったり、世の中へのメタバースの認知が加速しにくくなるということですね。

Mr.モリスギ 皆が皆、RobloxなりFortniteなりを使うわけではないですから、特定のサービスだけでなく、誰もがどんなもワールドへも行けるようになってほしいと思います。

安田 さまざまな人が多様な形でメタバースのサービスを利用できるからこそ、「メタバースって当たり前だよね」という社会が到来するということですね。

Mr.モリスギ そういう意味では、eメールみたいなサービスになるということでしょう。eメールにおいては、さすがのAppleもメールの共通プロトコルに従っていますから。

安田 そう考えるとメールってすごいですね。

Mr.モリスギ ウェブ1.0のインターネット草創期に作られたプロトコルが、未だに世界標準として誰からも使われているというのはすごいと思います。

そのメタバースバージョンが本来求められているのですが、ただWeb1.0の頃と事情が違うのは、もうビジネス全体が成長しすぎてしまっていることです。GAFAMなど、一定のプレイヤーが強くなりすぎてしまっていますので。

安田 そうですよね。

Mr.モリスギ 今からオープンな世界に戻ると言っても、そこまで大きくなった会社にとってはビジネスメリットを生みづらいので、転換に向かう強烈なきっかけでもないと、なかなかそのような方向には向かいづらいでしょうね。

例えば政府による規制か、あるいはWeb3.0企業がGAFAMを超えるくらい発展するといった、インパクトの大きい出来事が起きるまでは、まだまだ時間がかかりそうだと思われます。

Roblox上で進化するデジタル消費最前線

メタバース上の体験は徐々に進化している

それでは、メタバース実現の可能性は全くないかというとそうではなく、確かに7つの条件を満たした真のメタバースという理想との間には多くのギャップはありますが、それでも今、ただの3D空間上で起こっていることだけでも、面白い事象はたくさんあります。

例えば、メタバースにおける新しい消費などが既に生まれています。私はそういうものを全否定するつもりはなく、場合によっては積極的に乗っかってもいいのではないかと考えています。

将来的に、メタバースが目指していた姿に到達できたとき、その部分部分の整備が既にある程度進んでいれば、ビジネスパーソンとしてより良い選択ができるのではないかとも考えます。

具体的には、Robloxではアバターに着せるデジタルファッションが盛り上がりを見せています。Robloxでは自分だけのキャラクターがさまざまな別のゲームを行き来できるので、その自分だけのキャラクターを着飾ったりとか、アバターを頻繁に変えたりといったことがすごく流行っていて、既にそれに特化した経済も形成されています。

そうしたデジタルの服やアクセサリーをデザインするクリエイターは1,150万人いると言われています。

安田 すごい数ですね!

Mr.モリスギ RobloxのMAU全体の40%くらいはアバターを頻繁に変えていたり、またZ世代の4分の3はデジタルファッションにお金を使うということで、50ドルとか100ドルとか、私よりも多く使っているなと思いながら見ています。

それだけ若い世代の感覚では、デジタルファッションがとても重要になっているということですね。そうすると、NikeやVANSなどの人気ブランドが、Robloxの中に独自のワールドを作り、そこでRobloxのアバター用のアイテムなどを提供して、デジタルファッションを楽しんでもらうということをしています。

つまり、ファッションブランドがデジタル化してRobloxの中で展開されているのを楽しむことができるということで、これは一つの新しいマーケティングで、カルチャー作りにもなるということですね

ただし、誰でもバーチャル空間上に何かしらの店舗を作ればモノが売れるというわけではなく、あくまでブランド企業がRobloxの中でしっかり10代にリーチできるよう、ブランドを活かしたアイテムを作ったり、体験を提供しているからこそこういう結果になっていることに留意する必要があります。特に日本では未だに誤解されているふしがありますが、誰でもバーチャル空間上でアイテムを売ったりアバターを提供すれば、飛ぶように売れるということではありません。

やはり、Z世代がRobloxの中でゲームを楽しんだり、友達とチャットを楽しんだりしているというRoboloxのカルチャーを理解した上で、その中でマーケティングやブランディングを行うことが重要で、そういう意味ではファションブランドがリアルの世界でやってることそのものだとも言えます。

安田 確かに、日本人はハコモノを作りたくなりがちですよね。

Mr.モリスギ ハコモノを作ること自体は、必ずしも悪くはないのですが、Robloxではなかなか成功しづらいと思います。

日本企業でもそういう企画はありがちなのですが、NikeやVANSは手段としてRobloxのハコモノを作っているだけで、実際にやっていることは彼らが普段からファッションブランドとして行っていることと同じであることを忘れてはいけません。そこが元々うまくないと、いくらハコモノやアバターを作ってもあまり意味はありません。

Robloxはブランドと協力しエンドユーザのデジタルファッションを上手く演出しつつし、ビジネスとして面を取りに行く戦略もありますね。Roblox内のゲームの中にOOH(屋外広告)をたくさん設置して、アバターがそこをくぐると着替えができるといった仕掛けをよく作っています。特に新世代向けには、こういう波に乗ってマーケティングをやってみることも有効かもしれません。

Fortniteのワールドやコラボ企画はZ世代へのブランディングに有効!

Fortnite|Support-A-Creator / Creator Code

続いてFortniteの例です。FortniteはRobloxに比べると、クリエイターエコノミー感が若干弱いのですが、それでもFortnite内に独自のワールドが作れます。

例えば、EMICIDAというラッパーは、自身がライブを行うステージなどがあるバーチャル空間のワールドを作って、それ自体が曲やPVや世界観を楽しめるコンテンツになっています。

こうしたものを量産しようというのが、今Fortniteが力を入れていることです。例えば、Epic Gamesがトップアーティストをクライアントとして、そのトップアーティスト用のワールドを作れるクリエイターを募集・契約してお金をたくさんあげ、実際にワールドを作ってもらうんです。つまりEpic Games自身は日本の電通・博報堂みたいな立ち位置で、「ワールドクリエイター」の役割の制作会社が実際に受注を受けてワールドを作っているわけです。

また、ユーザーがアイテム課金するときにクリエイター用のコードを入れると、5%分がこのクリエーターに渡るような形で、エンドユーザーがクリエーターをサポートできる仕組みもバーチャル空間上に生まれています。

また、正式なサービスとしては未発表ですが、Fortniteの中にUnreal Engineの仕組みを取り入れ、Robloxに近い形でどんどんワールドを生成できる機能を今後整備するとEpic Gamesが言っているので、これからFortnite側でも独自のエコシステムが作られていくことが予想されます。

今もさまざまなIP(キャラクター)やアーティストがFortniteとのコラボを展開していますが、今後一般ユーザーの誰もがオリジナルコンテンツを作れる状態がますます浸透したときに、この中でどうマーケティングしていくかが重要になってくると思います。

安田 おっしゃる通り、アーティストなどとコラボしているイメージは湧きますが、さらに一般の消費財のプロモーションにFortniteが使われるようになってくると、また大きく状況が変わるでしょうね。例えば、デジタル上でショッピングを体験させ実際の購買につなげるなど、Z世代に対するブランディングとしては有効かもしれませんね。

また、他に先駆けて取り組むことによって先進性はアピールできますよね。

Mr.モリスギ 実際にお金にしていく部分はリアルの方につなげたり、NikeであればNFTの方向に持っていったりなど、特にファッションブランドであればデジタルでもお金を取る方向に舵を切れている印象です。

安田 そうですよね。

Mr.モリスギ それ以外の企業は、まだやはりマーケティングやブランド認知がメインになるのだと思います。

安田 実際に買ってもらえるかはともかく、Z世代との接点としては有効かもしれないと思いました。

Mr.モリスギ 自分が10代だった頃のことを思い出しても、トレンドはあっという間に変わりますよね。いわゆる「女子高生にヒットする商品を流行らせる」ような、本当に最新・最先端のコンテンツマーケができないとすぐ陳腐化してしまう難しさはあると思います。とても難しい一方で、バズったらすごいというやつです。

安田 流行が一瞬で終わったりしますから、やり続けないといけないわけですね。

Mr.モリスギ つまり、リアルの世界でやられていることと、本質はあまり変わっていないとも言えます。あとはどういうテクノロジーを使うかというラッピングや見せ方の違いであって、人間の本質はリアルでもデジタルでもさほど変わらないので、そこを見失わずにやればいいということなのだと思います。

まとめ

このように、完全なメタバースの例はなく、まだまだ難しい部分もありますが、なかなか面白いデジタル消費やコミュニティも生まれてきているので、将来必ず来るだろうトレンドを理解しつつ、目の前の出来事をチャンスと捉えて取り組むことが重要なのではないかと思います。

安田 今回も大変勉強になりました。ありがとうございました!

≪安田`s Memo≫

「空間性」「同時接続性」「相互互換性」の実現は技術的/ビジネス的にまだ難しいが、RobloxやFortniteは特にZ世代へのマーケティングに有効!


―次回の【海外Hot Info】では、「最新のメディア&サブスクトレンド」について、引き続き森杉さんにお話を伺います。次回もぜひお楽しみに!

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