今回は、シリコンバレーでさまざまなスタートアップ投資を手がけた経験があり、今も新規事業開発などを通じてビジネスの第一線で走り続ける「Mr.モリスギ」こと株式会社トラストバンクの森杉育生さんに、アメリカのZ世代の特徴や日本のZ世代との違いについてお話を伺いました。
次の「世界の中心」と呼ばれているZ世代!とくに人口比率20%を超えているアメリカZ世代にご注目
三石所長(当時。以下、三石):今日はお時間頂きありがとうございます! まずは、Mr.モリスギの自己紹介を簡単にお願いできますでしょうか。
森杉さん(以下、Mr.モリスギ):株式会社トラストバンクの森杉です。株式会社トラストバンクはふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営している会社で、私自身も地域創生関連の新規事業開発やプロダクトマネジメントを担当しています。前職でシリコンバレーに長期間滞在していた経験もあり、国内外の次世代トレンドやコンテンツに関する記事の執筆なども行っています。
三石:ありがとうございます! グローバルトレンドに関しても知見のあるMr.モリスギの視点から、GROWTHにつながるヒントをたくさん語っていただきたいです。
まず今回は、これからのデジタル市場を語るにあたって欠かせない、デジタルネイティブのZ世代について伺います!
Mr.モリスギ:ありがとうございます。まずは、「Z世代」がどのような世代なのか、一緒に再確認させてください。
現在、生まれた頃からスマホがありインターネットが普及しているデジタルネイティブな人たちが、次々に登場しています。これが、1997年以降生まれの「Z世代」と呼ばれる人口層です。いわゆるミレニアル世代とは価値観や行動特性などが大きく異なるZ世代は、これからの世界の消費の中心になる、とても重要な世代だと言われています。
三石:Z世代の影響力に関しては、国内のマーケティング界隈でも注目されていますね。海外でのZ世代は、どのような立ち位置なのでしょうか?
Mr.モリスギ:世界中のZ世代の中でも、特に重要なのがアメリカのZ世代です。アメリカではすでにZ世代の人口が20%を超え、無視できないボリュームになっています。加えてアメリカのZ世代はデジタル・ネイティブで、シリコンバレーから発信される新たなプラットフォームやサービスを最も身近に体験する世代で、彼らの行動様式や流行っているものが世界で注目されています。
三石:20%を超えているのはすごいですね。ただ、日本は少子高齢化が進んでいるので、Z世代のボリュームが少なそうなので、ビジネス的にはそこまでの影響力はなさそうですが……。
Mr.モリスギ:確かに、日本のZ世代はアメリカほどの人口比率ではありませんね。それでも全体の14%を占めています。今後上の世代が引退していくことによって、Z世代の重要性はさらに高まっていくでしょう。
三石:なるほど、ありがとうございます! ちなみにアメリカだと日本よりも多国籍な方々が多い印象ですが、アメリカのZ世代にはそういった影響ってあるんですか?
Mr.モリスギ:そうですね。アメリカは白人が多いと思われがちですが、実は白人は全体の60%くらいで、残りの40%は黒人やヒスパニックやアジア系が占めています。さらに、白人の出生率は年々低下しており、将来的に白人の割合は50%を切ると言われています。それもあって、アメリカでは人種を始めとする「多様性」を受け入れる文化がますます強まっていますね。この点は、多様性を認め、受け入れるZ世代の価値観と合致しているといえます。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
世界の中心となっていく新しい価値観を持つZ世代。とくに人口比率が20%を超えるアメリカのZ世代に注目!
アメリカZ世代の特徴①社会問題への関心が強い
三石:ありがとうございます。さらにアメリカのZ世代の特徴について、深く教えていただけますでしょうか?
Mr.モリスギ:そうですね、まずZ世代に当てはまる特徴としては、「社会運動に積極的で社会問題への関心が高いこと」でしょうか。他の世代に比べて環境問題やLGBTQなどへの関心も高く、先導して社会問題への取り組みを行うZ世代も多くいます。
三石:そうなんですね!デジタルに強いZ世代が、なぜそのような社会問題に関心を持つのでしょうか?
Mr.モリスギ:その要因としてはやはりインターネットの存在が大きく、Z世代はスマホやSNSを通じて常に膨大な情報に接触しているため、さまざまな社会問題ともつながり、問題の仕組みや実態を理解していると考えられます。
加えて、先進国では物資も行き渡り、最低限生きていけるだけの環境が整っています。この「満たされている」という環境が社会問題に目を向ける余裕を生む要因となっていることも確かです。
アメリカZ世代の特徴②憧れよりも親近感を大事にする
三石:社会問題にも意識を向けるZ世代は、どのような人たちに憧れる傾向になると言えるでしょうか?
Mr.モリスギ:Z世代の前の世代にあたるミレニアル世代の価値観は「かっこいいことが良い」「見栄えのするものに魅力を感じる」といった特徴がありましたが、Z世代にはあまり踏襲されていません。
むしろ、リアルでカッコ悪いものを良しとする美学がZ世代にはあります。憧れよりも親近感を大事にするので、ダメな自分を出すことにもためらいがありません。
三石:なるほど。憧れの存在との距離感が昔から変化しているとなると、マーケティングする側もZ世代との距離感を考えていく必要がありますよね。
Mr.モリスギ:そうですね。アパレルをはじめとしたさまざまなブランドがSNSを通じてプロモーションを行っていますが、こうしたブランドとの付き合い方にも、Z世代ならではの距離の取り方が反映されています。かっこいいブランドに憧れるというよりも、友だちのように親近感を抱けるブランドが好まれる傾向にあるのです。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
SNSをはじめとした様々なデジタルマーケティングは、友達のような親近感を大事にするZ世代との距離感を見つめ直す必要がある
アメリカZ世代の特徴③AirPodsには常時接続!メタバース(仮想空間)とも馴染みが強い
三石:今までZ世代の嗜好などについて伺ってきましたが、モノの所有について何か特徴はありますか?
Mr.モリスギ:そうですね、AirPodsを常時使っているということが一つ特徴的だと思います。Z世代はAirPodsつけっぱなしの世代です。たとえば、Roblox(Z世代をはじめとした若年層に人気のあるオンラインゲームプラットフォーム)や日本でも流行っているForniteでゲームを遊びながらDiscord(ゲームを中心とした音声/テキストチャットのコミュニティ)でおしゃべりしたり、掃除など他のことをしながら、WhatsApp(Facebook社が提供する音声/メッセージサービス)でビデオ通話(マルチタスクのため映像には天井だけ映り音声だけになることも多い)をはじめたり。
三石:まさにデジタルネイティブといった感じですね(笑)。アメリカのZ世代は、AirPodsを通してチャットサービスの世界に「常時接続」しているんですね。
Mr.モリスギ:僕たちのような少し上の世代が想像するのであれば、昔遊んでいたリアルの場所がそのままバーチャルな仮想空間に移ったとイメージすると、分かりやすいかもしれません。
ただし、今はまだそれぞれのプラットフォームが独立しているものが多く、たとえばRobloxとFortniteを使おうと思ったら、それぞれ別のアプリを立ち上げて操作をしなければなりません。ゲームの中で使用する名前、キャラクター、ゲーム内のアイテムなどすべて各プラットフォームでバラバラで、互換性もありません。しかし、今後は別のプラットフォームであっても共通的に操作できる世界がやってくると予想されています。これが「メタバース」と呼ばれるものです。
(編集部注:「メタバース」とは、メタ(meta:超)とユニバース(universe:宇宙)を組み合わせた造語。オンライン上の仮想空間のことを指します。)
三石:その「メタバース」とは興味深いですね。ちなみに「メタバース」は現実世界に浸透することによって、マーケティング的にどのような影響がありますか?
Mr.モリスギ:たとえば、ECサイトにアクセスしてバーチャル試着できるサービスがありますが。ある店ではスニーカーがバーチャル試着できたとしても、店が違うとプラットフォームが違うため、他の店の眼鏡も一緒にバーチャル試着するということはできません。
しかしメタバースが実現すれば、その世界が実現します。そうすると、現実世界とまったく変わらない経済圏が仮想空間の中にも生まれることになります。
そこまでいけば、現実世界とまったく同じように、仮想空間の中でもビジネスや取引が成立する世界がやってくるでしょう。こうしたメタバースの概念は、デジタルネイティブのZ世代には抵抗なく受け入れられていくと思います。
デジタルの世界は拡大の一途を辿ることが確実ですが、そうすれば、メタバースに最も馴染みが強いZ世代の存在感は、ますます大きくなるものと考えられます。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
メタバースがもたらす仮想空間の中に、現実世界のような経済圏が生まれる可能性がある。Z世代は、このメタバースの概念に真っ先に馴染む世代と言える
三石:なるほど、Z世代の特徴はもちろん、「メタバース」という仮想空間がもたらす新しいデジタルマーケティングの可能性にも触れることができました。ありがとうございます!
―次回の【海外Hot Info】では、引き続きMr.モリスギに「アメリカZ世代のソーシャルメディア事情」についてお話を伺います。次回もぜひお楽しみに!