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ブロックチェーンは全能か?Web3+Web5による次世代インターネットアイデンティティ【海外Hot Info】vol.39

2022.10.17

今回の「海外Hot Info」は、「ブロックチェーンは全能か?Web3+Web5による次世代インターネットアイデンティティ」について、株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。

ユーザーデータが資産でなくなる日…。Web5におけるユーザーID管理やマーケティングの姿!

安田 今回もよろしくお願いします! 前回からの続きとなりますので、インターネット上のアイデンティティをめぐる、Web2とWeb3それぞれの限界や課題に関する議論、そしてWeb5の3要素については、こちら の記事をご覧ください。

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) 今回もよろしくお願いします!

Web5

Mr.モリスギ これまでビジネス関連のプラットフォームでは、いろいろな種類のサービスはあっても、アカウント管理に関しては従来のWeb2的なアカウント概念でプラットフォーム依存するものが大半だったと思います。

今後は、Web5的な新たなアカウントの形が利用される可能性がありますね。Web3は今、いろいろなところに広がってきていて、一方で「すべてトークナイズド(tokenized)されてしまっていいの?」という疑問も膨らんできており、Web5がその解決策になっていく可能性が高いです。プラットフォーム側が管理していたさまざまな部分がユーザー側に渡ったときどうなるのか。ユーザーのアイデンティティの概念が大きく変わっていくことが予想されます。

安田 企業がユーザーデータを資産的な形で持つこともなくなってくるのでしょうか?

Mr.モリスギ そうですね。データは公開された「みんなのもの」になるイメージです。実際、「ウォレットベース・マーケティング」という言葉もあるくらいで、公開されている暗号通貨やNFTの取引履歴をベースにマーケティングする形が出てきそうです。

現在は各企業が保有しているユーザのデモグラや行動データをもとに「このユーザーはきっとこういうものが好きなはずだ」と、刺さりそうなものを施策として実行することが多いと思いますが、Web5になると企業側しか知らなかったデータや情報は共有されていて既知のものになる(注: 個人情報などに紐づいて秘匿にすべきものは共有されません)。

そうすると、限られたデータの取り合い競争ばかりを行ってきたこれまでのビジネスと異なり、共有されたデータを基に一緒にサービスやソリューションを考えて行こうという動きが、今まで以上に強くなっていくと考えられます。

安田 ありがとうございます。私もお聞きしていて、そのことを強く実感しました。われわれDearOneはマーケティングソリューションを販売している会社なので、それこそマーケティングにおけるユーザーIDの管理という点は非常に大きな課題です。

いわゆる「1st Party Data」、企業の中にあるデータでさえもシステムごとにIDが違うため、そこが紐づかないという課題が現状ありつつ、また企業の外側では、同じユーザーがどういう行動を取っているかは明確に繋ぐことができません。そこはやはりもう「Cookieベース」で「3rd Party Data」をうまく使って、推測でマーケティングするしかなかったんですけれども、このようにシステム内で完全に、一意のIDですベてのことが紐づけられるとなると、特定のユーザーが何をやっているのかめちゃめちゃよくわかり、マーケティングの精度がすごく上がるなぁと。

Mr.モリスギ はい。すべて公開されている前提であれば、そうなりますよね。

安田 今は個人情報保護法とか、プライバシー規定がかなり厳格になってきていますが、あくまでデータは企業の中でクローズされているという前提の中でどこまで外に出すのか、どうやって利用するのかという点が議論の中心になっています。Web5の概念がベースになってくると、そもそもの考え方の根底を変えていく必要が出ていくだろうな、とお聞きしていて強く感じました。

Mr.モリスギ そうですよね。しかし、おそらく個人がわかる形で全部、(Web5においてIDと紐づくデータを保管・やりとりする場所である)DWN(Decentralized Web Nodes)に情報が入るようになるとは思わないんですが、一定程度、今よりは公開情報のようなものが、いろいろなところでIDと紐づいて見られるようにはなっていくんだろうなとは思いますね。

安田 ああ、そうですよね。Amazonで何買ったかとか、楽天で何買ったかとか全部、紐付けて見られたらめちゃめちゃ消費傾向わかりますからね。

Mr.モリスギ はい。なので、音楽のプレイリストやソーシャルグラフといった公開していい情報は、一つのIDと紐づいて皆が見られるような状態になり、そのままDWNに乗るようになると思うんですが、一方でよりプライベートな情報などは、別で管理されたりするようになるのではないでしょうか。今はSpotifyとApple Musicそれぞれのプレイリストを見て「この人は同一の人物だ」と推定することすらめちゃくちゃ難しいと思うんですが、それが一元化される方向に変わっていくんでしょうね。

安田 そこの推定は難しいですよね。

ユーザー目線でもプラットフォームを越えたデータの共通化はメリットがありますね。会社が変わったタイミングでSNSの中身をちょっとずつ変えていかなきゃいけない、などといったときにプラットフォームがいっぱいあると、それだけで面倒臭いですから。それが、転職しても自分のアカウント一つをずっと持ち運んでいくだけで済むという形になるなら、やりやすいのだろうなと感じます。

Mr.モリスギ そうですね。本来なら決済も含め、Web1のときにそういう仕組みが作られていればよかったのですが、そうした部分がインターネット初期に作られませんでいた。共通の仕組みがないがためにバラバラと独立にいろいろなものができてしまい、今のような状況になっているのかな、と思います。そこを取り戻そうとする動きの一つがWeb5であり、インターネットの理想の姿を求める一つの動きと言えるのではないかと。

安田 ITの世界では長い間、集中化と分散化の間を行ったり来たりしながらやってきたと思うのですが、以前のクライアントコンピューティングの時代から、物理的なサーバがクラウドになって集約され、データも集約され、今度はその上に乗るソフトウェアというか仕組み自体がどんどん共通化されて個人情報まで共通化されるとなると、どんどんどんどんそういった1つのプラットフォームに共有化されていくという流れが動いているのだなぁと、お聞きしていてすごく感じました。

Mr.モリスギ そうですね。確かに共有化はされているのですが、中央集権化はされていない。分散化が進んでいって中央集権化から脱し、皆の間で共有化されているというイメージですかね。

安田 確かにそうですよね。分散化されつつ共有化されるという。

Mr.モリスギ はい、そういう概念ですね。Web3のアプリケーションなどは特にそうで、コラボレーションが前提になっていて、あくまで「データはブロックチェーン上にあるよね」から始まるので、そのデータを取り合うことはしないんですよね。一緒に協調して新しいサービスを作ろう、ということを企業間で行うなど、なかなかWeb2では見られなかった動きが出てきていたりはしますよね。 

≪安田`s Memo≫

分散化が進み共有化されているが、中央集権化はされていないのがWeb3

GAFAMはどう出る?Web3やWeb5が普及する未来

Mr.モリスギ Web3やWeb5は前述の、プラットフォームを超えたデータのインポート/エクスポートといったソリューションに関しても、積極的に取り組んでいるんですよね。例えばWeb3版のblog記事を日本のサービスと海外のサービスで共通してインポート・エクスポートできたりします。それこそ「そこを打ち出しているのが1つの強みだ」というのが彼らの言い分でして。ただ、それが進んだ時にどう差別化するのかといったことは、結構難しい課題だろうなと思いますけどね。

安田 そうですよね。企業の差別化要素って、どんどんテクノロジーの進歩に伴い変わってきたと思うのですが、さっきおっしゃった通り「ユーザーデータを多く持っている=資産がある」という差別化がもうできなくなるわけで、そこにどう付加価値を乗せるかとか切り口をどうするのか、さらに企業側に工夫が求められるな、と思いました。

Mr.モリスギ そうですね。そこはもうこれまでと全然違う世界に入っていくのではないかと。

安田 物量で戦えない、と強く感じました。

Mr.モリスギ 逆に言うと、既存のプラットフォーマーは既にめちゃくちゃ量を持ってしまっているので、あれを引っぺがすというのも相当難しいと思うんですけどね。

安田 確かにそうですよね…。だから、彼らがWeb3側に乗ってくるかどうか、というのが大きなポイントになるかもしれませんね。

Mr.モリスギ NFTなどはTwitterやInstagramも取り入れていますが、トークンナイズをするのかどうかということになると、怪しいのではないかと…。なかなか人がついてこないということもあり得ますし、今のWeb3の仕組み自体が難しすぎるということもありますので。だから、彼らがWeb3に入ってくるというよりは、Web3やWeb5の概念を使ったアプリケーションが新たに出てきて段々、皆がそっちに移行していくケースでしょうか。

安田 なるほど。

Mr.モリスギ または逆にトップダウンで、昔からGoogleやMicrosoftなど、いわゆるGAFAMを規制するとか解体するみたいな話もありますけれども。この2つが同時並行的に起こっていくのではないかと考えています。

≪安田`s Memo≫

「ユーザーデータ=資産」という概念が通用しないWeb3やWeb5が、これからますます社会に浸透する

安田 今後の動きから、目が離せませんね。今回も大変勉強になりました、ありがとうございました!

―次回の【海外Hot Info】も、ぜひお楽しみに!

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