• トップ
  • ナレッジ
  • 人類史上最大?リセッションの4つの原因と今後の予想を解説【海外Hot Info】vol.32

人類史上最大?リセッションの4つの原因と今後の予想を解説【海外Hot Info】vol.32

2022.07.19

今回は、景気後退(リセッション)時におけるスタートアップやVCの対応について、株式会社トラストバンクの森杉育生さん(Mr.モリスギ)にお話を伺いました。

世界各国の先進的な取り組みから、旬で“GROWTH”につながりそうな企業・サービスをご紹介する「海外Hot Info」。10年以上デジタルマーケティングに携わってきたGROWTH LABの三石所長(当時)が、その知見をもとに海外のデジタルマーケティングのトレンドについて切り込みます。

三石所長(当時)&モリスギさん
三石所長(当時、左)とMr.モリスギ(右)(撮影場所:WeWork リンクスクエア新宿)

アメリカ株式市場 大暴落の背景とは

三石 今回のテーマは、景気の後退とスタートアップです。景気が後退したときに、スタートアップやVC(ベンチャーキャピタル:スタートアップに投資する会社のこと)がどんな対応をしているのか。まずはアメリカをはじめとする経済不況について、森杉さんにお話を伺います。よろしくお願いします!

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) よろしくお願いします!

リセッション

三石 今、アメリカでは景気後退(リセッション)に入りつつあるとも言われます。おそらく、株や債権、外貨などの金融資産を持っている人は、ものすごく気になるところではないでしょうか。個人的にも、このテーマは非常に気になっています。

Mr.モリスギ まずは、今株式市場がどうなっているのか見てみましょうか。Nasdaq市場では、ここ20年間で3番目に大きな株価の下落が起こっています。2021年の12月から2022年の5月という短い期間の中で28%も下落しているんです。
しかも、これはあくまでも一般的な非金融銘柄の話です。当期純利益を出せていないIPO済みのスタートアップ企業のインデックスは、それ以上に大きく下がっています。Morgan Stanleyが出している「Unprofitable Tech Index」では、当期純利益が黒字になっていないテック企業、特にSaaS企業などで構成されると思われますが、その指数が64%も下落しています。

株式市場の大暴落
株式市場の大暴落(Mr.モリスギ作成)

三石 半分以上落ちている。大暴落ですね。すごいことになってきました。

株価大暴落の背景にある4つの要因

三石 そもそも、なぜこんなに株価が大暴落しているんでしょう?
 
Mr.モリスギ これは私が考えたことなので、経済学者などからすると違うと言われるかもしれませんが、大きな要因としては4つあると思っています。

①原油価格の上昇によって、ガソリンや食料品が高騰していること

②サプライチェーンの遅延

③企業の経営難

④投資家心理の変化

①原油価格の上昇によって、ガソリンや食料品が高騰していること。
元々原油価格は緩やかに上昇を続けていて、コロナ禍で一度下がったのですが、ウクライナ危機でまた高騰してしまいました。結果として電力、輸送、製造とあらゆるコストに跳ね返っています。ユニクロやセブンイレブンやガソリンスタンドが値上げしているので、すでに日本でも身近に感じられていると思います。

②サプライチェーンの遅延。中国のロックダウンによって、世界のサプライチェーンに遅延が発生しています。御存知の通り、中国はウィズコロナではなくゼロコロナを目指しているため今でもかなり厳しい規制を強いています。それが操業停止や物流停止につながり、これも物価インフレにつながっています。

③企業の経営難。コロナの終わりが見えたことで金融緩和がなくなり、コロナ融資や補助金なども打ち切りとなりました。さらに物価のインフレが起こっているので、抑制するためにアメリカでは政策金利が22年ぶりに0.5%上げられていました。それらの影響で企業の資金繰りは苦しくなり、経営が厳しくなっています。
 
三石 日本でもその動きは出てきていますね。
 
Mr.モリスギ そして最後が、④投資家心理の変化です。コロナ禍で企業の収益と株価が実体と乖離し、株価の方が異常に高まってしまいました。NASDAQは、2021年11月に史上最高の株価になりました。IT企業はたしかに業績が良かったので株価が上がるのはわかるのですが、産業全体でいうと人の移動が抑制されたために、コロナ赤字や倒産となった企業も多数ありましたので、史上最高の株価となっていたのは実体とそぐわなかったのかなと思います。

①-③の材料もあり、今後企業の業績が悪くなることを懸念した投資家が保有している金融資産を売る動きが加速していると思います。

大きく分けて、このあたりが今回の株式市場暴落の要因になっていると思われます。

三石 なるほど。ありがとうございます。ちなみに、コロナ禍で政府がどんどん紙幣を発行したことで、実は企業はキャッシュが余っていたと思うんですよ。補助金で潤ったところもありますよね。一部の企業でキャッシュが余っているという状況は、今も変わっていないんでしょうか。
 
Mr.モリスギ 問題ないところにばかりお金が流れていて、本当に必要なところにはちゃんとお金が届いていないという一面があるのは確かです。たとえば、成田悠介さんがおっしゃっていた話ですが、「数十兆円と言われる病床支援金が、新型コロナウイルスの病床使用数にほぼ影響を与えてなかった」という研究結果があります。銀行口座にお金は入ってきたけど実質的にちゃんと使われてない、別のことに使われてしまったのではないかということですね。また、過剰にキャッシュが市場に出回ったことで、インフレにつながっている可能性もあります。
 
三石 そう考えると、やっぱり企業の収益力は落ちているし、窮地に陥っている企業は楽になってはいないと。
 
Mr.モリスギ そうですね。ちなみに④の補足をすると、企業収益力は大きく下がっているにもかかわらず株価が上がっていたので、実体経済と株価は乖離していました。現在もまだ乖離していると言われています。
 
三石 実体経済と株価が乖離すると、どうなるんでしょうか?

Mr.モリスギ 乖離をなくそうという動きが出てきます。ITバブルのときもそうでしたが、下記のように市場が乖離を元に戻そうとして、その結果株価がボンと下がるという現象が起きているんです。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

実体経済と株価が乖離する現象が起きると、乖離を戻そうとして株価がさらに暴落する。それが景気後退(リセッション)へつながる可能性がある!

アメリカの経済不況、金融機関や企業幹部はどう評価している?

経済不況

Mr.モリスギ これからアメリカの経済不況がどうなっていくのかについては、経済界の著名人がどう見ているかが参考になります。
ゴールドマン・サックスのCEOであるデービッド・ソロモンは、「今後12カ月から24カ月の間に不況になる可能性は30%だと推測している」と言っています。ウェルズ・ファーゴというアメリカの大銀行のCEOは「景気後退は避けるのが難しい」と言っているんです。
 
三石 金利は上がり、不景気は一定期間続くと予測しているんですね。
 
Mr.モリスギ イーロン・マスクは、「バカげたことや人類の役に立たないことをしている企業に人材が集まるようになるが、結局は、そのようないい加減な企業は倒産していく」というようなことを言っていますね。
どう対処していけばいいのかについては「役に立つ製品を作り、意味のある企業になること」だと話しています。さらに、「理不尽な時代を乗り切るには、資本準備金が必要だ」とも言っているんです。
 
三石 これが、2022年5月の話なんですね。ちなみに、VCなどの投資家はどんなふうに見ているんですか?
 
Mr.モリスギ VCやアクセラレータ※に関してですが、シードやアーリーフェーズのスタートアップ・アクセラレータであるY Combinator(YコンビネータLLC)は「最悪の事態に備えろ」と発言しています。
また、ByteDance(TikTokの運営会社)やAirbnbにも投資しているVCのSequoia Capitalも、「困難を耐え忍ぶために適応しろ」と投資先のスタートアップに向けて語ったという話があります。

GROWTHLAB編集部注:「アクセラレータ」とは、英語で「加速させるもの」を意味する言葉。スタートアップの事業成長や新規事業を成長させるためのプログラムを実行する組織で、シード期を中心に投資を実行する。

三石 すでにある程度成長している企業に比べると、スタートアップの企業は特に、これからの大不況を生き延びるために大きな困難が伴うと思います。具体的にはどんな状況にさらされるんでしょうか?
 
Mr.モリスギ 一言でいうと、資金調達がかなり難しくなります。スタートアップって、株式や転換社債(借入したお金が次の資金調達タイミングで株に変わる債権)を新規発行することで、資金調達をして運転資金を得ているんですよ。もしVCからの出資が見込めなければ、他の金融機関から融資を受けることもあります。
ところが不況になると、まずVCやそのファンドが構成員(LP)から資金を集めにくくなったり、投資基準が厳しくなりますから、VCやファンドからのスタートアップ投資の数や投資額は以前に比べると落ちることになります。
 
三石 そして、それはすでに起きていると。
 
Mr.モリスギ そうです。現にTiger Globalという大きなPEファンドは「IPO前のレイトステージのスタートアップ投資は今後フォーカスしない」と発言しています。

仮に資金調達できたとしても、以前よりも評価額が低くて思うように調達できなかったり、次に資金調達できるまでの期間が今までよりも長くなったりします。
 
三石 今までのようには資金調達ができない。そうなると、IPOまでの道のりも遠くなりますね。これから起業する人がどんどん減っていくんじゃないですか?
 
Mr.モリスギ 僕はそう考えています。次回で説明しますが、スタートアップはたとえ資金調達できてもなかなかタフな期間を過ごさなくてはならないです。
 
三石 起業も減るし、それに伴って上場数も減っていく未来がやってくるというわけですね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

不況のあおりを受け、スタートアップは資金調達が非常に困難になることが予想され、経済界の著名人も投資家も、軒並み見通しが暗い。イーロン・マスクの言うように、不況を生き延びるためには資金的な準備が必要となる。

三石所長(当時)&モリスギさん2
Mr.モリスギ(左)と三石所長(当時、右)(撮影場所:WeWork リンクスクエア新宿)

三石 今回もありがとうございました! 次回も同じテーマについてお話を伺う予定です。次回もよろしくお願いします!
 
―次回の【海外Hot Info】では、不況時におけるスタートアップやVCの対応について引き続き森杉さんにお話を伺います。次回もぜひお楽しみに!

ナレッジランキング

タグ一覧