物販ECの体験はどう変えられるのか②【海外Hot Info】vol.29

2022.06.01

「海外Hot Info」第29回は、前回に引き続き、ECサイトが抱えている課題とそれを解決するソリューションの事例について解説します。今回のプレゼンターは、株式会社トラストバンクの森杉育生さんです。それでは、はじめましょう!

ホテルと提携し、「試してみないと分からない」ものを試せるソリューション「Minoan Experience」

三石 前回はECサイトの課題を解決しようとする事例についてお伺いしました。今回はさらに踏み込んで、なかなか解決が難しい「実際に生活の中で使ってみないと本当の効果がわからない」「他のものとコーディネートしないとわからない」という部分にアプローチしている事例についてお話しいただきます。

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) そもそも、ECの課題を一言で言うと「事前体験の難しさ」なんです。前回紹介した事例は、その課題に対して「リアル店舗で体験する」「ARで部分的に体験する」という解決方法を提示していました。
ただ、それってやっぱり、本質的な課題解決には少し遠いんですね。リアル店舗で加湿器の使い勝手や効果は正直わからないですし、ARで家具をスマホの小さい画面でシミュレーションしても本当にこの家具でいいのか、判断つかないと思います。そこで、今回はもう少し本質的に物販ECの課題を解決しようとしている事例をご紹介します。

Minoan Experience

Mr.モリスギ まず1つめが、Minoan Experienceという事例です。Minoan Experience は、AirBnBや提携ホテルにパートナー企業の製品をディスカウント価格で卸し、ゲストが気に入ったらQRコードスキャンでEC購入できるソリューションを提供しています。

三石 ホテルに行くと、たまにシャンプーなんかのサンプル品を置いてあることがありますよね。ああいう感じですか?
 
Mr.モリスギ そうです。Minoan Experienceの面白いところは、試してみないと分からないものを扱っているところです。
たとえばシャンプーやコスメなんかは、実際に試してみないと使い心地や効果が分かりません。それ以外にも、たとえば椅子、ドライヤー、テーブルとか家電・家具も対象ですね。

店頭で見るだけだと、少し座って座り心地を確かめるくらいしかできませんが、Minoan Experienceではホテルの滞在中に試せるので、「2、3日使ってみたけどすごくいい」とか、「最初は座り心地が悪く感じたけど、ずっと座っていても疲れない」とか、長く使ったときの使い心地を体験することができるんです。
 
三石 なるほど、それはいいですね! 通常の流れなら、メーカーがホテルと直接交渉をして、商品を置いてもらう流れだと思いますが、そのいわゆる面倒な交渉ごとをMinoan Experienceがやってくれるというメリットもある。
ちなみにこれって、仕組みとしてはアフィリエイトなんでしょうか?
 
Mr.モリスギ 卸とアフィリエイトです。卸によって、Airbnbやホテルオーナーは、家具のような高い宿泊設備を従来よりも低コストで整えられるんです。その上、宿泊者が製品を気に入って購入してくれた際には、Minoanからアフィリエイト収入が発生するので、新たな収入源にもできるという仕組みです。

三石 経済的なメリットもしっかりあって、すごくいいですね!
これはホテルの事例ですが、キャンプ場なんかでもアリだなと思っていて。たとえば、Snow Peakが経営しているキャンプ場では、Snow Peakのギアがレンタルできるじゃないですか。ユーザーはキャンプをしながら実際に使ってみて、その商品を買うかどうかを決めることができる。

特に、ハイブランドなホテルなどで実際に体験できるというのは、ユーザーにとって本当にいい仕組みだと思いますし、ブランディングの観点でもメリットが大きいと思います。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

Minoan Experienceはホテル側の宿泊設備のコストを減らしつつ、ハイブランドの商品を一定期間試せるという高い体験価値をユーザーにも提供している!

好きなだけ家具を試すことができ、トータルでインテリアをコーディネートできる「SpaceJoy」

インテリアコーディネーター

Mr.モリスギ もう一つの事例が、「SpaceJoy」です。
三石さん、「インテリアコーディネーター」ってご存じですか?
 
三石 自宅や仕事場などのインテリアを決めるときに、壁紙の色や家具の配置などのインテリアを丸ごとデザインしてくれる人ですよね。
 
Mr.モリスギ そうです。ただ、それなりのインテリアコーディネーターに依頼するとなるとやっぱり高額で、数時間の作業で数万円かかります。それに、ちゃんとコーディネートしてもらうとなると時間もかかります。センスのいい家に住みたいと思っても、なかなか僕のような庶民には手が出せません。そこですごく便利なのがSpaceJoyです。

SpaceJoyはインテリア製品を独立した3Dオブジェクトとして扱い、ありとあらゆるインテリアを組み合わせて部屋全体のシミュレーションをECサイトとして提供してくれるソリューションです。SpaceJoyはプリセットのパターンを非常に多く取り揃えていて、そのプリセットから1つひとつのパーツを自分の好きなように取っ替え引っ替えできるんですね。

インテリアコーディネーターがいないとできなかったことが、ある程度自分で高速にシミュレーションできるようになったわけです。

SpaceJoy
SpaceJoyのサイト内で自分の好みの家具を配置できる

三石 気になる商品をどんどん試せる。いいですね! ちなみに、商品を気に入ったらSpaceJoy上から購入もできるんですか?
 
Mr.モリスギ 商品の全てがECサイトにリンクしているので、購入も可能です。

三石 すごく便利ですね! 実は弊社DearOneでも、家具の配置を検討するのに便利なアプリを開発・提供しているので、この場でご紹介させてください。

「measAR note」といいまして、スマホのカメラのパノラマ機能を使って部屋を360°ぐるりと撮影すると、その空間が立体的にスキャニングされます。さらに、スマートフォンのAR機能を活用して家具や家電の大きさを計測してくれるんです。

家具を買いに行ったときによく困るのが「はたして本当に置けるのか?」ということだと思います。特に日本って家が狭いので、大きな家具だとドアを通れなかったり、部屋の寸法が足りなくて置きたい場所に置けなかったり……ということが結構あります。天井までの高さが足りないとか。

そこで、「measAR note」と先ほど紹介いただいたSpaceJoyを組み合わせて使用すれば、気に入った家具が家に入るかまでちゃんと確認してから購入できるので、すごく便利だなと思いました!

(※編集部注・DearOneが開発、提供している スマートフォンアプリ向けARメジャーSDK「measAR note」の紹介やおすすめポイントについてはこちらをご参照ください!)

Mr.モリスギ 確かに、寸法はとても重要ですね。ここは、私もあまり気がついていなかったところです。SpaceJoyの特長はとにかく大量に試せることなので、measAR noteと合わせて利用すれば、家具の購入で失敗がますます減りそうですね。
 
三石 洋服でもそうなんですけど、人の発想ってどうしても固定的になりがちですよね。たとえば黒が好きな人って、新しい服を買うとなっても黒っぽい服を選びがちで、ピンクやイエローのような色って、怖くて買えないわけです。
でもそこで、ファッションコーディネーターみたいな人が「この合わせ方ならピンクも似合いますよ」というような提案をしてくれたら、少なくとも試着することはできる。気に入ったら購入すればいいわけです。
そういったきっかけをAIが作ってくれたらすごくいいなと思っているんですが、そういった動きもあるんでしょうか?
 
Mr.モリスギ 実際に動きは出てきていると思います。たとえばSpaceJoyにしても、今はユーザーや運営側がマニュアルでいろいろ商品を組み合わせてプリセットを作っていますが、将来的には、組み合わせもAIが生成するような構想もあるようです。
 
三石 それは楽しみですね!

≪三石所長(当時)`s Memo≫

今はユーザーが商品を検索して組み合わせをしているが、将来的にはコーディネートの提案も全てAIがしてくれる時代がやってくる!

三石 今日もありがとうございました。すごく楽しいお話が聞けました。
 
―次回の【海外Hot Info】も、ぜひお楽しみに!

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