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アメリカの学生ローン事情とフィンテック企業!サステナビリティとフィンテック②【海外Hot Info】vol.23

2022.04.19

今回のプレゼンターは、株式会社トラストバンクの森杉育生さん。「海外Hot Info」第23回は、前回に引き続き、アメリカのローン問題と、それを解決するためのスタートアップについて解説します。それでは、はじめましょう!

三石所長(当時)&モリスギさん
(撮影場所:WeWork リンクスクエア新宿)

教育費が高騰しているアメリカでは、学生のあいだに数千万円の借金を背負うことになる!?

三石 今回もよろしくお願いします!

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) よろしくお願いします!

学生ローン

三石 前回は「Happy Money」というスタートアップ企業のお話を伺いました。今回は、学生ローンの問題について伺っていきます。

Mr.モリスギ アメリカでは教育費が高騰しているため、多くの学生が学生のうちに多額の学生ローンを背負わされている、という問題があります。

アメリカって、私立大学の学費がものすごく高いんですよ。公立もまあまあ高いんですが、私立はさらに上をいきます。

三石 日本だと、私立大学の学費は4年で800万円くらいかかるのかな、というイメージですよね。それよりも高いということですか?

Mr.モリスギ 日本の比じゃないんです。たとえばスタンフォード大学では、1年で寮費や食費や保険も込みですが800万円くらいかかるんですよ。

三石 4年で3,000万円くらいかかるということですか!?

Mr.モリスギ そうです。僕がアメリカにいたとき「親が裕福ではない人は、こんなに学費が高くて、みんな払えるの?」っていつも思っていました。学生はほとんど何かしらアルバイトをしていますが、アルバイトで得たお金でそれだけの学費を払えるのかというと、やっぱりすごくきつい話なんですね。

三石 そうなると、結局学生ローンを借りるしかない。いわゆる奨学金というか、有利子奨学金のようなものですよね。

Mr.モリスギ そうです。そこで、学生時代に何千万円というお金を借りることになります。そして大人になって社会に出てからずっと、その数千万円の借金を背負って生きていかなければならないんです。
(※編集部注・ハーバード大学やスタンフォード大学など親の年収が一定以下の場合は学費を免除するプログラムや成績優秀者には返済不要の奨学金があり、必ずしも全員が借金を抱えていかなければならないというわけではありません。)

今のミレニアル世代の人々は、返済の負担が大きすぎるために、医療費を削ったり子どもを諦めたりせざるを得ない。これが、今のアメリカの現状なんです。

モリスギさん

さらに言えば、奨学金(学生ローン)を受け取るために銀行口座を開くのにもお金がかかります。アメリカで銀行口座を開くには、一般的に一定以上の金融スコアが必要となったり、大きな額の預入金を要求されるんです。

三石 お金に困っているから学生ローンを借りるのに、準備にまたお金が必要になるんですね。

Mr.モリスギ お金があるうちはいいですが、お金が足りなくなると、オーバードラフトフィー(口座資金が足りない場合に銀行が超過分を建て替えるかわりに、上乗せされる手数料)や支払い延滞金がかかったりします。ATM取引手数料もありますね。

そもそもお金に困っていたから奨学金を得たにも関わらず、銀行の諸費用や利息を払わなければならなくなるので、学費や生活に使えるお金に制限が生まれてしまうんですよ。さらには学生ローン自体の利率も日本よりはるかに高く、7%程度あります(日本は0.35% )。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

アメリカでは学費も高騰しているが、世帯収入も上がっている。それでも二極化が進んでいるために、学生ローンの負担が重くのしかかる層は多い。

手数料無料!Z世代の味方・ネオバンク「Mos」。四半期で10万人以上もの学生がアカウントを開設

Mos

Mr.モリスギ 特にZ世代は、こうしたシステムを嫌悪しています。そこで登場したのがMosというネオバンクです。

Mosは、学生向けの普通口座、デビットカード(Mos Card)の発行、アメリカ最大の奨学金制度を使った奨学金の申請・獲得・返済などの機能を備えている上に、専門家と1on1で借り入れや返済の相談も受け付けています。

三石 必要なものが全部用意されていますね!

Mr.モリスギ さらに大きなポイントは、フィーが何もないところです。Mosの口座はオーバードラフトフィー、延滞金、ネットワーク内ATM手数料などの手数料がいずれも無料で、一般的に必要になる口座開設時の最低口座残高もないんですよ。

必要なものがそろっていて、ワンストップでサポートができる。さらに、口座開設のハードルの低さやHidden Feeがない。こうした透明性がZ世代の学生から人気を得て、ローンチしてたった四半期で10万人以上がMosのアカウントを開設しています。

三石 10万人! すごいですね、わずか四半期で。ちなみに、今回のMosと前回ご紹介いただいたHappy Moneyは銀行ではないんですか?

三石所長(当時)

Mr.モリスギ どちらも、銀行のライセンスは持っていません。Fintech企業という位置づけです。それなのになぜ金融業に似たビジネスが展開できるかというと、BaaS(Banking as a Service)を利用しているからです。

(※編集部注:「BaaS(Banking as a Service)」とは、非金融事業者がAPIを介して金融サービスを提供すること。)

Mr.モリスギ 前回のクレジットカードローンのところでもありましたが、ここでもやはり、既存の金融機関では解決できないことを、畑違いのスタートアップ企業が解決するという流れが出てきています。

既存事業が手を出してないところで起こりがちな課題を明確化して、それを解決することで大きく事業を成長させているんです。利率でお金を儲けたいからではなく、あくまで問題解決のツールとして必要だから、BaaSを使っているだけですね。

三石 日本でも、BaaSを使ってサービスを提供している企業はいるんでしょうか?

Mr.モリスギ 日本にもいくつかあります。ただ、BaaSはあくまでツールでしかないので、課題解決を明確に意識した上で使う必要があるでしょうね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

企業が利益だけを追求する姿勢は、Z世代を中心に嫌悪され始めている。これからのビジネスには、透明性や既存事業が解決できなかった課題を解決するという流れが求められている!

技術は後でいい! スタートアップに求められるのは、技術よりもアイデアの秀逸さ

スタートアップ

三石 ところで、MosにせよHappy Moneyにせよ、こうした事業を立ち上げるにはITやビッグデータなどの技術的な強さが必須というわけではないんですよね?

Mr.モリスギ そうですね。どちらかというと、技術よりもアイデア勝負です。あとはそのアイデアを愚直に実行し、場合によってはピボットして改善していけるか。

ちなみにMosは、もともと学生ローン制度に関するコミュニティを作っていた会社なんです。どうやったら学生ローンをもらえるかとか、上手に返済していけるかというというノウハウや人的ネットワークを事業価値として提供していた会社なので、学生ローンで一番学生が困っている点はどこか、解決するにはどうすればいいかという入口から、Z世代に特化した銀行口座とデビットカードという事業へ拡大・転換したという流れです。

ですから、すごい技術があるというよりは、学生が困っている課題をしっかり捉えて正しく解決しているという点が彼らの強みです。

モリスギさん2

三石 僕のような技術者ではない人間からすると、シリコンバレーで戦うには技術が必要不可欠だろうという固定観念がありました。今の話を聞くと、技術があるかどうかよりも、どんなアイデアを出せるのかが重要なんですね。希望の光が見えてきました!

Mr.モリスギ 逆にアイデアがよければ、後からデータサイエンスの人たちがどんどん入社してきて、技術面が強化されるという側面がありますね。技術があった方がいいのは間違いありませんが、スタートアップの立ち上げ時期に絶対に技術がないとダメかというと、そうではない。

三石 前回も少し出てきましたが、やっぱり業界の人ではない人が新しい発想を持ち込んで、いろいろな動きを起こしているんですね。

Mr.モリスギ そうですね。たとえば世界的な電気自動車メーカーTeslaもそうで、CEOのイーロン・マスクは元々自動車会社ではなく、決済会社のペイパルの人です。Slackも、ゲーム企業が社内のコミュニケーションツールとして使っていたものを法人向けに提供した結果、今のように広まったというわけです。

三石 フードデリバリーで有名なUberも、もともと旅行業界の人たちではないですしね。

Mr.モリスギ そう考えると、やはりイノベーションは業界の人ではなくて、業界の外にいた人が持ってくることが多いのかなと。ただ、やはり業界特有の規制やルールというものはありますから、業界に詳しい人がチームに1人いることはとても大事ですよね。

三石 Mr.モリスギのお話を伺っていて思うのが、どんどん人も技術も入れ替えが起きているんだなと。ライフシフトも起きていて、「大企業にぶら下がっているのは危険なんじゃないか」という会話が普通に聞こえてくるようになりました。

大企業側も、今までのようなステレオタイプな姿勢がもう通用しなくなっていますね。外部から積極的に人を入れているのも見かけます。それこそ、DAO的な組織になっていくと面白いと思います。

(※編集部注・DAOとは「コミュニティ用のトークン(ガバナンストークン)をブロックチェーン上で発行し、トークンを購入した不特定の参加者全員が意思決定者になる分散型自律組織」のこと。DAOの事例は こちらのMr.モリスギの記事 をご覧ください!)

Mr.モリスギ DAOはすごいですよね。15歳のCTOが生まれたりもしていますし。

三石 ユーグレナが面白い取り組みをして話題になったんですが、ニュージェネレーションの感覚を掴むということで、18歳以下の CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)という役職を作りました。18歳以下といえば、Z世代のさらに下ですよ。

Mr.モリスギ 年齢が絶対的に重要なわけではないにせよ、やっぱり可能性を感じますね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

スタートアップに必要なのは技術ではなく、アイデアである!

三石 今回も、とても刺激的な話がたくさん聞けました。今日もありがとうございました!

―次回の【海外Hot Info】も、ぜひお楽しみに!

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