• トップ
  • ナレッジ
  • CPMが約2倍⁉︎顧客獲得コストが高騰する「メディアコンテンツ」【海外Hot Info】vol.14

CPMが約2倍⁉︎顧客獲得コストが高騰する「メディアコンテンツ」【海外Hot Info】vol.14

2022.01.19

今回は高騰する顧客獲得コスト(CAC)と今注目されている対策方法について、株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。

Facebookの顧客獲得コストは前年比1.5倍!高騰するコストに企業はどう対応するのか

三石所長(当時。以下、三石) 今回もよろしくお願いします! 今回のテーマは、少しビジネスやマーケティング寄りのお話と伺っています。

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) NFTやWeb3というようなバーチャル世界の話が多かったので、今回は少し現実世界に戻ってこようかなと思っています。よろしくお願いします!

CAC

三石 というわけで、今回は「顧客獲得コスト」についてお話を伺っていきます!

Mr.モリスギ 今企業が直面している問題として、CAC(顧客獲得コスト)の高騰があります。小さい会社から大企業まで、この悩みは共通しているんです。
CACを下げるための施策としてはいろいろありますが、今最も注目されているのが、「メディア化」です。

三石 CACというと、広告費とかマーケティングにかかるコストなんかをイメージしますが、そうではなくてメディア化というのは興味深いですね。

Mr.モリスギ そうなんです。まずはどれくらいCACが上がっているのかというところですが、下のグラフを見てもらうと分かるとおり、2012年から2017年のデータで、65%〜70%くらい上がっています。

CAC上昇
出典:2012-2017年における800社のSaaS企業の調査結果 https://tomtunguz.com/cac-increase/

最近のデータでいうと、たとえばFacebook。2020年12月に$9(約990円)だったFacebookのCPM(1000インプレッションあたりの広告単価)は、2021年12月には$14.82(約1630円)と、約1.5倍になっています。ちなみに、Instagramに至っては約2倍です。

Facebook社広告コスト
Facebook Advertising Costs by CPM https://revealbot.com/facebook-advertising-costs

三石 そんなに上がってるんですか!? タイミングもあるでしょうけど、それにしても高いですね。そもそも、なぜそんなにCACが上がってしまったのでしょうか?

Mr.モリスギ 背景としてあるのが、ユーザー1人ひとりの価値の高まりです。以前のような「10万人のファンから1ドルずついただく」というような薄利多売の経済から、「100人のコアファンから1,000ドルいただく」という経済に今は移行していて、それに伴ってユーザーの関心が分散してきていると。

三石 ユーザーの強い関心を得るためには、良質なコンテンツを作る必要があるということですね。私も、「CACをどんどんかけて顧客を獲得していくよりも、ライフタイムバリューを上げていこう」というのはよく話します。

森杉さん CACを下げるための取り組みには従来のSEO強化などもありますが、今一番注目を集めているのが、オウンドメディアでのコンテンツ発信です。「ECのマーケティング担当者の60%が、オウンドメディアでコンテンツを作って発信することでトラフィックを集めようとしている」というデータも出ています。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

顧客獲得コストが高騰する中、企業が低コスト化を進めるためにはコンテンツの強化が鍵になる!

メディア化で、今まで届かなかった見込み客にリーチすることができる-Hubspotの成功事例

Mr.モリスギ オウンドメディアのコンテンツ強化について、面白い事例があるので2つご紹介します。その1つ目が、Hubspot の「the Hustle」買収です。
Hubspotは、もともとメディア関連の企業ではないんです。メディア企業じゃないところがメディアを買収し、自社と融合していくというのが面白い動きだなと思って注目しています。

三石 HubspotはSaaS※の企業で、簡単に言うとインバウンドマーケティングのソフトウェアを扱っている企業ですよね。

(※編集部注:「Software as a service」の略。ネットを通じてソフトウェアを提供する事業を行っている企業のことです)

Mr.モリスギ そうです。それまでにHubspotもコンテンツマーケティングには取り組んでいて、ブログをやったりPodcastをやったりもしていたんです。ただ、カジュアルなビジネスユーザーにはどうしても届かない。

三石 自社でメディアを作ってリーチするのではなく、the Hustleという既にあるメディアを買収したと。ちなみに、the Hustleはどういったメディアなんですか?

Mr.モリスギ the Hustleというのは、ビジネスマンに非常に人気が高いニュースレターサービスです。5年くらい前から始まって、今、購読者は150万人を超えています。
30,40代のミレニアル世代をターゲットにしていて、最近だとNFTの動向とか、スタートアップニュースなど、トレンドのポイントを抑えてカジュアルに消費できるコンテンツを揃えています。

三石 実は、私たちGrowth Labの取り組みもそれに近くて。我々も自社でメディアを運営していますが、やはりそれだとどうしてもリーチ層が限られてしまうんです。まさに私たちが今課題に感じているところなので、Hubspotの事例はとても興味があります。
ポイントは、メディアを買収するにしても、どうやって自社の本業とつなげていくか、いかにスムーズに誘導するかだと思っています。

Mr.モリスギ そこが僕も気になっているところで。あまりに派手に売りにいくと、the Hustleのユーザーがthe Hustleを購読することで得ている「体験」を壊してしまいます。
そこでHubspotの場合は、The Hustle内にHubspotが提供するコンテンツを散りばめるにとどめています。

三石 一応ニュースレターの中にはコンテンツを置きつつも、控え目に「by Hubspot」と添えるくらいの感じで。たとえば、派手にHubspotのバナー広告を出したりはしないんですね。

Mr.モリスギ あまりアピールしすぎると、ウザがられてユーザーが離れてしまいますからね。既に色々アイディアはあって、Hubspotもどうやってマネタイズをしていくべきか実験中なのかなと思います。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

外部のメディアを買収して自社のコンテンツを強化するときには、買収したメディアの体験価値を下げない工夫が必要!

オウンドメディアは、単なる客寄せツールではない。良質なコンテンツを充実させることで、効率的に顧客獲得できる-Salesforceの成功事例

オウンドメディア

Mr.モリスギ もう1つの例が、Salesforceのメディア化の事例です。SalesforceもSaaS企業ですね。昨年には、Slackを巨額買収したことでニュースになりました。

三石 こちらは、自社でメディアを立ち上げた例なんですね。

Mr.モリスギ 「Salesforce+」といって、音声や動画のニュースメディアです。サイトを見てみてください。面白いですよ。

三石 ディズニーチャンネルみたいですね。コンテンツが分かりやすい。

Mr.モリスギ ビジネス系のニュースメディアではありますが、well-beingをテーマにしたトークや経営哲学、リラックスして仕事に臨む方法など、さまざまなテーマを取り扱っているのが特徴です。

三石 日本でいうと、NewsPicksに近いかもしれませんね。

Mr.モリスギ さっき三石さんが「ディズニーチャンネルみたい」とおっしゃっていましたが、Salesforceの経営陣も「ビジネス界のディズニーやNetflixになる」と明言しています。Salesforce+のことをコンテンツビジネスとして捉えていて、客寄せのためのツールとしては考えていないんです。

三石 よくある、「既存事業に誘導するために見込み客を獲得する」ことを目的としてメディアを作るという考えはない。Salesforce+自体を事業化するということですか?

Mr.モリスギ どうでしょうね。Salesforceでは、毎年10万人以上を動員する「Dreamforce」というSan Franciscoで開催しているカンファレンスがあります。コロナで昨年はやれてないのですが、参加費が30万円くらいするのに、一瞬で売り切れてしまう非常に有名なイベントで。セッション数が2,700くらいあるという、超巨大なコンテンツがあるんです。
Dreamforceのオンライン独占権もSalesforce+が持つことになるようなので、Dreamforceのチケット販売や限定コンテンツの販売などで収益を上げる目算はあるのかもしれません。ただ、広告収益を上げる狙いはゼロだと思います。

三石 面白いなあ。実は我々Growth Labでも、1月から似たような取り組みを始めようと思っているところなんです。「Growth Lab Fellow」と言うんですけれど。 オウンドメディアのコンテンツを作るだけじゃなくて、たとえば有識者を集めてミートアップのイベントを開いたり、Fellow同士のコミュニケーションが取れる場を作ったりする企画を立てています。
Salesforce+のように、コンテンツにもバリエーションを持たせたいと思っていて。たとえば完全に経営に特化するのではなくて、フードテックやHR、SDGsあたりの有識者をお招きしたいと考えています。パラレルワークやヘルスケアなんかのテーマも入れたいんです。

Mr.モリスギ それはとても面白そうですね! リリースが楽しみです。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

オウンドメディアのコンテンツを強化することは、高騰するCACの有力な対抗策となる! コンテンツを充実させることにより、多元的な可能性が広がる

三石 今回もありがとうございました! 次回のテーマですが、次回もCACを下げる施策についてお話を伺う予定です。

Mr.モリスギ 次回は、キャピタルベンチャーや中小企業がCACを下げるために、すでに海外で取り組まれている「同盟ネットワーク」についてお話しします!

三石 面白そうなネーミングですね。次回も、よろしくお願いします!


―――次回の【海外Hot Info】では、CAC施策と「同盟ネットワーク」について引き続き森杉さんにお話を伺います。ぜひお楽しみに!

ナレッジランキング

タグ一覧