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Amazonは顧客が楽しむためのサイクルを提供するプラットフォーム【DXニュース】vol.21

2022.04.28

DXニュース第21回は『表示が0.1秒遅れると、売上が1%減少する』絶対王者アマゾンがやっている”すごすぎるデータ分析”を取り上げて解説します。今回のプレゼンターは、国内外のリテールテックを10年以上見続けてきた株式会社DearOne CEOの河野さんです。それでは、はじめましょう!

ベゾスが紙ナプキンに書いた、Amazonのビジネスモデル

三石所長(当時。以下、三石) 「DXニュース」第21回です! ニュースプレゼンターは、前回に引き続き、リテールテックを10年以上見続けてきたCEOの河野さんです!

河野恭久さん(以下、河野) よろしくお願いします!

三石 今月の2本目、3本目は、「『表示が0.1秒遅れると、売上が1%減少する』絶対王者アマゾンがやっている”すごすぎるデータ分析”」ですね! 前後編でいきましょう。

河野 はい、これは僕が大好きな記事で、Amazonがいかにして成功したかを分解、解説しています。今回も、僕なりの視点から「注目ポイント」をまとめてみました。

Amazonのビジョンは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」であり、Amazonにとってのパーソナライズとは「顧客をその人にとっての宇宙の中心に置いて考える」という言い方をしています。下の図は、ベソスが創業時にAmazonのビジネスモデルを考えていたときの図です。

アマゾンのビジネスモデル
Amazon.jobs(https://www.amazon.jobs/jp/landing_pages/about-amazon)を元に作成

三石 おー! じつはベゾスの最初のビジネスモデルの図は僕も調べたことがあって、ベゾスは紙ナプキンに書いたらしいですね。それを見たときに感動しました。

河野 そうそう。この図は真ん中が原本のナプキンと一緒で、両サイドはプレジデント側でベゾスの行動をもとに2つのビジネス構造を足しているものです。

三石 あ、そういうことなんですね!

河野 重要ポイントとしては初期のAmazonのビジネスモデルのベースが「品揃えの豊富さ」と「価格の安さ」であり、それはイコール「顧客体験」なんだよと言っています。

三石 言われればその通りなんですけど、分解して言葉にされると勉強になりますね。

サブスクモデルは顧客の上がり続ける期待値に応えなければならない

河野恭久

河野 Amazonのビジネス構造は「顧客体験」と「バリューチェーン」の2つで成り立っています。「顧客体験」というのは、Amazonのサービスが顧客体験を提供するプラットフォームであること。

素晴らしい顧客体験を提供すれば顧客が増えていき、それによりサプライヤーにとってAmazonのプラットフォームに対する魅力が高まり、多くのサプライヤーが集まるという話。それはその通りですよね。

品揃えの豊富さは顧客体験の満足度をさらに高めるので、Amazonのプラットフォームは顧客にとっては体験を楽しむためのプラットフォームであり、サプライヤーにとっては商品を提供するためのプラットフォームになる、という話です。

ここで僕が感動したのは、僕は飲食店を中心に周辺のクーポンが表示されるメディア「イマナラ!」というサービスでDearOneを立ち上げているんですけど。

三石 このサービスですね。

河野 そのときに“鶏・卵”で、加盟店に営業をかけるのが先か、ユーザーをたくさん集めるのが先か、めちゃくちゃ議論したんですね。なぜならユーザーを集めるのにかなり広告コストがかかるので。

三石 それはどこでも議論になる話ですよね。

河野 僕らはというと、ユーザーがアプリをダウンロードしたときにクーポンが出てなかったら一瞬でアンインストールするけれど、企業は「掲載料無料の期間を用意してユーザーを集めるから掲載だけして待っててね」と言えば待ってくれるので「絶対に企業側が先」という結論に達して、まず加盟店をバンバン掲載したんです。ところが、Amazonの記事によると「顧客体験が先」だと。

三石 DearOneと逆の結論なんですね!

河野 はい。「顧客体験をまず重視することでトラフィックが増えます」と言ってるんですよね。そうすると当然サプライヤー側も増えていくという話で。それができる理由は、顧客体験にとにかく注力したからユーザー側が待ってくれる、気に入ってくれる、ということなんだなと理解しました。

三石 順番ではなく、ちゃんと顧客体験の本質的なところに注目していたのがAmazonは素晴らしいですね。

河野 本当にそうですね。そしてAmazonのビジネス構造のうち「バリューチェーン」とは、顧客が手にする商品が届けられるバリューチェーンのサイクルのことです。ECは、顧客にとっては「安さと品揃えから欲しいものが見つかる」、「手間がかからない」というメリットがあります。この2つのビジネス行動が基本的なAmazonの成功の要因というわけです。

三石 なるほど。

河野 そして次は、サブスク事業をやっているみなさんに伝えたいこと。Amazonにおいて取り扱う品目はモノだけでなく、生鮮、映画、音楽と、どんどん拡大していますよね。Amazonのプライムサービスはサブスク型で会員価格が固定されていて、月額を払い続けているから顧客の期待値は上がり続けます。

そこに対して「商品、サービスを増やし続けることでWillingness to Pay(払う理由)が維持されるんだよ」と言っています。

これは僕らも自戒すべきですね。DearOneで行っているサービスAmplitude(アンプリチュード)」ModuleApps2.0(モジュールアップス2.0)」もサブスク型でやっていて、やっぱり払い続けてもらうためにはWillingness to Pay(払う理由)が必要になります。その期待値が上がり続けることを知ったうえでサービスを磨き続けないと解約されるなと。素晴らしいことを伝えてくれました。

三石 本当にそうですね。

河野 同時に、顧客体験が高まることで顧客数と利用者数が増えていき、サプライヤー側のWillingness to Sell、つまりAmazonで売りたい、という動機が高まります。そうすると多数のサプライヤーが集まり、品揃えが増えて、顧客の選択肢が増えるのでWillingness to Payがさらに上がり、好循環のサイクルですよねと言っています。

三石 言われてみると当たり前のことですけど、上がっていく顧客の期待値にどう応えていくかの突き詰め方も勉強になりますね。

「協調と競争」が組織を成長させる

河野 そうですよね。はい、そしてここからが一番深い勉強になるところです。Amazonが成長を続けるために大切にしている3要素の「前段」です。Amazonが創業初期に扱っていたのは書籍でしたよね。

三石 そうでしたね。

河野 当時、通常のアメリカでの出版業界の返品率は40%以上でしたが、Amazonは4%だったそうです。どういう工夫、努力をしていたかは書いてませんが、出版社に対しても大きな価値を提供していたわけです。

アマゾンが成長を続けるために大切にしている3要素

河野 記事には、実現できたベースになっているのはAmazonのミッション、ビジョンであり、それを徹底したリーダーシップに基づく、各事業、機能のリーダーが自立して、カニバリゼーションをいとわずに顧客への価値提供に挑戦したとあります。

三石 最高ですね!

河野 これを読んで僕が思い出したのは、ドラッカーやウェルチが言っている「プロフィットセンター論」です。たとえばコールセンターですらプロフィットセンター化してコールセンターではないという考え方があったり。さらにウェルチが言っていたのは、プロフィットセンター間の競争が事業を拡大させると言っていて。

(※編集部注・プロフィットセンターとは、会社の中で利益を生んでいる部門のことを指す用語です。)

三石 はい。

河野 僕は前の会社が全国に400支店ぐらい出している人材派遣会社で、仕事の量は東京が一番多くて、一方で地方はキャストの採用がしやすいんですね。

そうすると、東京の仕事を地方の支店に振り分けて、人をそこでアサインしてもらう、という形になるんです。つまり、地方支店は口を開けて待っていれば、東京から仕事が来る状態で。でも、それって東京からしか仕事を取ってこないので伸びが限定的なんですよね。

三石 必然的にそうなりますよね。

河野 そこで、あるときからウェルチのプロフィットセンター論を適用しました。東京も自分達でキャストを一所懸命アサインするようにして、地方に仕事を与えないようにしてみたんです。そうしたら地方は自分達で頑張って営業するしかなくなり、結果的に会社全体の売上が上がったということがありました。まさにプロフィットセンター間で競わせる、というのは非常にいいなと。それをAmazonという会社の各事業、機能ごとでそれをやったと感じました。

三石 なるほど。それと先ほどの“鶏・卵”みたいな話と絡めて話すと、ユーザーを先に捕まえるか、コンテンツを捕まえるかって、みんなぶつかるやつじゃないですか。それを日本の旧来型で一番やり抜いてるのがリクルートだと思います。

河野 うん、間違いない。

三石 リクルートのイズムを河野さんも汲んでらっしゃるので、そこを草の根でやっていって。僕もよく前の会社で「協調と競争」と言われました。

河野 協調と競争。

三石 社内は仲良く連携して協調しながらも、ときには緊張感をもって競争していく。協調だけだと甘くなっちゃうし、競争だけだとギスギスするから、「協調と競争」とよく言われていたんです。それをリクルートはめちゃくちゃよくやってるなと。表彰のアワードとかするじゃないですか。ああいうのは原理として重要ですよね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

Amazonをはじめ、成長する企業には「協調と競争」の原理が働いている。

河野恭久

河野 めちゃくちゃ重要ですね。これでハッとさせられました。自分の今の会社に活かせてないなと思いました。まだそのステージじゃないのかもしれないですけど、ゆくゆくはそれ大事だなと。争い合ってほしいですよね。

三石 今後やっていきたいですね。

河野 ――はい、それではいよいよ本題の「Amazonが成長を続けるために大切にしている3要素」に入りますが、文字数が多くなってしまったのでまた次回にしましょう! お楽しみに!笑

―――次回の【DXニュース】で取り上げるニュースも、河野さんが解説していきます。お楽しみに!

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