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レコメンドエンジンは外販してデータを得る!? 多様化するコミュニケーションアプリ【アプリ研究会】Vol.14

2022.06.02

エンジニア、デザイナー、マーケターなど、さまざまな職種のメンバーが参加しているDearOne「アプリ研究会」。今回は、現在のアプリ事情について語り尽くします!


 
第14回のテーマは、前回に続き「コミュニケーション/SNS」。有名SNSアプリのレコメンドエンジンが外販されていたり、コミュニケーションアプリはInstagramしか活用しない人たちが出てきていたり……アプリのプロたちが、今回も議論します。

注目!TikTokがレコメンドエンジンの外販をスタート

アプリ研究会

三石 前編では、「LINEのMAU率、継続率がとんでもなく高い」ということやライブ配信系アプリなどについて情報交換しましたね。

そのうえで「最近SNSでこんな発見がありました」というものがあれば発表してください。
 
赤木 TikTokが去年からレコメンドエンジンを出しましたよね。「質がいい」という話をよく聞きます。
 
三石 TikTokのレコメンドエンジンを、外部の企業が普通に使えるの?
 
赤木 そうです! BytePlus Recommend」という名称で、TikTokのパーソナライズのエンジンを流用して自社のサービスに組み込めるようになっているんです。BtoB向けに展開しはじめていて、「成果報酬」だから成果が出なかったら無償でいいというスタンスみたいです。

三石 TikTokは自社で磨き込まれたユーザーサービスで、日々いろいろな興味関心を把握するから自信があるんだね。
 
赤木 はい。上記URLの中で、ロジックの部分も結構公開しています。僕はTikTokを使っていませんが、パーソナライゼーションが独特らしいです。TikTokはユーザーの趣味嗜好に合わせたものだけを出す「フィルターバブル」状態ではないそうです。

三石 フィルターバブル? 
 
赤木 要はパーソナライゼーションしすぎると、特定のものしか見なくなって、新しい体験をユーザーに提供できなくなると。それを回避する意味で、ユーザーが興味あるもの以外のものもあえて出すようにレコメンドエンジンの組み方をしているそうです。
 
三石 なるほど! レコメンドを突き詰めると、いつも同じような動画ばかり表示される状態になりがちだからね。
 
赤木 そこでセレンディピティを生み出して、新たな好きなものと出会わせていくのがTikTokはうまいらしくて。TikTokは「きみが次に好きなもの」というコピーを出していますけど、まさにあれを体現したようなシステムですね。

アプリ研究会2

三石 外販していくのはもちろんTikTokが「儲けたい」のもあると思うけど、加えてTikTokが自社のBtoCサービスだけでは囲いきれないユーザー可処分時間、たとえば外部サービスでオウンドマーケティングやっている人の可処分行動は追えないから、それを仕組みとして売り出していくことで、そこのビッグデータの学習がさらにできてしまうようになるよね。きっとそれが狙いだね。

赤木 そうですね。レコメンドエンジンを起点にしてTikTok外のサービスでもいろいろなユーザー行動傾向を知ることができるので、どんどんエンジンが強くなりますね。
 
三石 プラットフォームの強い人達の戦い方ですね!
 
赤木 以前のアプリ研究会でも「Netflixがレコメンドエンジンを開発しはじめた」という話をしましたよね。

赤木 僕も調べてみたら、Netflixは自社で分析ツールを開発していて、徹底的に使い倒してきたそれを今後“外販”する予定があるそうですよ。つまり、Netflixの英知が詰まった分析ツールが世に出てくるかもしれない

動画配信系でレコメンドが強いところがこぞって外販するようになっていて、完全にエンジンが他のところでバリューとして提供できる、という現状です。こういう動きは加速していきそうです。

三石 どんどん強くなって寡占されちゃうね。でも、仕組み化されたらファーストパーティデータで勝負している、つまり自社でやっていこうという人達がその仕組みを使うことでどんどん質が上がっていくだろうから、それには期待したいよね。ありがとうございます。

メッセージアプリはLINE一強ではない? インスタしか使わない人たちも登場してきている

メッセージアプリ

三石 さて、ここからはちょっと話題を変えて「コミュニケーションアプリの未来」の話ができればと思います。これからどうなっていくと思う?
 
小笠原 今はFacebookを使う世代と、TikTokを使う世代と、世代や年代で使うアプリが分かれていますよね。これからも次の新しいものがまた出てきて、流行り廃れるんでしょうね。
 
三石 世代別で“エモい気持ち”を拾っていくサービスがさらに出てくるだろうと思いつつ、生活インフラ的なコミュニケーションサービス、ツール的な側面はやっぱりLINEなのかなぁ。行政もLINEで手続きできるようにしようという話が出はじめていて、一択になりつつある気がする。
 
小笠原 それをやりすぎたせいで、データの管理状態、ガバナンスの問題などもありますが、そのぐらい「全国民総LINE状態」になっていますね。
 
松本 ……じつはそうでもないみたいですよ。今、若い子はLINEを使わずにインスタグラムのメッセージでしかやり取りしないと、ちらほら聞きます。この前、テレビに出ていたモデルの女の子も、LINEは誰とも交換したくないから用事があったら「インスタのメッセンジャーに送ってね」と全員に言っていると。テレビの街頭インタビューでも「インスタしか使ってない」と、見た記憶があります。一概にLINEというのも世代差が出てるような感じがします。

三石 なるほど。カジュアルコミュニケーションと使い分けて、カジュアルなほうはそっち系も一定の支持があるね。
 
ササキ 私もそう思います。インスタは、以前はメッセージだけだったけど、今は電話もできるようになってますよね。だからLINE通話がなくても若い子達はインスタで完結しちゃってる気がします。

アプリ研究会3

小笠原 あ、もしかしてFacebookメッセンジャーのユーザーが減ったのってその影響かな?
 
ササキ そうかもしれませんね。Facebookは私も高1から使っていましたが、大学後期になると全然使わなくなりました。上の世代しか更新していないから見る気がなくなっちゃって。Facebookはどんどん若い人達が離れていくのは見てきました。
 
小嶋 僕は用途による使い分けが進んでいくと思っていて、LINEとFacebookとインスタと、それぞれ距離感が違う人達と適切なコミュニケーション、適切なチャネルを選んでいく、という使い方がだんだん進んでいくのかなと。そこに今後、新しい価値観のところに対するSNSが出てくるのではないかと考えています。それがメタバースなのかもしれませんね。

三石 そうだね。5Gとかインフラが進化して”常に繋がっている状態”でいられるコミュニケーションサービスにますますなっていくんだろうなと思う。そうしてさらにメタバースで、オンとオフの切り替えがなく繋がっているのが当たり前になって。日常の共有系アプリが10代で流行っているのは、友達と一緒にいる感覚がずっと続いてる感じなのかなと思うんですが、どうなのかな?

小笠原 どうですかね。LINEから離れた人の話を聞くと、それ(常に繋がっていること)が嫌なのかもしれないですね。僕は完全にLINE世代で、以前は朝から晩まで誰かとチャットして、いくつ送ったか勝負みたいな感覚でしたけど、今の人達は密になりすぎないというか、デトックスしたいというのがあるのかもしれません。メタバースは最近、アンチな記事が増えていることもあり「本当に流行るのかな?」と疑問もあります。

メタバースは、果たして本当に「来る」のか?

メタバース

三石 今後どうなるのか、気になるね。さて、最後は1to1ではなく、YouTubeやTikTokなどの「1対N」のコミュニケーションアプリの未来予想の話をして終わりにしましょう。僕はフジテレビの公式YouTubeチャンネル「シゴトズキ」さんと一緒に活動しているのですが、「最近はYouTubeショートのほうが回る」そうです。

(※編集部注・「#シゴトズキ 【実践編】フロントランナーの成功と挫折」では、各方面のマーケティングのプロを呼んで成功や失敗をセキララに語ってもらっています。ぜひご覧ください!)

僕自身もYouTube中毒ですが、みなさんは何のアプリを見ていますか?
 
松本 私は最近、ラジオを聞いてますね。radikoを使ってオールナイトニッポン、TBSラジオ、芸人がやっているものをかなり聞いていて。そこで思うのは、ラジオと配信系アプリのクロスプラットフォーム化が進んでいることです。
 
三石 へー、どんな風に?
 
松本 たとえば、コミュニティアプリの「ミクチャ」はマヂカルラブリーのラジオを生配信していたり、大久保佳代子さんのラジオ番組はTikTokが協賛になっていて番組内で動画をつくったりしているんです。それがうまくいっているかはわかりませんが、そういうのは増えていますね。

アプリ研究会4

三石 なるほど。確かに、テレビ局、ラジオ局は下火の状態になっている感じがするから、そこに力をもった新たなコミュニケーションアプリが組んでサービス展開をしていくようになりますよね。テレビ番組の配信をしているTVerもあるしね。これからは、どうなっていくと思う?
 
小嶋 YouTubeをモバイルで見られるようになったのはおそらく4Gが普及して以降で、それが今は当たり前に根付いて、さらに5Gになりました。ただ、次の革新はどうなるか、全く読めないですよね。動画の次だとVR、ARなのか。とにかく動画よりも重い処理がモバイルでもできるようになるのは確かなので。
 
小笠原 ただ、デバイスが付いてきていない気がしますね。
 
三石 VRのヘッドセットもつけるのが面倒くさいよね。ただ、最近は耳にだけつけるものや、メガネのようなグラスタイプも出てきているから広がる可能性はある気がします。
 
小嶋 確かに、Oculus VRなどのVRデバイスがもうちょっと小型化して、5Gに繋がって、どこでもVRコンテンツ楽しめるようになったら、それは“未来”かもしれないですね。
 
小笠原 やっぱり肉体をハックするしかなくなるんですかね。
 
小嶋 数年後、数十年後は、「まだ肉体の枠で行動しているの?」という感覚になっている気がします。今はZOOM会議が当たり前になって移動時間なんてないし、それで普通にコミュニケーションが取れる。さらに、将来的に、匂いや触覚も共有できるようになったら、それは“未来のコミュニケーション”ですよね。それがメタバースなのかなと思いますが。

三石 未来のことを考えると面白いね。これからも未来のコミュニケーションについては議論をしていきましょう。はい、今日はこのあたりで、ありがとうございました!

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