株式会社スペースマーケットが提供する、あらゆるスペースを簡単に貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」。
今回は、スペースマーケットCPOの三重野様と、プロダクトマネージャーの小泉様に、行動分析ツールAmplitude導入の決め手や導入後の変化、Amplitudeを活用した具体的な改善事例についてお話を伺いました。
課題
- データの民主化(=役職や職種を問わずデータを活用できる環境の整備、カルチャーの醸成)を進めたいが、限られた人しかデータにアクセスすることができない
- ツールの使いにくさや応答時間の遅さによりデータの分析に時間がかかるため作業効率が悪い
効果
- データドリブンな文化が社内に定着し、データの民主化に成功
- 分析スピードアップ
展望
- マジックナンバー抽出からの大きな示唆出し
- 他ツールとのデータ連携によるオートメーション化
あらゆるスペースを時間単位で貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」
小泉様|
スペースマーケットでは誰でも簡単にスペースを貸し借りできるスペースマーケットというサービスを運営しており、スペースの掲載数は2万件以上を超え、たくさんのユーザーにご利用いただいています。
「友達とパーティーがしたいけど居酒屋はコロナの感染が怖い」、「自宅の近くに作業場所として使える場所が欲しい」、「オークションに出品する商品の撮影をしたいが家には機材がない」といった場合に、それぞれの用途にあった最適なスペースを探すことができ、1時間から予約して利用することができるサービスです。
分析スピード改善、直感的な操作と日本語表示が決め手
Amplitude導入時のデータ活用に関する課題
三重野様|
以前は別のデータ分析ツールを使っていたのですが、分析ダッシュボードにアクセスできるユーザー数に制限があり、社内でも限られた人しかアクセスすることができませんでした。社内で「データの民主化」を掲げ、データをもっと活用しようという段階で、一部の人しかデータが見られないのは民主化と逆方向に向かっているので、困っていました。
もう一つは、もともと利用していたGoogle Analyticsのデータ量がユーザー数の伸びにしたがってどんどん増えていって、データを可視化するのに時間がかかっていました。Amplitudeはユーザー数が増えても一定のスピードで結果を返してくれるということで、作業効率も良くなる、データも民主化される、というのが最初のモチベーションでした。
Amplitudeを選んだ理由、導入の決め手
三重野様|
Amplitudeは海外では行動分析ツールとしてデファクトスタンダードの地位を確立していますよね。TwitterやSalesforceのような大手企業が導入していると知り十分実績があるのが心強く、日本語対応をしている点も好材料でした。
また、フリーミアムモデルを採用していて、まずは無料で使ってみて導入の意思決定ができるところがありがたかったです。
他社の分析ツールとの比較、使いやすいポイント
三重野様|
まず早い!業務課題であった分析にかかる作業効率が改善されました。
イベント*1 … Continue readingの実装もSDK(ソフトウェア開発キット)を使って簡単にできるので、エンジニアの工数をそこまで使わずに基本的な分析基盤が構築できたのも助かりました。
ツールをインストールしたあと、自分たちで0→1で分析の土台を作るのって大変なんですけど、DearOneさんがおすすめしているタクソノミー設計*2 … Continue readingで、「こういうふうにイベントをとってくださいね」というガイドがあったのも助かりました。まずはこういうふうにするのがスタンダードです、その上で自分たちで工夫してくださいね、という「普通」があったので、わかりやすかったです。
またプロダクトの完成度が高く、直感的な操作で基礎的な分析が実現できるのと、UIが日本語でローカライズされているため誰でも使えそうというイメージができたので、導入を決断しました。
エンジニアやデザイナーもAmplitudeでデータ活用
実装までのスピード感
三重野様|
まずはPoC(Proof of Concept:概念実証)ということもあって、設計を全部やり終えてから実装しましょう、ではなく、使用感とかも確認したかったので、とりあえず少しでもイベントを設定してみるところから始めました。それを設定したら次のイベントはこれにします、次は何にします、みたいな感じで設計と実装を並行してやってみました。
ウォーターフォール(システム開発の際に作業を工程通りに、一つが終了してから次に進む方法)じゃなく、アジャイル(設計や実装といった工程を分割せず一本化して扱い、迅速に開発して改良を重ねていく手法)で進めることができたのはスピード感があってよかったと思います。
運用メンバーの構成と、活用人数の推移
三重野様|
Amplitude導入時の運用メンバーは3名でした。現在は社員みんなが自由に活用していて、特に20名くらいは毎月見ています。
元々エンジニアやデザイナーはあまりデータを見ていなかったのですが、Amplitudeを導入してから活用メンバーが広がって、今ではPM、マーケ、エンジニア、デザイナーといったプロダクトに関わる様々な職種のメンバーがデータを活用しています。
Google Analyticsは使い方を理解するのが大変で、覚えないと使うのが難しいんですけど、Amplitudeは直感的な操作で簡単に利用できるため、設定したイベントの名前さえ覚えていれば誰でもすぐに確認できます。そうすると「あ、自分の作った機能は使われてるんだ」ということがすぐに分かり、じゃあもう少しデータを見てみよう、ということで使い方を覚えていったのかなという気がします。
実際に使ってみて、おすすめの機能
小泉様|
以前も行動分析ツールを利用したことはありましたが、マジックナンバーから示唆を出すといった経験がなく、そのユーザーはどういう行動をよくとっているか、あまり深掘りをできていなかったので、そこが簡単に出せるのは魅力的だなと思いました。
データの民主化に成功!ユーザー属性毎の行動分析も可能に
Amplitudeを活用することでの社内の変化
小泉様|
これまでは、ある程度トラフィックは見るものの、なかなかユーザー単位での行動分析まではしっかりとできていませんでした。
スペースマーケットでいうと、例えば「パーティーで利用するユーザーはどんな行動をするのか」とか「ビジネスで利用するユーザーはどういった行動をするのか」といった、ユーザーによって異なる傾向を、Amplitudeを使うようになって深掘りして分析できるようになりました。
三重野様|
データの民主化が成功したと思います。ざっくり言うと誰でも使えるツールなので「みんなでデータをちゃんと見ようね」というカルチャーができたかなと。
エンジニアも「これイベント仕込んだ方がいいですよね」とか向こうから提案してくれるようになりました。Google Analyticsだと、イベントを仕込むのが面倒くさいし、データを見るのも限られた人だけだったので、エンジニアは基本的に言われたら実装するくらいの感じなんです。Amplitudeだと自分でデータを見られるから、開発の結果を知るために計測しようよ、とエンジニアから言ってくれるようになったのは結構変わった部分だと思います。
エンジニアからの改善の提案も増えました。例えば「この機能使われてないから消しませんか?」とか。エンジニアにとって、使われてない機能をメンテナンスするのは辛いんですよね。そんなとき「これほんとに使ってるんですか?」「わからないけどとりあえず残しといて」「いや、使われてないですよ」「じゃあ消そう!」みたいな意思決定を、データを見て正しく・素早く判断できるようになったと思います。
データに基づいたUI改善でアプリのDL数もUP!
Amplitude分析からの施策、改善事例
小泉様|
予約導線中で離脱するユーザーが多かったので、どこに改善ポイントがあるのかを分析しました。
大きく分けると4つのステップがあったのですが、細かく行動を分析するとステップ2からステップ3に行くユーザーが離脱している、などが分かり、ステップ数を削減してみることを決断しました。実際にステップを4つから3つにしたところ、予約完了までの離脱率を下げることができました。
また、コンバージョンレートが高いユーザーを分析すると、お気に入り機能を使っているユーザーが多いことに気づきました。お気に入りを使うユーザーに対して、よりアプローチしていく施策を検討しています。
三重野様|
ログインユーザーと未ログインユーザーで、カートからのコンバージョンレートが大きく違うということがコホート分析でわかりました。
未ログインユーザーの場合、最後の決済の直前で、「ログインするか、新規アカウント登録してください」という画面になります。元々仮説はあったのですが、すでにアカウントがありそのまま遷移が進むのとはやっぱり違いがあるなということを数値で再確認できました。そこで、カートに入れるという画面の前に、ログインのガイダンスを出すことにしました。こういった点もAmplitudeによって改善することができました。
また、アプリとWEBのデータが一気通貫して見られるというのが、今までにない経験でしたね。
他のツールでは見られなかったんです。それがAmplitudeではユーザーIDでバシッと紐付く。あれはすごいですね。
アプリのダウンロード数向上にもつながりました。ユーザーがどういった経緯でアプリをダウンロードしているかがAmplitudeを使うことで分かったので、それを他のユーザーにも提案する施策を打ちました。予約した後のサンクスページで「アプリダウンロードはいかがですか」という表示を出すことにしたら思惑通り、ダウンロード数を上げることができました。
他にも、検索画面から詳細画面へのCVRの高いユーザーの検索方法として、タイトルを2行で表示してる画面から遷移していることがわかり、「タイトルを2行表示」をデフォルトにすることで、6ptもCVRを増加させることができました。
一見小さな改善でも、CVユーザー、ポジティブユーザーの行動を追うことで、効果のある改善になることがわかりました。
今後Amplitudeをどのように活用して行きますか?
小泉様|
最近マジックナンバーの抽出を積極的に行っており、これから有益な示唆につなげていきたいと考えています。現在はまだ明確な示唆が出せていませんが、もう少し深く掘っていくと見つかりそうでワクワクしています。これからさらに研究していきたいですね。
三重野様|
他のツールとも簡単にデータ連携できるため、重要な予約情報などが溜まっているデータベース、Looker(ルッカー)と紐付けて、分析基盤全体の仕組みの中でAmplitudeの役割を明確にしたいです。
AmplitudeとLookerの使い分け・今後の展望
三重野様|
Amplitudeは行動分析に特化しているので、フロントでユーザーの行動をライトに取ることができます。一方Lookerはデータベースの中身を可視化したもので、サービスが始まって以来の全部のデータがそこにあります。そのため使い分けとしては、LTVが高いお客さんはどういった行動をしているのか、といったユーザーの行動分析はAmplitudeで行い、ユーザーの居住エリアや登録時期といったデータはLookerから分析します。
今後の展望としては、データ連携機能を駆使して、CDPなどのもっと大きな仕組みとして活用したいですね。
あとは、データ分析は示唆出しまでできることが重要ですが、まだまだそのレベルでツールを使いこなせているメンバーは少ないのが現状です。「こういう示唆が出ました」という要の部分はまだ最終的にはデータアナリストが見ているので、よりオートメーション化して、民主化を推し進めていきたいですね。
DearOneに今後期待することを教えてください。
小泉様|
他社さんの成功事例など、ミーティング時にいただいた資料がスペースマーケットでも応用できるところがあり非常に参考になりました。まだまだ使いこなせていない機能がたくさんあるので、今後も支援していただけたらと思っています。
三重野様|
DearOneさんとのお付き合いはタクソノミー設計から始まりました。タクソノミー設計も、適宜メンテナンスしていかないといけないと思うのですが、そのメンテナンスって「しましょうね」とDearOneさんから言ってもらわないとなかなか始まらないので、そういった「そろそろメンテナンスですよ」と背中を押していただけたらと思います。
Amplitudeの改善の早さは凄まじく、どんどん新しい機能が増えてますよね。せっかくの機能は使いこなしたいですし、DearOneさんはいろいろな会社の伴走支援をされてるので「スペースマーケットさんはその機能使わなくていいよ」とか、ぜひ本音でサポートして欲しいです(笑)。
− インタビュアー後記
▼株式会社DearOne グロースマーケティング部 カスタマーサクセス 小島健一
スタートアップ企業の成長フェーズにおいて、データ活用の重要さを非常に深く理解されていることが伝わってくるインタビューであり、おふたりの表情や言葉の端々から「スペースマーケットのサービスがこれから伸びていく雰囲気」を存分に感じました。Amplitudeのコンセプト、特性をすばやくキャッチアップし、社内に浸透させている点など、私自身、多くを学ばせていただきました。引き続き、お役立ちできるように尽力させていただきます。