第3回は、NetflixやAmazonプライム、Huluなどの「動画のサブスク」について分析した資料をもとに、各メンバーが自身のユーザー体験を紹介します。
アクティブ率も継続ユーザー率も強い「Netflix」
三石 さぁ、アプリ研究会の第3回です! 今日も森田くんが資料をまとめてきてくれてるんだよね。
※注)DearOneが提供するアプリ利用動向分析サービス「SmaRepo」を活用
森田 はい。NetflixやAmazonプライム、Huluなど「動画のサブスク」について調査してきました。まず、簡単に調べた結果をまとめると、次のようになっています。
①Netflixが「アクティブ率」、「継続ユーザー率」共に最も高い
②U-NEXTの平均起動回数の割合が多い
③全アプリほぼ共通で、深夜にかけて利用者数が増加
三石 ありがとうございます。ちょっと定義の確認をさせてください。アクティブ率や継続ユーザー率、平均起動回数はどういう計算式ですか?
森田 過去6カ月以内に1回でもアプリを開いた人の数を「アクティブ数」、その割合が「アクティブ率」です。「継続ユーザー率」の母数も同じで、2ヶ月連続でアプリを起動した人と定義しました。「平均起動回数」は月に何回アプリを起動したかの平均値です。
三石 なるほど、続けてください。
森田 Netflixがアクティブ率と継続ユーザーの割合が一番高かったという結果でした。2点目の平均起動回数は、NetflixやAmazonプライムが高い中で、U-NEXTも高い数値でした。そこのところが僕には理由がわからなかったので、エンタメ領域に詳しい松本さんにお聞きしたいです。
松本 U-NEXTは、動画だけではなく本やマンガも読み放題になっているのが大きいような気がしますね。
三石 そうか、確かに動画以外のサービスも含まれてるコンテンツプラットフォームも増えてきたよね。
Huluは“退会前提”で利用することも
赤木 森田さんに用意してもらった、この主要な動画配信サービスのMAU率比較(2020年1月~10月推移)を見ると、意外とHuluのMAU率が上ったり下ったりしているのが気になります。MAU率はコンテンツの量や質に左右されそう。
(編集部注:MAUとは、Monthly Active Users/月間アクティブユーザーのことを指しています。)
三石 確かに。上昇している3月あたりに、面白いコンテンツが出たのかもしれないね。
塚田 Huluは数カ月無料キャンペーンがあるから、僕はその期間が終わると退会してますね。
三石 それは、Huluで観たいと思っていたものが観終わったから?
塚田 僕が使っているメインのアプリはAmazonプライムなんですけど、そこでは見られないものがHuluで見られる場合、“退会前提”で無料期間だけ入ることがありますね。
赤木 あぁ、僕も全く一緒!
三石 なるほどね。ちなみに、サービスに契約したり、解約したりを繰り返してる人はいる?
赤木 Huluは契約と解除を繰り返していますね。Netflixはなんだかんだ日本に来てからずっと契約していて、一度も解約してないかな。
小嶋 HuluとFODはそういう使い方をしているイメージ。AmazonプライムとNetflixは、その次元を抜けているように思います。
三石 そうすると、動画サブスクは、作品ベースで勝負してるサービスと、ザッピングメディアとして日常的に使われることが習慣化するものに分かれているんだろうね。
濱田 Netflixは会員登録をしないと、実際にどんな作品が見られるかわからないですよね。登録ページに「こんな番組があります」という導線は一切なくて、Netflixの中ではそういう世界観なんだろうなと思います。そもそも、作品を見せるためにやってるんじゃなくて、「何か見たいものあるでしょ? じゃあここに来るといいよ」という世界かなと。
「見逃し配信」が魅力のTVerとAbema
森田 こちらは、主要な動画配信サービスのMAU数の比較(2020年2月~2021年10月推移)をまとめてみたものです。この結果を見ると、TVerやAbemaもMAU数が高くて、「Netflixよりも上」という結果になりました。ここも気になったのですが、やはり無料でコンテンツを視聴できるからですかね?
小嶋 無料だとしても、TVerとAbemaのMAU数は高いね。もっと下かと思った。
塚田 「見逃し配信」があるからじゃないですか?
三石 うん、俺もTVerで「日本沈没」の見逃し配信を見てる。
森田 そうか、ドラマは毎週見るからアプリを開きますもんね。
三石 一方のAbemaはニュースとか、朝から晩までちゃんと見るんじゃなくて、ザッピング的なコンテンツがいっぱいあるから起動するのかな。
塚田 Abemaは音楽のフェスの映像が見逃し配信で放映されるから、それで使いますね。普段、見られないものが見られるから。
三石 なるほど。MAU率でいうと、みんなは実際にどのぐらいの頻度で動画系のアプリを開くの?
松本 私は1日2時間半を30日間、つまり1ヶ月ずっと。Netflix、Amazonプライム、Huluの3個を契約してますけど、もう次に見るドラマがなくなってきちゃって。だからNetflixの継続率が高いのは納得ですね。Netflixは視聴履歴をダウンロードできて、チェックしてみたら、私は33カ月で1,500話以上も見ていました。
一同 えー!!
松本 だから、月平均47話は見ている計算ですね。それに他のAmazonプライムもHuluも見るからリアルで1カ月100話ぐらい。
一同 それは凄いわ……。
徹底して「行動分析」にこだわるNetflix
三石 3個の動画サブスクを契約している松本さんの「アプリを使う基準」は?
松本 やっぱり「コンテンツの力」が大きくて、魅力的なドラマが見られるかどうかですね。その点、自力で面白いドラマを探すのには限界があるなかで、Netflixはレコメンドの提案がいいんですよ。
三石 うん、抜群にいいよね。
松本 アプリを開いて一番上に、まだ見ていない話題のドラマがバーンと出てきて。最近は最上部にオススメのショート予告編がひたすら流れ続けるUIのときもあって、「あなたへのマッチ度何%」と出てくるから、それで次のドラマが見つかる。動画のサブスクを辞めるきっかけは面白いコンテンツがなくなって、「この場所に用なし」と思う瞬間ですね。
三石 なるほど!
松本 それをさせないように搦めとってくる感じがNetflixはあります。他のものは、そこまで強い提案はしなくて、「続きをどうぞ」とか、便利なものを出してくるぐらいですね。
三石 ここで、その話に関連して参考資料として、日経クロストレンドの2018年の記事を紹介します。
以下、この記事の一部を紹介しますね。
メンバーに関してはすべての行動を分析しています。具体的には、どのコンテンツを見たのか、あるいは見なかったのか、どのくらいの速度で見たのか、どのデバイスで見たのか、1日のいつ見たのかといったことです。夜見たいものと昼に見たいものでも変わってきますから。
(中略)
これらのデータを組み合わせて、個々のメンバーの視聴傾向を分析すると同時に、メンバー全体で見たときにどんなものが求められているかも分析し、次にどんなオリジナルコンテンツを制作するかを決めていきます。出来上がったコンテンツをメンバーにどう見てもらうのかというデータもあり、また次のコンテンツ制作に生かされます。(出典:日経クロストレンド「Netflixのレコメンドは行動を分析 性別や年齢は対象外」)
三石 さらに、Netflixは新番組をリリース後、7日目と28日目で番組ごとに次の指標内容を計測している。2分以内で視聴を終了しているユーザー数。視聴70%完了、90%完了。これを先行指標として編成に役立てているそうです。
濱田 Netflixの凄いところは、取っているデータ自体は日本の動画系アプリでも取っているレベルのデータなんですけど、大きく違うのは、取ったデータを徹底して「行動分析」まで落とし込んでいるところですよね。
三石 Growth Marketing 3要素の「①行動分析:データで顧客理解を深める」に通じる話だね。
三石 データ活用の4ステップである「①ためる、②整える、③分析する、④つかう」がうまく実践されているようにも思えるな。
濱田 普通に分析していくと「30代女性」などの属性がつきますが、実際に見ている人がどんな趣味嗜好をもった契約者かはわかりません。そこでNetflixは「正しいのは行動」と、「何を見たか、見なかったか」の行動分析を軸にしています。さらに、改善に回すためのアプリを開発するためのチームをつくるところも凄い。
赤木 僕も調べてみたら、Netflixは自社で分析ツールを開発していて、徹底的に使い倒してきたそれを今後“外販”する予定があるそうですよ。つまり、Netflixの英知が詰まった分析ツールが世に出てくるかもしれない。
三石 それは凄い! キーエンスが自社の営業のためのツールをつくったのを外に売り出したのに近いね。
赤木 AmazonがAWSを出したときと同じですね。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
①Netflixが「アクティブ率」、「継続ユーザー率」共に最も高い
②U-NEXTの平均起動回数の割合が多い
③全アプリほぼ共通で、深夜にかけて利用者数が増加
――次回のアプリ研究会第4回目も、引き続き「動画サブスク」を深堀りします!